【森pact disc】

01.君を愛す(カルメン・ドラゴン他)

デンマークの童話作家として知られるアンデルセンによって書かれた詩にノルウェーの作曲家であるグリーグが作曲したことで生まれたグリーグの最も有名な歌曲。この曲は、1830年の夏、友人を訪ねたアンデルセンがその友人の姉であるリーボア・フォークトに抱いた恋心を詩につづった一方、作曲家のグリーグも、1864年、21歳の時に恋人であった歌手のニーナと婚約する際、アンデルセンの詩に曲を付け、それがきっかけでこの歌曲「君を愛す」が誕生したという。


02.JAZZ A GO GO(フランス・ギャル)

60年代のフランスにおけるアイドルの代表格にして、フレンチ・ロリータの先駆的な存在であるフランス・ギャル。'63年に16歳でシングル「恋のお返し」でデビューした彼女は、フランスを代表する孤高のアーティストであるセルジュ・ゲンスブールと出会ったことからロリータ路線へ進み、'65年リリースの「夢見るシャンソン人形」がユ-ロヴィジョン音楽祭でグランプリを獲得。これをきっかけに、世界的なアーティストとして、日本でも知られるようになる。ここでは'64年にリリースされた彼女の3枚目のEP『Jazz A Go Go(ジャズ・ア・ゴーゴー)』から、作曲家のアラン・ゴラゲールと父親であるロベール・ギャルのコンビによるジャジィなナンバーが取り上げられており、いわゆるシャンソンの流れを汲むフレンチ・ポップとは異なる音楽性を楽しむことが出来る。なお、彼女の音楽は90年代に入り、ラウンジの流れを汲むクラブ・ミュージックとして世界的に再評価されている。


03.枯葉(エディット・ピアフ他)

'46年の映画『夜の門』でイブ・モンタンが歌って以来、第2次大戦後のシャンソンにおける最高傑作と言われている名曲中の名曲。しかし、この曲はもともとシャンソンとして書かれた曲ではなく、'45年6月にパリのサラ・ベルナール座で上演されたローラン・プチのバレエ『Rendez-Vouz』のために作曲家のジョセフ・コスマが作ったもので、その後、映画『夜の門』の台本を手掛けた詩人のジャック・プレヴェールが歌詞を書き、シャンソンとして知られるようになった。その後、ジョニー・マーサーによって書かれた英詞によって、ジャズのスタンダード・ナンバーとしても歌われるようになり、マイルス・デイヴィスとキャノンボール・アダレイによるアルバム『SOMETHIN' ELSE』での演奏も非常に有名だ。


04.i won't last a day without you(カーペンターズ)

リチャードとカレンの兄弟による、'70年代のアメリカが誇るポップス・デュオ、カーペンターズ。ここでは、彼らの最高傑作の一枚にも挙げられる'72年のアルバム『ASONG FOR YOU』より、ソフト・ロック・グループ、ロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズのロジャー・ニコルスと、映画『ファントム・オブ・パラダイス』に俳優としても出演しているポール・ウィリアムスの2人からなるソングライター・チームによる素晴らしいバラード・ナンバーが取り上げられている(英題「I Won't Last A Day Without You」)。ヴォーカルのカレンが'83年に亡くなり、グループは解散したが、その普遍的な音楽性からたびたび再評価がなされ、'95年、日本ではTVドラマ『未成年』の主題歌に「青春の輝き」と「トップ・オブ・ザ・ワールド」が起用されたことから、アルバム「青春の輝き~ベスト・オブ・カーペンターズ」は260万枚以上のセールスを記録する大ヒットとなった。


05.黒いオルフェ(アントニオ・カルロス・ジョビン他)

'56年、ボサノヴァ誕生を告げた名曲「想いあふれて」を手掛ける一方で、アントニオ・カルロス・ジョビンは作詞家のヴィニシウス・ヂ・モラエスと共に舞台劇「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」を作り上げた。この舞台劇はオルフェウスとユリディスの物語として有名なギリシャ悲劇を、現代のカーニヴァルに舞台を移して作られたものだったが、'57年にはタイトルを『黒いオルフェ』に変え、マルセル・カミュ監督のもと、フランス、イタリア、ブラジルの共同製作で映画化されることとなった。そして、この作品は、後に数々の賞を受賞した名画として知られるようになるが、それと同時に誕生したばかりのボサノヴァを国際的に広めた作品でもあった。ここではルイス・ボンファによる作曲、アントニオ・マリアによる作詞の「カーニヴァルの朝(Manha de Carnaval)」が取り上げられているが、フランソワ・レナによって仏語訳詞が付けられ、「オルフェの歌(La Chanson D'Orphee)」としても知られている。


06.mr. wonderfull(ペギー・リー他)

“世界で最も偉大なエンターテイナー”の形容で知られるサミー・デイヴィスJr.がブロードウェイ・デビューを果たした大ヒット・ミュージカル「ミスター・ワンダフル」('56年)で歌った1曲。ソングライターはミュージカル「The BodyBeautiful」ほかの作品で知られる作曲家のジェリー・ブルック、そして、ミュージカル「Oh,What It Seemed to Be」でヒットを飛ばした作詞/作曲曲家のジョージ・デヴィッド・ワイス、そして、ミュージカル「ジーグフェルド・フォリーズ」で知られる作詞家のラリー(ローレンス)ホロフセナーの3人による。


07.玉葱のハッピーソング
原題:the onion song(マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル)


デトロイトのソウル・レーベル、モータウンの看板アーティストにして、アルバム『What's Going On』をはじめ、多くの名作を生みだしたソウル・シンガー、マーヴィン・ゲイ。彼はかつて多くの女性シンガーとデュエットを行ってきたが、その中でも最高の女性シンガーとされるタミー・テレルとの出会いから生まれたシングル「Ain't No Mountain High Enough」('67年)以降、彼らはその親密なムードゆえ恋人同士なのではと噂されるほどに素晴らしい数々の名演を残している。ここでは'69年にリリースされたマーヴィン・ゲイ&タミー・テレル名義の3rdアルバム『EASY』より、後にブラック・コンテンポラリー・グループとして知られるアシュフォード&シンプソンによるアップリフティングなリズム&ブルース・ナンバーが取り上げられている。なお、この曲は脳腫瘍で病床にあったタミーが気力をふりしぼって録音したもので、彼らの最後のシングルでもある。


08.starting over(ジョン・レノン)

'75年のアルバム『ROCK & ROLL』発表後、デヴィッド・ボウイのアルバム『YOUNGAMERICAN』において「FAME」を共作したのち、主夫業/育児に専念するために音楽活動を休止していたジョン・レノンが、5年振りにアルバム『DOUBLE FANTASY』をリリース。'80年夏にこのアルバムのレコーディングを行った彼はその冒頭を飾るこの曲と共に新たなるスタートを切るはずであったが、皮肉にも、このアルバムがリリースされた翌月の12月8日、住んでいたニューヨークのダコタ・アパート前で狂信的なファンであったマーク・デヴィッド・チャップマンによって殺害され、世界中のファンを大いに悲しませた。


09.子守歌

ショパン作の「華麗なる円舞曲 イ短調 作品34の2」の一節を、椎名林檎が抜き出してリピートし、そこに彼女のオリジナルの詞とメロディを付けたもの。ちなみにショパンはポーランドを代表する19世紀の作曲家にして、初期ロマン派を代表するピアノの詩人であるが、その短い生涯において21曲のワルツを作曲しており、この曲はその中でも、最も舞踏曲らしからぬ物憂げな曲として知られている。