03 | Devil in Your Heart

■<di da la la, da la la>という歌で幕を開けて、高速スカに雪崩れ込んで2ビートに接続していく曲です。“Blah Blah Blah”や“CROWS”、“A”に連なる呪文系の楽曲というか、言葉遊びの面白さと音楽的なエッジの立ち方がSiMらしい1曲です。

そう、まさに呪文系。俺も初めて聴いた時に「キタ!」って思ったもん。確かMAHにタクシーの中で聴かせてもらったのが最初かな。

このアルバムで一番最初にできた曲だったから、本当なら気合を入れてちゃんとしたスピーカーのあるところで聴かせたかったんだけど。でもとにかく早く聴いてほしかったから、タクシーの中になっちゃった(笑)。で、その後にSHOW-HATEとSINくんにはエレベーターの中で聴かせたっていう。

■全然気合いの入ったシチュエーションで聴かせられなかったと(笑)。それほど早く聴いてほしい曲だったのは、MAHさんご自身としてはどういうポイントに手応えを感じていたからなんですか。

ヤバい曲ができた!っていう手応えが大きかったんだけど、一方で「これはOK?」っていう試金石になる曲だとも思ったんだよね。この曲がアリなら他の曲も行くところまで行っちゃって大丈夫になるなっていう、このアルバムの分かれ道が“Devil in Your Heart”だったんだよね。展開の多さにしても歌の遊び心にしても、おもちゃ箱みたいな曲だからさ。きかんしゃトーマスもアンパンマンもみんないるよ!っていうごちゃ混ぜのアルバムにするのか、ある程度の型を用意しなきゃいけないのか。その分かれ道をみんなに託した結果、前者になったのが今回の作品だと思うんだけど。……なんか、トーマスとかアンパンマンとか、例が完全に親父目線だけどね(笑)。

ははははは。俺らとしてはMAHくんがそこまで考えて聴かせてくれてるとは知らなかったから、素直に「いい曲だね!」って盛り上がってたんだけど。ライヴでもみんなが歌ってるのがイメージできたしさ。展開が多いのにシンプルに歌える曲として、新しい武器になると思えたかな。

確かに、めちゃくちゃキャッチーだなっていうのが第一印象だったよね。でも家に帰ってちゃんと聴き直してみたら、ベースがめちゃくちゃ動いてんの。俺にとっては、面倒臭いなあ(笑)……っていう1曲でしたね。MAHはMIDIで作ってるから、人の指のことやフレット上での動きを全然考えてないんですよ。

いや、それは裏テーマがあったの。ベースが難しくて面倒臭い曲を作ろうって。

■それはどうして?

SINくんはめちゃくちゃ上手いベーシストなのに、バンド業界で過小評価されてる気がしたんだよね。動きとかスタイルにばっかり目がいきがちなんだろうけど、そもそも技術として半端じゃない人なの。だから、思わずベースに目がいっちゃう曲を作りたかったんだよね。……そしたら<di da la la>のほうが強すぎたんだけど。

はははははは!

申し訳ない!(笑)。元々GODRiとSHOW-HATEはやることが多すぎるんだよね。GODRiはシンセを鳴らすパッドもあるし、SHOW-HATEは鍵盤も弾く。じゃあ今度はベースの番だぞと。SINくんの凄さを存分に見せつけられる曲を作ろうっていうのはずっと考えてたかも。

■SiMの曲ってヘヴィなだけではなくて、実はリズムがかなり重要になるものも多いじゃないですか。レゲエパートの溜めだったり、疾走とブレイクダウンの落差だったり。それでいうと、リズムの面で要求されるものは過去最も多い作品だと思うんですが。

本当にそう。ただ、そこに挑戦していくことで毎回プレイヤーとしても成長できるから。逆にシンプルにいけばいいところも見えてくるし、音源でもライヴでも幅が生まれてくるのが楽しいんですよ。いい曲やなって思えたら、あとはもう求められることに必死に取り組むだけですよね。その点、この曲はかなり速いスカやから大変でしたけど。

振り返ると、『LIVING IN PAiN』の頃まではスカが多かったんだよね。200人規模のライヴハウスでツアーをやってた頃だから、お客さんが踊れるテンポのスカを増やしてたんだよね。だけど規模が大きくなるにつれて、じっくりとしたレゲエが増えていったの。そういう音楽遍歴があった上で、しばらく仕舞ってたテンポの早いスカを再度やってみたら面白いんじゃない?っていうのがこの曲だね。

■しかも<this is a message to you Rudy>という、THE SPECIALSの楽曲から引用したと思わしき一節が出てくるのも、ニヤリとできるポイントですよね。THE SPECIALSがルーツにあるのがよくわかる、ルーディで湿ったグルーヴを持ったスカになってる。

