約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『I vs I』は“戦い”をテーマに、音楽と向き合う自分自身との戦い、ライバルや自分たちを取り巻く環境との戦い、そして、デビュー以来9年間、自分たちの音を世界へ届ける為に戦ってきたという真っ直ぐな思いが込められている。

音の細部にまで拘り創りあげた最新作は、和楽器バンドの原点とも言える「和」を感じられる楽曲から新たなサウンドを楽しめる楽曲まで、和楽器バンドをとことん音で堪能できる1枚に仕上がった。

デビュー満10年を目前に、最新にして最強に和楽器バンドらしさが詰まった、渾身のマスターピースが遂に完成!

SPECIAL

Artist Comment

今回のアルバムタイトルである「I vs I」は、私にとっても大きなテーマでした。
前作のオリジナルアルバムからのこの3年は様々な出来事があり、これまでにない経験を通して、自己を見つめ辿り着いた世界があります。今を生きるあなたを応援し、そして背中を押す存在の一枚として寄り添えますように。

Vocal/鈴華ゆう子

昨年はボカロカバーアルバムのリリースだったのでオリジナルアルバムとしては約3年ぶりということですが、既にシングルでリリースしている作品達に加え、これまでの時間で培った和楽器バンドとしての新たな進化、アプローチを取り入れつつもロックバンドとしての核を残した激しめのアルバムとなっています。そしてそれらを引っ提げたツアーですが、8人全員揃っての公演、昨年は途中から7人体制でしたので我々の想いもひとしおです。
精一杯日本各地の皆様にロックバンドとしてのエンターテインメントをお届けしようと思っておりますので、楽しみに待っていてください。

Guitar&Vocal/町屋

Self Liner Notes

01.The Beast(作詞・作曲:町屋 編曲:町屋/和楽器バンド)アニメ『範馬刃牙』2期のオープニングテーマですが、普段から毎日の様に刃牙シリーズを愛読しているので、すぐに着想が湧いてとてもスムーズに出来た楽曲です。他のどの楽曲よりも力強く重心を下げる為にキーをギリギリまで下げつつ、冒頭には大陸感を連想させる民族音楽的な声のみのトラックというのも新しい試みで、これは僕が16声オーバーダビングしたデモをそのまま使っています。

町屋(Guitar&Vocal)

02.宵ノ花(作詞・作曲:鈴華ゆう子 編曲:町屋/和楽器バンド)ゲームアプリ『真 戦国炎舞-KIZNA-』のオープニングテーマとして手掛けた1曲ではありますが、自身にとっても長期療養中の戦っていた時期に作りましたので、アルバムタイトルとも重なるまさに『I vs I』がテーマの1曲でもあります。
我が身の運命を受け入れながら、凛々しく向き合い生き抜く姿を、色彩豊かに描きたいと思い作りました。最初にできたのは冒頭のAメロ部分です。気持ち揺らめき、そして受け入れ、貫くと決めるまでの心の動きを音で表現するようなイメージで生まれた旋律です。

鈴華ゆう子(Vocal)

03.愛に誉れ(作詞・作曲:鈴華ゆう子 編曲:町屋/和楽器バンド)「スマパチ義風堂々!!~兼続と慶次~3」のテーマソングとして書き下ろしましたが、最初に浮かんだのが直江兼続といえば愛の兜でした。その愛の文字に込めた想いなどをイメージしながら、前田慶次との友情や、戦への葛藤を描きました。時代は違えども、生きる信念など現代への教訓ともなるような曲を残したいという思いで、改めて歴史を振り返りながら制作しました。
旋律やリズムは、躍動感を意識し、また自身の得意な高音域が響き渡るような音を選び、クライマックスを盛り上げるように考えました。ライブでもお客さんとの一体感が楽しみなアゲ曲です。

鈴華ゆう子(Vocal)

04.生命のアリア(作詞・作曲:町屋 編曲:町屋/和楽器バンド)TVアニメ「MARS RED」のオープニングテーマになります。個人的にとても気に入っている曲で、前半は作品の絵コンテにハマりやすいようにミドルバラード調で始まりますが、様々な展開を経て力強いサウンドに変化していくドラマティックな楽曲になっています。尺八とギターのフーガも和楽器バンドならではで面白い造りになっていると思います。

町屋(Guitar&Vocal)

05.修羅ノ義(作詞・作曲:山葵 編曲:町屋/和楽器バンド)「スマパチ義風堂々!!~兼続と慶次~3」のテーマソングということで、兼続と慶次の絆と志をテーマに書き下ろしました。
和楽器バンドの十八番である、力強くエモーショナルなロックサウンドが前面に押し出されたサウンドに仕上がりました。
混沌とする乱世のように、力強さや切なさ、儚さが入り乱れるドラマティックな展開を楽しんで頂けるかと思います。

山葵(Drums)

06.藍より青し(作詞・作曲:町屋 編曲:町屋/和楽器バンド)ゲームアプリ『真 戦国炎舞-KIZNA-』の合戦テーマになります。この曲は和楽器バンドの十八番の駆け抜ける様な勢いのあるロックサウンドを軸に、戦場の土煙と対称的な空の青さが印象的だったので、勢いだけではなく、美しく流れる様な展開を大切にしています。

町屋(Guitar&Vocal)

07.Interlude~Starlight~(作曲:町屋 編曲:町屋/和楽器バンド)Starlightに繋がるインスト楽曲ですが、普段ライブのSE制作等で培った様々な手法を用いていて、この1曲があることで和楽器に耳がフォーカスされるので次曲「Starlight (I vs I ver.)」を聴いた時にアルバムミックスの違いをより明確にする事が出来ます。今作の中でも最後に出来た楽曲なので全体のバランスに注意しながら慎重にアンサンブルを組みました。

町屋(Guitar&Vocal)

08.Starlight (I vs I ver.)(作詞・作曲:町屋 編曲:町屋/和楽器バンド)フジテレビ系月9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌として書き下ろした楽曲です。作詞作曲はドラマチームと何度も入念に台詞の被り等を擦り合わせながら1年近く時間を掛けて書き下ろした1曲になります。普段は和楽器を目立たせる為に1Hz和楽器だけチューニングを高くしていますが、作品に寄り添いつつポップスの中に我々のサウンドを落とし込む手法として、440Hzで統一するという手法を取っています。
今回はアルバムバージョンとして全体のバランスをリミックス、和楽器を逆に目立たせるという方向で作り直したので既にシングルで聴かれている方にも楽しめる様になっていると思います。

町屋(Guitar&Vocal)

09.そして、まほろば(作詞・作曲:鈴華ゆう子 編曲:町屋/和楽器バンド)戦いの曲が多い中で、その先の世界を描くべく書き下ろした曲です。アルバムの完成に向けて最後に作りました。
生と死について触れ、まだ見ぬ境地を目指して歩む到達点を「まほろば」という言葉で表現しました。心の叫びとして突き抜けるサビのロングトーンは、私がこのバンドにおいて歌いたかった形のひとつです。ツインボーカルのように聞こえるサビのコーラスは、遠く離れた2人の声が交差しているかのように聴こえてくるのではないでしょうか。
和楽器バンドならではのバラードナンバーです。

鈴華ゆう子(Vocal)

10.時の方舟(作詞・作曲:町屋 編曲:町屋/和楽器バンド)久々の小編成楽曲になります。戦いをテーマにしたアルバムなので、戦いの後の敗者、勝者を俯瞰で描いてみました。自然のアンビエントの音や流れる様なストリングスに乗せて最小編成でシンプルだけれども世界観、没入感のあるアレンジにしています。

町屋(Guitar&Vocal)

11. BRAVE(作詞・作曲:山葵 編曲:町屋/和楽器バンド)アルバムの本編最後ということで、これまでの戦いを振り返りながらも、前に進み続ける前向きな曲にしたいと思いました。
最初は聴き手に勇気を与えるような楽曲にしようと思っていましたが、気づけば自分達を見つめ直すような内容になりました。
誰しもが溜まっていた鬱憤を晴らすかの如く、ライブでファンの皆さんと大合唱する光景を何より強くイメージしながら制作しました。
そんな景色を心より楽しみにしています。

山葵(Drums)

12.星の如く(作詞・作曲:山葵 編曲:町屋/和楽器バンド)すとぷりの皆さんに提供させて頂いた楽曲のセルフカバーになります。
この曲は自分自身との戦いをテーマに書いたのですが、奇しくも「I vs I」のコンセプトにぴったり当てはまりました。元々バンドアレンジを想定して書いた楽曲でしたので、スムーズに和楽器バンドの演奏が馴染んだと思います。特にラップパートや間奏はエッジが効いていて、原曲を聴いた後であればあっと驚くはず。
和楽器バンドのみならず、すとぷりのリスナーの皆さんにも楽しんで頂ける仕上がりになったのではないかと思います。

山葵(Drums)

13.名作ジャーニー(作詞:いぶくろ聖志・作曲:鈴華ゆう子 編曲:町屋/和楽器バンド)この曲は「あはれ!名作くん」のエンディング曲として歌詞を書いたので、色々な名作の要素を詰め込めるように作詞をしてみました。ガリレオガリレイ「天文対話」での地動説や、H・G・ウェルズ「タイムマシン」、アインシュタインの「相対性理論」、「アラジンと魔法のランプ」「ウサギとカメ」「アリババと40人の盗賊」「古事記(天岩戸神話)」「かごめかごめ(童謡)」数々の童話なんかをイメージして少しおちゃらけながら世界観をまとめてみました。ほんの少ししか要素が残ってないものもありますが、和楽器バンドの音と名作にふれるきっかけとなりますようにっ!

