Chiaki Sato 1st Album 「PLANET」 佐藤千亜妃 1st Album PLANET 2019.11.13 release

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佐藤千亜妃 1st Album「PLANET」 2019.11.13 release

・CD+DVD:UPCH-20537 / ¥3,800(+tax)

・CD:UPCH-20538 / ¥2,800(+tax)

佐藤千亜妃  Chiaki Sato

PLANET [DVD付盤]

CD+DVD:UPCH-20537

佐藤千亜妃  Chiaki Sato

PLANET [CD]

CD:UPCH-20538

・CD+DVD:UPCH-20537 / ¥3,800(+tax)

・CD:UPCH-20538 / ¥2,800(+tax)

収録楽曲

  • 01. STAR
  • 02. FAKE/romance
  • 03. 空から落ちる星のように
  • 04. You Make Me Happy
  • 05. 大キライ (映画「CAST:(キャスト)」主題歌)
  • 06. lak
  • 07. Summer Gate
  • 08. Lovin' You (カネボウ化粧品「ALLIE」 Web Movieオリジナルソング)
  • 09. Spangle
  • 10. 面
  • 11. キスをする
  • 12. PLANET

MOVIE

  • 「空から落ちる星のように」

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「PLANET」

オフィシャルインタビュー&
楽曲解説

Text:三宅正一

佐藤千亜妃  Chiaki Sato

■ソロ1stアルバムだからこそ表現できる音楽的な自由度と振れ幅、そしてメロディにおいても歌詞においてもソングライターとしてのフレッシュかつピュアな魅力に満ちた作品だと思います。

「本当に今やりたいことに全部手を出したらこうなった、というピュアなアルバムだと自分でも思います。そういう意味ではある種のアウトオブコントロール感のあるアルバムでもあると思っていて。こういうアルバムはもう狙っても作れないし、その感じを楽しんで聴いてもらえたらいいなと思いますね。何かに縛られて歌っているわけじゃないし、やりたいことを自由に表現できた。すごくわがままなアルバムになったと思います」

■1曲目が本作で最もストレートなバンドサウンドが鳴っている──もっと言えば「きのこ帝国から続いているもの」を感じさせる“STAR”を1曲目にもってきてるのもあえてだろうし。

「そう、あえてですね。この曲をこのアルバムに入れると決まったときから1曲目にしたいと思ってました。きのこ帝国の活動休止が発表されたのが今年の5月で。そこに対する自分の気持ちを表明しないと私自身が気持ち悪くなるなと思ったんです。それは音楽を辞めるメンバー(ベースの谷口滋昭が家業を継ぐために脱退)に対する気持ちでもあって。そういう等身大の思いを込めて歌詞を書いたんですけど、結果的にいろんな人の背中を押せるような曲になったなと自分でも思うんですね」

■J-POPアレンジのど真ん中をいくバラードの“空から落ちる星のように”、艷ややかなジャズポップの“You Make Me Happy”、現行のヒップホップやクラブミュージックを昇華したポップミュージック像をまとった“FAKE/romance”や“Lovin‘ You”、“PLANET”などがアルバムを彩っている中で、“STAR”を1曲目に据えること自体がこのアルバムにとってのカウンターでもあると思うし。

「そうそう。『ソロはバラードとかチルでイマドキっぽいオシャレな感じでやっていくんでしょ? きのこ帝国とは全然違うんでしょ?』って思っている人も少なくないと思うし、そこにカウンターを当てたいという意識はありますね」

■1st E.P.『SickSickSickSick』をリリースした昨年7月の時点ではソロ活動の比重はどれくらいものとして考えていたんですか?

当時はきのこ帝国と同じくらいの比重でソロもやっていきたいなと思ってました。ソロでは最終的にはバラーであったりポップスであったり、このアルバムで表現しているような振り幅を形にできたらいいなと思っていて。きのこ帝国ではロックバンドのフォーマットの中でやっていたから、レーベルの人とも『きのこ帝国ではできないような打ち込みのサウンドをメインにしたE.P.を作ろう』って話してリリースしたのが『SickSickSickSick』だったんです。そこから2019年になって4月に“Lovin’ You”を配信リリースしたときは“Summer Gate”(『SickSickSickSick』のリードトラック)の系譜というか、ソロではやっぱり打ち込み主体でやっていくんだろうなと誰もが思ったと思うんですよ。そんな中、次に“大キライ”を配信するという(笑)。その流れも私の中でカウンターでしたね。リスナーの耳をもう一度こじ開けるようなことがしたくて」

■佐藤さんの中でソロ活動はきのこ帝国と地続きのものという感覚もあるんじゃないですか?

