Album

over

オリジナル
ETC-90150
1981.12.01
廃盤
CD
TOCT-25644
2005.03.24
2,190円(税抜価格)+税
SHM-CD
TOCT-95044
2009.01.21
2,476円(税抜価格)+税

We are over・・・ ひとつの時代が幕を下ろしていく あまりにも美しい終焉のレクイエム

収録曲

1 心はなれて
2 愛の中へ
3 君におくる歌
4 ひととして
5 メインストリートをつっ走れ
6 僕のいいたいこと
7 哀しいくらい
8 言葉にできない
9 心はなれて

解説

 「We are」「over」。もし、この二つのタイトルのカッコを外して並べて見ると、どういう文章になるだろう。“We are over”。“over”という言葉には、“越える”“終わる”というような意味がある。僕らは越えて行く。あるいは、僕らは終わる。この二枚のタイトルの意味がどっちだったのか。きっと両方の意味があったのだろう。でも、世間の反応はやはり後者だったのではないだろうか。1981年12月発売。オフコース解散。そんな憶測は、全国を駆けめぐっていった。

 小田和正のファンクラブでもあるFAR EAST CLUBが監修、TOKYO FM出版が出している「地球音楽ライブラリー・小田和正」によると、80年の年末に鈴木康博が「抜けたい」と打ち明けた時、「オフコースとは別の場所で自分の音楽の可能性を試したい」と言ったのだそうだ。更に、「でも僕が抜けた後も4人で続けていって欲しい」と希望したともある。小田和正は、その後の雑誌のインタビューなどでもその時のことを「悲しかった」と短く述懐している。ただ、彼は、このアルバムのレコーディングに入るときには、解散を決めていたと言う。

 このアルバム全編に漂っている張りつめたような切迫感は、そんな背景と無縁ではないだろう。悲しみを抑えたような厳かなストリングスで始まる「心はなれて」はまるでメインテーマのようだ。バンド内のバランスや求めるものの変化。アルバム全曲で歌われる“僕と君”、“僕ら”“俺とお前”。そんな人称の中には、ファンとバンドや男女の恋愛もイメージされてはいるのだろうが、やはり小田・鈴木の関係がいやでも重なってしまう。

 それにしてもこれだけ毅然としてこれだけ誇り高く、これだけ静かな悲しみと強さを内包したアルバムがあっただろうか。作品化するというのはそういうことなのだと思う。個人的な感情におぼれずに客観的な作品として昇華する。そんな背景や経緯を知らない人でも、このアルバムに流れている汚れのない真っ直ぐな想いに胸を打たれるはずだ。

 1982年1月、彼らは初めてテレビに出た。音楽番組ではない。NHKの「若い広場」。でも、彼らは“解散”の言葉は一切口にしなかった。1月22日、千葉県文化会館を皮切りに、“1982 OFF COURSE Concert OVER”がスタートした。全国28カ所69公演。フィナーレは日本のコンサート史上初の日本武道館10日間。“解散騒動”はピークに達しようとしていた。悲鳴のような観客の声の中でコンサートの一曲目に歌われたのはアルバムと同時発売されたシングル「愛の中へ」だった。ツアーがスタートした2月1日、更に「言葉にできない」がシングルカットされた。その時、あの曲が、あそこまでツアーを象徴するような曲になるとはどのくらいの人が予測しただろう。

田家秀樹

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