この曲自体でイメージしてるスカの感覚って、俺個人的にはRANCIDなんだよね。でもRANCIDの前身はOperation Ivyだし、Operation IvyはTHE SPECIALSに影響を受けてたわけで。だからRANCIDをイメージするにあたって自分の中の音楽地図を広げた結果、親玉のTHE SPECIALSが出てくる感じにしたかった。

■自然体とは言いつつ、ご自身のルーツが全部線になって出てきてる。音楽人生絵巻のような作品でもあるのかなと。

音楽の歴史やルーツが1曲の中で繋がっていくのは楽しいんだよね。自分の中だけの遊びかもしれないけど、音楽も辿っていけば歴史の中で全部繋がってるわけじゃない?裏打ちしてたらお客さんも楽しめるよね!っていう安易なスカじゃなくて、「RANCIDもTHE SPECIALSも好きで、彼らのメッセージに感動してきたんだ、だからスカやってんだよ!」って言えるスカを出したかった。上辺だけなぞっていろんな音楽をやるんじゃなくて、ちゃんと人生観として共鳴してきたものだから説得力ある音楽にできるんだよと。そもそもメッセージって、そういうもんだと思うのね。

■実際のメッセージの部分で伺うと、「人間の中には悪魔も天使も潜んでいると言うけど、それも自分が決めることだ」というのは、これまでもいろんな曲で歌われてきたことだと思うし、白も黒も自分次第であるという人生観は一貫していると思うんです。改めて、こういう歌はご自身のどういう部分から出てくると思われますか。

確かに、この曲で歌ってるのは度々口にしてきたことなんだけど。そこから、自分の中の悪魔がうるさいっていう歌にしたらどうかなって考えて。自分の人生観の根っこを歌ったものだからこそ、言いたいことを言ってる部分と言葉遊びを混ぜるSiMらしさも入れようと思って<di da la la>が出てきたのね。そうなると今度は、韻の踏み方も使い尽くしちゃったなあと思って。そしたらさ、もう固有名詞を使うしかないわけですよ(笑)。で、その時にやってたTVゲームから発想を得て、バスケ用語の<ankle breaker>とかプロレスラーの<The Undertaker>とかが出てきたんだよね。

■なるほど。ロックが受け継がれてきた歴史線と、歴史があるからこそ生き様をちゃんと叩き込もうという気概と。その全部が遊び心の上で混ざっている非常にSiMらしい曲だと感じます。

そうだね。そういう意味でも、この曲が1番最初にできてよかったんだろうね。

05 | BASEBALL BAT

■この曲は今作の肝であり、SiMが果たした変化の核心でもあり、そして問題作でもあると思います。

はははははは。はい。

■SiMとして初めてメジャーコードを用いた曲で、ダークでヘヴィというイメージを脱いでいる。ある意味、自由に自分たちを解き放とうとした今作を象徴する曲だと思ったんですが。

そこにいる人全員がサビを歌えちゃうような、大合唱系の曲をやりたいなと思って作り始めたのが“BASEBALL BAT”で。で、俺にとって大合唱できるサビと言ったらRANCIDなんだよね。RANCIDってタトゥーもゴリゴリに入ってて、鋲ジャン着てて、モヒカンのスパイキーヘアで……見た目はワルいんだけど、でも楽曲は結構明るいんだよね。メジャーコードを使ってるし、ポップさがある。そういうRANCIDがいるなら、俺らもやるしかねえなと。元々はTRIPLE AXEの15人全員で歌えるものをイメージしながら作ったんだけど、明るい部分がめちゃくちゃ明るい分、ブレイクダウンは行けるところまで行って。力技なんだけど、でも曲の持ってる力として今作の軸になる楽曲になったと思う。

■軸になるというのは、これまでのSiMのイメージとしても、音楽としても、トライしなかった陽の部分に飛び込めたから?

そうだね、今までのSiMのイメージになかったメジャーコードの曲が軸になるんだっていう意外性は間違いなくあると思う。そしてそれ以上に、『SEEDS OF HOPE』で“KiLLiNG ME”が軸になったように曲のパワー自体が強いと思うんですよ。

ただ、さっきMAHくんが“Devil in Your Heart”を作った時に「アリかナシか考えていた」と言ってたけど、俺個人としては“BASEBALL BAT”のほうが「大丈夫か?」って思ったの。この明るさやポップさは、明らかに今まで出してこなかったものだから。だけど自分たちの好きなことをやろうっていう今回のコンセプトに立ち返った時に、SiMでもやれると思ったんだよね。

■実際に明るいところは持っている4人ですし、SiMというバンドのイメージとしてじゃなく、そもそも持っているものとして表現できたというか。

そうそう。やってみたら、すごく前向きに取り組むことができたから。SiMでも(明るい曲が)できるじゃん!って思えたのが嬉しかったし、そういう新しい扉を開いてくれた曲が軸になるのも面白いことだったし。実際にTRIPLE AXEのツアーでやった時にも、間違いねえなって実感できたしさ。前までだったら不安になったり悩んだりしてたかもしれないんだけど、守りに入るよりも好きなことをやろうっていう今だからこそ楽しんでやれた曲かな。

