01 | No One Knows

■SiMの王道としてのニューメタルに、リフの上を飛んでいくシンセのフレーズ、ドラムンベースまでが飛び出す疾走感満載の1曲です。この曲はどういうところから生まれてきたのか伺っていいですか。

(アルバムの 1曲目って本当に大事で、再生ボタンを押した瞬間のパンチ力とか爆発力を意識して毎回作ってて。だけど今回は曲が出揃った時に「1曲目っぽいのがない」と感じたんだよね。それで1番最後に作ったのが“No One Knows”で。曲そのものはストレートなラウドって感じだけど、SHOW-HATEが作ってくれたDnB(ドラムンベース)のフレーズがあることによって、いい感じのレゲエ感が足されてSiMらしい形になったと思う。

元々、あのフレーズは別の曲として作ってて。そしたらMAHくんから「イントロに使ってもいい?」って聞かれて。俺としてはもちろんOKだったんだけど、そこにMAHくんが裏打ちの鍵盤を入れてくれたんだよね。それで一気にパンチが出たかな。

■これまでのアルバムでも1曲目の爽快感は強烈だったわけですが、SiMにとっての「パンチ力」とは、どういう部分に宿るものだと思われてるんですか。

俺個人としては、ライヴの1曲目っていうイメージかな。だからイントロがすごく大事になってくる。イントロで一気にSiMの世界に引きずり込めて、サビで爽快感のある歌が飛び出す……そこがSiMらしさに繋がる気がする。その肝になるサウンドの部分はGODRiとSHOW-HATEがかなり練ってくれたんだけど。

■音のレイヤーはかなり多いと思うんですが、それを混沌としたものではなく突き抜けた爽快感として聴かせるためのサウンドって、今回はどう作っていかれたんですか。

これは個人的な反省点の話になるけど、前作(『THE BEAUTiFUL PEOPLE』)で自分の音を綺麗に整理し過ぎちゃったのね。さっき「以前は聴き手がキャッチしやすいものを意識し過ぎていた」っていう話もあったけど、サウンドとしても聴きやすいものになり過ぎてた。だから音の面でも何も気にせずやりたいと思って、今回はガッシリとしたサウンドを目指したかったんだよね。雑味も残して、本来的な俺たちの荒々しさもちゃんと表現したかった。

■それに、ギターのリフのキレはSiMらしいものでありつつ、その上をシンセが飛んでいく構造が新境地と気持ちよさを感じさせますよね。ただ好きにやる以上に、こういう王道の刷新があるのが今作の素晴らしさのひとつだと思うんですよ。

確かに、ギターのリフだけ聴かせるのも、これまでのこだわりのひとつだったんだけど、今回はそこも取っ払った。たとえば“GUNSHOTS”くらいからSHOW-HATEがシンセを弾く曲も増えたけど、彼のフレーズのセンスがSiMの個性になってきたのは間違いないわけで。それも全部自由自在に使えるようになったのがデカいと思うし、ある意味このアルバムの自由さも示している曲だと思う。

■歌っている内容としてもこのアルバムの宣誓に近いし、SiMというバンドの闘い方を直接的に示しているものだと感じました。「どれだけ闇の中を這いつくばって、涙を飲んできたか。誰も知らないけれど、それが俺なんだ」と。

これはもう、心の叫びに近いね。4年間アルバムを出してなくても俺ら各自が闘ってきた。変化もあったけど、ずっと進んできたんだよって。大事なことを全部わかってくれなくてもいいけど、生きてきたし闘ってきたんだっていう意志表明。この4年で「最近SiMは何をやってるんだ」っていうメッセージが届くこともあったんだけど。何をしてるもなにも、ちゃんとここに立ってきたんだっていうことをストレートに表現した曲だと思う。

■ただ、ここで<どれだけ涙を飲んできたか>っていう言葉が出てくるのはどうしてなのかなと思ったんですよ。これは、ご自身のどんな内面が出てきた歌だと思われていますか。

そうだな……2016年くらいから、「SiMのMAH」としてのライヴのイメージやキャラクターが確立できた感じがしたんだよね。『THE BEAUTiFUL PEOPLE』で自分の内側にあった弱さや内省を吐き出せたことで、悪魔的なパフォーマンスをより振り切らせることができたというか。お涙頂戴みたいなことはもう言う必要がなくなったし、細かいことを考えずMAHはMAHでいいやって思えたのが俺も楽しかったんだよね。でもその一方で、俺自身が「MAH」っていうキャラクターそのまんまの人だと思われてるなあっていう実感もあったの(笑)。「MAHさん怖くて話しかけづらいっす……」とか言われたりさ。でもMAHっていうキャラクターはキャラクターで、その陰では普通の人として日常を過ごしてるんだよね。言葉にすれば当たり前のことだけど、でも一方では、わかってもらえないよなぁっていう気持ちもあって。それをただそのまま書いただけなのが、<どれだけ涙を飲んできたか>っていう言葉かな。

■MAHっていうキャラクターと本来の自分の乖離を切ないものとして歌うんじゃなく、MAHはMAH、日常を生きる自分は自分、どちらも俺であるっていう歌にできているのが今回の歌全体の痛快さに繋がってると思うんですよ。それがここまでの作品との大きな違いでもあって。

ああ、そうかもね。俺は『THE BEAUTiFUL PEOPLE』がSiMの中で一番暗いメッセージが入っていると思うんだけど、自分のドロドロした部分を曝け出せたからこそ、MAHっていう存在をより強烈なものにできたんだよね。でもその反面、本当の自分をわかってもらいたい気持ちもあって……これは永遠にモヤモヤする部分なんだろうけど、どちらかを隠すんじゃなくて、その両方を出してもいいって思えてるから。それが気持ちいいんだよね。

MAHくんを横で見てても、今の自分を率直に表現するようになったなって思う。自分は自分だし、今の自分はこうなんだよって。迷いがない感じがするよね。

確かに。変な言い方ですけど、MAHが人間っぽくなった感じがする(笑)。人間と悪魔の融合に近いんやろな。

はははは。確かに、ライヴのMCも素になってきてる感じがする。それはきっといいことだよね。どんどんストレートになってきてるし、だからこそ音楽もどんどん自由になれてるっていう。

■MAHさんは「永遠にモヤっとしたまま」とおっしゃいましたけど、モヤっとしたものも脳内の混沌もそのまま叩き込むモードになれたんだっていうお話だと感じました。そういう意味でも、自由になればなるほど音楽的なカオスを増している今作を表すオープニングとして最高の1曲ですね。

そう言われたら、確かにそうかもね。この後の曲もとにかくバリエーション豊富だからなあ。……解説し切れんのかな(笑)。

■よろしくお願いします(笑)。



02 | SiCK

■次は、ルーディーなスカから始まって、ポップパンク的なサビで一気に突き抜ける構成になっている1曲です。

しかもサビ終わりにレゲエになるあたりがSiMっぽいよね。スカからポップパンクに行ってレゲエに接続するなんて、たぶんSiMにしかできない。普通だったら破綻してもおかしくないくらい要素が多いから。

■それが破綻せずあくまでキャッチーになるのは、どうしてなんだと思います?

なんだろう……やっぱり歌メロの力かな。今回の作品でデカかった変化としては、歌を歌いながら曲を作っていったことなんだよね。今までは自宅でヘッドフォンをして、外に音が出ない状態でギター弾いたりドラムを打ち込んだりして曲を作ってたのね。で、そのオケをスタジオでバンドで形にして、出来上がったものを持ち帰って歌を載せてたのが前回までの制作だったんだけど、今回は泊まり込みで作業できるスタジオに行って、全力で歌いながら曲を作ってたんだよね。それによって、Aメロができたら歌を入れて、歌の繋がりによってBメロのコードを決めるっていうことができた。サビに行く時も「普通ならこういうコードになるよね」っていう発想じゃなくて、「歌でもっとここまで行きたいから、いきなり転調しちゃおう」っていう考え方で曲を作っていけて。だから楽曲的にはかなり変な動きをしてるのに、メロディがずっとキャッチーなまま展開していく曲が多いんだと思う。それが、曲を破綻させずにポップさを失ってない秘訣のような気がする。

■ああ、なるほど。そのソングライティングの変化が今作の鮮やかさの肝のひとつだと思うんですけど、そういう作り方にしたのはどうしてだったんですか。

やっぱりメロディにも新しい変化が欲しくて。サビで一気にドーンと景色が変わる感じに関しても、今までの手法で作り続けるには限界を感じてたんだよね。だけど日本で暮らしてるとどうしても隣の家が近いから、家でガンガン歌うことができない。「スタジオに出かけて歌う日」みたいなのを作らないといけなくて。でもそうじゃなくて、やっぱり「あ、今なんとなく歌えそうだから歌ってみよう」「メロディ浮かんだから形にしちゃおう」って言って歌えるのが自然体だし、理想的じゃない?

