“9月になれば?”。「I LOVE YOU」で印象的だったそんなフレーズは、いやでも“9月”という月を意識させた。武道館公演を終えた彼らが、取りかかったのがテレビの番組だった。1982年9月29日、TBS系列で放映されることになっていた特別番組。それがこのアルバムの曲がサントラとして使われている「NEXT」だった。
設定は87年。武道館から5年後。謎の人物が現れて、82年の武道館の再現を脅迫的に迫る。大間ジローの命と引き替えと言われた彼らは、再会し、武道館のステージに立つ。その日は87年9月29日。放映日の5年後という設定。武道館の模様は82年6月30日の映像が使われていた。どういうオチがあるのかは映像版の「NEXT VIDEO PROGRAM」を見て欲しい。
解説
“9月になれば?”。「I LOVE YOU」で印象的だったそんなフレーズは、いやでも“9月”という月を意識させた。武道館公演を終えた彼らが、取りかかったのがテレビの番組だった。1982年9月29日、TBS系列で放映されることになっていた特別番組。それがこのアルバムの曲がサントラとして使われている「NEXT」だった。
70年代後半から80年代前半はテレビの音楽番組の最盛期でもあった。「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」。中でもチャート番組だった「ザ・ベストテン」は、執拗な出演依頼があったと聞く。頑なに一連の歌番組を拒み続けていた彼らが、同意したのが、自分たちで制作して局に“納入する”というスタイルだった。脚本・音楽・監督・主演をオフコース側で行う。音楽の原盤制作と同じ発想はテレビ界の常識を覆すやり方だった。
通常だとドキュメンタリーの形式を取っているに違いない。リハーサルから本番までの過程を追い、さらにステージを何台ものカメラで記録する。彼らはそういう作り方をしなかった。確かに9月から武道館の模様を収めたフィルムコンサートが83年の1月まで全国上映されていたということもあるのだろう。テレビで同じものをやるわけにはいかない。彼らが作り上げたのはドキュメンタリーでもなければドラマでもない。それでいてストーリーやオチもある、新しいスタイルだった。
設定は87年。武道館から5年後。謎の人物が現れて、82年の武道館の再現を脅迫的に迫る。大間ジローの命と引き替えと言われた彼らは、再会し、武道館のステージに立つ。その日は87年9月29日。放映日の5年後という設定。武道館の模様は82年6月30日の映像が使われていた。どういうオチがあるのかは映像版の「NEXT VIDEO PROGRAM」を見て欲しい。
サントラではありながら、新たに書き起こされた曲も収録されている。「流れゆく時の中で」は鈴木康博がサントラ用に書き下ろした曲。映像版にはインストでしか入っていない。歌入りはこのアルバムでしか聴けない。「さよなら」も小田和正のピアノと松尾一彦のハーモニカだけで新たに収録されている。映像版と同じ「YES- YES-YES」の客席の大合唱は、音だけでも感動的だ。
この番組のために書き下ろされた最大の聴き所が「NEXTのテーマ」だ。“僕等の終わりは 僕等が終わる 誰もそれを語れはしないだろう”というフレーズに尽きるだろう。誰の力も借りずにここまで来たという自負。誰にも渡さないというプライド。一度は決意したという解散に向かわなかったのも興味本位に語られる中での意地だったのかもしれない。
“See you NEXT time”。映像はそんな言葉で終わっている。「over」から「NEXT」へ。オフコースは終わらなかった。84年、4人のバンドとして活動を再開。最終的にピリオドを打ったのは89年2月26日。「NEXT」の舞台設定より2年後だった。
田家秀樹