逆に“BASEBALL BAT”がSiMの代表曲になれば、俺らはもっと自由になれると思えたんですよ。この先が楽しみになる、きっかけのような曲ですね。

音の面でも、思い切りポップパンクに寄せて作ってみたら違和感がなかったからね。ここまでポップパンクに振り切った曲は今までになかったけど、でも実際に通ってきた音楽であることは間違いない。そう考えたら振り切るだけだったよね。

■先ほど「MAHというキャラクター」と「本来の自分」の乖離をそのまま振り切らせて自由になれたとおっしゃいましたが、ダークさやヘヴィネスだけじゃなく、明るい部分も解き放てた手応えと解放感がこの曲においては大きいのではないかと。そのあたり、ご自身の気持ちとしてはどうでしたか。

もちろん「 SiMとしては明るすぎないか」っていう話になるのも予想はしてた。ただ、TRIPLE AXEで北海道のフェスに出た時にやってみたら、新曲とは思えない盛り上がりになって。そこで確信を得たかな。まだ開けてなかった扉を開けられたと思うし、だけどそもそも、好きで聴いてきた音楽の中にはこういう明るいものもあったわけで。そういう意味で、ある種の回帰によって自由になれた感覚はあったかな。まだ見せてなかったけど、ずっと自分自身の中にあったもの……自分のドロドロしたところを出した前作があったからこそ自由に表現できたものなんだと思う。よりダークになるんじゃなくて、こうして明るい面が出てきて本当によかったと思うんだよね。

■本来の自分を解き放った時に、救いようのない闇ではなかった。

そう。それが自分でも嬉しかった部分。だからこそ、みんなで歌えたらいいなと思ったんだよね。サビと言えば綺麗なメロディにハーモニーがついてて……っていうのがこれまでだったけど、もう大合唱でよくね?と思って、デカいメロディをドーンと乗せちゃいました。

■ただ、どーんと気持ちよく合唱できる歌が、どの曲よりも狂った内容になってます。

くくくく。それが最高なの(笑)。

■和訳を少しばかり読み上げますね。<このバットでお前の頭をブン殴ってもいいかい>。<とにかくお前をぶっ殺したいんだ>。

ははははは。どうしてこんな歌になったんだろうなあ……でもやっぱ、やるならトコトンやるしかなかったんだろうね。サビのメロディに合わせてふわっと歌ってたら、まず<can I>っていう部分が出てきて。つまり「〇〇してもいいかい?」に続く言葉を探してるうちに、感覚的にピッタリきちゃったのが<smash your head>だっただけなの(笑)。<can I smash your head>っていいじゃん!と思って、じゃあ殴るなら何で殴るのか考えて……殴るならバットだろと。よって“BASEBALL BAT”になっちゃったね。ははははは。

■笑ってますね。その発想の飛び方自体がSiMの根源的な狂気のような気がします。

ま、みんなでこの歌詞歌えたら最高だよね。当然だけど、普段は絶対に言えないことだからこそ、叫ぶと気持ちいいんだから。なかなか言えないことだけど、誰しもが一度は抱いたことがあるんじゃないかっていう感情だと思うし。そういうものを吐き出せるから、歌はいいんだよね。

■その思想には完全に同意です。その脳内については、MAHさんのソロインタヴューでも詳しく聞いていきますね。

了解です!

10 |CAPTAiN HOOK

この曲はもう……レッチリ(Red Hot Chili Peppers)っすね(笑)。

■はい(笑)。

「めっちゃレッチリじゃん」って言われたら、「そうなんだよねー」としか返せない曲だよね(笑)。レッチリならどうするかな?レッチリはどうやってるかな?みたいな。これだけロックバンドの系譜について言ってるのに、意外とレッチリは全然やってこなかったんだよね。でもレッチリはずっと最強だと思っていて。

■初期レッチリ感が強烈な曲なんですが、SiMにとってのレッチリの最高さと、今こそやろうと思った理由を教えてください。

そもそもバンドって、全員強いっていうのがいいと思うの。その点で言うと4ピースの最強はレッチリだと思ってて。

目につかないヤツがいないもんね。

そうそう。誰を見てても楽しいから。全員がトップレベルだし、トップレベルのプレイが重なって生まれるパズル感も好きだし。で、そういう音楽パズルを一切使わないでただのいい曲をやる時もめちゃくちゃいいし。俺はパンクとかヘヴィな音楽に傾倒してたけど、その一方で、不動の1位にはずっとレッチリがいて。いつかやってみたいと思ってたんだよね。