いぶくろ聖志(箏)

Official Interview

鈴華ゆう子 vs 蜷川べに

今回のオフィシャルインタビューは、最新アルバム『I vs I』にちなんで、メンバー同士1対1の対談形式というバンド初の試みでお届けすることになった。1対1ということはトータル4本の対談が存在するのだが、どんな組み合わせになるかは公開までのお楽しみ。
気になる1本目は、鈴華ゆう子vs蜷川べにという女性メンバー同士によるもの。2人の出会いから始まり、本人すら初耳のエピソードが飛び出すなど、興味深い話がてんこ盛りの内容となった。もちろん、アルバム『I vs I』のレコーディング裏話や、現在開催中のツアー<和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I>についてもたっぷり語ってもらっている。
対談は、お互いの第一印象を語るところからスタート――。 Text: 阿刀 “DA” 大志

――まず、お互いの第一印象から聞いてもいいですか。

鈴華最初は「どんなコが来るかな~?」ってドキドキしてて……まだデビュー前だったよね?

蜷川そう、スタジオで音を合わせたときが「はじめまして」だったんですよ。

――そのスタジオは「六兆年と一夜物語」をやったとき?

蜷川それと「吉原ラメント」と「月・影・舞・華」。

鈴華でも、それより前にもリハはしてて。

蜷川私以外のメンバーは何回か会ってたんだよね?

鈴華そう。

蜷川でも、私と亜沙さんは本当にはじめまして。覚えているのが、そのときにゆう子さんは短いスカートに黒の音符柄のタイツを履いてて。

鈴華暗い紫ね(笑)。

蜷川そうなんだ(笑)。「やっぱ、音大を出てる人はファッションでもそういうところを出していくんだ」って思ったのが第一印象(笑)。

鈴華あはは! 私、そのときはまだバンドはデビューしてないしお金もないからギリギリの生活をしてて、ピアノの先生とか事務の仕事とかを掛け持ちしつつ音楽活動もして必死に生きてたんだけど、べにはスタジオまでタクシーで来て!(笑)

蜷川えっ!? うそ? ホント?

鈴華そうそう! で、「すごい! ちゃんとしたミュージシャンなのかな?」とか思ってすごいドキドキしてた。

蜷川あはは! なにそれ、初めて聞いた!(笑)

鈴華で、会って話してみたら、べには今みたいには話さなくて。

蜷川当時はすごい人見知りだったからね。

鈴華そうそう、それで「こっちから話しかけなきゃ」って思った記憶があった。でも、実際に話してみたらすごく気を遣う人で、 丁寧で、優しいコだなって。こっちは緊張してるから、「超気が強い人だったらどうしよう!」って思うわけじゃない? でも、話しやすくてよかったなって思った記憶がある。

蜷川そのときの私は黒髪ぱっつんロングみたいな攻めた髪型をしてた上に人見知りだったからね。ゆう子さんは割と気を使って話してくれたからタイツを見る余裕もあったんだけど……。

鈴華んふふ(笑)。

蜷川あと、亜沙さんは「今日が初めてでしょ? 俺も。あと、自分でつくっといてなんだけど『吉原ラメント』弾けないから大丈夫大丈夫」ってわりとフランクな感じだったけど、他の人とは何を話していいかわからなくて、「みんなにもなんか質問しなきゃ……! 流派のこととか聞かなきゃ……!」と思って、きよぴー(いぶくろ聖志)に、「何流なんですか……?」って聞いたら、「いや、別にそういうのとかないけどね……」って。あはは!

鈴華逆にね(笑)。

蜷川それで「あ、ダメなヤツ聞いちゃったんだ!」って。

鈴華和楽器っていろんな流派があったりするから「失礼があっちゃいけない」って思うんだけどね(笑)。

蜷川でも、彼は早々に自分の道を歩んでいたから塩対応で(笑)。

――ゆう子さんはべにさんと出会った頃のことで何か覚えてるエピソードはありますか。

鈴華すごく覚えてるのが、最初に会った頃、べにが「私でいいのかな……」って言ってたことで。

蜷川うわっ! なんか今、思い出しちゃった!

鈴華ふたりでご飯食べに行ったときもすごく恐縮してたし、まだ自信もなくて。だからそこで「いや、べにじゃなきゃダメなんだよ」って話をしたんだよね。

蜷川恥ずかしい……(笑)。

鈴華「他にも津軽三味線を弾く女性はいるけれども、私が目指したいバンドにはべにが必要なんだよ」って。和楽器奏者にはコードという概念がないし、そもそもコードなんて習わないから、それをコンプレックスに感じるんじゃなくて、むしろべにのそういう柔軟性がいいんだよって。べには「決まったことしかできない」ってことは言わなかったし、逆に「知りたい」「学びたい」って言ってくれてすごく向上心があったし真面目で。今となっては「コードってなんでしょう?」って言ってたのが懐かしい。

蜷川やめてぇ~!(笑)前のこと過ぎて記憶の彼方になってたけど、いま、いろいろぶわぁっと思い出した! その当時は、「私じゃなくてもいくらでもカッコよく三味線を弾ける人はいるじゃない」って思ってて、「なんで私なんだろう、私で大丈夫なのかな」っていう気持ちがすごくあったから、ご飯を食べながら話したんだよね。でも、 これからやっていこうと思っている世界のこととか、いろんなジャンルの楽器とセッションしていくことに対してはすごく興味があったし、いろいろ勉強したいっていう気持ちもあったから、そこからいろんな動画を観たり、楽典を勉強したり、三味線でコードを認識することになったときに「これはどのコードになるんだろう」って全部自分で探って覚えていって。すごく楽しかったけど、当時は自信を持つのに時間がかかったなあ。

――べにさんは割と最近まで「自信がない」って言ってましたよね。

蜷川言ってましたっけ?(笑)でも、ターニングポイントとしてあるのはコロナで。コロナ禍前ぐらいまでは、自分は周りの環境にとても恵まれてきたという気持ちが大きくて、自分の実力だけでこの先どうやって勝負をしていけるのかってすごく悩んでるところがあったんですけど、コロナ禍に入ってから決心が固まったというか。このバンドでしっかりやっていこう、自分にしかできない仕事を日本のみならず世界に向けて発信していこうって。

――時間かかりましたね!

蜷川そうですね(笑)。

――男だらけの大所帯バンドに女性2人ということで、気苦労とかはないんですか。

鈴華女だらけの中にいるよりよかったなって思う。

蜷川確かにね。

鈴華けっこう聞くんで、女だらけの中での苦労話を。そういう意味ではラクなことのほうが多い。

蜷川うん、そうね。逆に、もし女が4人いたら固まりがちになると思うけど、男6女2だから、その時その時の気分でいい分散の仕方ができるよね。だから特に男女がどうとかっていうのは気にしたことがないかもしれない。とてもフラットに接してる。

鈴華ただひとつ、体力面でついていけないってことで。男の人たち、特に山葵とかはそうだけど、みんな体力があり余ってるから私たちが「しんど……」みたいになることはよくあったよね。

蜷川あるね。体力的な部分では、パフォーマンスが続くとどうしてもしんどくなる部分があるから、自力でなんとかしていかなければいけないっていうのはある。弱音も吐けないし。

鈴華「これは体力の差だ……!」って思った経験は何度もあった。べにとは「男の人たちはすごいよね」ってよく言ってたし。やっぱり生物学的に疲れの感じ方が違うと思う。

蜷川そうだね。男の人は大昔からマンモスを狩りに行ってたし、その頃と同じように今も仕事に対しては100でいけるけど、女性っていうのはひとつの物事に対して多方面から考えたりするから。

鈴華けっこう視野広いよね。

蜷川そう。「こっちではこういう意見があるけどあっちではこう言ってるから、バランスを取った上でこういうことをやったほうがいいかな」っていうゆう子さんの考え方だったり視点は理解できる部分がある。

鈴華見据えてるものが女の人はもうちょっと先の未来だったりするからね。で、男性は「意外と目の前のことしか見てないのかな?」みたいな感覚。それもやっぱり、生物学的なものがあると思ってます。

