コラム

2005年から女性歌手の名曲をカヴァーしてきた德永英明。
『VOCALIST』シリーズは累計600万枚という記録を打ち立て、“ヴォーカリスト”として確固たる地位を確立。
10年間に及んだこのシリーズを完結させ、去年、本来のあるべき姿“シンガーソングライター”として、オリジナルアルバム『BATON』をリリース。
シングル『バトン』では日本レコード大賞作詩賞を受賞。
これらの実績と実証を積み重ねた彼が、満を持して世に放ったのが、今作のセルフカヴァーアルバム『永遠の果てに』。
ちょっと待て!彼は2003年にセルフカヴァーベストをリリースしていたはず。“なぜ今?”“なぜまたカヴァー、しかもセルフカヴァーなのか?”
その疑問を本人に直接ぶつけてみると、今作誕生は必然的だったことがわかった。
構想は、なんと2015年。その年は『VOCALIST6』をリリースし、精力的にライブ活動をしていた繁忙期。しかし彼は「僕は回遊魚と同じ。
どんなに忙しく疲れていたとしても、創作意欲が途切れることはない。
動いていないと気が済まない性格だから、いつも2~3年分先を動いている」のだとか。そして、セルフカヴァーの理由と選曲基準は、実に単純明快。「僕も僕の楽曲も、そして僕の歌を聴いてくださっていた方も“大人になった”“成長したんだ”と感じてもらえるような作品を作りたい」という想いと、「あの頃の若さ・記憶をもう一度甦らせよう」という願いからだった。
だから、今作は86年のデビュー曲から90年代前半のヒット曲に絞られた。
夢や希望・情熱に満ち溢れていた時代に作れた楽曲。
「若い頃はみな尖っていて、僕もスタッフと激しくぶつかり合いながらも一致団結していたなぁ」と笑顔で当時を懐かしがった。
そんな中、アルバムタイトルにもなっているリード曲『永遠の果てに』については、「輪廻転生がテーマ。歌手生命が尽きるんじゃないかと思うほど魂を込めて作った」と熱く語った。
もしかしたら、彼はこの曲・このアルバムでシンガーソングライターの自身だけでなく、現世や人びとの“生まれ変わり”を図ろうとしているのかもしれない。
『VOCALIST』シリーズで証明された国民的歌唱力。培ってきた経験によりアレンジされた新たなサウンド。オリジナル歌詞に込められている不変のメッセージ。
德永英明渾身のセルフカヴァーアルバム『永遠の果てに』は、こうして2018年に“生れた”。

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