■たとえば今回の作品の特徴として、ラップが多用されているというポイントがあります。音楽的になんでもやるモードになったことはお話いただきましたが、その中でラップも全解放できたからこそレッチリ的ラップメタルへのアプローチも可能になったということですか。

ラップを多用するようになったのは理由があって。歌はハイトーンなもののほうが抜けてきて気持ちいいっていう固定概念があったんだよね。でも俺は元々そんなにハイトーンじゃないから、無理しない形で幅を持たせるにはラップも思い切りやってみようと。そういうきっかけだったんだよね。で、その天才型がレッチリのアンソニーだと思ってて。たまに高い音で歌うけど、基本的には誰でも歌える高さが多い。誰でも歌える高さで幅もあるっていう意味で、アンソニーの歌はいいなって思ったのが、ラップも増えていった理由なんだよね。低い音程の気持ちよさもあるっていう……それもあって、この“CAPTAiN HOOK”みたいな曲を作ってみたいと思ったの。

■そして、先ほども“YO HO”でバンドシップの話が出ましたが、レッチリのように4人それぞれカッコいいのがバンドの理想形だという前提があった上で、改めてSiMというバンドはどんな繋がりで成立していると思われますか。

技術だけで言ったらすごいプレイヤーはいくらでもいるんだけど、自分が一番カッコよくいられて、やりたいことを実現できるのはこの4人なんだろうなあ。未だに4人で練習スタジオに入ることも全然ないし、普段から話し合うわけでもないんだけどさ。やっぱりバンドって、個々がバラバラだったとしても「音を鳴らすならこいつだ」っていう距離感こそが素敵なところだと思うの。逆に言えば、馴れ合いじゃダメなんだよね。お互いにヒリヒリしたところもあるから、サウンドとしての緊張感やソリッドさも生まれてくるわけで。
それにさ、仲良しこよしの友達の距離感でやってるバンドこそ、喧嘩したりするでしょ。で、喧嘩の雰囲気がライヴに出ちゃうとか。俺はそれが嫌だから。結局のところ、常に一緒に過ごしたり友達みたいに付き合ったりするんじゃない距離感を自然に守れてるのがこの4人で、俺らが音楽をやるにあたって一番楽な関係性なんだと思う。

■音に対する信頼とも言えるし、確認しなくたって個々が進んでいるとお互いに信じる心でも言えますね。なおかつ、このバンドが歌い続けてきたことにも通じることで。人を傷つけない生き方、自分が傷つかない生き方をするために、人との距離感を間違えちゃいけないんだ、だからこそ強く自分を貫くんだっていう。

ああ、そうだね。結局、人間との距離感を間違えるから人を傷つけたり、自分が傷ついたりするから。それはバンドでもそうだと思うし、個々の強さっていうのは人との距離感と関係性を守るために必要なものなんだと思ってる。

まあ結局は………………………………
こいつらしかいねえってことでしょ。

照れてだいぶ時間かかったな。

ははははははは!

11 | SAND CASTLE feat. あっこゴリラ

■この曲は2019年の『DEAD POP FESTiVAL』であっこゴリラさんを迎えて初披露された曲です。スティールドラムにアフリカンなリズム、ラップもてんこ盛りの新鮮なアレンジですが、世に放たれた順番としてはこのアルバムの中で一番早かったわけで、結構な新境地で布石を打つんだなという印象が強烈にありました。

俺個人的にも、凝り固まっていたものが解けたきっかけの曲でしたね。そもそも「ドンキーコングのリズムで!」みたいな言葉がMAHくんから出てくるのも面白かったし。だけど勢いだけじゃなくてクールな感じがあるのもいい。バンドにとってまさに新境地になった曲ですね。

■クールさとおっしゃいましたが、リズムやラップの軽やかさと、一気にヘヴィになるサビ。そのコントラストと押し引きが非常に気持ちいいですよね。

でも、最初はヘヴィになるパートがなかったんだよね。ただただ、HIPHOPのトラックを俺らが作るとしたら?っていうだけだったの。で、あっこゴリラのヴァースが終わった後をずっと考えてたんだけど、結局は「いったれ!」と思って5弦ベースと7弦ギターでドーン!と落とした(笑)。それで、最終的にはいわゆるミクスチャーロックっぽい感じでまとまったと思う。

■とはいえ、いわゆるラップメタルやミクスチャーロックとは全然違う聴き心地になってるのが面白いんですけど、そのあたりで何か思い当たる秘訣はありますか。

たぶんそれは、「ギャングスタ感」が一切ないって部分なのかもしれないね。ちょっとメタリックというか、あくまでソリッドな感じでいってる。ラップメタルやミクスチャーロックって、ヘタしたら古臭くなっちゃうじゃない?そこを上手く取捨選択して、あくまで今のサウンドデザインにできてる。そこが大きい気がする。

