Official Interview

『30年も経ったか、という気分です。ただ僕は作詞をして、曲を作って、アレンジして、それをレコーディングして歌って、コーラスをやってという、全作業を自分でやっているものですから、1年の半年以上はそれで終わってしまうんです。それをずっとやってきたら30年経っていた、という。「どうりで最近目の下がゆるむな、と思ったら30年経ったのか」という感じです（笑）。でも長いこと活動させていただくということは稀有な事ですし、皆さんの応援があってのことですから、非常にありがたく思っております。』

『カバー・アルバム『Listen To The Music』というシリーズでこれまでに「１」、「２」、「３」と出してきて、今回はその総集編です。本当はカバーよりも本人の歌っているバージョンが一番良いとは思いますが、このカバー・アルバムを作るときはちょっと角度が違いまして。僕自身の「音楽好きの歴史」というのは50年になるわけです。そちらの（音楽好きの）自分が、「なんでこの人はこんな良い曲を作ったんだ」とか、「この曲作るなんて本当に天才だな」とか、「本当にこの曲に救われたな」という曲ばかりを集めて、自分で勝手に尊敬の気持ちを込めてカバーさせていただいているんです。自分の音楽の歴史にとって大事な曲たちを、自分の中でメモっているような感じのアルバムでもあるので、自分のオリジナル・アルバムとはちょっと違う、大事なアルバムですね。そのベスト盤ということで、収録曲を選ぶのが大変難しかったんですけど、是非聞いていただきたい1枚になりました。』

『実は「若者のすべて」は曲がリリースされてすごく経ってから、たまたまテレビで流れてくるのを聞いて。それまで知らなかったんです。聞いたときは雷に打たれたくらいびっくりしまして。「こんなに良い曲があったんだ」と思って。あまりに好きすぎる曲は、実は僕は勝手に、誰にも聞かさないというバージョンとして家でカバーしちゃうんです。
「どれだけこの曲が良い曲か」というのを、一人で噛みしめてニヤニヤするっていう時間を作っているんです（笑）それに端を発しまして、この曲を今回のカバーベスト・アルバムに新録として入れようと思いまして。
でも実は、以前「Listen To The Music」のライブで特別バージョンとして、「若者のすべて」をやったのですが、すごく皆さんも気に入ってくれていたので、今回は入れようじゃないか、ということになりました。』

『僕は千葉のbayfmというFM局で番組をやらせていただいてまして、そこでは自分の好きな曲や皆さんに聞いてもらいたい曲を、自分で全部選んでオンエアしているんです。この曲はその番組でオンエアした曲だったんです。あまりにも歌詞が素晴らしいことと、「自分では思いつかないな、こういう言い方は」とか。そういうのがギュッと詰まっている素晴らしい曲。特に聴いて欲しいのは「素直で明るいだけで人には価値があると　誰でもいい　もう少し早く教えてよ」という歌詞があって、そこで僕は電車の中で聴いていて思わず涙したんです。こんなに良い曲を作れるのは素晴らしいなと思って。今回新たに入れる曲は何が良いかな、と思った時にこの曲が浮かびました。本当に素晴らしい曲だと思います。レコーディングをしながらみんなで「本当に良い曲だね」と口々に言っていました。この曲のMUSIC VIDEOは素敵なイラストのアニメーションで構成されている素敵なビデオになったんですけど、雰囲気も良いです。誰かがそばにいることの心強さだったり、みんなが抱えている不安だったり、そういうものがとっても良い作風のイラストでまとめられていて、とっても気に入っています。このビデオを見たらこの曲をもっと好きになってもらえるんじゃないかと思います。』

『宇多田ヒカルさんは「Automatic」という曲でデビューされたときにも、誰しもが鮮烈な印象を受けたと思うんですけど、この「traveling」という曲は僕にとっては彼女の曲の中でも特に印象深くて。古文のような日本語を使っていたり、ジャポニズムみたいなものとバリバリのダンス・ナンバーが合体して、素晴らしい形になっているなぁ、と思って。大好きな曲なのでカバーさせていただきました。』

『この曲は昔デビューする前に自分が当時付き合っていた人に「曲を作っているなら、エルトン・ジョンを聴くべき」と言われて。それまで僕はYMOとかカーペンターズとかを聴いていて、エルトン・ジョンは知らなかったんです。でも好きな人にそういう風に言われたら、誰でも聞くじゃないですか。それで聞いてみたら、すごく良くて。特に「ユア・ソング」という曲が良くて、気に入ったんです。バーニー・トーピンさんの歌詞があまりにも・・・洋楽だと英語なのでわからないじゃないですか、でも訳詞を見たときに「すっごい良い歌詞だな」と思って。「良い洋楽は歌詞も素晴らしいんだなぁ」って。意外とそうでもない洋楽の曲ってあったんですが、この曲は歌詞と曲がピタっとハマっている感じがあって。僕の思い出も込みで、カバーさせていただきました。』

『もちろん美輪さんが歌われていた当時は僕はまだ全然知らなくて、後になってからいろいろな方がカバーされていて、「これはいったい誰の曲なんだろう」と思ったら美輪明宏さんの曲だったんです。「日本で一番最初のシンガー・ソングライティング」だったということもあって…とにかく歌詞ですね。歌詞と曲の構成ですね。僕にとってはオーバーじゃなく、「パーフェクトな曲」です。本当にこういう曲を作れるようになりたいな、と思わせてくれる１曲ですね。親と子の、想い想われる関係がこんなにも鮮やかに、はっきりと誰が聴いてもわかる形でドラマティックに描かれている曲。これは尊敬に値する曲です。自分の曲を歌うときは涙とか出ないんですけど、この曲だけはウッ…となります。それくらい好きな曲です。』

