清水仁(b)、大間ジロー(drm)、松尾一彦(g)を加え、バンド・サウンドを明確に打ち出したオフコース。 「Three and Two」ツアー(1979-80年)を中心に、それ以前の貴重なコンサート音源も収録したライヴ・セレクション・アルバム
1 | 愛を止めないで |
2 | Run Away |
3 | 恋を抱きしめよう |
4 | 雨の降る日に |
5 | 思いのままに |
6 | 風に吹かれて |
7 | 汐風のなかで |
8 | 失恋のすすめ |
9 | 老人のつぶやき |
10 | さわやかな朝を迎えるために |
11 | Chili’s Song |
1 | 歴史は夜つくられる |
2 | 君を待つ渚 |
3 | SAVE THE LOVE |
4 | 生まれ来る子供たちのために |
5 | さよなら |
6 | のがすなチャンスを |
7 | 愛を止めないで |
8 | 僕の贈りもの(インスト) |
解説
2人から5人になって何よりも大きく変わったのはライブのスタイルだろう。ステージの骨格が整った。骨太になり、その分めりはりも増した。全員がスクラムを組むように客席を引き込んで行く。1978年、 79年と彼らは年間100本を超えるツアーを行っている。春と秋、年に2回同じ街へゆく。噂が噂を呼ぶようにライブの動員が増えて行った。
このアルバムは、彼らが5人になった77年からのライブを編集したライブアルバムである。74年の『秋ゆく街で』以来2枚目のライブアルバムとなる。当然のことながら格段の違いがある。二枚組のボリュームに当時のライブの空気がそのまま詰め込まれている。
全19曲のうち、12曲は80年2月の新宿厚生年金会館。他には79年10月からスタートした同じ「Three and Two」ツアーの札幌厚生年金会館、広島郵便貯金ホール、神奈川県民ホール、8月の田園コロシアム、そして、77年4月25日の九段会館「小さな部屋」からの収録。DISC1の前半5曲は2月5日の新宿厚生年金会館での模様が丸ごと収められている。それがアナログ盤の一枚目のA面だった。DISC 1の後半6曲は、1枚目のB面。DISC 2は、「生まれ来る子供たちのために」がA面。ライブ自体の本編がここまでだった。「さよなら」からアンコールだ。「ほんとに今日はありがとう。それでは聴いて下さい。“さよなら”」という小田和正のMCまで入っている。その後の彼らを決定づけた「さよなら」がシングルで発売されたのはツアー中の79年12月1日だった。
確かにいくつかの会場からセレクトされてはいるものの、拍手や会場のノイズで流れており、これ自体が一つのコンサートのライブとして聞くことが出来る。
小田和正のピアノから「愛を止めないで」に入って行くドラマティックなオープニング。小田和正と鈴木康博がバトンリレーのようにメインを紡いで行く構成の見事さ。中盤のアコースティックなサウンドとコーラスの溶け合い。そして、後半のギターサウンドの盛り上がりと、松尾一彦の加山雄三の物まねのほほえましさ。 「SAVE THE LOVE」の重厚感と「生まれ来る子供たちのために」の張りつめたような美しさ。「のがすなチャンスを」の3分近いドラムソロ。随所に聴き所が用意されている。『Three and Two』収録曲の「思いのままに」「愛を止めないで」といずれもライブアレンジで時間もたっぷりと長い。
オフコースはすでに自分たちのPAや照明のチームを固定してツアーを行っていた。そんな風にライブを総合芸術的に組み立てていたのは彼らだけだっただろう。70年代前半のフォークシンガーのステージの条件はトークが面白いことだった。寡黙な彼らは“受けない”グループと言われていた。もはやそんな次元にはいなかった。テレビにも出ずにライブの完成度を極めていた彼らが、爆発的にブレイクするのは当然の成り行きでもあった。
田家秀樹