サウンドの面で言うと――5弦ベースにしてから“DiAMOND”と“LiON’S DEN”を作って、その後に録ったのがこの曲だったんですよ。で、5弦でもこういうアフリカンミュージック的なノリが出せるんだって気づいて。その重たさとグルーヴ感の混ざり方がよかったのかもしれないね。自分の得意なハネたノリに対して、サウンドで新しいことができた実感があった曲かな。

■同じリズム隊として、GODRiさんはこの曲に対してどういうことを感じていましたか。

イントロからAメロは「ドンキーコングの感じで!」って言われてたから、割とイメージできたんですよ。だけどサビにかけてラウドになっていく展開やし、どこまで裏打ち感を出してどこまでラウド感を出すのか、めちゃくちゃ苦労した曲ですね。

ああ、思い出した。ギターへの注文も「きっちり弾き過ぎないで」ってことだったの。ラフな感じで弾けと。しかもリズムも緩くって言われてたから。各パートの擦り合わせが相当大変だったね。

■つまりMAHさんは、きっちりスクエアな音じゃなくグルーヴ自体が主役になる曲だと最初からイメージしていたと。

うん、そうだね。だからメンバーへの注文も結構曖昧だったと思うの(笑)。口で細かく音の感覚を説明し続けたね。

■元々はHIPHOPのトラックをイメージしていたとおっしゃいましたが、そこに生のグルーヴを持ち込もうという意図があったわけですよね。HIPHOPやラップミュージックがポップミュージックの中心になっている流れにおいて、それをロックバンドとして調理するにはどうしたらいいのかというお題もあったんですか。

そうだね。だから俺もHIPHOPを改めて聴き直していて、ちょうど、遊びでHIPHOPのトラックを作るのにハマってた時期だったんだよね。やっぱり俺個人的には、ロックとラップミュージックの中間みたいなオールドスクールのHIPHOPが好きで、そんな中でトラックを作るならあっこゴリラに歌ってほしいな、歌ってもらうならあっこゴリラにとっても新しい挑戦がある曲がいいなってイメージしていって。その結果として、SiMにしかないヘヴィさも盛り込んだトラックにしたいと思った感じだね。

■以前も“CROWS”のイントロでシド・ヴィシャスの発言をモチーフにしたドープなラップがあったし、HIPHOPの匂いを感じることはあったんですが。ここまでラップに振り切った曲は初めてですよね。そもそもMAHさんは、HIPHOPという音楽とカルチャーにはどう触れてきたんですか。

俺は世代として、ZEEBRAさんとかの日本語ラップを聴いてて。マニアほどじゃないけどちゃんと聴いていたので。憧れはあったんだよね。でも日本語に限らずHIPHOPを聴いている中で、俺はやっぱラッパーじゃなくシンガーだなと思ってきて。ただ、好きで聴いてきた音楽として「いつかはやってみたいな」と思っていたんだよね。なら、もうここでやっちゃおうと。今はまだバリバリできるってレベルじゃないけど、ラップもレベルアップしていけたらと思ってる。

■改めて、SiMが鳴らしている音の中にはレベルミュージックしかないと思ったし、その時代その環境で人間が自分を証明して強く生きていくために生み出した音楽たちを背骨にしているんだなと。新境地だからこそ、SiMの背骨になっている精神性を改めて実感しました。

ああ、そうなんだろうね。HIPHOPだってパンクと通ずる精神性を持ってるし。それを噛み砕いた形で提示するのがSiMの音楽なのかなって俺も思ってて。そういう意味で、根っこは変わらないまま新しいことにトライできた曲だね。

12 | BULLY

■スティールドラムの音色が印象的なイントロですが、バンドサウンドはよりヘヴィに刷新されていて。その上でサビで爽快に突き抜けていく。SiMのストレートな部分とカオスがバランスよくミックスされている曲です。

やっぱり曲をたくさん作ってくると、展開を盛り盛りにしたくなっちゃうものなんだよね。だけどこの曲は展開やラップも盛り込んだ上で、3分程度に収められていて。よくできました!っていう曲だね。俺にとっては3分は短いんだけど、たぶん今の聴き手にとってはちょうどいい長さなのかなと思ってて。その中でどれだけ面白い展開と爽快感を聴かせられるか。そこは大事にした曲だよね。

■音楽をストリーミングサービスで聴くことが主になった今、コンパクトな楽曲でどれだけのカタルシスを生めるのかはとても重要ですよね。視聴環境の変化によって、シーン全体のソングライティングも変化してきているのは間違いないことで。

ああ、展開が気持ちよくハマってるから物足りなさもないし、サビも突き抜けてるし。曲がしっかり成立してるよね。それに、コンパクトなんだけどこの曲の空気感がしっかりあるのは、コード感が大きいと思うんですよ。KORNみたいに、半音の移動を繰り返していくのをやってみて。短い中でもカタルシスを作っていく手法として、コード感の新しいトライはかなり大きかったと思いますね。