――では、作品の話に移っていきたいと思います。

鈴華やっと作品の話(笑)。

――あはは! いや、せっかくなんで普段のインタビューでは聞けない話を聞きたいじゃないですか(笑)。

蜷川確かにそうですよね。あんまりこういう角度からの質問ってないです。

――昨年、『ボカロ三昧2』というとんでもない作品を作り上げ、そしてそれを再現するというこれまたとんでもないツアーを経て、お2人それぞれどんな変化がありましたか。

鈴華これまでも和楽器バンドの曲は難しいと言われてきたけども、『ボカロ三昧2』を経て、「めっちゃ簡単じゃないか」と思って(笑)。

――うんうん(笑)。

鈴華なので、ボーカル力は『ボカロ三昧2』によって自分でも上がった気がします。

蜷川それは楽器陣も同じで。『ボカロ三昧』の頃からはシーンのトレンドも変わってデジタルサウンドが主流になった中で、『ボカロ三昧2』ではその音を和楽器と洋楽器で漏らさず全て再現したんです。でも、何回も転調するし、歌も早口だし、速弾きもするし、曲は短いし、この作品に対するプレッシャーはみんなすごくて。そんなアルバムを経て、今回のアルバムでまた和楽器バンドらしい楽曲が帰ってきたんですけど、今回は前半に戦闘系のタイアップ曲が多くて、後半に和楽器バンドのよさがすごく出ている楽曲が入っていて、今までの経験値とともに和楽器バンドの全てを詰め込んだところはありますね。

鈴華正直、歌っていてホッとしますね(笑)。やっぱりバンドが長く続くということは本来とても大変なことなんですけど、私たちはいろんなことに挑戦して変化もしながら、みんながすごくレベルアップしているのを感じるので、無駄なことはひとつもなく歩んでいるんだなっていうことをここ最近改めて感じてます。

蜷川特に以前EPとしてリリースした「Starlight」は挑戦した楽曲で、トレンドとかいろんなものを押さえた上で、和楽器バンドの要素100ではなくて、ゆう子さんの歌い方を変えてみたり、和楽器の音の出し方を変えてみたりしたんですけど、今回改めてアルバムに収録するということでミックスをし直して和楽器がちょっと前に出るようになっています。

――なるほど。

蜷川その前の「Interlude 〜Starlight〜」ではクリックだけを聴きながら各々の和楽器らしいフレーズを録っていって、それをパズルみたいに組み合わせてつくったり、そういう試みもしています。そういった挑戦にプラスしてこれまでの和楽器バンドらしさが入っているので、「これはもう完成してるな」と思いますね。そういった挑戦や変化がある一方で変わらないこともあって、とにかくみんな努力家なんですよね。

蜷川みんな努力してることを言わないよね。

鈴華全然言わないよね。『ボカロ三昧2』を経て改めて思いましたけど、どんなに難しい課題が来てもみんな仕上げてくるんですよね。

蜷川うちは楽曲のアレンジや制作の全体的なディレクションを町屋さんがやっていて、曲の叩き台が上がってくるのがレコーディング前日とかなんですけど……。

――ええ~っ!?

蜷川そんな感じなんですよ(笑)。で、そこからみんなよーいどんでリズム隊から録っていくんですけど、多分黒流さんなんて町屋さんから資料が届くのを前日から携帯を握りしめてずっと待ってると思うんですよね。そこからアレンジを考えたり徹夜で作業して、リズム隊、箏、三味線、尺八っていう順番で録っていくっていう。

鈴華「この人だからできるんだな」ってメンバーのことを改めて尊敬するし、そういう尊敬の念がなかったら多分一緒にやれないんだろうなっていうことも『ボカロ三昧2』を経て再確認しました。

――そうでしょうね。それにしても、デモが上がってくるのが前日だとは思いませんでした。

蜷川そんなこともあります。

鈴華歌詞が上がってくるのも当日だったりして(笑)。

蜷川リアルな話ですけど(笑)。

鈴華ただ、常にそうということではなくて、スケジュールが立て込むとそういうこともあるという感じです。

――とはいえ、話を聞いてるだけで胃が痛くなりますね。

蜷川でも、黒流さんは「それがすごく燃える」って言ってます。レコーディング当日に考えるほうがいいイマジネーションが湧くみたいで。

――その場のテンションでぐっと。

蜷川でも、今回はタイアップ曲が多かったので割と早くから手をつけていて。

鈴華タイアップ曲に関しては決まったのが2年前のものもあって、その一方でアルバム後半にあるのが新しく書き下ろした曲になるんですけど、それも一気につくってはいないので、そういった意味ではそこまで大変じゃなかったかな。

――タイアップ曲はテーマが明確ですけど、そのほうが曲を書きやすかったりするんですか。

鈴華書きやすいです。より具体的なテーマがあったり、物語があったり、先方から「こういう言葉を入れてほしい」という指定があるので、 世界観を決める時間がショートカットされるという意味ではつくりやすいですね。

――今回はバトル物のタイアップが多いので必然的に強さが前に出てきています。

鈴華うん、そうですね。さっき男女間の話がありましたけれども、同じ戦国モノのタイアップ曲だとしても、作曲者に女性と男性がいることでバリエーションが生まれるんです。たとえば、私が書いた「宵ノ花」はゲームアプリ『真 戦国炎舞–KIZNA–』のオープニングテーマなんですけど、敢えて儚さとか柔らかさを少し入れ込んでみました。きっと他の男性メンバーはがっつり来るだろうなって思ってたので(笑)。同じテーマの曲でも「自分は女性らしさを出してみようかな」と思うことはありますね。

――それは興味深いお話です。

鈴華あと、キーですよね。私のキーは高いので、男らしい曲でどういった表現ができるのかなと。高いところに寄せて歌うのか、敢えて沈んだ感じで攻めるのか、そういったところもけっこう考えたりしました。

――今回はタイアップ曲が先にあったことで、「じゃあ、そのほかにはこういう曲が欲しいね」みたいな話になっていったんですか。

鈴華はい。アルバムをつくる上でテーマ性が必要となる中で、足りない要素は何か考えてみたらバラード系が一切なかったので、後半はどういう世界観で行くか話し合いました。

――僕は「そして、まほろば」がとても好きです。

鈴華あ、本当ですか。

蜷川十八番ですね。

――この曲はゆう子さんが作詞作曲をして、そこから町屋さんがものすごい展開をつくっています。

蜷川この曲だけではなくて、「砂漠の子守唄」「宛名のない手紙」「IZANA」みたいにゆう子さんがつくった叩きの状態から町屋さんに曲のイメージを伝えて仕上がるバラードってすごく独特だと思ってて。ただのバラードじゃなくて、しっかり聴かせるバラードなんですよね。さらに、和楽器とか飛び道具的な楽器をしっかり聴かせられるカッコよさもあるし、これはうちのバンドならではだなと思っています。

鈴華私がやってきた音楽は主にクラシックだったので 世界観が広めになりがちなんですけど、そういう世界観でありながらも劇伴ぽく和楽器を入れたものをこのバンドではやりたいし、それが自分の担当だと思い込んでいるので(笑)、「こういう曲、必要でしょ?」という気持ちでつくっています。でも、似たり寄ったりにはしたくないから、どういう方向にしようかまっちー(町屋)と相談しながらいつもつくっています。

――この曲、中盤なんてモロにメタルですよ。

蜷川挑戦してるよね。

――「何、このリズム?」みたいな。

蜷川黒流さんが「めっちゃむずい」って言ってた(笑)。

鈴華そこからの「時の方舟」っていうね。

蜷川ライブしてたらここで「ふぅ……」ってなる。

鈴華私は気合い入れるタイミングだね(笑)。

蜷川聴かせどころだからね。そう考えると、ライブするときのことも考えています。お客さんに対する聴かせどころというか。

鈴華私が書く曲ってけっこう三味線に優しくて、三味線をメインで鳴らしてるよね。

蜷川逆に山葵の曲は三味線でやりづらいことが多い。山葵はメジャー系でみんなで声を出すようなポップな曲が多いから、「どう行こうかな、これ……」って思うことが多いんだけど、ゆう子さんの曲は箏や三味線が曲の雰囲気を作るために絶対的に必要になることが多くて。

鈴華私が書いているのは和楽器バンドの曲だっていう意識が強いからだとは思う。メンバーはこう来るだろうな、こう来てほしいなっていうのがイメージにあるから、その上で曲を書いてアレンジまで出来上がったのを聴くとすごく楽しい。あと、ここには絶対こんな感じがいいっていうのがあれば言うしね。たとえば、「雪影ぼうし」だったら「三味線の掛け合いがしたい」とか「低音でおどろおどろしさを感じて弾いてほしい」とか。

蜷川そういうのがやりがいあって楽しいですね。

――今の話から想像すると、今作の「BRAVE」もメジャー系の曲で大変だったんじゃないですか。

蜷川大変でしたね。「星の如く」とかも。弾く手は割と困らなかったんですけど、手数が多ければ印象的になるかというとそうではないので、印象的に聴かせるためにどうしようか悩むことが山葵の曲には多いです。だから、無理せず曲の邪魔しないようにしようって。

――ゆう子さん的に今回最も難しかった曲はなんですか。

鈴華難しかった曲……?

