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Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”
OFFICIAL LIVE REPORT

2019年のアリーナツアー『EDEN no SONO』から始まったストーリーラインの集大成にして、2022年から3年9か月にわたって展開してきたフェーズ2のクライマックス、そしてデビュー10周年のアニバーサリーイヤーの締めくくり……さまざまな意味合いと想いを乗せたMrs. GREEN APPLE初のドームツアー『Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH” 』が、12月20日、東京ドームで終幕を迎えた。巨大なステージセットで造られたバビロンの街を舞台に繰り広げられたのは、ミセスというバンドがこれまで紡いできた音楽をひとつに繋ぎ、彼らが音楽を届け続ける理由を人々に伝える、人間の弱さと強さ、そして意思と愛の物語だった。

荘厳なオープニングに続いてマーチングドラムが高らかに鳴り響き、ステージ中央から大森元貴、若井滉斗、藤澤涼架が登場する。華々しいサウンドとともに大森が歌い出したのは「Love me, Love you」。「会いたかったよ、バビロン! 最高の日にしようぜ!」――バビロンの住人を演じる多数のキャストが行き交う街の風景のなか、大森の伸びやかな歌声と東京ドームを埋め尽くしたJAM’Sの声が交差し、『BABEL no TOH』はお祭りのような賑やかなムードとともに幕を開けた。続く「CHEERS」で5万人と〈乾杯〉すると、「声出せますか?」という大森の言葉にオーディエンスが全力で応えた「アンラブレス」では藤澤のキーボードも若井のギターもファンキーに跳ね回り、大森も手振りを交えながらリズムに乗って歌を響かせる。アリーナでもキャストが踊っているし、「Feeling」ではアリーナに色とりどりのバルーンが投げ込まれていく。「もっと、もっと!」とみんなのコーラスを求める大森。「観客」という言葉ではとても足りない、この『BABEL no TOH』ではここにいるすべての人が物語の「参加者」なのだ。

そんなワクワクに満ちた序盤から、少しずつストーリーは進んでいった。ドラムのラッシュと若井のギターが爆発的なエネルギーを放射し、藤澤が声を上げてオーディエンスを煽るなか突入した「パブリック」では、バビロンの街の人々が塔の建設を始める。今回のセットリストのなかで唯一ファーストフルアルバム『TWELVE』からピックアップされたこの曲のギターロックサウンドに滲む焦燥感が一心不乱にツルハシを振るう人たちの姿に重なり、エモーショナルに響き渡る。若井と藤澤のソロも勢いに満ちていて、東京ドームは一瞬にしてヒリヒリとした熱気に包まれた。さらに赤いライトがステージを照らすなか、「バビロン、いけるか!」という大森の声とともにさらにソリッドな「おもちゃの兵隊」が鳴り出すと、ステージにキラキラと輝く巨大な塔が出現。残酷さと悪意に満ちた世界を鋭く抉りながらも〈望むは誰もが望みを/忘れないで生きてる事〉と人間への願いを綴るこの曲のメッセージが、まるでこの先の物語の行く末を予言するかのようだった。

「バビロン、お帰りなさい! Mrs. GREEN APPLEです!」ここまで6曲を終えて改めて声を張り上げて挨拶をする大森。客席から飛ぶ声を浴びながら、「全身全霊で、全部を出し切ろうと思って来たのは私たちだけでしょうか?」とさらなる盛り上がりを求めると、割れんばかりの声がドームに鳴り渡った。若井も藤澤も精一杯の大声でオーディエンスとコミュニケーションを取る。砕けたトークのなかで、藤澤が1月からの日曜劇場『リブート』に出演することや、若井がテレビ朝日『M:ZINE』のMCを務めていることも紹介(『FJORD』以降定番となった若井をイジるくだりも健在)、そんなトピックのひとつひとつにもミセスが自分たちの世界を押し広げてきた軌跡が見える。そして「WanteD! WanteD!」からライブを再開。肩の力が抜け切ったMCで3人だけでなくJAM’Sの緊張もほぐれたのか、さらに大音量のシンガロングが広がったのだった。その後「ライラック」で瑞々しい青春の風景を描き出すと、ここでライブの雰囲気は一変する。ステージには雲海のようなスモークが満ち、白い衣装に身を包んだバレエダンサーがパフォーマンスするなか、大森が静かに「Soranji」を歌い出したのだ。その「Soranji」が終わると、スクリーンには緑生い茂る自然の風景が映し出される。〈緑が深いこの森を抜け/その先の町へ行こう〉と始まる「フロリジナル」だ。大森の内面にあり続ける孤独と赤裸々に向き合ったこの曲が、それでも愛を求める人間の性(さが)を象徴するようなキャストのカップルダンスとともに届けられる。「ゼンマイ」に「君を知らない」、そして「Soup」と、ステージ上では季節が移り変わり、ひとつの「歴史」を浮かび上がらせていくのだった。

ここから一気に物語は加速していく。暗闇に包まれたステージで光るリボンやバトンによる不穏なパフォーマンスが展開し、足音とともに怪しげなマスクをつけた人々が現れる。そしてノイジーな音とともに大森の叫びが響き渡った。塔の上で王のような赤いマントを羽織った大森が歌うのは「絶世生物」。レーザーライトが迸り、重厚なサウンドが地響きのように東京ドームを揺らす。人の上に立った人が力を誇示するようなその存在感が、先ほどまでののどかな世界を一変させてしまう。そして雷鳴が轟き、なんと塔が客席のほうに迫り出してきた。その巨大な仕掛けにも驚くが、それ以上にステージから鳴らされる音と大森のパフォーマンスに目を奪われる。燃え上がる塔の火を必死に消そうとする人々を横目にアジテーションのような歌を繰り広げる大森。スクリーンには歌詞が映し出されるが、その文字は時折意味不明の記号に変換される。「ア・プリオリ」を経て、若井と藤澤の弾く音にも、あえてメロディを崩して歌う大森の声にもいつも以上の激情が宿る「Loneliness」でその混乱は極限に達した。