■その時その時の自分を瞬間密封していくという意味で、リアルが表現しやすいと。

そうそう。MAHっていうキャラクターとして歌うでも、生活の中の自分として歌うでも、結局はその時の感情をすぐに表現できたほうが歌に瞬発力とエモーションが乗るでしょ。それが損なわれることなくメロディになっているのが、歌のパンチにも繋がってるんだと思う。そうして強い歌が繋いでくれてるから、音楽的にも自由なことをやれてると思うんだよね。

■実際“SiCK”も、ラップとメロディが混ざったヴァースが印象的で、歌の展開も非常に自由ですよね。メッセージの部分で言うと、どういう気持ちが出てきたものだと思われていますか。

俺自身はさっき話したみたいに自然体でいられるようになったけど、そうなると逆に、「ステージで自分を演じてる人間」がすぐわかっちゃうんだよね。だからこの歌は、演じるならもっと完璧にやれよって思っちゃうような「仕上がってない人」に対してだよね(笑)。もしかしたらMAHっていうキャラクターと本来の自分のあいだで揺れてた頃の自分だったら、「演じてんじゃねえよ」って言われる側だったのかもしれないんだけど……でも365日の中で自分がムカつくことを振り返っていくと、「こいつ仕上がってねえな」って思う人間を見た時がそれで。本当の自分はどこ?って思っちゃうんだよね。そういう毒が出てきちゃってる歌だなと思う。

サビで明るい感じになるのに、裏ではめちゃくちゃ毒がある。そこが面白いところだよね。

言いたいことをガシガシ言って、言いたいことだからこそ人に聴かせるためにはどうするのか。そう考えたら、瞬間的に耳に留まるメロディっていうのはとても重要で。それは以前から大事にしてきた部分だけど、今回は狙って作ったというより、自然な形でポップさが滲み出てきた感じだね。作り方をより一層歌中心にしたことで、自然な形でサビの飛翔感を出せたと思う。

実際、歌が滑らかになっているからこそ、俺らはさらに自由にやれるようになったし、サウンドも自由に作れたんやと思います。キャッチーなのにてんこ盛りな“SiCK”は、その相互作用と合致具合がよく出てる曲やと思いますね。



03 | Devil in Your Heart

■<di da la la, da la la>という歌で幕を開けて、高速スカに雪崩れ込んで2ビートに接続していく曲です。“Blah Blah Blah”や“CROWS”、“A”に連なる呪文系の楽曲というか、言葉遊びの面白さと音楽的なエッジの立ち方がSiMらしい1曲です。

そう、まさに呪文系。俺も初めて聴いた時に「キタ!」って思ったもん。確かMAHにタクシーの中で聴かせてもらったのが最初かな。

このアルバムで一番最初にできた曲だったから、本当なら気合を入れてちゃんとしたスピーカーのあるところで聴かせたかったんだけど。でもとにかく早く聴いてほしかったから、タクシーの中になっちゃった(笑)。で、その後にSHOW-HATEとSINくんにはエレベーターの中で聴かせたっていう。

■全然気合いの入ったシチュエーションで聴かせられなかったと(笑)。それほど早く聴いてほしい曲だったのは、MAHさんご自身としてはどういうポイントに手応えを感じていたからなんですか。

ヤバい曲ができた!っていう手応えが大きかったんだけど、一方で「これはOK?」っていう試金石になる曲だとも思ったんだよね。この曲がアリなら他の曲も行くところまで行っちゃって大丈夫になるなっていう、このアルバムの分かれ道が“Devil in Your Heart”だったんだよね。展開の多さにしても歌の遊び心にしても、おもちゃ箱みたいな曲だからさ。きかんしゃトーマスもアンパンマンもみんないるよ!っていうごちゃ混ぜのアルバムにするのか、ある程度の型を用意しなきゃいけないのか。その分かれ道をみんなに託した結果、前者になったのが今回の作品だと思うんだけど。……なんか、トーマスとかアンパンマンとか、例が完全に親父目線だけどね(笑)。

ははははは。俺らとしてはMAHくんがそこまで考えて聴かせてくれてるとは知らなかったから、素直に「いい曲だね!」って盛り上がってたんだけど。ライヴでもみんなが歌ってるのがイメージできたしさ。展開が多いのにシンプルに歌える曲として、新しい武器になると思えたかな。

確かに、めちゃくちゃキャッチーだなっていうのが第一印象だったよね。でも家に帰ってちゃんと聴き直してみたら、ベースがめちゃくちゃ動いてんの。俺にとっては、面倒臭いなあ(笑)……っていう1曲でしたね。MAHはMIDIで作ってるから、人の指のことやフレット上での動きを全然考えてないんですよ。

いや、それは裏テーマがあったの。ベースが難しくて面倒臭い曲を作ろうって。

■それはどうして?

SINくんはめちゃくちゃ上手いベーシストなのに、バンド業界で過小評価されてる気がしたんだよね。動きとかスタイルにばっかり目がいきがちなんだろうけど、そもそも技術として半端じゃない人なの。だから、思わずベースに目がいっちゃう曲を作りたかったんだよね。……そしたら<di da la la>のほうが強すぎたんだけど。

はははははは!

申し訳ない!(笑)。元々GODRiとSHOW-HATEはやることが多すぎるんだよね。GODRiはシンセを鳴らすパッドもあるし、SHOW-HATEは鍵盤も弾く。じゃあ今度はベースの番だぞと。SINくんの凄さを存分に見せつけられる曲を作ろうっていうのはずっと考えてたかも。

■SiMの曲ってヘヴィなだけではなくて、実はリズムがかなり重要になるものも多いじゃないですか。レゲエパートの溜めだったり、疾走とブレイクダウンの落差だったり。それでいうと、リズムの面で要求されるものは過去最も多い作品だと思うんですが。

本当にそう。ただ、そこに挑戦していくことで毎回プレイヤーとしても成長できるから。逆にシンプルにいけばいいところも見えてくるし、音源でもライヴでも幅が生まれてくるのが楽しいんですよ。いい曲やなって思えたら、あとはもう求められることに必死に取り組むだけですよね。その点、この曲はかなり速いスカやから大変でしたけど。

振り返ると、『LIVING IN PAiN』の頃まではスカが多かったんだよね。200人規模のライヴハウスでツアーをやってた頃だから、お客さんが踊れるテンポのスカを増やしてたんだよね。だけど規模が大きくなるにつれて、じっくりとしたレゲエが増えていったの。そういう音楽遍歴があった上で、しばらく仕舞ってたテンポの早いスカを再度やってみたら面白いんじゃない?っていうのがこの曲だね。

■しかも<this is a message to you Rudy>という、THE SPECIALSの楽曲から引用したと思わしき一節が出てくるのも、ニヤリとできるポイントですよね。THE SPECIALSがルーツにあるのがよくわかる、ルーディで湿ったグルーヴを持ったスカになってる。

この曲自体でイメージしてるスカの感覚って、俺個人的にはRANCIDなんだよね。でもRANCIDの前身はOperation Ivyだし、Operation IvyはTHE SPECIALSに影響を受けてたわけで。だからRANCIDをイメージするにあたって自分の中の音楽地図を広げた結果、親玉のTHE SPECIALSが出てくる感じにしたかった。

■自然体とは言いつつ、ご自身のルーツが全部線になって出てきてる。音楽人生絵巻のような作品でもあるのかなと。

音楽の歴史やルーツが1曲の中で繋がっていくのは楽しいんだよね。自分の中だけの遊びかもしれないけど、音楽も辿っていけば歴史の中で全部繋がってるわけじゃない?裏打ちしてたらお客さんも楽しめるよね!っていう安易なスカじゃなくて、「RANCIDもTHE SPECIALSも好きで、彼らのメッセージに感動してきたんだ、だからスカやってんだよ!」って言えるスカを出したかった。上辺だけなぞっていろんな音楽をやるんじゃなくて、ちゃんと人生観として共鳴してきたものだから説得力ある音楽にできるんだよと。そもそもメッセージって、そういうもんだと思うのね。

■実際のメッセージの部分で伺うと、「人間の中には悪魔も天使も潜んでいると言うけど、それも自分が決めることだ」というのは、これまでもいろんな曲で歌われてきたことだと思うし、白も黒も自分次第であるという人生観は一貫していると思うんです。改めて、こういう歌はご自身のどういう部分から出てくると思われますか。

確かに、この曲で歌ってるのは度々口にしてきたことなんだけど。そこから、自分の中の悪魔がうるさいっていう歌にしたらどうかなって考えて。自分の人生観の根っこを歌ったものだからこそ、言いたいことを言ってる部分と言葉遊びを混ぜるSiMらしさも入れようと思って<di da la la>が出てきたのね。そうなると今度は、韻の踏み方も使い尽くしちゃったなあと思って。そしたらさ、もう固有名詞を使うしかないわけですよ(笑)。で、その時にやってたTVゲームから発想を得て、バスケ用語の<ankle breaker>とかプロレスラーの<The Undertaker>とかが出てきたんだよね。

■なるほど。ロックが受け継がれてきた歴史線と、歴史があるからこそ生き様をちゃんと叩き込もうという気概と。その全部が遊び心の上で混ざっている非常にSiMらしい曲だと感じます。

そうだね。そういう意味でも、この曲が1番最初にできてよかったんだろうね。

04 | HEADS UP

この曲を作る時に言ってたのは、「サビで、リフの上にメロディを乗っけたい」ってことだったっけ?