「それはすごくあって。きのこ帝国が活動休止する理由として、メンバーが一人脱退するということが明確にあって。それは自分の中ではすごく大きいんです。去年の末くらいまでは『このタイミングで休憩して、1、2年後に再開できるタイミングがあったらまたやろう』という感じだったんですけど、年明けになって脱退を表明したメンバーがいて、しばらくきのこ帝国はやらないという選択をバンドでしたので。それまではきのこ帝国というホームがあるうえでバンドとソロを二極化させて、ドロドロした部分や刹那的な部分はきのこ帝国で表現して、ソロでは恋の歌や気持ちよく聴ける曲を投げかけていければいいかなとどこかで思っていたんですよ。でも、きのこ帝国の活動休止を発表するとなり本格的にソロ活動1本になるんだという意識になってから自分で物足りなさを感じるようになって」

■たとえばそれはソロのラブソングであっても、きのこ帝国で表現していたようなドロドロした部分や刹那的な部分を表現できるんじゃないか?という。

「まさにそうで。聴き心地の良い曲だけを作ってライブをやっても自分の全部は表現しきれないという気持ちになってきて。皮膚の外側だけを見せていて、内側を表現しようとしていない自分に気づき始めちゃったんですよね。皮膚の内側をソロで表現できないんだったら、まずきのこ帝国を超えることは無理だし──もちろん、きのこ帝国はメンバーの4人の化学反応があることは大前提としても──バンドのほうがソロよりもコアなパーソナルを表現できていたような気がしてきて。それで、今年の夏くらいからそういう意識をフェスも含めたライブでアウトプットしようと思ったんです。そこからまたすごく変わりましたね」

■その意識の変化があったのとなかったのでは、このアルバムの歌はだいぶ異なる筆致になっていたでしょうね。

「そう思います。バンドからソロになった人って『これってバンドでもやれるじゃん!』って、まるでタブーのように思われるんですけど、私は全然そうは思ってなくて。たとえば“STAR”が『この曲はきのこ帝国みたいだね』って言われてもいいと思ってるんです。むしろ同じ人間が本気で曲を作ったら、最終的な出口が近いものになるのってすごく自然なことじゃないかなって。私はきのこ帝国もめちゃめちゃ本気でやっていたしめちゃめちゃ好きなサウンドだから、ソロでも近い表現になるのは至極真っ当というか。無理に別のベクトルにしなくてもいいと今は思ってる。しかも解散したわけではなく、あくまで休止だから今分ける必要もないかなと思っていて。だから、ソロはいくつもある自分の表現性が一つの人格に統合されていく感覚に近いと思うんですよね。でも、このアルバムはそれが全部入ってるとはまだ思ってなくて。そのことに気づき始めながら進んでいる音楽を今の段階で作り上げたという感じなので、2枚目のソロアルバムは自覚的に進化した音楽になるという構想がすでにあるんです」

■このアルバムを作ったことで、この先にワクワクしている。

「そうですね。このアルバムを作ったことで自分を知れた感覚が強くあって。そういう意味でもすごく大事な一歩目だと思ってます。自分を理解するために必要なアルバムを作れたなって」

■アルバムを作りながら重要な気づきがあった。

「すごくありました。夏あたりから少しずつ感じるようになったんですけど、打ち込みや同期のサウンドに乗っかって歌うというよりも、生のアンサンブルを歌のグルーヴで引っ張っていくことが私のやりたいことなんだって気づいたんです。どんなにサウンドが派手でも歌にグルーヴがなかったらその音楽を私は全然好きじゃないなって。シンプルな編成で音数が少なくても歌い方のニュアンス一つでグルーヴさせられるアーティストがすごく好きだから。自分もどちらかと言うと歌でグルーヴを出せるタイプだと思っていて。それこそ弾き語りではそういう意識で歌ってるんですけど、バンド編成でも自分の歌のグルーヴで引っ張るという意識を今後はさらに押し出して表現できたらいいなと思ってます。そういう意味でもリリース後のライブが本当に楽しみだし、アルバムに付属しているスタジオライブ映像(DVD付き盤に収録)はすごくいいテイクが撮れたのでぜひ観てもらいたいです」

