聴いたことがあるような、ないような、この不思議な曲は一体? シングル「りんごのうた」の3曲目に収録されている「リンゴカタログ 〜黒子時代再編纂〜」は、リスナーにそう思わせる何やらいわくありげな曲だ。そこで、この曲に隠された謎を探るべく、編曲を手がけたエンジニアの井上雨迩さんにお話を伺いました。

──この「リンゴカタログ」とは一体どんな曲なんですか?

「この曲は要するに……映像で例えると分かりやすいんですけど、色んな映像を繋いでストーリーを作っていくみたいな、そういうことを音で出来ないかな? っていうところから話が始まって、過去アルバム3枚の音源を引っ張り出して、再構築したものなんです」

──じゃあ、色んな曲のあの部分この部分を切ったり張ったりして作られた、と。でも、この曲はちゃんと曲になっていて、ただ切ったり張ったりしただけではないですよね?

「そうですね。音楽にはテンポやキーなど、色んな約束事がありますし、ただ切ったり張ったりしただけだと音楽にはなり得ないんですよね。だから、そういうところはコンピューターでテンポを合わせたり、事前に元曲のキーも調べておいて、ここでは使える使えないっていう取捨選択をしました」

──歌に関してはいかがでしょう? 歌詞の意味もちゃんと通ってますよね?

「歌というか歌詞の方は彼女が頑張ってやったみたいですけど、これはシングルのカップリング曲の歌詞を、曲と同じく切ったり張ったり加工して出来ているんです」

──過去の曲のみを使うということで、相当なご苦労があったと思うのですが。 「作業をやってる時には当然、彼女の曲を聴くんですけど、気が付くと、曲に聴き入ってしまっていたりして(笑)。曲そのものも出来るかどうか分からなかったし……3週間で無事に完成してホッとしてますね」