佐藤 千亜妃
2nd Full Album
2021年9月15日(水)発売
通常盤(CDのみ):
UPCH-20592 /¥3,300(tax
in)
初回限定盤(CD + Blu-ray):
UPCH-29408 / ¥6,380(tax in)
※映像のみプレイパス(R)対応
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初回限定盤(CD + Blu-ray)
UPCH-29408 / ¥6,380(tax in)
通常盤(CDのみ)
UPCH-20592 /¥3,300(tax in)
CD収録楽曲
Who Am I
rainy rainy rainy blues
声
カタワレ(フジテレビ系4月期木曜劇場『レンアイ漫画家』主題歌)
甘い煙
転がるビー玉(「NYLON JAPAN」創刊15周年プロジェクト映画『転がるビー玉』主題歌)
リナリア
棺
Love her...
愛が通り過ぎて
ランドマーク
橙ラプソディ
Blu-ray Disc収録楽曲(初回限定盤のみ)
PLANET
Summer Gate
Lovin' You
You Make Me Happy
リナリア
橙ラプソディー
転がるビー玉
面
Spangle
lak
空から落ちる星のように
大キライ
キスをする
春と修羅
夏の夜の街
「KOE」
アルバム解説&全曲解説
Text by 兵庫慎司
本人と共同でプロデュースを手掛けたのは河野圭。ギターは名越由貴夫、岡田拓郎、真壁陽平、井上銘。ベースは新井和輝、越智俊介、山口寛雄、須藤優、あきらかにあきら。ドラムは石若駿、mabanua。内田麒麟ストリングスが5曲で参加。ホーンが加わっている曲もある上に、気鋭のギタリスト、Ichikaが、ギターでもベースでもなくハープを弾いている曲まである。それらのミュージシャンが参加せず、トラック・メーカーがひとりで仕上げたのも2曲入っている。と、「よくここまで集めたなあ」とか言いたくなるほど豪華な布陣が集結して作られたのが、佐藤千亜妃、ソロ・アーティストとしては3作目(ミニアルバムを含めないと2作目)となる本作『KOE』だが、1曲目の「Who
Am
I」を聴けば、そのようなメンバーに参加を要請したのが必然だったことが、はっきりとわかるはずだ。歌が描こうとしている世界とバンドが鳴らしている世界が完全にシンクロしている。あるいは、歌で表そうとしていることに、演奏がブーストをかけている。そんな1曲目から伝わる「このアルバム、ただごとじゃないかも」という予感は、ラストの12曲目「橙ラプソディー」まで、途切れずに続いていく。
ラブソングの体裁をとっている曲が多いが……というか、実際にラブソングだが、定型のラブソングでは到底表せないものが、どの曲でも描かれている。バンド編成の曲と打ち込みの曲が違うのはまだしも、同じ編成でやっている曲でもここまで違うか、と言いたくなるくらい、1曲1曲のサウンド・プロダクトはバラバラだが、トータルでの統一感よりも優先すべきものがあるからそうしたことが、それぞれの曲を聴けばわかる。
きのこ帝国でのバンド活動。その後期からスタートしたソロ・アーティストしての活動。他のアーティストへの楽曲提供やプロデュース。映画の劇伴。など、決して長くはない年月の間に、さまざまな方向で才能を発揮してきた佐藤千亜妃が、方向をしぼったりコンセプトを立てたりすることよりも「やれることは全部やる」「持っているものはすべて注ぎ込む」というやりかたで作り上げたのが本作『KOE』だと思う。
どの曲にも、いきなり耳をえぐられるような一行がある。どの曲にも、ついつられて口ずさみそうなメロディがある。どの曲にも、ヘッドホンで音をでかくして細部まで味わいたくなる演奏がある。佐藤千亜妃はここまで来た。この後は、どっちに進んだっていいし、どっちにだって進めるだろう。
Guitar 名越由貴夫
Bass 新井和輝
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Arrangement&Programming 河野圭
「去年、人の生き死にに関わるショッキングなニュースがあり、そんな時どうしても書かずにはいられなかった曲です」(公式ツイッターより)という動機で書かれた、このアルバムのリード曲。その言葉どおりの赤裸々な歌詞、感情の揺れをそのままトレースしたようなメロディを素の声で歌うボーカル、それらの感覚を楽器に置き換えるとこうなる、というくらい雄弁なバンド・サウンド。特に後半のカオスな展開は圧倒的。この曲に限らず、バンドのようにスタジオでセッションを重ねてアレンジを練り上げた曲が、このアルバムにおいては、多いという。
