残暑というには、あまりに日差しの強い9月5日。日比谷野外音楽堂で行われたライブイベント『Sweet Love Shower '99』に林檎ちゃんがトップバッターとして出演した。
 バンドのメンバーに続き、ムチをグルグルと振り回しながら林檎ちゃんが登場すると、イベントは始まったばかりだというのに会場は一気にヒートアップ。『歌舞伎町の女王』の泥臭いギターサウンドに合わせて、林檎ちゃんが「あぁ…」と青江三奈ばりのセクシーなため息をつくと、オーディエンスから一斉に「おお〜っ!」の歓声が巻き上がる。
 『歌舞伎町の女王』を一小節だけ歌った後は、ギターを置いて『丸ノ内サディスティック』をソウルフルに熱唱。
 この日の林檎ちゃんは、薄いピンク色のノースリーブのワンピースに、タテ巻カールのヘアスタイルという、いつもよりフェミニンな雰囲気ながら、ライブ・パフォーマンスは無茶苦茶アグレッシブ。右に左にステージ狭しとスキップしながら走り回る。
 「ど〜も!昼間にやるのは珍しいのですが…」
 本日最初のMCでは、たくさんの声援に、ナゼかドリフの中本工事ポーズ(片腕を上げて逆の手でワキを隠す)でセクシー(?)に応えて、ライブではお馴染みの大盛り上がりナンバー『アイデンティティ』へ。拡声器を片手にオーディエンスをアジり倒す林檎ちゃん。十八番の巻舌も絶好調だ。
 煥発入れずに『幸福論(悦楽編)』を、これまた拡声器で捲し立てて、ノイジーなサウンドで林檎ちゃんもオーディエンスも早くもトランス状態。林檎ちゃん、ちょっと白目気味(笑)。
 「次の曲は、ご無沙汰すみませんねシングル『本能』をやらせていただきます」と、拡声器でMCをして、10月27日リリースのニューマキシシングル『本能』をお披露目。
 前半で飛ばしすぎたのか、高音部分が苦しそうだが、その苦しそうに歪む表情でセクシー度倍増。コアなソウルを感じさせながらも、歌謡曲調にソフィスケイトされた楽曲は、『ここでキスして。』を越える大ヒットを予感させずにはおけません。
 『本能』のフェイクをバッチリ決めた後は、暑〜い会場をクールダウンするかのような、幻想的なシンセの音が鳴り響き、『シドと白昼夢』へ。ベースに合わせてヒザを曲げる林檎ちゃんがキュートすぎます。曲の最後には、『正しい街』のイントロのシャウトが入るオマケつき。
 「最後の曲です…」
 白昼夢から呼び覚まされるような林檎ちゃんの言葉にブーイング起きる。しかし、ラストの曲はライブでは初披露の『リモートコントローラー』! 林檎ファンならば、この曲をライブで聴けただけでも十分に元はとれたハズ。 
 怪し気なチェンバロの音色と、スリリングなギターサウンドでシャウトしまくる林檎ちゃん。間奏では、「変身!」の掛け声とともに仮面ライダーの変身ポーズが飛び出すは、ギタリストは倒れ込むはで、もう〜やりたい放題の大暴走。そして、林檎ちゃんが力つきたかのようにステージに座り込んでライブは終了。
 30分弱というアッという間のステージではありましたが、ハードな楽曲を全面に出しながもコミカルな面もしっかりと見せて、林檎ちゃんの魅力を濃縮したような、正に完全燃焼のライブでした。



〈TEXT:ツダケン/unga! 編集部〉