5人のオフコース・・・バンドとしての姿勢を明確に打ち出し、名実ともに日本のトップ・グループとして輝いた大ヒット・アルバム
何よりもジャケットが強いインパクトを持っていた。表に写っているのは清水仁・大間ジロー・松尾一彦という新しく加わった3人で、彼らの上に“オフコース”というグループ名が英語で表記されている。もし、それまでの経緯を知らない人が見たら、この3人がオフコースだと思われかねない大胆なデザイン。3人と2人。小田和正と鈴木康博は、2人で裏に写っていた。当然のことながらレコード会社からの反対をメンバーが押し切ったものだ。3人が加わるようになって3年。1979年10月20日発売だった。
つまり、それだけ彼らにとって大きな変化だったということでもある。バンド宣言とでも言えば良いだろうか。一曲目の「思いのままに」で“誰にもぼくの行く道を止められない”“行かせてほしい”と歌っているのもそんな決意表明に聞こえる。でも、イントロはアカペラのコーラスだ。一つの曲の中で、“変わらぬもの”と“変わったもの”を表現しているようでもある。
小田和正は“設計図の人”で鈴木康博は“配線図の人”。そんな風に思ったことがあった。小田和正の描くビジョンや全体図。彼の曲の持つ空間性やスケールと鈴木康博の曲の持っている細部の緻密さ。二人の曲にはそんなデザイン的な特徴がある気がしていた。
オフコースのバンド宣言。それは小田和正の描くオフコースという集団の設計図をより確信に満ちたものにしたように思える。「この辺りでどういう音楽がバンドとして成り立つかが分かってきた」と発言している。そんな確信の表明が79年1月に出た先行シングル「愛を止めないで」だった。初めて10万枚という数字に近づいたヒット曲。その中で彼らは、“「眠れぬ夜」はもういらない”と歌っていた。過去のヒット曲やあの頃のスタイルとの決別。“いきなり君を抱きしめよう”というフレーズに“いやらしい”という女性ファンの反発もあったと言う。自分たちの歌や言葉がどう受け止められるか。それも設計図に書き込まれていたと思えるほどにフォーカスが合って行く。
5人のオフコース。サウンドの変化は楽曲にも影響を与えている。小田和正のメロディーはギターのディストーションのような直線的な思い切りが加わり、鈴木康博のボーカルは力強い男性的なものになった。8分を越えるロック大作「SAVE THE LOVE」は、彼の代表作の一曲だろう。全員の演奏がきらめくようなコーラスとともにうねってゆくオフコースのバンドサウンド。「FAIRWAY」の先に待っていたのは、遙かな大海原だった。
エンディングの「生まれ来る子供たちのために」は、今聴いても感動的だ。商業的な成功や流行りから遠く離れた地平線に帆を上げて行く30代に差し掛かったミュージシャンの“明日への願い”。これももう一つの宣言だろう。クロージングの「いつもいつも」は、79年8月4、5日に行われた田園コロシアムのライブ音源だ。
田家秀樹
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解説
何よりもジャケットが強いインパクトを持っていた。表に写っているのは清水仁・大間ジロー・松尾一彦という新しく加わった3人で、彼らの上に“オフコース”というグループ名が英語で表記されている。もし、それまでの経緯を知らない人が見たら、この3人がオフコースだと思われかねない大胆なデザイン。3人と2人。小田和正と鈴木康博は、2人で裏に写っていた。当然のことながらレコード会社からの反対をメンバーが押し切ったものだ。3人が加わるようになって3年。1979年10月20日発売だった。
つまり、それだけ彼らにとって大きな変化だったということでもある。バンド宣言とでも言えば良いだろうか。一曲目の「思いのままに」で“誰にもぼくの行く道を止められない”“行かせてほしい”と歌っているのもそんな決意表明に聞こえる。でも、イントロはアカペラのコーラスだ。一つの曲の中で、“変わらぬもの”と“変わったもの”を表現しているようでもある。
小田和正は“設計図の人”で鈴木康博は“配線図の人”。そんな風に思ったことがあった。小田和正の描くビジョンや全体図。彼の曲の持つ空間性やスケールと鈴木康博の曲の持っている細部の緻密さ。二人の曲にはそんなデザイン的な特徴がある気がしていた。
オフコースのバンド宣言。それは小田和正の描くオフコースという集団の設計図をより確信に満ちたものにしたように思える。「この辺りでどういう音楽がバンドとして成り立つかが分かってきた」と発言している。そんな確信の表明が79年1月に出た先行シングル「愛を止めないで」だった。初めて10万枚という数字に近づいたヒット曲。その中で彼らは、“「眠れぬ夜」はもういらない”と歌っていた。過去のヒット曲やあの頃のスタイルとの決別。“いきなり君を抱きしめよう”というフレーズに“いやらしい”という女性ファンの反発もあったと言う。自分たちの歌や言葉がどう受け止められるか。それも設計図に書き込まれていたと思えるほどにフォーカスが合って行く。
5人のオフコース。サウンドの変化は楽曲にも影響を与えている。小田和正のメロディーはギターのディストーションのような直線的な思い切りが加わり、鈴木康博のボーカルは力強い男性的なものになった。8分を越えるロック大作「SAVE THE LOVE」は、彼の代表作の一曲だろう。全員の演奏がきらめくようなコーラスとともにうねってゆくオフコースのバンドサウンド。「FAIRWAY」の先に待っていたのは、遙かな大海原だった。
エンディングの「生まれ来る子供たちのために」は、今聴いても感動的だ。商業的な成功や流行りから遠く離れた地平線に帆を上げて行く30代に差し掛かったミュージシャンの“明日への願い”。これももう一つの宣言だろう。クロージングの「いつもいつも」は、79年8月4、5日に行われた田園コロシアムのライブ音源だ。
田家秀樹