楽曲解説

この曲はシゲ(谷口滋昭)に向けて書いた部分もあって。いろんな事情で音楽活動を辞める同世代の人が増えてきている中で、でも、それってべつに夢に破れたわけじゃなくて、新しい人生のフェイズに入っただけだと私は思っていて。その新しい人生の中で──たとえスーパースターではなくても小さなスターになることはできるし、そこで誰かを照らせられたらその人は星のような存在だなと思うんですよ。それは自分自身にも言えることで。自分でも誰かを照らせる歌を歌えるならそれは本望だなって。デモを作ってるときに「これをフォーリミ(04 Limited Sazabys)に演奏してもらったら絶対にハマる!」と思いついたフラッシュアイデアをスタッフに提案して、実際にオファーしたら快諾してもらえました。GENくんにはコーラスもやってもらってすごくうれしかったです。

この曲のアレンジを担当してくれた永澤和真さん(aspr)は、アルバムに参加してくれたアレンジャーの中で最年少の23歳なんです。弾き語りのようにエレキギターでジャカジャカ弾いたデモを彼に投げたらこのアレンジが返ってきて天才だなと思いましたね。ビート感を前に出しつつ、私の歌のグルーヴが際立つようなアレンジにしてくれました。ミックスではLRの振り方にかなりこだわりましたね。歌詞ではかなり言葉遊びもしていて面白い曲になったと思います。永澤さんとは攻めの1曲を作るときにまたご一緒したいですね。

私はもともとバラードを歌いたくて中高生のときに地元の岩手の路上で弾き語りをするようになったんですね。でも、上京後、気づけばロックバンドをやっている期間が長くなって。ふと、「声質的にはバラードがハマると自覚しているのになんで今までバラードをあまり歌ってこなかったんだろう?」って考えたんです。そこで出た答えが、「バラードを書けないだけじゃん!」ということで(笑)。それが悔しくて。そこからバラードを作る日々が始まって、去年の年末から今年の初頭にかけて4、5曲くらいバラードのデモを作ったんです。そのデモを聴いてくれた人たちからのレスポンスが一番多かったのが「空から落ちる星のように」だったんですね。自分でもどバラードのいい曲を書けた手応えがあったのでストリングスを入れた王道のアレンジで勝負しようと思いました。

恋愛をするうえで女性って意外と好きな人や気になる男性の前では最初から100%の自分を見せてるわけじゃないなと思って。最初は自分のいいところだけをプレゼンするから、お互いが本気になっていくごとに取り繕っていた部分がどんどん剥がれていってコアの部分でやり取りするようになる。この曲はそういうことを大人っぽく書けたらなと思って作りました。アレンジは「絶対に管楽器を入れたサウンドにしてほしい」とリクエストをして、実際に生音で録れたのもうれしかったです。「管楽器は派手に聴こえるけど、ベースはすごくうごめいてる感じにしてほしい」とお願いしたらジャジーでグルーヴィーなサウンドになりました。

私も出演したWEB短編映画『CAST:(キャスト)』の主題歌として書き下ろした曲ですね。劇中では弾き語りで歌っているシーンもあって、音源のロックテイストな感じとは違うので聴き比べるのも面白いと思います。アレンジが来たときはビックリしました。サビの感じがちょっとやりすぎかな?と思ったんですけど、何回も聴いてるうちにこういう飛び道具的な要素を残したほうが面白いなと思って。それで音圧的にもあえてアクの強さを残しました。歌詞としては本来の私はこういう精神性で恋愛をしないからちょっと恥ずかしい気持ちになりました(笑)。でも、ところどころにリアルに感情移入できるポイントがあるし、共感できる女性はきっと多いと思います。

この曲、すごく好きなんです。アコギの弾き語り的な曲のデモをアレンジしたんですけど、最初に「音数を少なくしてほしいです」とリクエストをして。アレンジを手がけてくれたDaijiro(Nakagawa)くんのギターがすごくよくて、アレンジを進めていく中で「(ドラムのばちに)ブラシが入ったらよさそうだよね?」という話になり、さらに「それならコントラバスも入れよう」となってこういうオーガニックなサウンドになりました。フィールドレコーディング的に入れた波の音もいいアクセントになっていると思います。じつは「テラスハウス ALOHA STATE」に感化されて作った曲でもあります。だからぜひ「テラハ」で流してもらいたいです(笑)。