蜷川「ま、ありませんね」とか言って(笑)。

鈴華ありません!(笑)

――『ボカロ三昧2』を経ていたらそうですよね。愚問でした!

蜷川感じ悪く書いといてください(笑)。

鈴華イヤだイヤだイヤだ!(笑) 

蜷川「別にないです……」って(笑)。

鈴華言ってないこと書いたら苦情ですよ!(笑)でも、本当に『ボカロ三昧2』のおかげですね。自分で書いた曲って敢えて難しくしちゃいがちで、「あ、これはカラオケで歌う人は大変かもな……」ということがよくあるんですよ。過去の曲で言うと「月下美人」とか。今回も「そして、まほろば」のロングトーンは大変です。かなり長いしキーが高いので。

蜷川あれはカラオケ泣かせでしょ(笑)。でもまあ、それに挑戦するのもファンの方からすると楽しいのかもしれない。

鈴華うん、楽しんでほしいね。楽しんでください!

――和楽器バンドのアルバムって同じようなものがないじゃないですか。アルバムごとに新しい要素、新しい音楽性、より高度な技術が入っていて。なので今回も新鮮な空気を感じているんですけど、それは新しいことをやらなきゃいけないという感覚があるのか、それとも自然とそういうものが出てくるのか。どうなんでしょう?

鈴華多分、時代を見ながら考えつつ、過去の自分との戦いでもあると思っていて。

蜷川好奇心とか努力とか、そこは各々あるんだと思います。

鈴華「これは前やったな」とか、「この感じはもう飽きちゃったかな? どうだい?」みたいなことをいろいろ考えて、パフォーマーとして、アーティストとして、音楽家として、 時代の波も読みつつ挑戦しながら今の自分たちを凝縮した結果、その都度違うものになっているという感じなのかもしれない。

蜷川個人的に思うのは、トレンドというものはとても早く移り変わっていって、自分たちはそれに合わせていくことも可能なんですが、それに100振り切ってしまうのではなくて、和楽器バンドの唯一無二感というものは残していかなきゃいけないなって。

鈴華変化する部分と守るべき部分というのは伝統と同じなんですよね。過去の伝統を受け継いでいく中で、最初と同じまま残っているものなんてこの世にはほとんどないし、その都度変化していくものをみなさんが「伝統」と呼んでいるだけで、決して同じではないんですよね。それと同じことを和楽器バンドでもやっているのかなと私は感じていますね。

――なるほど。

鈴華あと、これはずっと亜沙が言ってるんですけど、流行りは繰り返すもので、同じことをしっかり守り続けていればそれがまた当たるときが来るし、流行の後追いで変わっていくことは全然よくないんですよね。なので、敢えてブレずにらしさを貫くからこそ先を行くことができると思いながらこのバンドをやっています。

蜷川好奇心が旺盛なメンバーは多いし、トレンドはみんな好きなんだと思う。だから、「ちょっと取り入れてみようか」ぐらいの感覚で流行ってることを試してみて、ダメだったらダメでいいって感じ。それでも唯一無二だと感じることは最近とても多いんですよね。MVの撮影中とかに1人1人の動きを追っていても、こんなにカッコよくパフォーマンスができるバンドは唯一無二だなってすごく思う。だから、このスタイルを守っていくことはとても大切だと思っています。

――さて、アルバムを引っさげてのツアーもあります。どんなものになるんでしょうか。

鈴華まだ一度もリハをしてないし、セットリストもふわっとしか決まってない状態でのお話にはなってしまうんですが(取材が行われたのはツアー開始前)……6月に開催したファンクラブライブでかなり久しぶりに声出しが解禁になったんですけど、これまでと同じことをやってるはずなのにすごく新鮮に感じられたんですね。「声出しするライブってこんなに最高だったっけ?」って。だから、3年前の夏に目の前にマスクをして声も出せないお客さまがいる横浜アリーナで感じたことはすべて無駄じゃなかったんだなって。その後、次第に声出しなしのライブに慣れていったけど、その状態から帰ってきた今、以前と同じことをやってるけど景色は全く違っていて、 改めてここ(ステージ)の価値というものを噛み締めています。なので、そんな経験を経て我々がつくったものに対してお客さんがいる、という完成系のライブを目指したいです。

鈴華アルバムの曲一つひとつを再現することはもちろんやります。その上でライブでしか見られない、和楽器バンドならではの演出、ここでしか楽しめない「らしさ」を取り入れながら作っていきたいなと思ってます。あと、今回の対談をしている組で、<I vs I>という意味も込めてパフォーマンスをしようかという話も上がっていて。

――おお、そうなんですね。

鈴華私とべにの2人だけのパフォーマンスはあまりやったことがないんだよね。

蜷川そうだね。やっぱりそのライブでしか見られない演目をいつも作っているので、今思案中です。ただ、コロナ禍で先陣を切って有観客のライブをやったことはすごく大きなことだったと私は思っていて、お客さまが声を出せない状況で、ドラム和太鼓バトルでは拍手の大きさで勝敗を決めたり、撮影OKの楽曲を用意したり、声が出せなくてもお客さまにちょっとでも喜んでもらえる演目を考えてきて、そういった闘いを経て、ようやくみんなで声を出して歌えるので、存分に楽しんでもらいたいですね。

――来年は10周年ですね。普通のバンドでも10年続くって大変なことなのに、こういう特殊な音楽性、特殊なバンド編成で 10年続くって本当に奇跡のようです。でも、それを奇跡のように見せないのがまたすごくて。和楽器バンドっていい意味で泥臭さを感じさせないじゃないですか。

蜷川そうですね。あんまりみんな見せたがらないんですよ、そういう泥臭いところ(笑)。あと、未来の話をすると、ずっと海外海外って言ってる割にはなかなか海外でがっつり活動ができていないので、 日本のみならず海外でも認められるような、いろんな国の方々に見てもらえるようなバンドになっていきたいし、ここからもまだまだ頑張らなきゃなと思っています。

黒流 vs 亜沙
—— 今日はお2人とも服の色と髪の雰囲気が同じですね。どっちがどっちなのか一瞬わからないです(笑)。

亜沙確かに今日はカブってます。

黒流これまでの歴史で考えると俺が亜沙くんに寄せていった感じです(笑)。

—— 今日は亜沙さんと対談だから(笑)。

亜沙俺はいつも通りです(笑)。

—— せっかくの対談なので、お互いの第一印象から聞いてもいいですか。和楽器バンドで会うまでは全く絡みはなかったんですよね?

亜沙会ったことないですね。

黒流ただ、一番最初にスタジオで会ったのは亜沙くんだったよね?

亜沙ああ、そうそうそう。確かに最初にスタジオで会ったのは黒流さんだった。

黒流2人とも入りが早いんだよね。

亜沙そうそう。

黒流亜沙くんが先にいたんだっけ?

亜沙俺が一番で、そのあとに黒流さんが来たかな。

黒流和太鼓はセッティングが大変だからいつもけっこう早めに入るんだけど、「おお! もう誰かいる!」って。でも、会ったときにどう思ったかは覚えてないなあ。

亜沙なんか……「静かそうな人だな」みたいな(笑)。

黒流ああ、「これからセッティングだ……」ってゲンナリしてたから。あの時はもう、状況がわかんなすぎて。

亜沙うん、わかんなかったですね。

黒流初めての場所だし、初めてのプロジェクトだったから、「なんなんだろう……」って思いながらね。

亜沙そうそうそう。

黒流疑心暗鬼……じゃないけど、暗中模索っていうか、すべてがよくわかんない。

—— お2人の間で印象に残ってるエピソードはありますか。

黒流面白いMVを見つけると夜中に送りつけるっていう。

亜沙そうですね。大体俺と黒流さんがやることはそれです。

黒流「あ、これ面白いな」と思ったら夜中にLINEで送って。

亜沙お互いが好きそうなのを。例えば、ビジュアル系のパロディをしてるんだけど、歌詞の内容がすげえ変なバンドがいて、そういうのを見つけたらURLだけポンと送って、あとは何も言わない(笑)。

黒流俺も何か見つけたらURLだけ送る(笑)。で、感想がちょっとだけ。「最高」とか(笑)。そんなことをずっとやってるよね。

亜沙うん(笑)。

—— それはお互い通ずるものがあると思えてるからこそできるやり取りですよね。

黒流まあ、僕が和楽器バンドの前にやっていたのがV系みたいな意識がちょっとある和楽器だけのバンドで、亜沙くんがそれを面白がってくれてたって流れもあるかもしれない。

—— このバンドにおけるベースと和太鼓の関係ってどういうものなんですか。

亜沙それは確かに難しいですね。

黒流ドラムとベースだとわかりやすいんだけど……まあ、僕は言ってしまえば不純物なんですよ。ドラムとベースがあることでリズム隊としては成立しているのにそこにガッて入ってきちゃってるから。でも、亜沙くんの音はどちらかというとゴリゴリ動くベースで僕はそういうのが好きなんですよね。

