是は、十代のあたしが考えた、「人として生きること」に関する集大成である。生を受け、其れが衰えるということは、常に何かの過程に過ぎず、何時だって不完全なものに思えるのだ。あたしの初めてのアルバムタイトルには、そういった意味が込められている。
シーナ・リンゴ
1.正しい街
十八歳のあたしが、温かいものを全て捨てて勝負に出る様子が、鮮明に描かれている。

2.歌舞伎町の女王
同じく十八歳のあたしがよく垣間見られる。

3.丸ノ内サディスティック
東京が好きなのである。

4.幸福論
多少正直になったサウンドで、理想をこねてばかりの幼い自らを表している。

5.茜さす 帰路照らされど…
地元、福岡時代、十六歳のあたしの日常。

6.シドと白昼夢
まもなく十九歳になるという瀬戸際のもの。

7.積木遊び
地元のバンドでやっていた曲を自分でおこし直したもの。

8.ここでキスして。
シンプルなことが大体一番本当に思えたのである。

9.同じ夜
夜はいつも、こんな気分。

10.警告
やはりあたしはメスなのであろう。

11.モルヒネ
十九歳のあたしのひねくれ加減のよく出ているもの。


「無罪モラトリアム」のジャケットはこうして撮影された!
 某月某日。都内のオシャレな某撮影スタジオにおいて、椎名林檎の記念すべきファーストアルバム『無罪モラトリアム』のジャケット撮影が秘密裏に行われた。撮影スタジオに入るなり、メイクもそっちのけで墨をすり筆を走らせる林檎ちゃん。力強い筆使いで書かれるのは『無罪モラトリアム』の題字のようだ。そのまわりをナゼかウロウロと歩きまわる新聞記者(らしき人)に、報道カメラマン(らしき人)に、警備員(らしき人)…。さらに、こんな異様ともいえる雰囲気にとどめを刺したのは、とても堅気の御職業には見えない危険なフェロモンを発する数十名のオジサン達(エキストラさん)! 撮影スタジオには、あたかも場外馬券売場のようなイケナイムードが一気に充満する。そんな中で「凄い! 凄い! あたしのイメージどおり! 」と無邪気に笑顔をふりまく林檎ちゃん…。これが本当にヴィジュアルに細心の注意を払わなくてはいけないはずの、女性ヴォーカリストのジャケット撮影現場なのか? 一体全体、これからどんな写真が撮られようとしているのか? この結末は、是非CD屋さんで確認していただきたい…。