俺は、この曲のリフがめちゃくちゃ好きで。ねちっこい感じというか……SHOW-HATE、こういうの弾くの上手いよね。

おお、あざっす(照笑)。

この曲って、弾いてみるとギターがちょっと難しいと思うんだよね。裏拍のリズムが入ってるから、グルーヴを掴むのが結構大変。だけどこれって2000年代初頭のミクスチャー感で、SHOW-HATEはそういうのが得意だと思うんだよね。

♪ダッダ、ズダーダっていうリフの後のフレーズで結構突っ込みがちになっちゃうんだけど、そこでなんとか溜めるっていうのは意識したかもね。それがねちっこい感じになって、SiMの音楽自体の粘り気に繋がってるのかもしれない。

■リフにしろリズムにしろ、SiMの音楽において「溜める」っていう感覚はかなり重要ですよね。それが、ダブのじっとりとしたリズムと、一気に行くところの気持ちいいコントラストになるわけで。

ああ、それってよく言ってくれるよね。だからこそサビの8ビートとメロディが気持ちよく感じられたり。

確かに。このメロディ自体は割と何も考えずに出てきたんだけどね。これでいっか!みたいな感じで、1テイクで決まった。それくらい、自分でもいいメロディだと思えたんだよね。

■そして、メッセージの部分も痛烈な歌でもあります。これは、SiMが「100通り以上の武器」を持つ理由そのものが歌われているような曲で。<何で他人のために俺が変わらなきゃならねえんだよ?><俺は俺だ>と歌われている通り、自分の大事なものに干渉してきたり自分を傷つけたりするものに対してSiMは武器を掲げるし、俺は俺、お前はお前だっていう歌は、お互いに一線を超えず尊重し合うための歌でもある。それは言い換えてみれば、大きな意味での優しさでもあると思うんですよ。

今ってさ、〇〇ハラスメントっていう言葉をよく聞くじゃん。いじめの問題も未だに消えないし。ああいうのを見てて、もし問題が解決するとしたら「お互いにほっときましょう」っていう態度を個々が持つことしかないと思ったんだよね。でもなぜか知らないけど、人は相手の意見を潰したり変えたりしたがるでしょ。それ、自分がやられたら絶対に嫌じゃん。お互いに「はいはい、了解!」って言ってればいいじゃない?必ず相手を自分に従わせる必要なんてない。そういうことをこの数年で改めて思ったんだよね。

だけど時代が進むにつれて、尊重し合うどころか自分の意見が正解だって言いたがる風潮ばっかりが強まってて。だからこそ、この数年で感じてたこと――「ほっとけよ」っていうことを歌にしたいと思ったんだよね。ちょうど歌詞を書いてた時に、神戸の教員のいじめ問題を見たのも大きかったんだけどね。だから1番ではいじめとかに対して言及していて、その上で俺自身にいちいちマウント取りたがる人たちのことを絡めていて。2番では、会社とかでのくだらないハラスメントや陰口に対して歌っていて。それも全部、根本に立ち返ると「私は私、あなたはあなた」ってことなんだよね。それをストレートに歌った曲だね。

■先ほども、この4年で「SiMは何をやってるんだという声が聞こえてくることがあった」とおっしゃいましたが、外野の声がうるさいからこそ自分自身が一度「俺は俺だ」と確認する必要もあったんですか。

たとえば……俺らみたいなバンドマンにとって、一番外野の声がうるさいのがSNSで。実際にうるさい声も聞こえてきたんだよね。でもね、これは言葉にするのが難しいんだけど、いつからか飛んできた言葉が目の前でフワーッと消えるゾーンが生まれたの(笑)。聞こえてるし見えてるけど、野次が俺の心までは届かない。なぜかはわからないんだけど、そういう鋼のメンタルを習得できたんだよね。

■その領域はどう見つけたんですか。

3年、4年前くらいかなあ。やっぱりMAHはMAHで、本来の俺は俺だ、っていうふうに自分の中で確立できたのがデカいんだと思う。たまに見せしめとして論破はしてあげるんだけど(笑)、SiMのMAHが何を言われようと俺はダメージ喰らわないって思えた瞬間に「はい、ほっときます」っていう気持ちになれたんだろうね。何を言われても、MAHも俺も変わることはないんだよ。

Disc 2
01 | DiAMOND
02 | NO SOLUTiON
03 | LET iT END
04 | LiON’S DEN

■ここからは、今作のDisc 2に収録される4曲について伺っていきます。2016年10月の横浜アリーナ公演で披露されて、なおかつその映像作品のエンドロールで流れた“NO SOLUTiON”以外は今作に至る以前の配信シングルとしてリリースされてきました。いわば、新たなトライが多くなされた今作のプロトタイプとしても聴ける楽曲たちなのかなと。