—— わかります。

黒流和太鼓の音ってアタックが弱いので実はマイルドになっちゃうんですね。和太鼓があることでベースのいかつさを消しちゃう部分もあるので、アタックを強めにしたり、音色をけっこう考えたりしてます。あと、ミックスの時にベースの帯域とドラムの帯域とは違うところに僕の音が行かないといけないので、全部じゃないですけど、締太鼓を多用することでベースとドラムといい住み分けができるんです。それがベーシック。さらに、サウンドを激しくするために低音でゴンっていくことによってドラムのキックとベースをブーストさせる、みたいなイメージでイカつく極悪な感じにするのがここ最近最も落ち着く形で、それが僕の役割かなと思います。元々、和太鼓はロックバンドには入っていないもので、いるからには存在意義がないといけないし、2人の邪魔をしたら意味がなくなってしまうので、そのことをずっと考えながらベースとドラムの間を行くっていうことをやってます。まだまだ試行錯誤している感じですね。

—— 亜沙さん側からするとどうなんですか。亜沙さんとしては和太鼓が入ってるバンドは和楽器バンドが初めてなわけじゃないですか。

亜沙曲をつくってると、ときには和楽器とかパーカッションを入れたりすることがあるじゃないですか。そういう感覚に近いですね。和楽器バンドを始める前も、ギター、ドラム、ベース以外の楽器を普通に入れてたし、リズムトラックを裏で鳴らすように重ねたりもしてきてるから、それが和太鼓の音色になったっていう印象ですね。

黒流基本的にいかつくて激しいのが好きっていう点で亜沙くんと自分は合ってるのかもしれないですね。もちろん、8人それぞれが出す音の方向性が違うこともあるので、それはうまい感じで個性を残しつつ、各自バランスをとってるかなって感じですね。

—— まだ試行錯誤中なんですね。

黒流でも、音楽ってそういうものじゃないですか。色々と試行錯誤してやってます。

—— 和楽器バンドって、歌がしっかり前に出て、和楽器と洋楽器がしっかり融合しているという意味では前例がないバンドだと思うんです。なので、そういう音楽をやる上での試行錯誤っていうのはなかなか終わりが見えないですよね。

黒流でも、自然体だよね?

亜沙あんま変わんないですよね。

黒流自分のやるべきことをやってる感じです。何も考えずにぐちゃっとやってしまうと音楽にはなりづらいと思うんですけど、今は8人それぞれがバランス感覚を持ってるので、「うわ、大変だな。どうしよう」っていうよりも、すごく自然体で自分たちの音楽を続けられてる気がします。

—— この9年間、お互いの低音をずっと聴いてきていると思うんですけど、何か変化は感じますか。亜沙さんは変わってなさそうだけど(笑)。

亜沙俺は変わらないです(笑)。黒流さんは大太鼓が増えたり、最初の頃に比べて、電子ドラムだったりとか新しいアイテムが増えてきてるなっていうのは感じますね。どんどん豪華になってる。音色が少しずつ加えられてるというか。

黒流亜沙くんは自分のスタイルを貫いてるよね。僕もそうだけど、自分のスタイルがある程度完成してる状態で和楽器バンドに加入してますし、亜沙くんもそう。その中でいろんな進化はあると思うんですけど。

—— それでも亜沙さんは変わってないと。

亜沙そうかもしれないですね。好きなもの、好きな音色が変わってないんじゃないですかね。たまたまかもしれないですけど。

黒流僕は高校時代に軽音部に入ってたときはベースを弾いてて、もちろんあんまり大したものは弾けてないんですけど、そういう経験があるので、ライブ中に後ろから亜沙くんを見てて、 「いいな、かっこいいな!」っていうのは感じますね。亜沙くんにスイッチが入って……頭を振るとかそういう意味ではなく、すごく激しくなる瞬間が後ろにいても感じられるし、そんな亜沙くんと連動してこっちもバーっと火がついて合わせて動いたりっていうのがけっこう楽しかったりします。

亜沙黒流さんが後ろにいると安心感みたいなものは確かにありますね。最初の頃は黒流さんと山葵の位置が逆だったんですよ。

黒流そうそうそう。ドラムが真ん中のときもあったしね。

亜沙そういうときもありましたね。後方隊は立ち位置がけっこう変わってて。

黒流お客さんのほうから聴いていいバランスが一番大事かなって考えてね。

亜沙前にいるメンバーの立ち位置が変わったのって1回目か2回目のイベントぐらいまででしたよね。

—— お互いの演奏で印象深いものってありますか?

亜沙これは和楽器バンドの話ではないんですけど、俺個人で楽曲提供の仕事をしたときに黒流さんに叩いてもらったことがあって、そのときに「黒流さん、マジでプロの仕事してるな」って思ったのがすごい印象に残ってますね(笑)。

黒流確かに外仕事のときの自分のモードは亜沙くんしか見てないかもしれない(笑)。

亜沙なんか、自分が求めるラインを超えてきて、「すげえ!」みたいな。

黒流現場でしくじったら次はないので120%でやるっていう(笑)。最短時間で最高のものを作曲者に提供するっていう戦い。

亜沙これは悪い意味ではなく、和楽器バンドでは慣れちゃったっていうところがあるから、こういうことのほうが印象に残ってますね。全然バンドの話じゃなくてすみません(笑)。

黒流僕から見た亜沙くんは、激しいパフォーマンスも印象に残ってるし、それだけじゃなくて、ガーっとやる合間にちょっと抜いてる感じもカッコよかったりして、そういうのも印象に残るんですよね。

—— 去年、『ボカロ三昧2』というとんでもない作品をリリースして、さらにそれを再現するというとんでもないツアーがあったわけですけど、それを経ての変化ってありましたか?

黒流フレージングは変わりました。あのアルバムで僕は原曲のイメージを壊したくなかったし、 原曲のリズムを和太鼓でやりたかったんです。オリジナルなことはあまりやりたくなかった。それによって普段自分が打たないようなフレーズが出てきたし、そこからすごく影響を受けました。今回の『I vs I』には『ボカロ三昧2』より前にレコーディングした曲と、そのあとにレコーディングした曲があるんですけど、聴き比べるとフレーズの作り方がかなり変わってるのがわかると思います。そういう意味ではバリエーションが増えたのかなというのは感じますね。ただ、あまりそっちに寄り過ぎてしまうと和太鼓のよさがなくなってしまうので、そこはこれからもっと消化して自分なりに出していかないと。一番怖いのは「パーカッションの人を入れたらいいじゃん」ってなることで、僕はそうならないように。中途半端にならないように考えながらやってます。『ボカロ三昧2』で難しいことをやったおかげで、そういうことを新たに考えられたかなと思いますね。

—— 亜沙さんはどうですか? さすがの亜沙さんもあの作品を経たあとでは何か変わったんじゃないかと思うんですけど。

亜沙いや、あんま変わんないっすね(笑)。

黒流「絶対弾けない!」って言ってたのに結局頭振りながら弾いてたから「すげえな!」って(笑)。

亜沙まあ……ちょっと上手くなったんじゃないっすか?(笑)

—— 最近は若手のクリエイターの曲がすごすぎて弾くのが大変だっていう話を以前してましたよね。

亜沙発想がちょっと違うじゃないですか。DTM世代の人でも、例えば、「これ、腕4本ないと叩けないな」みたいなドラムのフレーズがあったり、生で再現しようとなるとなかなか難しいフレーズがあったけど、ボカロが出てきたことでよりそうなりましたよね。「すごいプレース入れるなあ!」って思うようなことをやってる。前に仲のいいボカロPの人と喋ってたときに、「演奏してみた」とかを見て「この曲、ちゃんと弾けるんだ、よかった」って思ったって言ってましたね(笑)。「打ち込みでつくったから、本当にベースで弾けるのかなって思ってたんだよね」とか言って。

黒流あはは!