じつはこの曲は意識して「Just The Two Of Us」(オリジナルはグローヴァー・ワシントン・ジュニアの楽曲でさまざまなアーティストにカバーされている名曲)と同じコード進行で作ったんです。このコード進行でどのメロディがサビかわからないような構成でもあるからループして聴けるのがいいなと思います。そういう曲はきのこ帝国ではあまり作ってこなかったのでソロでチャレンジできたのはよかったですね。近い表現をきのこ帝国でやると“クロノスタシス”になって、打ち込みで表現するとこの曲になるという対比を見せられたかなと思います。あと、去年リリースした曲ですけど、今年の夏も聴いてくれる人が多くて、ちょっとサマークラシックな存在になっているのがすごくうれしいです。

すごく思い入れのある曲ですね。短い期間の中でTondenhey(踊Foot Works)にアレンジしてもらったんですけど、よくこれだけクオリティの高い曲を私たちは作れたなと思います。マリンバ然り、彼はチョイスする上モノのセンスが本当に素晴らしいです。「なんで私の好きな音を知ってるの?」って思うくらい。終盤のギターソロも最初は「ちょっとトゥーマッチかな?」と思ったんですけど、「いや、おもいきって残してみよう」となった結果、リスナーの反応もすごくよくてうれしかったです。

この曲もTondenheyによるアレンジで、「こういう感じにしてほしいです」というリファレンスなしで「自由に解釈してください」と言って完成した曲です。イントロのフレーズがめちゃめちゃ気持ちいいんですよね。打ち込みで管楽器の音が入ってますけど、生音で録ったら出ない絶妙なニュアンスが出ていると思います。あらためて思うのは、Tondenheyは音楽的なライブラリーが幅広いけれど、チョイスする音の質感にアナログなよさがあるということ。踊Foot Worksの曲にも感じることですが、それがサウンドの温かみにつながっている。温度感がいい意味で若者っぽくないんですよね。そこが彼の個性であり武器だと思います。

デモを作ったのはけっこう前で、一昨年くらいかな? アルバムの中で一番人間のダークなところを突いているシニカルな曲だと思います。でも、この私はこの曲がすごく好きで。今後、こういうタイプの曲に比重を置いているアルバムを作ってもいいかなと思ってます。歌詞はInstagramやSNSを見ていて感じたことを書きました。インスタ映えを楽しんだりするのは全肯定なんですけど、その中で誰かにマウントを取るためにきれいな瞬間を切り取った世界を作っている人がいるのは悲しいなと思って。今の時代は人付き合いが難しくなっているし、「パーソナリティの内側と外側がどんどん乖離しているんじゃないか?」という危惧を歌ってます。

これはかなり古い曲で、作ったのは2016年です。2011年に東日本大震災が発生した直後、ライフラインが整っていない中で音楽活動をするのはすごく偽善っぽいなと思ってしまった時期があって。地元が東北というのもあったし、「音楽をやる意味ってなんだろう?」「自分の音楽は誰かを救えているんだろうか?」って自問自答を繰り返して、しばらく精神的に落ち込んでいたんです。震災が少しずつ風化されていく中で音楽活動をする罪悪感もずっと覚えていて。そこから時間が流れて、宮城県石巻で開催された「Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016」にBank Bandのゲストボーカリストとして出演が決まったときにこの曲を書いたんです。「震災で亡くなった人に対して自分はどういう曲を書けるんろう?」と思ったときに〈キスをする〉という言葉が出てきて。「亡くなった人に対して遺された人がそういう気持ちでいられることが救いになるんじゃないか?」と思ったんです。この曲を書けたことで罪悪感がなくなり、音楽を前向きなものとして捉えることができるようになったのですごく思い入れがあります。

Tondenheyからアレンジが来たときは正直、想像と全然違ってちょっと戸惑ったんです。それで一旦修正依頼をしたんですけど、最初に来たアレンジを何度も聴いてるうちに「あれ? これでいいのかも」と思うようになって。「PLANET」という曲名は当初は見たこともない、つかみようのないものの概念的な意味合いで付けたタイトルなんですね。でも、Tondenheyは今ここで立っている場所、つまり地球の日常をイメージしたんだなと思って。最初に子どもの声が入っていたり、「私たちにとって一番近いPLANETは地球でしょ?」というメッセージをアレンジから感じたんです。そうしたらだんだん「これ以外のアレンジはありえないかも」って思うようになって。アルバムタイトルの『PLANET』には人と人が出会ったり離れたりするのは、惑星がグルグル回って交差したり離れたりする動きのようだなというイメージを重ねたんですけど、結果的に「この12曲の物語はすべて地球上で起きてる」というアルバムの全体像が見えてくる不思議な曲になりました。