そうだね。この中で言うと、“NO SOLUTiON”が一番古いってことになるのかな。まずこの曲から話していくと、『THE BEAUTiFUL PEOPLE』はアリーナクラスでのライヴも見据えてスケールの大きな曲を多くしたアルバムだったから、今度は逆にラウドに振り切って、ライヴハウスで一気に盛り上がる曲を作ってみようっていうところから出てきたのが“NO SOLUTiON”だった。音楽的には、シンセのフレーズがギターリフの上に入ってるのが今までにないトライで。それがアリかナシなのかでこれからが変わってくるなと思って、これもまた分岐点のつもりでメンバーに聴かせたんだよね。そしたら反応がよかったから、新しいタームに入れたきっかけの曲だね。
……なんだけれども、さっきの歌の話で言うと、メロディをライヴで歌えない高さで作っちゃったんだよね(笑)。ライヴだとなかなか出にくい部分があって、なぜかサビでその高さにいっちゃったんだよね。だから、この曲のお披露目ライヴ以来ずっとやってないんだ(笑)。お蔵入りかなあと思ったんだけど、あまりにも音源化希望の声が多かったので。ライヴでやれるかはわからないけど、みんなのために入れようと。

■この曲は、メロディの飛翔感や楽器のフレーズのキャッチーさも含めて、相当手応えがあったんじゃないかと思うんですが。

そうだね。途中静かになるところのギターフレーズも面白いし。あれは忍者をイメージしたやつなんだけど(笑)。

そうだね。そのあたりも面白い試みだったし、この曲を作るまでは、ギターとベースのリフの上にリード楽器を乗せないっていうのがSiMにとっての「リフ」の定義だったんだけど、一度そこを取っ払ってみたことで新しい可能性を得られたんだよね。この曲がなければ今回のアルバムも全然違うものになってたのは間違いない。

そうだよね。この頃からシンセもどんどん入れるようになったし、大きい分岐点だったね。

■逆に言うと、この頃から「ナシ」を「アリ」にしていかないと次のステップに行けない感覚があったんですか。

そうだね。そもそも俺がシンセを入れてなかったのは、Rage Against The Machineの影響だったんだよね。「電子音を一切使わない」って言い切ってたのがカッコよくて、自分もそう言い張ってた節はあるの(笑)。でも“GUNSHOTS”とかができたことで、アリなんじゃねえかと思い始めたんだよね。

そう考えると、“Amy”や“WHO’S NEXT”でダブステップを入れてみたのもデカかったよね。そこから“GUNSHOTS”を経て、“NO SOLUTiON”でシンセがリード楽器として初めて登場するに至ったという。

まあ、GODRiの負担は大きくなるんだけどね。電子パッドの分量も増えたし、電子音を流すのはGODRiだから。

小節ごとに俺が叩いて電子音を流す仕組みになってるんやけど、普通は同期でやっちゃうところをギリギリまで人力でやるのは、ひとえにグルーヴへのこだわりなんですよ。あとは、ここまで人力でやってきたなら引き下がれないだけでもある(笑)。ただ、やってみればできるので。全然大丈夫ですけどね。

■そうしてシンセをリード楽器として押し出すトライがあった上で、“DiAMOND”“LET iT END”“LiON’S DEN”ではさらに、今作の音楽的解放に繋がる実験とヒントが散りばめられた曲たちだったとお見受けします。ラップの多用も、5弦ベースと7弦ギターの登場も、この頃からでした。

“DiAMOND”を作った頃には、もう迷いがなくなってて。好きに作ろうっていうモードで振り切れてたと思う。“LET iT END”の場合は“EXiSTENCE”に引き続いて『神撃のバハムート』のタイアップだったから、“EXiSTENCE”との対比も考えてたんだけど。だけどそれ以外は、どこまで実験をしてどこまで攻撃的に行けるか、自由に作れてたね。

■とはいえ、“LET iT END”では「俺はまだ終わる気はない」という宣誓のような言葉も出てくる。『THE BEAUTiFUL PEOPLE』のタームが終わってからのリスタートも感じさせつつ、この先への切実さも感じさせる歌になっているのが印象的だったんですが。

もちろんタイアップ曲ではあるんだけど、限りなく「お任せします」っていう感じだったんだよね。それこそ“BULLY”みたいに外の世界との対峙がテーマになっている場合はそこから言葉が出てくるけど、なんでも自由に書いていいとなると、真っ先に出てくるのはやっぱり自分との闘いの歌なんだよね。

■MAHさんは、どんな自分と闘っているんですか。

やっぱり、「気づいたら怠けてしまう自分」と闘ってるんだと思う。自制と自律とずっと向き合ってる感覚があって。それはこの先も続いていくんだろうなって思う。それに、一見他者に吐き出している言葉でも、自分への戒めの意味も持ってるんだよね。そこは変わらないかもしれないね。