そうそう。今まではギターのリフにメロディを乗せたことがほぼなかったから。

しかも「サビで転調したい」とも言ってて(笑)。サビの転調にこのリフでこのメロディかぁってめちゃくちゃ悩んだんだけど、なんとか落とし込めてホッとした曲かな。で、最後にまたイントロに戻っていくっていう……とんでもない展開してるよね(笑)。

■そもそもリフにサビのメロディを乗せるアイディアはどう生まれたものだったんですか。

普通だと、サビはコードをジャーンと鳴らすことが多いんだけど、楽器自体にメロディがあって、さらに歌メロが乗っかってくる感じをやりたかったんだよね。歌いながら曲を作る手法をとったからこそ、曲自体が持ってるメロディをさらに広げたかった。リフと歌が共存すれば、より一層歌心あるものとして聴けるんじゃないかなって。まあ、曲の展開としては音楽理論を完全に壊しちゃってるんだけどね(笑)。この曲に限らず、理屈だけで音楽を作ってる人からしたら、SiMのやってることはマジで意味わかんないと思う。

■そこはやっぱり力技なんですか。

いや、ただただ音楽理論がわかんないだけだと思う(笑)。やってる側としても、「ここ行くの?」って思っちゃうことばっかりだからね。

ははははは。以前から別に音楽理論はなかったけど、そこからさらにタガを外しちゃおうとなると、より一層不思議なことになるよね。それで言うと、まさに“HEADS UP”は今までになかったコード進行で。じゃあ今までになかったコード進行をアリにできちゃったのはなぜかと考えたら、やっぱりメロの力なんだよね。最終的に歌えちゃえば、理論的な無茶も気にならなくなるから。だってさ、そもそもJ-POPにも変な転調はあるんだよね。でも歌メロとして覚えてるから、転調してることにも気づかない場合がある。俺もこの“HEADS UP”をまずオケから聴かされたら、「どの音?」って歌が迷子になっちゃうと思う(笑)。だけど歌っているうちに体として覚えちゃうからさ。サビで一気に転調してて、しかもサビの歌の途中でまた唐突に転調するっていう……むちゃくちゃなのはわかってるけど、でも歌えるのが面白い曲だよね。

■変な聞き方をしますけど、こうやって破壊と再生とちゃぶ台返しを繰り返すのは、それが快感だからなんですよね?

うん、めっちゃ気持ちいい。そういう体になっちゃった(笑)。

くくくく。マッドサイエンティストみたいな感じだよね。キメラを作ることの快感に目覚めっぱなし(笑)。

■音楽の中にただ綺麗なだけのところが一切ないし、リアルなものを求めるほど歪な形になっていく人間の脳内をそのまま表現してるバンドだなと改めて思います。

そうだね……だってそもそも、その歪な心も全部表現できるのがロックだからね。まあ、その上でも“HEADS UP”はめちゃくちゃな曲だと思うけど(笑)。

05 | BASEBALL BAT

■この曲は今作の肝であり、SiMが果たした変化の核心でもあり、そして問題作でもあると思います。

はははははは。はい。

■SiMとして初めてメジャーコードを用いた曲で、ダークでヘヴィというイメージを脱いでいる。ある意味、自由に自分たちを解き放とうとした今作を象徴する曲だと思ったんですが。

そこにいる人全員がサビを歌えちゃうような、大合唱系の曲をやりたいなと思って作り始めたのが“BASEBALL BAT”で。で、俺にとって大合唱できるサビと言ったらRANCIDなんだよね。RANCIDってタトゥーもゴリゴリに入ってて、鋲ジャン着てて、モヒカンのスパイキーヘアで……見た目はワルいんだけど、でも楽曲は結構明るいんだよね。メジャーコードを使ってるし、ポップさがある。そういうRANCIDがいるなら、俺らもやるしかねえなと。元々はTRIPLE AXEの15人全員で歌えるものをイメージしながら作ったんだけど、明るい部分がめちゃくちゃ明るい分、ブレイクダウンは行けるところまで行って。力技なんだけど、でも曲の持ってる力として今作の軸になる楽曲になったと思う。

■軸になるというのは、これまでのSiMのイメージとしても、音楽としても、トライしなかった陽の部分に飛び込めたから?

そうだね、今までのSiMのイメージになかったメジャーコードの曲が軸になるんだっていう意外性は間違いなくあると思う。そしてそれ以上に、『SEEDS OF HOPE』で“KiLLiNG ME”が軸になったように曲のパワー自体が強いと思うんですよ。

ただ、さっきMAHくんが“Devil in Your Heart”を作った時に「アリかナシか考えていた」と言ってたけど、俺個人としては“BASEBALL BAT”のほうが「大丈夫か?」って思ったの。この明るさやポップさは、明らかに今まで出してこなかったものだから。だけど自分たちの好きなことをやろうっていう今回のコンセプトに立ち返った時に、SiMでもやれると思ったんだよね。

■実際に明るいところは持っている4人ですし、SiMというバンドのイメージとしてじゃなく、そもそも持っているものとして表現できたというか。

そうそう。やってみたら、すごく前向きに取り組むことができたから。SiMでも(明るい曲が)できるじゃん!って思えたのが嬉しかったし、そういう新しい扉を開いてくれた曲が軸になるのも面白いことだったし。実際にTRIPLE AXEのツアーでやった時にも、間違いねえなって実感できたしさ。前までだったら不安になったり悩んだりしてたかもしれないんだけど、守りに入るよりも好きなことをやろうっていう今だからこそ楽しんでやれた曲かな。

逆に“BASEBALL BAT”がSiMの代表曲になれば、俺らはもっと自由になれると思えたんですよ。この先が楽しみになる、きっかけのような曲ですね。

音の面でも、思い切りポップパンクに寄せて作ってみたら違和感がなかったからね。ここまでポップパンクに振り切った曲は今までになかったけど、でも実際に通ってきた音楽であることは間違いない。そう考えたら振り切るだけだったよね。

■先ほど「MAHというキャラクター」と「本来の自分」の乖離をそのまま振り切らせて自由になれたとおっしゃいましたが、ダークさやヘヴィネスだけじゃなく、明るい部分も解き放てた手応えと解放感がこの曲においては大きいのではないかと。そのあたり、ご自身の気持ちとしてはどうでしたか。

もちろん「 SiMとしては明るすぎないか」っていう話になるのも予想はしてた。ただ、TRIPLE AXEで北海道のフェスに出た時にやってみたら、新曲とは思えない盛り上がりになって。そこで確信を得たかな。まだ開けてなかった扉を開けられたと思うし、だけどそもそも、好きで聴いてきた音楽の中にはこういう明るいものもあったわけで。そういう意味で、ある種の回帰によって自由になれた感覚はあったかな。まだ見せてなかったけど、ずっと自分自身の中にあったもの……自分のドロドロしたところを出した前作があったからこそ自由に表現できたものなんだと思う。よりダークになるんじゃなくて、こうして明るい面が出てきて本当によかったと思うんだよね。

■本来の自分を解き放った時に、救いようのない闇ではなかった。

そう。それが自分でも嬉しかった部分。だからこそ、みんなで歌えたらいいなと思ったんだよね。サビと言えば綺麗なメロディにハーモニーがついてて……っていうのがこれまでだったけど、もう大合唱でよくね?と思って、デカいメロディをドーンと乗せちゃいました。

■ただ、どーんと気持ちよく合唱できる歌が、どの曲よりも狂った内容になってます。

くくくく。それが最高なの(笑)。

■和訳を少しばかり読み上げますね。<このバットでお前の頭をブン殴ってもいいかい>。<とにかくお前をぶっ殺したいんだ>。

ははははは。どうしてこんな歌になったんだろうなあ……でもやっぱ、やるならトコトンやるしかなかったんだろうね。サビのメロディに合わせてふわっと歌ってたら、まず<can I>っていう部分が出てきて。つまり「〇〇してもいいかい?」に続く言葉を探してるうちに、感覚的にピッタリきちゃったのが<smash your head>だっただけなの(笑)。<can I smash your head>っていいじゃん!と思って、じゃあ殴るなら何で殴るのか考えて……殴るならバットだろと。よって“BASEBALL BAT”になっちゃったね。ははははは。

■笑ってますね。その発想の飛び方自体がSiMの根源的な狂気のような気がします。

ま、みんなでこの歌詞歌えたら最高だよね。当然だけど、普段は絶対に言えないことだからこそ、叫ぶと気持ちいいんだから。なかなか言えないことだけど、誰しもが一度は抱いたことがあるんじゃないかっていう感情だと思うし。そういうものを吐き出せるから、歌はいいんだよね。

■その思想には完全に同意です。その脳内については、MAHさんのソロインタヴューでも詳しく聞いていきますね。

了解です!

06 |Smoke in The Sky

■渋みと切なさのあるメロディ、ダブレゲエの匂い、シンセのハイパーな音色。それらがじっくりとした聴き心地で染み入ってくる素晴らしい曲です。

俺もこの曲大好きなんだよね。レゲエの入れ方にしても、アレンジにしてもまさにSiMにしかできない曲だと思う。デジタルな音色の中でも生々しさが残るし、一気にヘヴィになるところもあるし。もちろんサビのメロもしっかりとしてるし……めちゃくちゃ響く曲ですね。MAHくんの歌詞もいいし。

サビが白玉(全音符のこと。長い音になる)なんですけど、それは今までになかったんですよ。以前だとすぐにベースのフレーズを動かしちゃいがちだったんだけど、やたらと動かしたがるのは日本人っぽくてダセぇなっていうマインドになってきて(笑)。あんまり動かさずに味を出すことを意識した曲っすね。

■日本人ぽいというのは、自己顕示としてどうしてもテクりたくなるっていう部分?

