Album

僕の贈りもの

オリジナル
ETP-8258
1973.06.05
廃盤
CD
TOCT-25631
2005.03.24
2,190円(税抜価格)+税
SHM-CD
TOCT-95031
2009.01.21
2,476円(税抜価格)+税

1970年のデビューからメンバーの出入りを経て、小田和正、鈴木康博の2人のデュオとなったオフ・コース。その記念すべきデビュー・アルバム

収録曲

1 僕の贈りもの
2 よみがえるひととき
3 彼のほほえみ
4 水曜日の午後
5 地球は狭くなりました
6 でももう花はいらない
7 歩こう
8 ほんの少しの間だけ
9 貼り忘れた写真
10 静かな昼下がり
11 さわやかな朝をむかえるために

解説

 デビューアルバムというのは不思議なものだと思う。そのバンドやアーティストが初めて世に問う作品。当然のことながら技術的な面も含めた表現力は未熟だったりもするわけで、作品としてのクオリティということで言えば、それ以降の作品に及ばなかったりするものの、やりたいことのエッセンスが注ぎ込まれていることが多い。そして、デビューアルバムの持つ意味が浮き彫りにされてくるのは、キャリアが重なってからだと言うことも付け加えなければいけない。

 このアルバムは1973年6月5日発売。オフコースの記念すべきデビューアルバム。ただ、デビューはその3年前の70年4月5日。シングル「群衆の中で」。このアルバムのタイトル曲でもある「僕の贈りもの」はシングル4枚目だ。その前に出された3枚のシングルがどれも収録されていないことが彼らのデビューを物語っている。デビューシングルはAB面ともヤマハの作曲コンクールに応募してきたアマチュアの作品に作詞家の山上路夫が詞をつけたもので、メンバーも小田和正・鈴木康博と同じ横浜あ聖光学園の音楽仲間、地主道夫の3人。「僕の贈りもの」は小田和正のオリジナルがAB面になった初めてのシングルだった。ジャケットにも初めて二人で写っている。アルバムの一曲目に入っているのも、ここから始まったという意味だろう。アカペラから始まるイントロ。アウトロのバイオリンの余韻。叙情的な季節感とメロディの汚れの無さ。小田和正と鈴木康博のコーラス。「贈りもの」という自分たちの歌の位置づけ。オフコースの原点とも言えるのがこの曲だろう。

 70年代前半はフォークソングの時代だった。吉田拓郎が「結婚しようよ」でヒットチャートに躍り出たのが72年。チューリップが「心の旅」で一位になり、かぐや姫が「神田川」で、井上陽水がアルバム「氷の世界」をミリオンセラーにしたのもこの年だ。長髪にジーンズというスタイルが全盛の中で、オフコースの二人は傍流だった。鈴木康博は東工大を卒業、決まっていた電気会社を蹴って音楽の道に進んだものの、小田和正は東北大を卒業、一年間勉強して、早稲田の大学院に入り直していた。音楽と勉強の両立の難しさ。「もう花はいらない」にあるように歌うべきテーマが見えていたのは鈴木康博の方かもしれない。小田和正は「水曜日の午後」を歌いながら自分を励ましていたと語っている。

 当時のフォークソングの枠には収まらないアルバムだったと改めて思う。賛美歌のような「ほんの少しの間だけ」、鈴木康博が自らコンガを叩いている「貼り忘れた写真」。ストリングスとコーラスが美しい「さわやかな朝をむかえるために」。商業的な成功には目もくれずにやりたかったことを詰め込んだ。それこそデビューアルバムならではのみずみずしさだろう。

田家秀樹

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