■そういう普遍的な部分と、音楽的な実験。両方がドバッと叩き込まれているという点では今作に至るレジュメのように聴ける4曲だと感じました。

本当は本編に入れて17曲のCDにしたかったし、そもそもは20曲くらい入れたかったんだよね。だけどそもそもCDの容量に20曲も入らねえわと気づいて(笑)。そうかRANCIDは1曲が2分くらいだったから20曲も入ってたんだなと。それでDisc 2にまとめたんだけど……確かに言われてみれば、『THE BEAUTiFUL PEOPLE』の後にSiMから遠ざかっていた人が聴いても「ああ、この4年の間にこうなってたのか」って思えるような、間を埋めてくれるCDになってるのかなと。Disc 1を際立たせる意味でも、重要な4曲だと思うよね。

■それともうひとつ。“LiON’S DEN”はプロレスのタイアップになった曲でありながら、プロレスを通じて生き様の歌になっていきますよね。この曲を象徴にして、今作はMAHさんが好きなカルチャーが歌になっているところも多い。そういう意味でも新しい側面を見せて、SiMが持っている表情の多さや興味深さも表しているのが“LiON’S DEN”だと思ったんですよ。

まあ、いろんなカルチャーを通ってはいるけど、特にプロレスからは大きい影響を受けてきたからね。わからない人にはわからないかもしれないけど、「それってプロレスだよね」っていう表現があるじゃない?言わなくてもいいことを敢えて言って場を盛り上げる、みたいな感覚を「プロレス」って表現することがある。で、「プロレス」っていう言葉がSiMのMAHのすべてだと言えるくらい、俺が表現してきたことそのものなんだよね。SNSでの発信、ライヴでの言葉――普段なら「言わないことが美徳だ」とされることを敢えて言って、お客さんや出演者を焚きつけて燃え上がらせるパフォーマンス。それは全部「プロレス」なの。<マイ ライフ イズ レスリング>っていうのはそういう意味なんだよね。もちろん炎上したことも何回もあるし、それによって学んできた歴史がある。だからって思ったことを何も発信しないのは違う。思ったことをちゃんと言って、人を傷つけないギリギリのところで毒をエンタテインメントにするのがSiMのMAHだと思ってるんだよね。

■なるほど。「プロレス」は闘いだけど、相手を否定することなく受け止めて、さらに面白い展開にして返すっていう面がありますよね。SiMの歌全体にも通ずる話だと思います。

そう、人を傷つけないでエンタテインメントにするっていうのが最高なの。小学生の頃からプロレスが好きだったけどプロレスラーにはなれなかったし、かと言ってプロレス業界にも入れなかったわけ。だけど別でバンドっていう夢を見つけて、気づいたら仕事としてプロレスと関わることができて。それはマジで夢があることだよね。幸せな曲だと思う。

■ということで、ここまで17曲を解説していただきましたが、改めて自分にとってどういう作品になったかを教えていただけますか。

改めて、1曲も似てる曲がないね(笑)。バリエーションが豊富だし、だけど歌詞も含めてすべてに意味がある、余すことなく聴いてほしいなって思える自信作ですね。自分にとっても全曲がキラキラしてるから。

まあ、俺はただただ自分のやりたいフレーズやプレイを詰め込んだだけなんだけど(笑)。毎回そうだけど、思い切りやれたことが嬉しいですね。

■了解です。GODRiさんはどうですか。

毎回チャレンジがありますけど、4年ぶりのアルバムっていうこともあってより一層フレッシュな気持ちで作れたのが今回で。さあこれからどうなるかなって。昔『SEEDS OF HOPE』を作った時みたいに「さあ行くぞ」っていう感覚に近いですね。

■さあ行くぞ、という気持ちで行く次のステップは、どういう段階だと思われますか。

そうだな……この前“Devil in Your Heart”のMVを撮ったんだけど、そこに出演してくれる子供たちが楽屋で<di da la la>って歌ってたんですよ。それを見た時に、子供にも刺さるかもしれないと思って。つまり、「みんなのうた」なんじゃないかな。ラウドミュージック、レゲエパンクを「みんなのうた」にできる可能性を秘めたアルバムなのかなって思う(笑)。それくらい、理屈を超えて広がるメロディや音が詰まってるのかなって。だからね、お客さんは別にアルバムタイトルは覚えなくていいんだよね。とにかく曲を聴いてほしいし、好きに歌ってほしい。“BASEBALL BAT”のサビだけは覚えてきてほしいけど(笑)。

■はい(笑)。<can I smash your head with a baseball bat?>。

そう、そこだけはお願いします!



interviewed by Daichi Yajima

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