そうそう(笑)。でもそれより、シンプルでも個性が出たプレイのほうが洋楽のどっしり感を表現できると思って。だから今回の作品のベースは難しい箇所がありつつ、ルート弾きも増えてるんですよ。曲がカッコよくなるために必要なことをやる……そういう意味でシンプルになってきた自覚はあるかな。日本のバンドではあるけど、もう自分の好きにやろうと思うと、洋楽の感覚もそのままやっていいよなって。自分ルールを設けて「指弾きしかしない」とか「4弦しか弾かない」みたいなこだわりが強かったんですよ。だけどもう、曲がカッコよければいい。そう考えられると、どんどん自由になっていけるんだよね。

■GODRiさんはどうですか。

この曲は結構電子音が出てくるんですけど、不思議とデジタルな匂いがそんなにしないというか。ちゃんと泥臭さのほうが勝つのがSiMっぽいですよね。電子音を入れてもキラキラしないのは、結局泥臭い4人だからっていうのが大きい気がしていて。その点は小さいライヴハウスでやってきた頃から一切変わらないんです。デジタルな音も結局は主役になるんじゃなく、あくまで泥臭さの部分に染み込ませるためにあるというか。

確かに。この曲に滲んでる泥臭さのポイントで言うと、オートチューンを使ってないところだと思っていて。今までは電子音と馴染ませるためにオートチューンを使ってたんだけど、今回はほぼ生歌なんだよね。

■これは初インタヴューみたいな質問をするんですけど、改めてSiMにとってレゲエが大事な要素なのはなぜなんですか。

俺個人的に、普段音楽を聴いていて一番カッコいいと思うのはレゲエなんだよね。なおかつ、ドラムとベースと裏打ちがパズルみたいになっていて、解析する面白さを一番感じられる音楽がレゲエなんだよね。じゃあ自分でもやってみたいな、って思ったのがレゲエに惹かれた最初のきっかけだった気がする。逆にロックとかは、聴いていても新しい発見が少ない音楽で。発明は起こりにくい音楽だから。だけど、自分の心の中にあるものをなんでも歌っていいっていう精神性としてロックにも惹かれてきたし、それと同時にいろんなパズルを作っていく面白さも俺の中にはあって。

■なるほど。じっくりとしたレゲエなんだけどヘヴィネスもあるという、まさにパズルになってる曲ですね。

SINくんも言ったけど、全音符で「ダーン、ダダーーン」っていうサビの動きになってるのが肝なんだよね。たとえばLINKIN PARKとかを聴いてみても、サビはほぼ「ダーーン!ダーーン!」で、全然ジャカジャカしてないの。で、いろんな洋楽を聴いてきて思うのは、2000年代アタマの洋楽ニューメタル感は、ほぼ全部「ダーーン!」っていうあの感じからきてるんだよね。その感覚を俺らのルーツとして改めてやってみても面白いんじゃないかと思って。これまでの俺らの曲は、サビだと必ずジャカジャカ弾いてたんだけど、この曲では自分たちのルーツのあの感じをやったのが逆に新鮮さになってる気がする。そういう新鮮さもあって、<smoke in the sky>っていうメロディがめちゃくちゃ気持ちよかったんだよね。

■この曲で歌われているのは、自分のこれまでの人生を振り返りながら未来を想う心の動きですよね。夜空に漂う煙が、MAHさんの生き様に重なっていく哀愁感。その泥臭い生き様こそが歌の情感になっていると感じたんですよ。人間MAHとしての歌があること自体が、この作品が持つ多面性と混沌の裏付けになっているというか。

歌メロを考えてて、最初に<smoke in the sky>っていう言葉がふっと出てきて。で、「空を漂う煙」をどう捉えるかと考えた時に、それは俺自身じゃんって思ったのね。吹けば消えてしまうかもしれないし、でも何かを燃やせば必ず煙は発生するし。煙を臭いと言う人もいれば、その煙が好きだっていう人もいる。そう考えると、自分っていう存在を表すのにしっくりくるのが「煙」っていう存在だと思ったんだよね。

■MAHさんが歌い続けてこられたのは、自分は自分だと胸を張って強く立つための歌だと思うんですね。だからこそ自分の大事なものを傷つけるものに中指を立てていいんだと叫んできたし、勝手に人の人生を我が物顔で傷つけてはいけないとも伝えてきた。そういう意味で、自分の心の脆さもこの歌には滲んでいて、それがいいなと思ったんです。

そう、結局俺も、吹けば消えてしまいそうな弱さや脆さを持ってるんだよ。だけど弱さを否定したり隠したりするんじゃなくて、自分の弱さを受け入れていくことで弱い人のことを理解できるじゃない?だからこそ心に弱さを持っている人たちが「もっと観ていたい」と思える音楽になると思うんだよね。むしろ、弱さを隠して無理やり強さを誇示しようとするから人への暴力になっちゃったり、人をいちいち下げちゃったりするわけでしょ。

■そうですね。自分の弱さや脆さから目を背けるから、人との距離感がバグって我が物顔で人を傷つけてしまう。今世の中で起こっているのもそういうことだなと思います。

そうなんだよね。結局、自分にも人にも弱い部分があるっていうことを理解しないといけない。お互いに不要な干渉をし合わないためにも、その一線を超えて勘違いしちゃダメなんだよね。

07 |BLACK & WHiTE

■音楽的な下敷きは前作の“MAKE ME DEAD!”に近いロカビリーですが、今回はより一層ルーツミュージックに近い尖り方を感じます。この曲に関しては、どういう手応えがありますか。

いい感じにロカビリー感とSiMらしさを落とし込めた感じがありますね。ギターも実際にGretschを使ったから、モダンでありつつもルーツも感じるものに仕上がったかなと。

ドラムで初めてチャレンジしたのが、スティックで太鼓の角を「チッチ、チッ」って叩くやつなんですよ。そういうところにロカビリーらしさを匂わせたり、シャッフルビートに合わせてツインペダルをドコドコ踏んだりして。

■ああ、なるほど。そういうポイントがあって、シャッフルビートの軽やかさと同時に、重心も低いっていう面白い仕上がりになったという。SINさんはいかがでしたか。

いやあ、これは大変でしたね。Aメロでアップライトベースを使ってるんですよ。でも俺は今まで弾いたことがなくて。レコーディング前にサウンドを決める作業の時点で、豆がむちゃくちゃできちゃって。弦も太いから全部スラップで弾かなくちゃいけないんだけど豆がどんどん潰れていくから、最終的には薬指で弾きました(笑)。

■(笑)元々のロカビリーやサイコビリーで使われてきたアップライトベースを使うというのは、言い換えればよりルーツに近づく作業でもあったと思うんですね。そういうトライを今しようと思ったのはなぜだったんですか。

自分たちが通ってきた音楽のルーツを咀嚼した曲にしたいっていうのはいつも考えてることで、だからアップライトベースを使ってほしいっていうのは以前からお願いしてたことなんですよ。でも今までは普通のエレキベースでロカビリーっぽい奏法をすることで代用してて。ただ、それだとどうしてもロカビリーの音にはならないし、普通のウッドベースにしてもラウドさの面で物足りなくなってしまう。だから、中間をとってアップライトベースを使うことにしたんだけど。とにかく今までやらなかったこともやろうと思っていたから、今回はアップライトベースも使ってみたんだよね。

■ご自身の音楽絵巻の上で、ロカビリーやサイコビリーってどういうポイントにグッときた音楽なんですか。

リーゼントのスタイルとかカルチャーも含めて、一番わかりやすく「ロックンロール」の印象があるのがロカビリーなんだよね。だからロックの歴史の教科書として聴いてきたし、演奏してても面白い。ただ、俺らがやっているラウドなロックといわゆるロックンロールって、スタイルとしては真逆だと思うんだよね。生のロックンロールと、よりソリッドな俺らの音楽。で、真逆だと思うからこそ、掛け合わせると面白いものになるっていう発想があって。それも、さっき話した俺の中の音楽パズルなんだよね。

■レゲエに惹かれる理由を伺った時にも思いましたけど、やっぱり破壊と再構築に音楽的快感を得られる方なんだなと。だからこそルーツを大事にするし、それを今のものとして消化しようとする一大ミクスチャー絵巻が生まれていくというか。

確かに。一度ぶっ壊して、作る……破壊と創造ができるっていうのが、音楽をやっていて一番面白いところかも。この曲もいきなり途中でヘヴィになったりするし。焼き上がったばっかりの壺をガチャーン!って壊すのが気持ちいいのと一緒だよね(笑)。

ああ、わかるわ。砂場でお城を作った後、自分で踏んでぶっ壊す子供……あの頃のまま変わってないのかも。

■そのチャイルディッシュな感覚が音楽の中に入っているから、SiMの音楽は凶暴なのに自由な遊び場になるんだと思います。

あー。なんかね、作っている過程が面白くて楽しいんだよね。その後は……ぶっ壊してまた作っていくだけ。出来上がったプラモデルを眺めて「美しいね」って言う感覚はないんだよね。そこは本来的に変わってない部分。結局、今ある価値観を守るためじゃなくて超えていくために音楽をやってるわけだから。

