フリー・ジャズの領域で語られることの多いアーチー・シェップだが、本作は1971年に収容者の半数以上がアフリカ系アメリカ人であったニューヨークのアッティカ刑務所で起きた暴動事件をテーマに、彼のブラック・コンシャスネスと音楽的才能がファンクのリズムと共に遺憾無く発揮された名作である。コーネル・デュプリーのワウ・ギターから始まるゴスペル・ビッグバンド・ファンクのタイトル曲やブラック・ムーヴィーのテーマを思わせるジャズ・ファンク"Blues For Brother George Jackson"といったエネルギーが溢れ出すような楽曲は聴く者の心を揺さぶらずにはいられない。
アルバムに参加のトランペット奏者キャル・マッシーの7歳の娘による美しくも危うい歌声が印象的な「Quiet Dawn」で静かにこのアルバムは幕を閉じる。
オリヴァー・ネルソンがブルースに独自の解釈を付け加えジャズの新たな道を切り開こうとした6編からなるトータル・アルバム。ビル・エヴァンス、ポール・チェンバースというマイルス・デイヴィス『Kind of Blue』の録音メンバーが参加し、同様な"ムード"を漂わせながら聴かせてくれるシンプルかつ繊細なアレンジと管楽器の素晴らしいアンサンブルは作編曲家でもある彼の真骨頂。本作収録の「Stolen Moments」は、僕が1994年に当時所属していたU.F.O.でエイズのチャリティ・アルバム『Red Hot + Cool』でカバーしたことで世界中に我々の名が知られることになった思い出の曲。サーフ・ドキュメンタリー映画『Sprout』のオープニングにも使用され、時代を超えて愛され続ける。葉山にあるお気に入りの『THE FIVE ★BEANS』のフレンチローストで淹れたエスプレッソとともにクールな朝を楽しみたい。
Album. 『THE BLUES AND THE ABSTRACT TRUTH』UCCU-5607