Guitar 岡田拓郎
Bass 越智俊介
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Arrangement&Programming 河野圭
(このアルバムの中では)軽やかで淡々としたトーンのミドル・チューン。「手のひらの切符 擦り切れて何も見えない」「瞬きの間に日々は色褪せて 辻褄合わせ 飽き飽きして逃げたくなる」が、「かたちないもの たぐり寄せて生きる」「傘を無くして 雨に濡れても 怖がらないで 光の方へ走れ」という出口に辿り着く。「言葉ひとつで伝わればいいのに/言葉ひとつで救えればいいのに」というラインに、「そうならない」「でもそうしたい」という切実な思いが表れている。曲調は、90年代後期の日本のロック・バンドのようなテイストも感じられるし、「金木犀の夜」あたりの、きのこ帝国の楽曲からの地続き感もあるが、説明的な親切さは皆無なのに何を表したいかが伝わる感覚は、今の佐藤千亜妃ならでは。
Guitar 名越由貴夫
Bass 新井和輝
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Strings 内田麒麟ストリングス
Arrangement&Programming 河野圭
「ため息ひとつつくたびに風が拭った 信号が点滅しては歩けと急かす」という歌い出しの時点で「うわ、名曲だこれ」とわかる、2021年3月3日に先行でデジタル・リリースされた、アルバムのタイトル曲。本人によると、「声」というテーマでアルバムを作りたい、というのは前作『PLANET』よりも前からあったプランだそうで、きこえる声ときこえない声の二種類があるとしたら、後者、つまり言葉にならない思いを表現したい、という意志を込めたのがこの曲だと言える。きのこ帝国の「クロノスタシス」がそうであるように、現在に留まらず、今後も長く聴かれ、何度もスポットが当たる存在になるポテンシャルを持つ曲。
Guitar 真壁陽平
Bass 山口寛雄
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Strings 内田麒麟ストリングス
Arrangement&Programming 河野圭
2021年4月クールのフジテレビ系木曜ドラマ『レンアイ漫画家』の主題歌として書き下ろされ、2021年4月8日にデジタル・リリースされた先行シングル。他のアーティストに楽曲提供してもハマりそうな、ドラマチックで陽性なポップ・チューンだし、かけがえのない存在を出会った瞬間の喜びを綴った歌詞も、ドラマに沿うように描かれているが、ひとことひとこと、一行一行に、とても切実な思いが込められた曲にもなっている。なお、曲構成的にも、歌詞で表されていること的にも、2コーラス終わったところで現れるブロックが、この曲のキモ。
Guitar 井上銘
Bass 山口寛雄
Drums mabanua
Trumpet 織田祐亮
Tenor Sax 永田こーせー
Trombone 前田大輔
Arrangement&Programming 河野圭
みんなで演奏してアレンジのディティールを詰めるのではなく、それぞれ順番にスタジオに来てもらってパートごとに録っていった、という、他の曲と違う方法で仕上げられた曲。前作の『PLANET』収録の「Lovin’ You」や、きのこ帝国の「LAST DANCE」を思い出させるような、R&Bテイストの曲だが、タイトルどおり、どの楽器のどの音もアシッドな響きを放っている。特に、音を厚くするのとは反対の効き方をしている永田こーせー&前田大輔のホーンと、頭から最後まで予測不能な音しか出さない井上銘のギターが聴きもの。歌詞は本人曰く「このアルバムではいちばん重くないラブソング」だが、最後は、さすが佐藤千亜妃と言いたくなる終わり方。
Produced by 永澤和真 (agehasprings)
Arrangement,Programming
&
All instruments 永澤和真 (agehasprings)
Recorded & Mixed by 森真樹 (agehasprings)
Recorded & Mixed at Studio Device
Vocal contracted by 市川洋介 (onetrap)