08 |Crying for the Moon

■レゲエのリズムを解体している部分、印象的なラップのフロウ。そしてサビのエモーショナルなメロディ。目まぐるしい展開と音色の変化に耳が持っていかれる曲です。

この曲はまず、シンプルだけどカッコいいリズムパターンをイントロで作りたかったんだよね。GODRiはそういう骨太なプレイが似合うから、その武器を押し出したかった。で、そのドラムパターンと別で、そのビートに当てる裏打ちでも遊びたくて。普通だと裏打ちって♪チャッ、チャッって3音同時に弾く(和音)んだけど、♪タララッ、タララッっていう単音3つに分解したら面白そうだなと思って。で、さらに倍転で「ピッ、ピッ」っていうキーボードの音を入れて、ギターとベースは超ヘヴィな音を弾いてるっていう――どれだけレイヤーがあるんだっていう挑戦的なフレーズを構築するところから始まったね(笑)。

■レゲエをベースにしていることは頭で理解できるんですけど、実際に鳴っている音に対する体の反応としては、まず気持ち悪さと不気味さを覚えたんですよ(笑)。

そうだよね(笑)。きっと、初めて聴いた人は何が起こってるかわからない曲だと思うんだよね。イヤホンで聴いてもらった時に、「うわ、こんな音鳴ってる!」みたいな感じになってもらえたら嬉しいよね。

でもさ、実際に楽器を弾いてる身からするとめちゃくちゃ大変だった。MAHくんが言ったイントロの構造だと、どのポイントをキャッチすればグルーヴが出るのか、着地点が見えなくなるの。まあ、その不思議さや気持ち悪さが耳の楽しさになっていくから。そういう意味では、SiMの音楽的な個性とか構築の面白さが感じられる曲なんだろうな。最後はいきなりハードロックになるし。

ドラムのビートとしてはシンプルやから、個人的には一番ロックできた曲なんですけど。でも最後にハードロックになるところはSiMとしても初めての混ざり方だったので、めちゃくちゃ面白い曲だと思いますね。

■そして、サウンドの面白さと同時にこのエモーショナルなメロディが強い曲で。歌とメッセージとしては、自分の中のどういう部分が出てきた実感がありますか。

この曲も歌い出しからメロディを作っていって。楽器が不思議な動きをしていることに紐づいて<これは魔法なんかじゃない/俺たちの昔ながらの音作りさ>(和訳)っていう言葉がまず出てきて。で、そのメロディがラップと歌の歌唱の中間みたいな気持ちよさを持ってるんだけど、サビで一気にエモいほうに行くっていう――あんなに頑張って作り上げた不思議な音をサラッと捨てちゃうの?みたいな感じにしたんだよね(笑)。

■はい(笑)。もはや別曲のように展開しますね。

サラッと捨てる漢気みたいな。そこが気持ちいいんだよね。同じメロディを繰り返すところも、『THE BEAUTiFUL PEOPLE』以降の雄大さかなっていう気がしますね。

■大きな規模になればなるほど歌のクオリティが求められると自覚して、鍛錬してきた痕も確実に感じられます。

ああ、歌の面での変化として大きいのは――これまでは、レコーディングでは何回でも歌い直せるからこそ、ライヴでは歌い切れないメロディも作っちゃってたんだよね。だけどそれをもうやめようと思って。縛りをなくして作品を作るっていうのは、無理しないでいい歌を作るっていう意味でもあったんだよね。だから生身の自分で歌えるメロディにするのはかなり意識してた。ちゃんと歌い切れるものじゃないと、本当の意味での生身じゃないから。そこは曲作りからやっておかないとダメだなって思ってたね。

■自分を一気に解放するっていうことと自然体であるっていうことは矛盾しないし、音楽的に自由過ぎる変化を経ていることと歌の自然さが同時に生まれてきたことにも納得します。

たとえばドラムで言ったら「ここは腕が3本ないと叩けないじゃん」っていうことはライブで再現できないんだよね。それと一緒で、歌メロに関してもよりリアルな自分たちの姿を、あらゆる面で求めてたね。

09 |YO HO

■シンガロングの大きさ、海賊の合唱曲を思わせるギターのリフ、疾走パートとレゲエの混ざり方も含めて非常にキャッチーな1曲です。

この曲は作りやすかったなあ。モロに「海賊」っていうイメージを共有してもらってたから、その絵に向かってサウンドもフレーズも作っていけた曲だね。2Aで幽霊船をイメージしたフレーズを弾いてみたり……そういう遊び心も含めてめちゃくちゃ楽しかったな。

確かに、イメージが湧くと音作りも早いよね。泥臭い感じ、海賊の男臭い感じ……しかも、途中でNIRVANAのオマージュも入ってくるじゃない?

■いきなりNIRVANAの“Breed”が入ってきますね。オマージュというか、もはやそのまんまです。

(しみじみと)これがめちゃくちゃカッコいいんだよねぇ。弾いてても最高にアガるから。弦楽器もただのルート弾きなんだけど、「こいや!」みたいな無敵感が出ちゃうよね。

ははははは! ここまで「海賊だ」っていうイメージで作った曲なのに、なんでいきなりNIRVANAなんだって感じだけどね(笑)。2サビが終わった後の展開で絶対に「ジャジャッ、ジャジャジャッ」ってやりたくて。もちろん“Breed”を避けて作ることもできたけど、でもその手のフレーズだったら“Breed”が最強なんだから、じゃあもう“Breed”でいいじゃんって思ったの(笑)。合唱パートも多いし、これくらい思い切りやっちゃってもいいだろうと。

(笑)この曲はたしか、“Devil in Your Heart”と同じ時期にできた曲で。合唱パートが多いことも含めて“Devil in Your Heart”とニコイチみたいな感じなんですよ。泥臭いけど、でも可愛さもあるというか。やんちゃしてる感じが楽しいですね。

■なるほど。<da la la>というフレーズはこの曲にも入ってきますよね。今おっしゃった可愛さやシンガロングから生まれてくる青春感はまさにこの曲のポイントだと思うんですが、そのキッカケとして「海賊」というモチーフが出てきたのはなぜだったんですか。

家でアコギで曲を作ってみた時に、頭のフレーズが思い浮かんだのね。で、そのフレーズから<YO HO YO HO>っていう鼻歌も一緒に口ずさんじゃったんだよね。じゃあこれはもう海賊だなと思って(笑)。それくらい、何も考えてなかったね。

■ただ、<di da la la>も<YO HO>も、言葉として愛嬌があって引っかかりが強いですよね。言葉の響きをフックにして一気に巻き込む手法は“Blah Blah Blah”以降一気に増えてきたと感じるんですが、これはご自身でも意識しながらやられているんですか。

面白い言葉は何かないかなっていつも考えてきたと思うし、だからこそ、<YO HO>って面白い響きだなって感じたところからイメージが湧いていったんだろうし。ヘヴィな音楽をやったり、言いたいことを言いまくったりしてるからこそ、その引っ掛かりになるワードは大事だと思っていて。やっぱりお客さんも巻き込んで歌えるものは気持ちがいいし、この曲は一気に人を巻き込んでいく歌になると思ったので。

■だからこそ、海賊とは言ってもバンドシップや仲間に対する誇りの歌になっているのがこの曲の肝だと思ったんですね。

ああ、そうだね。最初は「船長の苦悩」みたいな歌にしたかったんだけど、結局は海賊とバンドとは似てるなと思ったんだよね。それぞれに役割があって、だけど矢面に立つ人もいて――そんなことを考えてたら、バンドと、海賊というテーマがリンクして。だから、シンガロングパートも全員で思い切り歌えたらいいなって思ってるんだよね。

10 |CAPTAiN HOOK

この曲はもう……レッチリ(Red Hot Chili Peppers)っすね(笑)。

■はい(笑)。

「めっちゃレッチリじゃん」って言われたら、「そうなんだよねー」としか返せない曲だよね(笑)。レッチリならどうするかな?レッチリはどうやってるかな?みたいな。これだけロックバンドの系譜について言ってるのに、意外とレッチリは全然やってこなかったんだよね。でもレッチリはずっと最強だと思っていて。

■初期レッチリ感が強烈な曲なんですが、SiMにとってのレッチリの最高さと、今こそやろうと思った理由を教えてください。

そもそもバンドって、全員強いっていうのがいいと思うの。その点で言うと4ピースの最強はレッチリだと思ってて。

目につかないヤツがいないもんね。

そうそう。誰を見てても楽しいから。全員がトップレベルだし、トップレベルのプレイが重なって生まれるパズル感も好きだし。で、そういう音楽パズルを一切使わないでただのいい曲をやる時もめちゃくちゃいいし。俺はパンクとかヘヴィな音楽に傾倒してたけど、その一方で、不動の1位にはずっとレッチリがいて。いつかやってみたいと思ってたんだよね。

■たとえば今回の作品の特徴として、ラップが多用されているというポイントがあります。音楽的になんでもやるモードになったことはお話いただきましたが、その中でラップも全解放できたからこそレッチリ的ラップメタルへのアプローチも可能になったということですか。

ラップを多用するようになったのは理由があって。歌はハイトーンなもののほうが抜けてきて気持ちいいっていう固定概念があったんだよね。でも俺は元々そんなにハイトーンじゃないから、無理しない形で幅を持たせるにはラップも思い切りやってみようと。そういうきっかけだったんだよね。で、その天才型がレッチリのアンソニーだと思ってて。たまに高い音で歌うけど、基本的には誰でも歌える高さが多い。誰でも歌える高さで幅もあるっていう意味で、アンソニーの歌はいいなって思ったのが、ラップも増えていった理由なんだよね。低い音程の気持ちよさもあるっていう……それもあって、この“CAPTAiN HOOK”みたいな曲を作ってみたいと思ったの。