亜沙その人は元々バンドをやってたからベースも弾けるんですけど、打ち込みでつくってるとやっぱりそういう発想になるよな、みたいな。

—— バンド全体の変化はどうですか。

黒流かなりの超絶技巧を8人でやらなければいけなかったので、そういう意味では、さっき亜沙くんも言ってたように、みんな上手くなったんじゃないですかね。僕らは常にチャレンジしなきゃいけないし、何より人の前で演奏することが大事で、100回の稽古よりも1回のステージのほうがいいと思ってるバンドなので、今回は全体としても技術的な向上があったと思います。「これもできるんだ、あれもできるんだ」ってことが8人それぞれにあったんじゃないかと思います。「これ無理だ!」っていうのは全員言ってたし、それができたってことはその壁を乗り越えられたということなのかなと思いますね。

—— 最新作『I vs I』ですが、率直にどんな作品になったと思いますか。

黒流今回、「戦い」がテーマとなっていって、既存の曲に新曲を足した形になってるんですけど、すごくコンセプチュアルな内容にできたのかなと思っています。さっきもお話したように、『ボカロ三昧2』の前と後に録った曲が混在していることでバンドの成長も感じられましたし、『八奏絵巻』から続く和楽器バンドらしいサウンドの最新版になったのかなと思いますね。特に、「Starlight」は以前リリースしたのと音のバランスを変えたんですけど、それだけで全然聞こえ方が変わったんですよ。今回、和楽器の音をごんと前に出したんですけど、それだけでこんなに変わるんだってびっくりしました。ただ今回、レコーディングで久々に声を出そうとしたら出なくなってて。

—— ああ、コロナ禍で大声を出す機会がなかったから。

黒流「戦 -ikusa-」の頃はそんなこと考えてもなかったのに、今回はすごく声が出しづらかったので考えながら録りました。

—— 久しぶりに大声を出すと咳き込んだりしますよね。

黒流そうそうそう。だから、コーラスも含めてボーカルの人はみんなすごいなと思いますね。僕もこれからは声に関して考えながらやっていかないといけないなと(笑)。

—— 亜沙さんのプレイでいうと僕は「宵ノ花」とかすごく好きですよ。

亜沙実はまだタイトルと曲が一致してないんですよね(笑)。でも、今回は意外とフレーズが動いてると思います。昔とはつくり方が違うし、より複雑なものになってるかもしれない。基本的に俺はシンプルなフレーズが好きだったりするんですけど、自分の曲よりも人の曲のほうがベースラインを複雑にしやすいっていうか。

—— ほうほう。

亜沙考えることがベースだけにフォーカスされるからなんでしょうね。自分がつくる曲だとベース以外のパートにもフォーカスするけど、ベースを弾くことに専念することでより集中してベースラインのアレンジを考えられるところはありますね。そういう意味では、今回は丁寧なベースラインになってるかもしれない。

黒流あ、やっぱりそうなんだ。今回のアルバムで僕と亜沙くんは曲を書いてないんですけど、僕も自分が書いた曲って和太鼓のフレーズがめちゃくちゃつくりづらいんですよ。全然フレーズが出てこなくてすごくシンプルになっちゃったり、レコーディングに時間がかかっちゃうんです。でも、自分以外の人が書く曲だと複雑なことを色々提案できるっていう。これまでそれがずっと不思議だったんですけど、まあ、もちろん亜沙くんと僕とでは作曲家としてのレベルが全然違いますけど、いまの亜沙くんの話を聞いて納得しました。

亜沙やっぱり自分の曲のほうがやりにくいですよね。

黒流曲全体を見てるからね。だから、今回の自分のパートはけっこう複雑です。それは亜沙くんと一緒なのかもしれない。

—— おふたりはリズム隊なので、レコーディングでは最初に録るわけですよね?

亜沙いや、黒流さんと山葵は最初だけど、俺はかなり最後のほうで録りますよ。

—— あ、そうなんですか。

亜沙ギター以外の楽器は大体入ってること多いですね。ベースを録って、ギターを入れて完成、みたいな状態で録ることが多いですね。

黒流ドラムと和太鼓を録った翌日に三味線、箏、尺八を2日間ぐらいでギュッと録っちゃうから、そこで音が揃っちゃうんですよ。

—— 通常のバンドとレコーディングの順序が違うとやりづらそうですね。

亜沙いや、そんなことないですね。まあ、DTMをやってるからかもしれないですけど、デモの段階からベースが入ってるし、レコーディング自体は普通に別にできるんですよね。なので、そんなにやりづらさを感じたことはないです。

黒流和太鼓に関しても、デモに三味線とか尺八とかが入っててそれを聴きながら叩いてるので、亜沙くんも感覚的にはそれと一緒なのかなって。

—— リズム隊って、ボーカルやギターに比べるとやってることが伝わりづらい部分もあると思うので、今作のこだわりポイントがあればお聞きしたいんですが。

黒流確かになかなか伝わらないと思うんですけど、けっこうなことをやってますね(笑)。掛け声に関して言うと、掛け声で煽ってるところで印象的なフレーズを叩いてしまうと、ライブのときにそこは叩かないので(笑)、それは気をつけてますね。そういうことが過去にいっぱいあったんですよ。音源ではめっちゃ難しいこととか目立つことをやったのに、ライブだと煽るのを優先してて全然打ってねえなって(笑)。逆に、「星の如く」は現場で急きょ8小節増えたことでけっこう好き放題に叩かせてもらったので、それは楽しかったですね。でも、その場でつくるっていうのはすごく楽しいんですけど、それをライブで再現するのが大変で(笑)。これは神永も同じだと思うんですけど、その場の感覚で演奏してるので、ライブでやるにあたってそれを改めて譜面に起こして打ってみると、「あれ、こんなことしてたっけな?」って。なので、自分の演奏のトレースをするのがこのバンドでは本当に大変です。あと、「そして、まほろば」はリズムがすごく変化するし、レコーディング前日にデモが届いたときは燃えましたね。バラードの場合、僕の役割は「ドーン! タタタタッ……」っていう感じのフレーズが多いんですけど、この曲ではがっつりリズムチェンジするのでやりがいがありました。

—— 黒流さんの演奏に関しては、「そして、まほろば」が一番好きです。

黒流ちょっとごちゃごちゃしすぎたのであれでも簡単にしたんですけどね(笑)。

亜沙自分に関して言うと、一定以上のクオリティのものを出せたと思います。待ってくれているお客さんがいるから適当なことはできないし、それこそさっき黒流さんが言ってたように120%のクオリティのベースラインを弾いてます(笑)。

黒流亜沙くんはスタートの時点でプレイもパフォーマンスも完成しているので、いまも亜沙くんは亜沙くんであり続けてるんですよね。それをずっと崩さない。だからこそ、リズム隊として一番近くにいる僕なんかは色々試したりできるんですよね。逆に、亜沙くんがいきなりビリー・シーンみたいな弾き方をしだしたら困っちゃうんですよ(笑)。

亜沙あはは!

黒流「うぉ~! ちょ、ちょっとこっちも変えなきゃ!」って(笑)。

亜沙「最近、ちょっとメタルが好きなんですよ~」とか言って急に刻み始めたり(笑)。

—— あはは!

黒流でも、マジでそういう安心感があるんですよね。ライブ中にそれで僕が亜沙くんに引っ張られることもあるし。そうやって亜沙くんが貫いているものが信頼感につながってると思うし、僕らもそれに合わせていろいろできるんですよね。それは初めて会ったときから変わらないですね。うちのバンドは8人それぞれにそういう貫いてるところがあるんです。これでもし8人全員 がアクセルを全開で踏み続ける人だったら2年ぐらいで解散してたと思いますよ(笑)。

—— 確かに、お客さんからは見えないところだけど、バンド内のそういうバランスが本当に大事で、そういう意味では和楽器バンドはメンバー全員が大人になってから出会ってるというのが大きいですよね。これで全員20代前半のときに出会ってたら、それこそ2年とかで崩壊してたんじゃないかと。そう考えると本当に奇跡的なバンドだと思います。

黒流バンドってどうしてもがっちりひとつになって進むっていうイメージがあるじゃないですか。「俺たち、バンドなんで!」みたいな(笑)。

—— そうですね(笑)。

黒流それだと僕はキツいので、8人それぞれがまっすぐに進みながら、ときに離れたりくっついたりできる距離感が僕ららしいのかなって気がします。誤解してほしくないのが、これは決して手を抜いてるとか、そういうことじゃないんですよ。なかなか理解しづらい感覚だと思うんですけど。

—— バンドをやっていない人には確かに伝わりづらいかもしれないですけど、本当にそうですね。

黒流僕は和楽器バンドに入るまでずっとイケイケでいろんなバンドのリーダーをやってきて、自分の意思だけで突き進んできたけど、和楽器バンドに入った瞬間に、「あ、これは違うな」ってすごく感じたんですよ。で、そこから自分の中にあるチャンネルをグッと変えて。そのうえで僕らのことを待ってくださっている方々に向けて、この8人で出せる最大限をお届けしたいなって。それは9年間全然変わりないですね。今回の『I vs I』もそういう作品になってると思います。

—— 作品のリリース後にはツアーがありますね。どんなものになりそうですか。

黒流やっと声が出せるので、それが本当に大きいですね。

—— 演出の幅も変わってきそうで。

黒流そうですね。コロナ禍前の和楽器バンドを知らない新規のファンの方にどう感じていただけるか興味があるし、楽しみですね。

—— コロナ禍で新規のファンが増えた感覚ってありますか?

黒流先日、ファンクラブライブをやって、そこで規制が緩和されてから初めて声出しをしたんですけど、ライブが終わった後にSNSで熱心なファンの方々が「初めて声出ししました!」って書かれてて。なので、ツアーの内容はまだまだこれから詰めていくんですけど、今回は対決がテーマなので、ドラムと和太鼓のバトルはもちろんありますし、それにまつわる演出が多くできたらと思ってますね。

—— コロナ禍前とは変わりそうですか?

