著名人コメント:漫画家みつはしちかこ氏



漫画家のみつはしちかこ氏よりコメントを頂戴しました!

 初めてオフコースの歌声を聞いたのは「明治ブルガリアヨーグルト」というCMソング。誰が歌っているのか気にもとめなかったのだが、その清らかな歌声が心に蘇えってきていい気分になるのだった。「カステラ2番電話は2番3時のオヤツは…」「セキスーイハウス」「この木何の木気になる木」等々…私の好きなCMソングたちである。
 その歌はオフコースが歌っているのだと知ったのは「オフコースの小さな部屋」というコンサートにゲストとして呼ばれた時だった。私は人前に出るのが大苦手ですぐにお断りしようと思ったのだが、小田和正さん御本人直筆の丁寧な依頼状が届いてしまって、慌ててOKしてしまったのだ。―――えーとあれは今から40年以上も前のこと?(編注:1975年6月8日「オフコースの小さな部屋Vol.3」@日本青年館大ホール)
 舞台に上った時に頭がマッシロになってしまって、何をしゃべったのか殆ど覚えていない。ただあれはチッチとサリーが別れるかもしれないという第9集を出した頃で、記者の人たちが大心配をしていた時だった。小田さんに「これからチッチとサリーはどうなるんですか?」と聞かれて、自分でもどういう決着をつけるか悩んでいた時なのでそっけなく「わかりません」と答えたのだけは覚えている。
 そんなことより私は、小田さんが水色のシャツに白いパンツ、白いスニーカーをはいて、時折、ひらりとピアノの方に行って何か軽快な曲を弾き、歌っていた、その恰好よさにポーッとなってしまったのだった。
 その後、小田さんのカッコよさだけに舞い上がってしまったことを反省するようにオフコースのカセットを買ってきて、夜毎聴くようになった。ウーーン、曲もいいけど、詩がいいなー、と、いや詩と曲が溶け合っていてそれを歌うオフコースの高くて透明な声が、素晴しい。
 特に私が好きなのは「愛を止めないで」…
「愛を止めないで、そこから逃げないで」という切なくて強いフレーズ、――恋の坂道で不安にかられ戸惑っている女性たちに、愛し続ける勇気を与えてくれる、永遠の愛の言葉のような気がする。
 「ここへおいで くじけた夢を すべてその手にかかえたままで」……なんてやさしくて大きな心を持ったヒトなんだろう。聴いてるだけで泣きそうになる歌だ。
 「ここへおいで」と呼びかけながら、彼はきっと駆けていって立ち止まっている彼女を、後ろから抱きしめるのだろう、なんてかっちな想像をしてみる。
 そういえば私は何故だか、小田さんの歌に出てくる"あなた"が、年上の女性のような気がするのだ。
 そして"僕"という男性は、いつまでも少年の心を持った大人の男性。
 
 歌の中にちりばめられた忘れられない言葉たち。「愛を止めないでそこから逃げないで」「ぼくがあなたから離れてゆく」「ちぎれた雲はまたひとつに」「冬は夏に帰りたい」「真白な帆を上げて 旅立つ船に乗り」……

みつはしちかこ

みつはしちかこ氏プロフィール

漫画家。1941年、茨城県生まれ。

幼少期から絵や詩、漫画に親しむ。都立武蔵丘高校時代は、放送劇部で活躍。卒業後はアニメーション会社に勤めながら、高校時代の漫画日記をもとに四コマ漫画『小さな恋のものがたり』を描きため、1962年に雑誌『美しい十代』(学研)で漫画家デビュー。
同作は1976年にミリオンセラーを記録、77年に「日本漫画家協会賞・優秀賞」を受賞。
2014年、最新の『第43集』を刊行、50年以上にわたる記録的ロングセラーに。2015年「手塚治虫文化賞・特別賞」「日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞」を受賞。

 

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