言うまでもなくバンドは一人一人の集まりである。バンドの結束と個人の成長は不可分でもある。結束を強めることが世の中と渡り合う武器になるのが若いバンドの有り様だとしたら、大人のバンドの戦い方は個々の成長にかかっていると言って良いだろう。
1986年一年間を一人一人の武者修行に費やしたオフコースは、再びバンドとしての活動に戻った。
ソロ活動の時のスローガンは“ONE FOR ALL ~ ALL FOR ONE”。ラグビーで使われる“一人は全てのために、全ては一人のために”だった。1987年3月発売のこのアルバムはまさにそんな成果だった。
有機体としてのバンド。内側を向くだけでなく、プロデュサーとして外部との接点を持ち、彼らの力も結集出来る個人の集まり。でも、4人の関係性は深く、距離感は限りなく近い――。「as close as possible」だ。
全10曲の内、小田和正のヴォーカルが6曲。松尾一彦が2曲、清水仁が初めてのリード・ヴォーカルを2曲で取っている。松尾一彦が書いて自分で歌っている「ガラスの破片」と「I’m a man」は作詞が秋元康である。その接点になったのも松尾一彦だ。清水仁が歌っている「Tiny Pretty Girl」と「心の扉」は松尾一彦と作曲している。「Tiny Pretty Girl」には清水仁のベースソロもある。更に、その二曲の作詞を手がけている松本一起は、大間ジローがプロデユーサーとして女性歌手に関わった時に出会った。
それぞれが持ち寄った新しい力。小田和正は、アメリカで制作したソロのファースト・アルバム「K・ODA」の方法論を生かしている。リズム・トラックは日本で録音し、サックスやホーン・セクション、ヴォーカル録りはロサンジェルスで行った。7曲目の「Love Everlasting」はソロの時に制作されたものだ。「K・ODA」の時に加わったミュージシャンの中にはTOTOのドラマー、ジェフ・ポーカロの名前もある。
思いがけないのが、10曲目の「嘘と噂」に加わっている坂本龍一と大貫妙子ではないだろうか。1985年6月15日、国立競技場で野外イベント「ALL TOGETHER NOW」が開かれた。司会は吉田拓郎でオフコースと一緒に「YES NO」を歌った。小田和正は松任谷由実・財津和夫とテーマ曲「今だから」を制作、その編曲が坂本龍一だった。オフコースの人間関係は広がっていた。
松尾一彦のロック・センス、清水仁のリズム&ブルース、そして小田和正が体験してきた洋楽の方法論が混じり合い重なり合った4人のオフコースのカラフルなアルバムは、明らかに82年以前とは違った。
第三期オフコース――。
それが、こんなに短期間で終わってしまうと思った人がどのくらいいただろうか。
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解説
言うまでもなくバンドは一人一人の集まりである。バンドの結束と個人の成長は不可分でもある。結束を強めることが世の中と渡り合う武器になるのが若いバンドの有り様だとしたら、大人のバンドの戦い方は個々の成長にかかっていると言って良いだろう。
1986年一年間を一人一人の武者修行に費やしたオフコースは、再びバンドとしての活動に戻った。
ソロ活動の時のスローガンは“ONE FOR ALL ~ ALL FOR ONE”。ラグビーで使われる“一人は全てのために、全ては一人のために”だった。1987年3月発売のこのアルバムはまさにそんな成果だった。
有機体としてのバンド。内側を向くだけでなく、プロデュサーとして外部との接点を持ち、彼らの力も結集出来る個人の集まり。でも、4人の関係性は深く、距離感は限りなく近い――。「as close as possible」だ。
全10曲の内、小田和正のヴォーカルが6曲。松尾一彦が2曲、清水仁が初めてのリード・ヴォーカルを2曲で取っている。松尾一彦が書いて自分で歌っている「ガラスの破片」と「I’m a man」は作詞が秋元康である。その接点になったのも松尾一彦だ。清水仁が歌っている「Tiny Pretty Girl」と「心の扉」は松尾一彦と作曲している。「Tiny Pretty Girl」には清水仁のベースソロもある。更に、その二曲の作詞を手がけている松本一起は、大間ジローがプロデユーサーとして女性歌手に関わった時に出会った。
それぞれが持ち寄った新しい力。小田和正は、アメリカで制作したソロのファースト・アルバム「K・ODA」の方法論を生かしている。リズム・トラックは日本で録音し、サックスやホーン・セクション、ヴォーカル録りはロサンジェルスで行った。7曲目の「Love Everlasting」はソロの時に制作されたものだ。「K・ODA」の時に加わったミュージシャンの中にはTOTOのドラマー、ジェフ・ポーカロの名前もある。
思いがけないのが、10曲目の「嘘と噂」に加わっている坂本龍一と大貫妙子ではないだろうか。1985年6月15日、国立競技場で野外イベント「ALL TOGETHER NOW」が開かれた。司会は吉田拓郎でオフコースと一緒に「YES NO」を歌った。小田和正は松任谷由実・財津和夫とテーマ曲「今だから」を制作、その編曲が坂本龍一だった。オフコースの人間関係は広がっていた。
松尾一彦のロック・センス、清水仁のリズム&ブルース、そして小田和正が体験してきた洋楽の方法論が混じり合い重なり合った4人のオフコースのカラフルなアルバムは、明らかに82年以前とは違った。
第三期オフコース――。
それが、こんなに短期間で終わってしまうと思った人がどのくらいいただろうか。