黒流そうですね。ただ、今回は『I vs I』の曲をすべてお届けしたいと思っていて、曲数が多くなりすぎてライブ自体が長くなってしまうのは避けたくて、それよりもガッと集中して大騒ぎして終われたらいいなと思ってます。そこはこれから調整ですね。

亜沙やっぱり、払っていただいたチケット代の分は楽しさを届けたいですよね。真面目な話、嫌じゃないですか、せっかくチケット代を払ったのにぬるいパフォーマンスを見せられたら。

—— それは本当にそうですね。

亜沙意外とちゃんとやらない人って多いし(笑)。

—— あはは!

亜沙これも一生変わらないと思いますけど、10代の頃、音楽で食べていきたくてしょうがなかった自分のことを今でも覚えてるし、プロとしてやっている今、ぬるいことは絶対にできないですよね。

黒流それこそ、観に来てくださるお客さんのためにも120%以上のものを出したいと思いますし、それはこの8人が常に念頭に置いていることで、そういうところをいろんな方が支持してくださっているんだと思います。なので、今回もステージから皆さんにお届けする発信力の強さはコロナ禍以前と比べてもまったく変わってないと思います。

亜沙ただ、今回のツアーではちょっとストラップを下げようかなと思ってて。やっぱり、俺、パンクなんで(笑)。

Text: 阿刀 “DA” 大志
神永大輔 vs 山葵
—— 今回のツアーは、この2人で<戦う>ことが決定したそうで。

神永そうみたいですね(笑)。まだ実際に音を出していないのでなんとも言えない部分はあるんですけど、その予定です。

山葵明日、初めて音出しします。

—— では、音出しをする前という貴重なタイミングで今の心境を聞かせてもらえますか。

山葵負ける要素はないですね。

神永なんだそのプロレスの試合前みたいなノリは(笑)。

—— いきなり煽りから(笑)。

神永実は、前に1度だけドラムと尺八の組み合わせで演奏したことがあって、そのときの気持ちとしては……「ルパン三世」で、両手に刀を持った敵が素早く切りつけてくるのに対して次元が鉄砲でいなしながらなんとかついていくっていう感じでした。

山葵あはは!

神永音の速さとか粒の数とか、機動力が圧倒的に違いすぎるんです。こっちは竹1本じゃないですか(笑)。

山葵こっちは手足2本ずつありますからね。なので、負ける要素がないです。

—— あはは! 余裕じゃないですか(笑)。

山葵まあ、全部で4組あるので、その中で起承転結があるとは思うんですけど、 こっちは間の楽器とグルーヴをつくる楽器ということでほかとはアプローチが全然異なるので、お互いの長所の棲み分けができたらなと思っています。

—— では、今回は対談ということなので、お互いの第一印象から伺ってもいいですか。

神永2012年。最初はスタジオだったんじゃない? 代々木の(SOUND STUDIO)NOAH。

山葵スタジオがはじめましてでしたっけ。

神永どうだったっけー?

—— 神永さんが骨折をしてMV撮影に参加できなかったから、山葵さんが神永さんの家まで撮影しに行ったんですよね?

山葵そうなんですけど、その前に軽くご挨拶してるんですよね。

神永多分、家に来てもらったのは2回目ぐらいだったはず。

山葵そうですね。撮影に行ったときの印象が強すぎて初対面のことを覚えてない。

神永多分、ゆう子さんがどこかの場で紹介してくれて挨拶した、みたいな感じだったと思うんだけど。

山葵初めての印象がないから撮影のときを初対面とすると……駐禁の話って前にしましたっけ?

—— いや、聞いてないと思います。

神永へへへ(笑)。

山葵当時、大さんはMV撮影に参加できなかったので、「月・影・舞・華」の動画を投稿したときにベースを弾いてくれてたヤツと2人で大さんが住んでいた家まで行ったんですよ。ちなみに、大さんは(親指と人差し指で狭い隙間を作りながら)こんぐらいの段差で転んで骨折して。

神永そう、「スペランカー」の主人公みたいに僅かな段差でね。

—— あはは!

神永で、僕以外のパートは出来上がってたからすぐに僕の分を撮ってアップしたいということで、僕が退院した翌日ぐらいに家まで来てくれたんですよ。

山葵大さんの家までは車で行ったんですけど、大さんが「うちの前、車停めても大丈夫だから」って言うからそのまま停めたんですよ。で、作業を終えて帰ろうとしたら見事に駐禁が貼られてて。

神永いや、正確には山葵くんから「停めて大丈夫ですか?」って聞かれたから「ああ、大丈夫だよ」って。駐禁の話は聞いてなかったから。

山葵……っていう出来事があったので、「こいつ、マジで信用できねえな」って(笑)。

—— あはは!

神永そのときの山葵くんは本当にキレ散らかしてて、でもまだ会って2回目だからこっちに怒りをぶつけられず、ただただ機嫌が悪くて(笑)。僕も「ごめんねごめんね」って言ってたんだけど。

山葵当時はまだ駆け出しでお金もあんまりなかったからけっこうキツかったんですよ。

神永だから、僕が「(罰金を)出すよ出すよ」って言ったんだけど、「いや、いいッスいいッスいいッス……」みたいな。だからそれ以上言うと火に油を注いでしまいそうな気がして(笑)。

山葵この世で一番無駄金って駐禁の罰金ですからね(笑)。機嫌が悪かったのは今でも覚えてますよ。内心、めっちゃ腹立ってたけど、ほぼ初対面だし年上だし、ここで怒りをぶつけるわけにはいかないって必死にこらえてました(笑)。そんな初対面の印象でした。

—— じゃあ、山葵さんにとってはマイナスからスタートしてたんですね。

山葵だいぶマイナスです。

神永あっはっはっはっは! まあ、今思えばあれが全てのはじまりだからね(笑)。でも、そのあと一時期近くに住んでたことがあったり、お互い日本酒が好きっていう共通点もあったからよく一緒にお酒を飲みに行ったりしてましたね。ツアー先でもご飯に行ったり、飲んでる分にはすごく楽しいんですけど、最初の印象が悪すぎた(笑)。

—— 初期から今まで共に歩んできてお互いの変化は感じますか。

神永山葵くんは最初と今では全然違う人だなって思いますね。

山葵うん、自分で言うのもなんですけど、多分僕の変化が一番デカい。

神永ね。体だけじゃなくて人相も変わったよね。山葵くんがすごいと思うのは、自分が目指すものに対してものすごく努力ができることで、そうすることで着実に自分を作り変えていってるよね。その感じがすごいと思う。

山葵僕、バンドを始めた頃はすごく自信がなかったんですよ。変な話、このバンドで誰かの首を切るとするなら真っ先に俺が選ばれるだろうなって思ってたぐらい。それぐらい自分はこのバンドの中で一番持ってないと思っていたから、もっと強くならなきゃ、いろいろ身につけていかなきゃっていろいろ考えたし、砕けた言い方をするなら、自分でカッコいいと思える自分に近づきたいという気持ちだったからそれが今の結果につながってると思います。あと、バンドを始めた当初は全然曲を書けなかったけど、途中から曲を書きたいと思うようになって、最初は箸にも棒にも引っかからなかったけど、『I vs I』で3曲採用されたり、今になってできるようになったことが着々と増えてると思います。

神永もう気軽に飲みに誘いにくくなっちゃうよね(笑)。

山葵なんでですか(笑)。

神永体作りとかもしてるから。

山葵あー、まあまあ、それはありますけど、逆に大さんは変わらないですよね。ずっと飄々としてる感じ。風のように漂ってる。

神永僕は変わらないけど、山葵くんだけがどんどん変わっていってしまって、なんかちょっと寂しいな(笑)。

山葵(笑)変わるだけがいいことではないですから。

神永でも、猟を趣味にしてる山葵くんのお父さんからイノシシとかのお肉を頂いたりすると、山葵くんのルーツというか、根っこの部分に触れられてホッとする。

—— へぇ~!

