ジャケットについて

──今回のジャケットはホントすごいよね。コンセプトだけじゃなく、自分で手掛けたに等しいじゃない?
林檎(笑)実務までね。あと、写真屋の行き来とか。初めての素人仕事ですけど。
──何で今回のアート・ワークは自分でやろうと思ったの?
林檎今回はやっぱり初心に戻るっていうことをすごくやりたくて、コピーもやったし、カヴァーもやったじゃないですか。だから、今回はプロのデザイナーさんにお願いするのだけは違うと思っていて、初めから「アート・ディレクターさんの予約は結構です」って言ってあったんです。で、レコーディングをしているうちに、今回、私、歌ってるだけだし、楽器も弾かないって決めてたから、すごい恥ずかしいんだけど、皆さんに対する感謝の意を示せるようなものにしたいって思ったんです。で、現場では記念にっていうことで写真をたまたま沢山撮っていたから、それを使って今回私がやらせて頂きました。
──もともと林檎ちゃんの現場って、写真を沢山撮ってるんだよね。それがあるから、今回のジャケットが成立してるんだな、と。
林檎そうそう。いつも、“この素晴らしい瞬間を押さえておこう”っていうことで、カメラとかビデオ・カメラがいつも沢山置いてあるんですよ。だから、今回、プロのカメラマンで入って頂いたのは中山麻里さんだけで、それもゲスト・ヴォーカルの録音がある時だけっていう。
──じゃあ、それ以外の写真は全部林檎ちゃんが撮ったの?
林檎F-1っていうカメラで、父から譲り受けたものなんですけど、私はそれを黙って持ち出したので、父は“あれは俺のだ”って納得してないみたい(笑)。
──で、当たり前なんだけど、やっぱり、ジャケットって作るの大変じゃない?
林檎しかも、私、今回はマックを使わずにやろうって決めていて。でも、写真自体、いいものが多かったから、切り取っちゃうのはもったいなかったんだけど、それをグッと堪えて。でも、あれですよ、ちゃんと写真屋さんで現像して、場合によっては反転とか大きさを変えて、それから比率を計算してってやったんですよ。だから、今になって、小学5、6年生の頃に習った「比の計算」が活きた気がして、“やっぱり義務教育は義務教育なんだな”と(笑)。
──(笑)全く役に立たないわけではなかった、と。
林檎だから、落としどころとしては、“これからの子供の教育をどうするか?”っていうところに落ち着きましたけど(笑)。でも、このジャケット、すごく愛が籠もってるでしょ?
──うんうん。
林檎でも、写真を撮りすぎちゃったので、被写体の方で何をやってるのか分からない人が多くなっちゃって。私、もともと、クレジットを正確に表記したい人間なんですけど、デビューした頃って「ディレクター」とか「A&R」っていう肩書きは、素人目には何なのかが分からなかったし、そういうのが嫌いなんですね。だから、すごく説明しづらい人は今回、ブックレットから省かせてもらって、音に携わる人に絞ったんです。
──じゃあ、最初は写真を選ぶところから始めた感じ?
林檎狙い撮りはしてないから、そうですね。で、私はシンメトリーっていうことで考えてたので、“この亀ちゃんの写真と近い森さんの写真は……”っていう感じで探して、“あったあった!”みたいな(笑)、そんな風に写真を探して。
──で、その写真をカッターとかはさみで切り抜いて。
林檎で、今回、シンメトリーっていうテーマと、白と黒っていう隠れテーマがあったんですけど、私の友達でありみっていう子がいて、その子に手伝ってもらったんです。で、写真屋の帰りに、白いものと黒いものを見つけると、すごい見入っちゃったりしてたんですけど(笑)、その子がお腹すいたから買ってきたっていう惣菜が白いトレーに乗ったひじきと黒いトレーに乗ったおからだったりして、「これ、どうしてこんなもの買ってきたの?」っていう話になって、写真を急遽撮ったりとか。
──白と黒もテーマになってるんだ?
林檎そう。あと、今回は撮影時にストロボを焚くのは禁止にして、質感を統一したりとか、そういう細かいところまで気を使ってるんですよ。
──あと、編集/デザインの目で見ると、切り張りがものすごくキレイだよね。これ、かなり気を使ってやったでしょ?
林檎ありがとうございます。や、それはもう、半月くらいかかって、大変でしたね。
──でも、林檎ちゃん、熱中しやすいから、ずっと、この作業やってたんじゃない?
林檎や、違うんですよ。昼間はレコーディングして、終わって帰ってから、すぐこの作業を始めて。で、ありみにも私にも高い理想があって、なかなか進まなかったり。
──林檎ちゃんのこだわりどころは?
林檎何だろう?多分、ありみがこだわったところは、草野さんとのツー・ショット写真で私の頭の後ろにバラが咲かせたりとか、そういう心情を勝手に解釈してるところで。私はとにかくシンメトリーっていうことを心がけましたね。
──でも、こうやってブックレットを見ると亀田さんは汚れ役に徹してるよね(笑)。
林檎(笑)森さんがオリジナルで、亀ちゃんは廉価盤みたくしたかったんですよ。亀ちゃんってカメラを構えると、「何でそんな顔するの」っていう顔をしたりとか、服を脱いだりとか。誤解のないように言っておくと、私、こんな風に脱いでくださいとは頼んでないんです!
──でも、音楽だから音が重要なのはもちろんのこと、アート・ワークも……
林檎エンターテインメント性は大切ですよね。と、言いつつも、B級ですよね(笑)。