『達郎さんというと名曲はいっぱいありますよ。もう、すごくいっぱいあります。でもなぜ「MAGIC TOUCH」を選んだのかというと、僕が中学生か高校生の時に、maxellというカセットテープのコマーシャルで、この曲が使われたんですよ。山下達郎さんというと、どちらかというと「高気圧ガール」だったり、海でパラダイスで、みたいなイメージがあったんですけど、この曲だけ全然違っていて。その当時、テクノ・ポップが好きだった僕でもこの曲の近未来的な感じがかっこいいな、と思って。ずーっと心の隅っこで、曲を書くときのお手本にしている曲でした。山下達郎さんはもちろん生楽器のセッションもかっこいいんですが、達郎さんご本人による打ち込みのセッションも、とってもかっこよくて。非常に僕にとってはお手本の曲です。大好きな曲です。「RIDE ON TIME」もカバーしましたけど、それよりも先にこの曲が決まりました。

『この曲は実を言うと、ユーミンはもちろん好きなんですけど、リリースされたときは特別好きでも嫌いでもなかったんです。でも、生まれて初めて自分が飼っていた犬を事故で亡くしたときがあって。僕はそういう経験がなかったものですから、けっこう打ちひしがれていたんです。それからしばらくたって車に乗っていたら、たまたまこの「Hello, my friend｣がラジオでかかったんですね。その時に、それまではこの曲の良さがわからなかったと思うんですけど、突然全部の歌詞がワーっと（心に）流れ込んできて。車の中で泣いてしまって運転できなくなってしまって、路肩に車を止めて、暫く泣いていたんです。その時に「ユーミンってすごいな」と思って。ついつい僕たちはヒット曲とか売れる曲とかが大事だと思いがちですけど、「すごい曲」というのは時間が経ったときに、その人がその気持ちになったときに、その曲と出会った時に、裏切らない曲なんだと思います。そういう曲を作るとことが真のアーティストのすごみだな、と思って。心からユーミンさんのことを尊敬した瞬間でしたので、この曲を選ばせていただきました。

『もう大江千里さんがいなかったら、いなんです、僕は。学生時代に、女性シンガーソングライターはたくさんいたんですけど、オシャレでPOPでしかも曲も書いてて…というような人は、男では大江千里さんが初めてだと僕は思っていて。その大江千里さんの曲の中でも、これは本当に素晴らしいな、と。その当時、高校時代からずっと思っていました。本当に素晴らしい曲だと思います。「男性シンガーソングライターの祖」として尊敬している気持ちと、この曲の構成のすばらしさに敬服してこの曲を選ばせていただきました。大江さんにはもっと良い曲があるんですけどね。

『「Listen To The Music」のベストも出まして。でも他にも目白押しでございます。あぁ、これ言いたいんだけど…言っちゃおうかな。今回も「The Best of Listen To The Music」を作るに当たって、やっぱり今まで発売した曲を集めただけじゃダメだから、新録曲を入れさせていただきました。そういう感じで、いろんな作品が、たぶんリリースされると思います。テーマに合わせたリリースが予定されておりまして、ワタクシ今年から来年くらいまでは死ぬんじゃないか？というくらい働きます。でもみんなに感謝の気持ちを込めて、この30周年を、みんなに対して本当に感謝の気持ちを言いたいので、頑張ろうと思っています。是非楽しみにしていてください。』

『ここ1年くらいなんですけど、外食をずっとしていると、なんかけっきょく気付いたら同じものしか食べてないな、ということになっちゃっていて。あと、もう50歳なんで…遅いですけどね、そろそろ身体に気を付けた方が良いんじゃないかと思って「自炊をしよう！」ということで、最近は自炊にハマっております。最終的な僕の目標としては、甘いものが好きなんですけど、甘いものは外に買いに行くばっかりになっちゃうじゃないですか。だから、とりあえずは自分でデザートを作れるようになりたい、というのが当面の目標です。いちおう目下、第一弾としてはクッキーが作れるようになりたい。しかもアイシングでキャラクターとか書いてある、ああいうのを作れるようになりたくて。それを無理やり会社の人とかに配って食べさせたい、というのが今の僕の野望ですね。あと最近サーフィンを…昔やったんですけどね、もう一回サーフィンも始めようかなと思って。このあいだ連れて行ってもらったらけっこう楽しかったんで、うまくいけば「ハマっていること」として追々お伝えできるかもしれません。（サーフボードの上に）立てなかったけどね。しかも台風が来ていたから、あぶないあぶない。千本ノックで波が来る状態で。全然呑気な感じじゃなかったんです。「ジャック・ジョンソンな感じ」じゃなかったんです（苦笑）

『僕って、いろんな曲を作っていて、みんなが作ってほしいと思うような曲をなかなか作らないアーティストだったりしますよね。でもみんなに何か驚きを、そして僕が考えていることを伝えたいと思って、一生懸命に作ってきています。髭だってね、「本当は伸ばしてほしくない」っていう（みんなの）声が聞こえてくるんですけど、伸ばすし（笑）。本当にこんな僕なのに、ずっと30年間応援してくれて本当に感謝しています。これからも皆さんに何か驚きとか面白さを、音楽という形で伝えていけたらと思っています。30周年という区切りで1年間頑張ってみようと思っているので、今年からの30周年イヤーをよろしくお願いします。そしてその先もね、みんなと一緒に歩んでいけたらと思います。よろしくお願いいたします。