Directed & Organized
by 小林健 (onetrap) , 市川洋介 (onetrap)
雑誌NYLON JAPANの創刊15周年プロジェクトとして制作され、2020年2月7日に公開になった映画『転がるビー玉』。その劇伴を佐藤千亜妃が担当し、主題歌も書き下ろしたのが、この曲である。つまり、このアルバムを河野圭と作ることが決まる前の時期の曲で、この曲のみトラックはagehaspringsの永澤和真が手掛けている。「3人(吉川愛、荻原みのり、今泉佑唯が演じた主人公)の感情に音楽で寄り添うことが出来たことを、とても光栄に思います」というコメントを本人が出していたとおり、映画にきれいにリンクしつつ、大事なことをできる限りシンプルな言葉で綴ったものになっている。
Guitar 真壁陽平
Bass 須藤優
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Strings 内田麒麟ストリングス
Arrangement&Programming 河野圭
映画やドラマ等のタイアップありきの曲ではないが、ポップ・ミュージックとしての強度を、本作の中で最も持っているのは、この曲かもしれない。Aメロ→Bメロとジワジワと温度を上げ、サビでピークに達した上に大サビでさらにインパクトを与えるメロディも、平易だが凡庸さとは対極にある歌詞も、それを形にする佐藤千亜妃のまっすぐな歌い方も、中高生でも20代でも40代でももっと上でもアジャストできるような、聴き手を選ばない広さを孕んでいる。ピアノとストリングス主体のアレンジも、そんな歌を、ドラマチックにひき立てている。
Guitar 岡田拓郎
Bass 越智俊介
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Strings 内田麒麟ストリングス
Arrangement&Programming 河野圭
佐藤千亜妃が、正面からラブソングを書くとこうなります、という好例のような曲。恋愛の場合も友情や肉親への愛情の場合も含めて、誰かを好きになると、そのことと死をセットにして考えずにはいられない、それが自然である、という佐藤千亜妃の感性が、このアルバムの中で最も赤裸々に表れている曲、とも言える。「埋めあった喪失を 互いの棺に持ってゆくまで」「私を傷つけることが出来るのは この世界でたったひとり、あなただけ」など、ハッとさせられるフレーズ、多数。歌詞やメロディが表しているものと寸分もズレがない鳴り方をしているサウンドも、耳に刺さる。
Arrangement & Programming 河野圭
打ち込みのトラックに乗って歌われる、密室的でパーソナルな曲。ソロを始めた頃の楽曲に近い手法だし、このような方向の曲も佐藤千亜妃が得意であることは言うまでもないが、ただし、そのトラックが、聴けば聴くほど「どうかしてる」作りになっている。微妙にジャストよりも前に行ったり後ろに行ったりのタイミングで打ち込まれているキックと、ボリュームも音質もフラフラと変わり続けるハイハットが、特に耳にひっかかる。今のアメリカのヒップホップのトラックに、近いと言えば近い。佐藤千亜妃が歌入れまでして、いったん完成したトラックに、あとから河野圭が手を加えて、そのようなものになったという。
Bass 山口寛雄
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Harp Ichika Nito
Strings 内田麒麟ストリングス
Arrangement&Programming 河野圭
「思い出せる」と「この夢を見ていたい」以外は、すべて過去形で綴られる、本作において「棺」を双璧を成すラブソング。「死んだ星を見ていることに 気付きもしないで救われていた」という最初の一行から、「私はあなたに片想いだった」のリフレインで終わるラストまで、「愛が通り過ぎて」いくさまを微分し続けるような、詩的だがシビアな言葉がメロディに乗る。イントロから曲の中核を担うストリングス、ギターの代わりに奏でられるハープ(近年注目が集まっているギタリスト、ichikaが弾いている)、河野圭によるピアノ、その上モノ三者の絡みも聴きどころ。
Guitar 真壁陽平
Bass 須藤優
Drums 石若駿
Piano 河野圭
Arrangement&Programming 河野圭