■そして、先ほども“YO HO”でバンドシップの話が出ましたが、レッチリのように4人それぞれカッコいいのがバンドの理想形だという前提があった上で、改めてSiMというバンドはどんな繋がりで成立していると思われますか。

技術だけで言ったらすごいプレイヤーはいくらでもいるんだけど、自分が一番カッコよくいられて、やりたいことを実現できるのはこの4人なんだろうなあ。未だに4人で練習スタジオに入ることも全然ないし、普段から話し合うわけでもないんだけどさ。やっぱりバンドって、個々がバラバラだったとしても「音を鳴らすならこいつだ」っていう距離感こそが素敵なところだと思うの。逆に言えば、馴れ合いじゃダメなんだよね。お互いにヒリヒリしたところもあるから、サウンドとしての緊張感やソリッドさも生まれてくるわけで。
それにさ、仲良しこよしの友達の距離感でやってるバンドこそ、喧嘩したりするでしょ。で、喧嘩の雰囲気がライヴに出ちゃうとか。俺はそれが嫌だから。結局のところ、常に一緒に過ごしたり友達みたいに付き合ったりするんじゃない距離感を自然に守れてるのがこの4人で、俺らが音楽をやるにあたって一番楽な関係性なんだと思う。

■音に対する信頼とも言えるし、確認しなくたって個々が進んでいるとお互いに信じる心でも言えますね。なおかつ、このバンドが歌い続けてきたことにも通じることで。人を傷つけない生き方、自分が傷つかない生き方をするために、人との距離感を間違えちゃいけないんだ、だからこそ強く自分を貫くんだっていう。

ああ、そうだね。結局、人間との距離感を間違えるから人を傷つけたり、自分が傷ついたりするから。それはバンドでもそうだと思うし、個々の強さっていうのは人との距離感と関係性を守るために必要なものなんだと思ってる。

まあ結局は………………………………
こいつらしかいねえってことでしょ。

照れてだいぶ時間かかったな。

ははははははは!

11 | SAND CASTLE feat. あっこゴリラ

■この曲は2019年の『DEAD POP FESTiVAL』であっこゴリラさんを迎えて初披露された曲です。スティールドラムにアフリカンなリズム、ラップもてんこ盛りの新鮮なアレンジですが、世に放たれた順番としてはこのアルバムの中で一番早かったわけで、結構な新境地で布石を打つんだなという印象が強烈にありました。

俺個人的にも、凝り固まっていたものが解けたきっかけの曲でしたね。そもそも「ドンキーコングのリズムで!」みたいな言葉がMAHくんから出てくるのも面白かったし。だけど勢いだけじゃなくてクールな感じがあるのもいい。バンドにとってまさに新境地になった曲ですね。

■クールさとおっしゃいましたが、リズムやラップの軽やかさと、一気にヘヴィになるサビ。そのコントラストと押し引きが非常に気持ちいいですよね。

でも、最初はヘヴィになるパートがなかったんだよね。ただただ、HIPHOPのトラックを俺らが作るとしたら?っていうだけだったの。で、あっこゴリラのヴァースが終わった後をずっと考えてたんだけど、結局は「いったれ!」と思って5弦ベースと7弦ギターでドーン!と落とした(笑)。それで、最終的にはいわゆるミクスチャーロックっぽい感じでまとまったと思う。

■とはいえ、いわゆるラップメタルやミクスチャーロックとは全然違う聴き心地になってるのが面白いんですけど、そのあたりで何か思い当たる秘訣はありますか。

たぶんそれは、「ギャングスタ感」が一切ないって部分なのかもしれないね。ちょっとメタリックというか、あくまでソリッドな感じでいってる。ラップメタルやミクスチャーロックって、ヘタしたら古臭くなっちゃうじゃない?そこを上手く取捨選択して、あくまで今のサウンドデザインにできてる。そこが大きい気がする。

サウンドの面で言うと――5弦ベースにしてから“DiAMOND”と“LiON’S DEN”を作って、その後に録ったのがこの曲だったんですよ。で、5弦でもこういうアフリカンミュージック的なノリが出せるんだって気づいて。その重たさとグルーヴ感の混ざり方がよかったのかもしれないね。自分の得意なハネたノリに対して、サウンドで新しいことができた実感があった曲かな。

■同じリズム隊として、GODRiさんはこの曲に対してどういうことを感じていましたか。

イントロからAメロは「ドンキーコングの感じで!」って言われてたから、割とイメージできたんですよ。だけどサビにかけてラウドになっていく展開やし、どこまで裏打ち感を出してどこまでラウド感を出すのか、めちゃくちゃ苦労した曲ですね。

ああ、思い出した。ギターへの注文も「きっちり弾き過ぎないで」ってことだったの。ラフな感じで弾けと。しかもリズムも緩くって言われてたから。各パートの擦り合わせが相当大変だったね。

■つまりMAHさんは、きっちりスクエアな音じゃなくグルーヴ自体が主役になる曲だと最初からイメージしていたと。

うん、そうだね。だからメンバーへの注文も結構曖昧だったと思うの(笑)。口で細かく音の感覚を説明し続けたね。

■元々はHIPHOPのトラックをイメージしていたとおっしゃいましたが、そこに生のグルーヴを持ち込もうという意図があったわけですよね。HIPHOPやラップミュージックがポップミュージックの中心になっている流れにおいて、それをロックバンドとして調理するにはどうしたらいいのかというお題もあったんですか。

そうだね。だから俺もHIPHOPを改めて聴き直していて、ちょうど、遊びでHIPHOPのトラックを作るのにハマってた時期だったんだよね。やっぱり俺個人的には、ロックとラップミュージックの中間みたいなオールドスクールのHIPHOPが好きで、そんな中でトラックを作るならあっこゴリラに歌ってほしいな、歌ってもらうならあっこゴリラにとっても新しい挑戦がある曲がいいなってイメージしていって。その結果として、SiMにしかないヘヴィさも盛り込んだトラックにしたいと思った感じだね。

■以前も“CROWS”のイントロでシド・ヴィシャスの発言をモチーフにしたドープなラップがあったし、HIPHOPの匂いを感じることはあったんですが。ここまでラップに振り切った曲は初めてですよね。そもそもMAHさんは、HIPHOPという音楽とカルチャーにはどう触れてきたんですか。

俺は世代として、Zeebraさんとかの日本語ラップを聴いてて。マニアほどじゃないけどちゃんと聴いていたので。憧れはあったんだよね。でも日本語に限らずHIPHOPを聴いている中で、俺はやっぱラッパーじゃなくシンガーだなと思ってきて。ただ、好きで聴いてきた音楽として「いつかはやってみたいな」と思っていたんだよね。なら、もうここでやっちゃおうと。今はまだバリバリできるってレベルじゃないけど、ラップもレベルアップしていけたらと思ってる。

■改めて、SiMが鳴らしている音の中にはレベルミュージックしかないと思ったし、その時代その環境で人間が自分を証明して強く生きていくために生み出した音楽たちを背骨にしているんだなと。新境地だからこそ、SiMの背骨になっている精神性を改めて実感しました。

ああ、そうなんだろうね。HIPHOPだってパンクと通ずる精神性を持ってるし。それを噛み砕いた形で提示するのがSiMの音楽なのかなって俺も思ってて。そういう意味で、根っこは変わらないまま新しいことにトライできた曲だね。

12 | BULLY

■スティールドラムの音色が印象的なイントロですが、バンドサウンドはよりヘヴィに刷新されていて。その上でサビで爽快に突き抜けていく。SiMのストレートな部分とカオスがバランスよくミックスされている曲です。

やっぱり曲をたくさん作ってくると、展開を盛り盛りにしたくなっちゃうものなんだよね。だけどこの曲は展開やラップも盛り込んだ上で、3分程度に収められていて。よくできました!っていう曲だね。俺にとっては3分は短いんだけど、たぶん今の聴き手にとってはちょうどいい長さなのかなと思ってて。その中でどれだけ面白い展開と爽快感を聴かせられるか。そこは大事にした曲だよね。

■音楽をストリーミングサービスで聴くことが主になった今、コンパクトな楽曲でどれだけのカタルシスを生めるのかはとても重要ですよね。視聴環境の変化によって、シーン全体のソングライティングも変化してきているのは間違いないことで。

ああ、展開が気持ちよくハマってるから物足りなさもないし、サビも突き抜けてるし。曲がしっかり成立してるよね。それに、コンパクトなんだけどこの曲の空気感がしっかりあるのは、コード感が大きいと思うんですよ。KORNみたいに、半音の移動を繰り返していくのをやってみて。短い中でもカタルシスを作っていく手法として、コード感の新しいトライはかなり大きかったと思いますね。

俺は、この曲のリフがめちゃくちゃ好きで。ねちっこい感じというか……SHOW-HATE、こういうの弾くの上手いよね。

おお、あざっす(照笑)。

この曲って、弾いてみるとギターがちょっと難しいと思うんだよね。裏拍のリズムが入ってるから、グルーヴを掴むのが結構大変。だけどこれって2000年代初頭のミクスチャー感で、SHOW-HATEはそういうのが得意だと思うんだよね。

♪ダッダ、ズダーダっていうリフの後のフレーズで結構突っ込みがちになっちゃうんだけど、そこでなんとか溜めるっていうのは意識したかもね。それがねちっこい感じになって、SiMの音楽自体の粘り気に繋がってるのかもしれない。