と、そんな荒れ果てた世界を癒すように、美しいピアノの音色が聞こえてくる。「ダーリン」の混沌の果てに残った愛を希求するような切実な歌声とストリングスの響きがストーリーの続きを描き始めるのだ。塔には蔦が絡まり、長い年月が過ぎたことを物語っている。ここからライブは再び輝きを取り戻し、美しいフィナーレに向かって駆け上がっていく。そこで鳴り響いた音楽たちは、分断と孤独と混沌を耐えて生き抜いてきたひとりひとりへの祝福のようだった。その幕開けとなったのは「コロンブス」。塔の麓で都市が発展していく風景が描かれ、開放的なサウンドが鳴り渡る。大森の歌も若井のギターも先ほどとは打って変わって軽やかな色を帯びる。「せーの!」とみんなの声を求める大森の表情はとても晴れやかだ。曲を終えて、3人はフェーズ2の活動に込めてきた思いを語り始めた。まず口火を切ったのは若井。「約3年前にフェーズ2の幕を開けてから、本当にたくさんの人が僕たちの音楽を聴いてくださって、ライブにも来てくださって。フェーズ2はたくさんの方にミセスの音楽を届けるために活動してきたので、いろいろな表現活動をしてきましたけど、それができるのも届ける先があるから。みなさんひとりひとりの愛や力があるからだと思っています。本当にいつもありがとうございます」。続く藤澤の言葉はとても感動的だった。「ライブの思い出がいっぱいあるんです。みんながいろんな表情をしてくれていて、楽曲と出会ってくれた瞬間とか、日常で僕たちの楽曲を聴いてくれていることが伝わってくるのがすごく嬉しい。ここまでフェーズ2を走ってきて、みんなと出会えて本当によかったなと思っています」。ここでバッチリカメラ目線を決めるあたり、さすがである。

そして大森。「フェーズ2はいろいろ考えてやってきたつもりですけど、正しくみなさんに感謝を伝えるには、ちゃんと胸を張って届けることのできる楽曲を真摯に書いて、作って、1曲1曲届けることだと思っています。なので……来年1月1日からのフェーズ3もよろしく!」。そして彼は、フェーズ1からフェーズ2、そして間違いなくフェーズ3でも変わらない、ミセスの意思を言葉にした。「人はネガティブなものだから、どうにかポジティブに、せっかくだから楽しく毎日過ごせるように、自分を鼓舞してやっていくしかない。大事に作っていたものが崩れたり、やりきれなかったり、果たせなかったり、傷ついたりすることはたくさんあると思います。けど、まだ終わりじゃないんだぞと自分に言い聞かせて1日1日を大切に過ごしていくこと、大事にできなかった時間すら大切に改めて思うこと。それをどうにかして体現できないかなと思って今回このようなツアーを回っております。『BABEL no TOH』がひとつの起点になって、今日がどこかに繋がっているといいなと祈っています」。この『BABEL no TOH』のストーリーが聖書の「バベルの塔」を下敷きにしていることは明らかだが、むしろ大森が伝えかったのは、築き上げた塔が朽ちたあとの世界、つまり今を生きる我々の物語だったのだろう。そして「情けないところも、弱いところも、いったん俺が愛してやる!」――そんな力強い言葉とともに「ANTENNA」が鳴り響く。「GOOD DAY」ではJAM’Sの大合唱が鳴り響き、大森は笑顔でマイクを客席に向ける。そして塔が舞台の奥へと消えていくなか、「Magic」へ。この曲が何度も生み出してきた最高の景色が今回もまた更新され、東京ドームは完全にひとつとなったのだった。

そして『BABEL no TOH』もいよいよフィナーレ。藤澤の奏でるピアノの穏やかな音色とともに、先ほどまで塔が建っていた花道でスモークに包まれ、大森は「天国」を歌い始めた。この曲が作られたときにはなかった壮大なアウトロが鳴り響き、舞台上の人物がひとり、またひとりと光のなかに消えていく。そして若井、藤澤に続いて、最後に大森がゆっくりと歩を進める。天使のラッパのようなトランペットの音色が、彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように聞こえてくる。手を上げて去っていく大森の姿が見えなくなり、ついに『BABEL no TOH』はその幕を下ろしたのだった。

だが、もちろん、これは終わりではなく始まりだ。スクリーンには「TO BE CONTINUED」の文字とともに、『ELYSIUM(エリュシオン)』という言葉が映し出された。ギリシャ神話における、神々に愛された者たちの楽園の名だ。「エデン」から始まった物語がたどり着いた新たな楽園とはどんな場所なのか。やがて示されるであろうその「続き」を心待ちにしたい。

Text : 小川智宏

SET LIST

  1. 1.Love me, Love you
  2. 2.CHEERS
  3. 3.アンラブレス
  4. 4.Feeling
  5. 5.パブリック
  6. 6.おもちゃの兵隊
  7. 7.WanteD! WanteD!
  8. 8.ライラック
  9. 9.Soranji
  10. 10.フロリジナル
  11. 11.ゼンマイ
  12. 12.君を知らない
  13. 13.Soup
  14. 14.絶世生物
  15. 15.Ke-Mo Sah-Bee
  16. 16.ア・プリオリ
  17. 17.Loneliness
  18. 18.ダーリン
  19. 19.コロンブス
  20. 20.ANTENNA
  21. 21.GOOD DAY
  22. 21.Magic
  23. 21.天国

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