曲前半の「待ってるね」が後半で「待ってたね」になり、「新しい人がきっと君のランドマーク」と「君は今もあたしのランドマーク」が対になって終わる、恋の終わりを描いたラブソング。相手としては終わっているのに自分は終わりきれないラブソング、といった方がより正確か。このあたりの、割り切れない、収まらない感情を描く手つきの精緻さも佐藤千亜妃の武器のひとつで、この曲などはちょっと怖さまで感じさせる。真壁陽平による、LとRで1本ずつ弾き分けられたギター、須藤優&石若駿による大きなタイム感のリズムなど、バンド・サウンドならではのダイナミズムが活きた楽曲でもある。
Guitar 真壁陽平
Bass あきらかにあきら
Drums 石若駿
Keyboard 河野圭
Trombone 大田垣 “OTG” 正信
Arrangement&Programming 河野圭
2020年4月、コロナ禍突入直後に佐藤千亜妃がツイッターにアップした弾き語りの音源&映像に、仲間のミュージシャンたちがリモートで他のパートを重ねていくさまが話題になった曲を、改めて本作の布陣でレコーディング。本作において、「カタワレ」は出会えたことの喜びがスパークしている曲なのに対し、この曲では、終わりの光景が描かれている。「面白くないテレビの話 いつだってあなたを飽きさせてばかり」のような具体的で身近なラインと、「心臓の音を撫でるように 風が吹き始めて少し震えてた」のような詩的なラインが同居しているのも特徴的。なお、この曲のみベースで参加しているあきらかにあきら(THE ORAL CIGARETTES)は、前述のリモート・バージョンにも参加していた。
佐藤 千亜妃
“KOE” Release Tour 2021
「かたちないもの」
・11/3(祝・水) 福岡BEAT STATION
・11/4(木) 名古屋ダイヤモンドホール
・11/12(金) 仙台Rensa
・11/18(木) ZeppHANEDA
・11/27(土) Zepp NAMBA
comment
様々な要素が織り込まれた多彩な曲の数々。
“アーティスト/佐藤千亜妃”のいろいろな面を感じられた
アルバムでした。最高です...。
曲終わりの余韻と、次曲への期待感...なんとも言えない「あの数秒」
さえも愛おしく感じる。
何より、耳に触れた瞬間に心を掴んでしまう、「声」が好きです。
過去現在未来永劫。
個人的イチオシは『橙ラプソディー』。
音源化をずっと楽しみにしてました。
「KOE」リリースおめでとうございます!
もうすでに次の作品が楽しみです。
入野自由(俳優)
さとちさん(すみません勝手にこう呼んでいるんです、気持ち悪いですよね)の声が纏っている湿度と寂しさ、時に垣間見る掠れた怒りのような力強さ、そこから見られる景色が、きのこ帝国時代からずっと好きなんです。そんな私の「ずっと好き」を確固たるものに変えてくれたのが今作だって、胸を張って言いたい。だって『KOE』ですよ。しかも『KOE』というアルバムタイトルの1曲目(『Who Am I』)がきちんとアカペラ(まさに声!)から始まるって、こんな直球勝負なかなかできないでしょう?
乾いた季節に降る小雨のように、なんらかの恵みのようにも、なんらかの悲しみのようにも感じられる12曲。おすすめは『rainy rainy rainy blues』と『甘い煙』と『橙ラプソディー』と、あー、ホラ、やっぱり全部じゃん。最高のアルバムをありがとうございます。
カツセマサヒコ(ライター/小説家)
言葉という土壌に花を咲かせるみたいな声で、聴いているのがメロディなのか歌詞なのかわからなくなっていく。この二つが繋ぎ止められて一つの命になるみたいに歌うのが佐藤さんなんだろうなと思う。
「埋めあった喪失を互いの棺に入れて持っていくまで」
「棺」の歌詞がとても好きです。自分自身が「喪失」になるのが死であって、その棺の中に、生きていた時の「喪失」を入れて持っていこうと、いうのが、喪失の空洞をむしろ鮮やかに見せていて。
最果タヒ(詩人)
千亜妃、アルバムリリースおめでとう! 芯の通った逞しさ、清々しさと女性らしいしなやかさのバランスがとても絶妙で聴き終わった後、重厚感のある優しさに包まれてとても良い気分でした。 どの曲も"あ、これ私のことだ"と思わせてくれる、まるで自分のことなんでも知ってる親友のようなアルバム。私のお気に入りは"甘い煙"です。 毎日朝方まで音楽に向き合って制作してる姿にすごく刺激を受けています。千亜妃の音楽への愛情と情熱が細部まで感じられる"KOE"がたくさんの人の心に届きますように。 広島の対バンの時は美味しいもの一緒に食べようね!
HARUNA(SCANDAL)