■リフにしろリズムにしろ、SiMの音楽において「溜める」っていう感覚はかなり重要ですよね。それが、ダブのじっとりとしたリズムと、一気に行くところの気持ちいいコントラストになるわけで。

ああ、それってよく言ってくれるよね。だからこそサビの8ビートとメロディが気持ちよく感じられたり。

確かに。このメロディ自体は割と何も考えずに出てきたんだけどね。これでいっか!みたいな感じで、1テイクで決まった。それくらい、自分でもいいメロディだと思えたんだよね。

■そして、メッセージの部分も痛烈な歌でもあります。これは、SiMが「100通り以上の武器」を持つ理由そのものが歌われているような曲で。<何で他人のために俺が変わらなきゃならねえんだよ?><俺は俺だ>と歌われている通り、自分の大事なものに干渉してきたり自分を傷つけたりするものに対してSiMは武器を掲げるし、俺は俺、お前はお前だっていう歌は、お互いに一線を超えず尊重し合うための歌でもある。それは言い換えてみれば、大きな意味での優しさでもあると思うんですよ。

今ってさ、〇〇ハラスメントっていう言葉をよく聞くじゃん。いじめの問題も未だに消えないし。ああいうのを見てて、もし問題が解決するとしたら「お互いにほっときましょう」っていう態度を個々が持つことしかないと思ったんだよね。でもなぜか知らないけど、人は相手の意見を潰したり変えたりしたがるでしょ。それ、自分がやられたら絶対に嫌じゃん。お互いに「はいはい、了解!」って言ってればいいじゃない?必ず相手を自分に従わせる必要なんてない。そういうことをこの数年で改めて思ったんだよね。

だけど時代が進むにつれて、尊重し合うどころか自分の意見が正解だって言いたがる風潮ばっかりが強まってて。だからこそ、この数年で感じてたこと――「ほっとけよ」っていうことを歌にしたいと思ったんだよね。ちょうど歌詞を書いてた時に、神戸の教員のいじめ問題を見たのも大きかったんだけどね。だから1番ではいじめとかに対して言及していて、その上で俺自身にいちいちマウント取りたがる人たちのことを絡めていて。2番では、会社とかでのくだらないハラスメントや陰口に対して歌っていて。それも全部、根本に立ち返ると「私は私、あなたはあなた」ってことなんだよね。それをストレートに歌った曲だね。

■先ほども、この4年で「SiMは何をやってるんだという声が聞こえてくることがあった」とおっしゃいましたが、外野の声がうるさいからこそ自分自身が一度「俺は俺だ」と確認する必要もあったんですか。

たとえば……俺らみたいなバンドマンにとって、一番外野の声がうるさいのがSNSで。実際にうるさい声も聞こえてきたんだよね。でもね、これは言葉にするのが難しいんだけど、いつからか飛んできた言葉が目の前でフワーッと消えるゾーンが生まれたの(笑)。聞こえてるし見えてるけど、野次が俺の心までは届かない。なぜかはわからないんだけど、そういう鋼のメンタルを習得できたんだよね。

■その領域はどう見つけたんですか。

3年、4年前くらいかなあ。やっぱりMAHはMAHで、本来の俺は俺だ、っていうふうに自分の中で確立できたのがデカいんだと思う。たまに見せしめとして論破はしてあげるんだけど(笑)、SiMのMAHが何を言われようと俺はダメージ喰らわないって思えた瞬間に「はい、ほっときます」っていう気持ちになれたんだろうね。何を言われても、MAHも俺も変わることはないんだよ。

13 | FATHERS

■さあ、Disc1の最終曲になりました。これはストレートにお父さんとしての歌です。サウンドからも歌からも、温かさ一点が聴こえてきます。

今日ここに来るまでにも聴いてたんだけど、何回聴いてもウルッとくるね(笑)。これは完全に親父目線なんだけどさ。子供がどう生きて、どう変わっていくのか……<父さんが居なくなった後も/強く、生きていくんだ>っていうところもさ、音楽にして遺すことで、子供はずっとこの歌を聴いて生きていくんだなって思えるし。

■未来を託す歌ですよね。

そうそう。未来への目線なんだよ。それがまたグッとくるんだよね。

■なおかつ、この曲もまた音楽的な新境地でもありますよね。アコギが鳴っているところも含めて、温かさだけで成立してるというか。

ああ、そうだね。サウンド面はこれまでの真逆。刺刺しさを一切入れずに、丸みのある音だけで作ったかな。……まあ、俺も早く子供が欲しいなって思っちゃう曲だよね。

子供が生まれた時もきっと、ライヴで発表しますよ(SINは、メンバーやスタッフの誰にも結婚を報告せず、ライヴのステージ上で突如結婚を報告した)。

そうするわ(笑)。

楽しみやな(笑)。

■これだけ悪魔的なサウンドを鳴らしてきたバンドですが、SHOW-HATEさんとGODRiさんとMAHさんは今、一変してお父さんの顔になってます。

うちの子供はMAHのところと同い年なんですけど、リアルタイムで共感できる歌なんですよ。レコーディングの時にもウルっときて、(感情が)入り狂ってましたね。入り過ぎて、「シンバルうるさい」とか言われましたから。

■はははははは!

それに個人的に好きなのが、“BULLY”から“FATHERS”の流れなんですよ。いじめとかに言及した歌から、父から子供への歌にいく。これからを生きていく子供への想いがあるし、自分たち自身の未来を切り開いていくこのアルバムを、子供が聴いたらどう思うかなってことも考える。

■“BULLY”には<何で他人のために俺が変わらなきゃならねえんだよ?/消えろクズ>っていう言葉があるけど、“FATHERS”にも通じているのは、大きな意味での愛が歌われている部分だと思うんです。大事なものが傷つけられないように、大事なものを踏みにじられないように、どう守るのか。そういう視点が必ずSiMの歌には入ってくる。それがお父さんの目線で非常にストレートに伝わってくるのがこの歌だなと感じました。

この曲は大サビの3拍子のところからでき上がった曲で、仮歌を入れようとした時点で泣いちゃって声が出なかった(笑)。この曲で一番気に入ってるのが……<俺はそういう人間だった 君が現れるまでは/今は、違うんだ>と歌って、刹那的だった自分は変わったと言ってるんだよね。だけど“BULLY”では、俺は俺で変わることはないって言い切ってるの。つまり、一切変わらないはずだった自分が変わってしまうくらいの出来事が、子供の誕生だったんだよね。……そんなこと、考えたこともなかったんだけどね。家族ではあるけど他人によって自分の内面が変えられることなんて、あるはずがないと思ってた。それは人間としていい経験だったし、さっきも「未来への視点」と言ってくれたけど、子供が生まれたことによって、SiMの音楽が未来に残っていくんだよなって初めて考えたんだよね。

■はい。

俺が死んだ後のことなんて、以前ならどうでもよかったんだけどね。だけど俺が死んだ後も子供は生きていくし、「SiMのヴォーカルの子供でしょ」って言われて、SiMの曲が子供に関与していくんだよね。そこが大きな変化だったし、だから<この歌を覚えていて欲しい><君の人生は続いていくのだから>っていう言葉が出てきたんだと思う。きっと音楽を作る上では何も変わってないし、むしろ好きに解き放てる部分が増えたと思うんだけど、歌詞で選ぶ言葉の面において、どこまで影響が及ぶのかは考えるようになった。……ちょっとだけ相手を気遣う言葉を言えるようになったと思うし、ざっくり言えば、優しくなったのかな。

■逆に言うと、絶対に変わらない部分も浮かび上がったりもしましたか。

うーん……やっぱり最終的には「俺は俺、お前はお前」って思ってるところは変わらないんだろうね。たとえば子供が将来「〇〇したい」って言っても、それは違うからこっちにしなさい!なんて言わないだろうし。お前の人生だから、好きに生きれば?って思う。もちろん、子供が失敗したら助けるけどね。それは家族として当たり前だから。

■そうですね。

子供に対する曲を書いた時点で「丸くなった」って言う人もいると思う。だけど俺は「丸くなった」っていう言葉自体がすごく嫌いで。まったく丸くなってないわけですよ。人として成熟していってるだけで、何かを失っているのとは違う。捨ててきたものはあるけどね?バカをやってて楽しかったのも、やる必要がなくなったからやらないだけで。それを「昔のお前は尖ってたのにな」とか言う人もいるけど、そうじゃない。今の俺をとことん表現しているだけだし、それは一切変わらないところだよね。この曲の最後の部分は、子供がいる人だったら共感できるはずだと思う。そういう意味でも、俺だけの歌じゃないと思えるのが“FATHERS”だと思う。

■ただ尖ることがカッコいいのか、攻撃的なだけがロックなのかって言ったら違う。死に切ることよりも生き切ることを歌うほうが素直な生命表現だと思うし、ここに込められた未来への視点はまさにそういうものだと思います。

ありがとうございます。嬉しい。



Disc 2
01 | DiAMOND
02 | NO SOLUTiON
03 | LET iT END
04 | LiON’S DEN

■ここからは、今作のDisc 2に収録される4曲について伺っていきます。2016年10月の横浜アリーナ公演で披露されて、なおかつその映像作品のエンドロールで流れた“NO SOLUTiON”以外は今作に至る以前の配信シングルとしてリリースされてきました。いわば、新たなトライが多くなされた今作のプロトタイプとしても聴ける楽曲たちなのかなと。

そうだね。この中で言うと、“NO SOLUTiON”が一番古いってことになるのかな。まずこの曲から話していくと、『THE BEAUTiFUL PEOPLE』はアリーナクラスでのライヴも見据えてスケールの大きな曲を多くしたアルバムだったから、今度は逆にラウドに振り切って、ライヴハウスで一気に盛り上がる曲を作ってみようっていうところから出てきたのが“NO SOLUTiON”だった。音楽的には、シンセのフレーズがギターリフの上に入ってるのが今までにないトライで。それがアリかナシなのかでこれからが変わってくるなと思って、これもまた分岐点のつもりでメンバーに聴かせたんだよね。そしたら反応がよかったから、新しいタームに入れたきっかけの曲だね。
……なんだけれども、さっきの歌の話で言うと、メロディをライヴで歌えない高さで作っちゃったんだよね(笑)。ライヴだとなかなか出にくい部分があって、なぜかサビでその高さにいっちゃったんだよね。だから、この曲のお披露目ライヴ以来ずっとやってないんだ(笑)。お蔵入りかなあと思ったんだけど、あまりにも音源化希望の声が多かったので。ライヴでやれるかはわからないけど、みんなのために入れようと。

■この曲は、メロディの飛翔感や楽器のフレーズのキャッチーさも含めて、相当手応えがあったんじゃないかと思うんですが。

そうだね。途中静かになるところのギターフレーズも面白いし。あれは忍者をイメージしたやつなんだけど(笑)。

そうだね。そのあたりも面白い試みだったし、この曲を作るまでは、ギターとベースのリフの上にリード楽器を乗せないっていうのがSiMにとっての「リフ」の定義だったんだけど、一度そこを取っ払ってみたことで新しい可能性を得られたんだよね。この曲がなければ今回のアルバムも全然違うものになってたのは間違いない。

そうだよね。この頃からシンセもどんどん入れるようになったし、大きい分岐点だったね。

■逆に言うと、この頃から「ナシ」を「アリ」にしていかないと次のステップに行けない感覚があったんですか。

そうだね。そもそも俺がシンセを入れてなかったのは、Rage Against The Machineの影響だったんだよね。「電子音を一切使わない」って言い切ってたのがカッコよくて、自分もそう言い張ってた節はあるの(笑)。でも“GUNSHOTS”とかができたことで、アリなんじゃねえかと思い始めたんだよね。

そう考えると、“Amy”や“WHO’S NEXT”でダブステップを入れてみたのもデカかったよね。そこから“GUNSHOTS”を経て、“NO SOLUTiON”でシンセがリード楽器として初めて登場するに至ったという。

まあ、GODRiの負担は大きくなるんだけどね。電子パッドの分量も増えたし、電子音を流すのはGODRiだから。

小節ごとに俺が叩いて電子音を流す仕組みになってるんやけど、普通は同期でやっちゃうところをギリギリまで人力でやるのは、ひとえにグルーヴへのこだわりなんですよ。あとは、ここまで人力でやってきたなら引き下がれないだけでもある(笑)。ただ、やってみればできるので。全然大丈夫ですけどね。

■そうしてシンセをリード楽器として押し出すトライがあった上で、“DiAMOND”“LET iT END”“LiON’S DEN”ではさらに、今作の音楽的解放に繋がる実験とヒントが散りばめられた曲たちだったとお見受けします。ラップの多用も、5弦ベースと7弦ギターの登場も、この頃からでした。

“DiAMOND”を作った頃には、もう迷いがなくなってて。好きに作ろうっていうモードで振り切れてたと思う。“LET iT END”の場合は“EXiSTENCE”に引き続いて『神撃のバハムート』のタイアップだったから、“EXiSTENCE”との対比も考えてたんだけど。だけどそれ以外は、どこまで実験をしてどこまで攻撃的に行けるか、自由に作れてたね。

■とはいえ、“LET iT END”では「俺はまだ終わる気はない」という宣誓のような言葉も出てくる。『THE BEAUTiFUL PEOPLE』のタームが終わってからのリスタートも感じさせつつ、この先への切実さも感じさせる歌になっているのが印象的だったんですが。

もちろんタイアップ曲ではあるんだけど、限りなく「お任せします」っていう感じだったんだよね。それこそ“BULLY”みたいに外の世界との対峙がテーマになっている場合はそこから言葉が出てくるけど、なんでも自由に書いていいとなると、真っ先に出てくるのはやっぱり自分との闘いの歌なんだよね。

■MAHさんは、どんな自分と闘っているんですか。

やっぱり、「気づいたら怠けてしまう自分」と闘ってるんだと思う。自制と自律とずっと向き合ってる感覚があって。それはこの先も続いていくんだろうなって思う。それに、一見他者に吐き出している言葉でも、自分への戒めの意味も持ってるんだよね。そこは変わらないかもしれないね。

■そういう普遍的な部分と、音楽的な実験。両方がドバッと叩き込まれているという点では今作に至るレジュメのように聴ける4曲だと感じました。

本当は本編に入れて17曲のCDにしたかったし、そもそもは20曲くらい入れたかったんだよね。だけどそもそもCDの容量に20曲も入らねえわと気づいて(笑)。そうかRANCIDは1曲が2分くらいだったから20曲も入ってたんだなと。それでDisc 2にまとめたんだけど……確かに言われてみれば、『THE BEAUTiFUL PEOPLE』の後にSiMから遠ざかっていた人が聴いても「ああ、この4年の間にこうなってたのか」って思えるような、間を埋めてくれるCDになってるのかなと。Disc 1を際立たせる意味でも、重要な4曲だと思うよね。

■それともうひとつ。“LiON’S DEN”はプロレスのタイアップになった曲でありながら、プロレスを通じて生き様の歌になっていきますよね。この曲を象徴にして、今作はMAHさんが好きなカルチャーが歌になっているところも多い。そういう意味でも新しい側面を見せて、SiMが持っている表情の多さや興味深さも表しているのが“LiON’S DEN”だと思ったんですよ。

まあ、いろんなカルチャーを通ってはいるけど、特にプロレスからは大きい影響を受けてきたからね。わからない人にはわからないかもしれないけど、「それってプロレスだよね」っていう表現があるじゃない?言わなくてもいいことを敢えて言って場を盛り上げる、みたいな感覚を「プロレス」って表現することがある。で、「プロレス」っていう言葉がSiMのMAHのすべてだと言えるくらい、俺が表現してきたことそのものなんだよね。SNSでの発信、ライヴでの言葉――普段なら「言わないことが美徳だ」とされることを敢えて言って、お客さんや出演者を焚きつけて燃え上がらせるパフォーマンス。それは全部「プロレス」なの。<マイ ライフ イズ レスリング>っていうのはそういう意味なんだよね。もちろん炎上したことも何回もあるし、それによって学んできた歴史がある。だからって思ったことを何も発信しないのは違う。思ったことをちゃんと言って、人を傷つけないギリギリのところで毒をエンタテインメントにするのがSiMのMAHだと思ってるんだよね。

■なるほど。「プロレス」は闘いだけど、相手を否定することなく受け止めて、さらに面白い展開にして返すっていう面がありますよね。SiMの歌全体にも通ずる話だと思います。

そう、人を傷つけないでエンタテインメントにするっていうのが最高なの。小学生の頃からプロレスが好きだったけどプロレスラーにはなれなかったし、かと言ってプロレス業界にも入れなかったわけ。だけど別でバンドっていう夢を見つけて、気づいたら仕事としてプロレスと関わることができて。それはマジで夢があることだよね。幸せな曲だと思う。

■ということで、ここまで17曲を解説していただきましたが、改めて自分にとってどういう作品になったかを教えていただけますか。

改めて、1曲も似てる曲がないね(笑)。バリエーションが豊富だし、だけど歌詞も含めてすべてに意味がある、余すことなく聴いてほしいなって思える自信作ですね。自分にとっても全曲がキラキラしてるから。

まあ、俺はただただ自分のやりたいフレーズやプレイを詰め込んだだけなんだけど(笑)。毎回そうだけど、思い切りやれたことが嬉しいですね。

■了解です。GODRiさんはどうですか。

毎回チャレンジがありますけど、4年ぶりのアルバムっていうこともあってより一層フレッシュな気持ちで作れたのが今回で。さあこれからどうなるかなって。昔『SEEDS OF HOPE』を作った時みたいに「さあ行くぞ」っていう感覚に近いですね。

■さあ行くぞ、という気持ちで行く次のステップは、どういう段階だと思われますか。

そうだな……この前“Devil in Your Heart”のMVを撮ったんだけど、そこに出演してくれる子供たちが楽屋で<di da la la>って歌ってたんですよ。それを見た時に、子供にも刺さるかもしれないと思って。つまり、「みんなのうた」なんじゃないかな。ラウドミュージック、レゲエパンクを「みんなのうた」にできる可能性を秘めたアルバムなのかなって思う(笑)。それくらい、理屈を超えて広がるメロディや音が詰まってるのかなって。だからね、お客さんは別にアルバムタイトルは覚えなくていいんだよね。とにかく曲を聴いてほしいし、好きに歌ってほしい。“BASEBALL BAT”のサビだけは覚えてきてほしいけど(笑)。

■はい(笑)。<can I smash your head with a baseball bat?>。

そう、そこだけはお願いします!



interviewed by Daichi Yajima

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