山葵うちのお父さんは狩猟の免許を持ってて、冬になるとイノシシ狩りとか鹿狩りをするんですよ。そのときの肉が大量に余るので人にあげたがるんですけど、なかなか癖のあるものだから欲しがる人は限られてて。でも、大さんはジビエとか世界各地の郷土料理みたいな変わった食べ物が好きで、あげるといつもすごく喜んでくれるのでうちのお父さんも喜んでます。

—— いい関係ですね。これが演奏となるとどうなるんですか。通常、尺八とドラムが絡むことってないじゃないですか。

神永やっぱり尺八は上モノだし、楽曲のノリやグルーヴ感をつくり出しているのはドラムとかなので。でも、ライブ中はいつも「あ、今なんかヒートアップしてるんだな」みたいに山葵くんの変化を感じながら演奏しています。

山葵僕はぶっちゃけ、ライブ中はほぼ尺八は聴いてないです。

神永聴いてられないよね。クリックを聴きながらなるべく正確に叩きつつ、それと同時にグルーヴも生み出そうとしているから。

山葵このバンドにおける優先順位としては、ポーカル、ギター、三味線あたりを強めに聴いてます。僕のイメージでは、尺八ってストリングスっぽい感覚で僕の役割からは少し離れたところにあるので、演奏においてはあんまり聴いてないんですよね。でも、自分で曲をつくる場合は逆で、わりと尺八をリードのメロディーに取りがちというか。たとえば、「BRAVE」のイントロの尺八のフレーズはデモの段階から打ち込んでたんですよ。そんな感じで尺八にはリードメロをとってもらうことが多いです。

—— 去年、『ボカロ三昧2』というかなり難易度の高い作品をつくり、それを再現するという意味ではツアーもかなり大変だったと思います。 去年のそういった活動を通じて、それぞれどんな変化がありましたか。

山葵『ボカロ三昧2』の楽曲って、それまでの自分からすると演奏的にかなりしんどくて、レコーディングでもすごく苦戦した楽曲が多かったんですよね。だから、ツアーに関しても「果たしてこれをライブでできるんだろうか……」ぐらいの感じだったんですけど、実際に回ってみると最初は自分の限界ギリギリだと思っていたところがだんだん体に染み込んでいくことで慣れてきて、気持ちにも余裕が出てきたことでプレイヤーとして一皮むけるのを感じることができたので、今回のアルバム制作でも前より気持ちに余裕が出つつも、前よりレベルの高い演奏ができているという実感があります。『ボカロ三昧2』というのは僕にとってそういう作品です。

—— 神永さんはどうですか。

神永『ボカロ三昧2』は『ボカロ三昧』のときよりも原曲のフレーズをそのまま尺八でとっているところが多かったり、 尺八としてはかなりトリッキーなことをたくさんやっているんですけれど、『I vs I』はオリジナルアルバムということで、改めて尺八らしさを出しました。今回は特に激しい曲が多くて、そういう曲だと尺八は「ぶしょ~!」とまっすぐに吹いたり、曲によってはソとドしか吹いてないんじゃないかみたいなこともあったりして、それは和楽器バンドの初期からやっていたことではあるんですけれど、今回はこれまでの尺八の表現のレパートリーにプラスして『ボカロ三昧2』で学んだことを落とし込めたかなと感じています。

—— 『I vs I』はどんな作品になったと思いますか。

山葵<戦い>をテーマにした曲が多くて勢いのある作品なんですけど、楽曲の勢い的には初期の作品、たとえば初めて出したオリジナルアルバム『八奏絵巻』が持っているアグレッシブさに似ていると思います。でも、これまで僕らが積み上げてきた技術や経験のおかげで、あのとき以上に洗練されたサウンドになっていると思います。レコーディングの手法もあの頃とはだいぶ変わっていて、当時は「先に録ったもん勝ち」みたいな感じで各自音を重ねていってたんですけど、今は緻密な設計図に沿ってサウンドを構築しているので、そういう面でもすごく洗練されていると思います。演奏に関しても各々プレイヤーとして成長しているんですけど、初期衝動やアグレッシブさは忘れていないし、それが反映された作品になったと思います。

神永僕は『I vs I』というアルバムタイトルがすごくいいと思っていて。今って価値観がどんどん変わっていってる時代で、仕事でも、家庭でも、かつては間違いないルールとして存在していたはずのものが実はそうでもなかったかもしれない、という新たな価値観とみんな戦っているんじゃないかなって思っていて。そんな時代背景がある中でこのタイトルがついたことはすごくいいと思っています。

—— なるほど。

神永あとこれは内面の話になりますけど、このアルバムではストレートな表現をたくさんしていて。それはメンバーそれぞれがコロナ禍を経たことで新たに得るものがあったり、内に秘めるものが変わったりしたからこそ、アウトプットされるものも違うんだと思っていて。もちろん、従来の和楽器バンドのファンの方々には「和楽器バンドのサウンドだ!」と楽しんでいただけるアルバムだとは思うんですけど、その2023年版というか、今の僕たちの姿をちゃんと提示できているアルバムだと思っています。

—— 今作では尺八の音がくっきり聞こえる印象を受けたんですけど、実際のところはどうなんでしょう。

神永それは僕も感じているところではあるんですけれど、いろいろとバンドの中でバランスが整ってきたからなのかなと思っていて。というのも、アンサンブルをつくる上で、お箏と三味線とギターをどう組み合わせるかというのが一番難しい部分だと思うんですね。しかも尺八はベタ塗りができる楽器なので、尺八が何をするかというよりも、尺八以外の楽器が何をするかということを重要視してこれまで曲をつくってきたんですけど、今回はそこに関してもちょっと余裕が出てきたというか、アンサンブルがすでに組み立てられた上で尺八にも暴れさせてもらえる余地があるんです。

—— これまでの作品は、「あ、実はここでも尺八が鳴ってたんだ」みたいな場面がけっこうあったと思うんですけど、今回は明確に鳴っているというか、リードとして鳴っている印象があります。

神永そうですね。尺八ってムラ息という息が混ざった音を出せますけど、それはアンサンブルを構築する上で邪魔になることもあるので、「実はここに尺八がいたんだ」みたいな存在でありながらも、尺八の音を抜くと一気に曲が寂しくなるという役割を目指して吹いていたところがあったんです。でも、今回は戦いの曲が多いということで、荒々しい風の音みたいな音色を入れることで曲の勢いにつながるし、それがアレンジの緻密さと両立できていることによって、安心してソとドの音だけで「ぶしょ~!」と吹いている曲があります。

—— 一方、山葵さんはドラムはもちろんのこと、今回3曲で作詞作曲を手掛けています。特に、「BRAVE」は『TOKYO SINGING』収録の「Singin’ for...」と同様、本編の最後を飾っていて、山葵さんがつくる楽曲のスタイルがひとつ確立されたのかなと感じました。

山葵この曲は「Singin’ for...」と同じように、お客さんとライブで一緒に作り上げるような、一体感を高められる曲を書きたいという気持ちがあって書いたんです。でも、「Singin’ for...」はコロナ禍のとてつもない閉塞感に苛まれている最中にその先を夢見て書き下ろした楽曲だったんですけど、今回はようやく戦いが終わったけど次へ向かって歩みを止めないという前向きなメッセージを込めつつ、戦いがいったん終わったことに対する喜びと、この先の希望の歌を歌おうというメッセージを込めてみました。

神永すごく山葵くんらしい曲だよね。

山葵自分で言うのもなんですけど、僕の曲は素直というか。特に歌詞に関しては自分らしいところが反映できればと思ってつくってるところはありますね。

—— 神永さんは山葵さんの楽曲をどう評価されていますか。

神永今、山葵くんが言ったとおりかもしれないですね。山葵くんは自分が持っている熱さをストレートに出すことを厭わないというか、ストレートな気持ちよさがどの曲にもあるのかな。

—— 和楽器バンドの曲を書くときに意識していることはあるんですか。

山葵うーん……。

神永(ボソッと)売れる曲を書きたい。

—— あはは!

山葵それは常にそうです(笑)。ワンチャン、バズんねえかなっていつも思ってます(笑)。まあ、曲によって違うんですけど、楽器編成はうちのバンドならではなので、そこで個性をつけられたらなと思ってはいます。たとえば、曲をつくる方は多分みんなそうだと思うんですけど、どういうところでフックをつけようか試行錯誤していて。でも、うちのバンドは和楽器というすごく強いフックがあるのでそれを活かさない手はないと思っています。「BRAVE」だったら、冒頭のバンドインから尺八がリードをとることもそうですし、「星の如く」だったら、イントロの箏のディレイのフレーズだったり、和楽器は楽器自体の音がすごく耳に残りやすいから、そういう部分はインパクトをつける上で強調したいのと、ボーカルは 特にロングトーンが特徴的なので、そういったところも曲が求めている限りは出していったほうが曲の色が濃くなるのかなと思っています。せっかく強い手札を持っているんだから、それをいい感じに組み合わせることで相乗効果が生まれるようにしたいと思っています。

—— 神永さんは曲を書こうとは思わないんですか。

神永書いてるんですけど、書く曲書く曲インストになっちゃうんですよね。しかも、僕は普段歌を聴いてるときも歌詞を全然覚えないんですよ。知ってる歌だとしてもメインのメロディーしか覚えてないしそれに対する裏メロばっかり考えちゃっているので、あんまり歌モノをつくれないんですよね。

山葵大さんはゲーム音楽がルーツに強くあるからなのか、ゲーム音楽や劇伴っぽい曲を得意としているのかなという印象はあります。

神永曲作りに挑んでみても、毎回「なんか違うな」と思って止まっちゃうことが多いんですよね(笑)。だから、みんなすごいなって思います。

—— 『I vs I』に関して、演奏面で新たなアプローチはあったりしますか。

神永先ほど言ったように、『ボカロ三昧2』からフレーズの引き出しが増えたというのもあると思うんですけど、あともうひとつ最近意識しているのは、楽器全体を鳴らすということで。

—— それはどういうことですか。

神永作品を重ねるごとに、和楽器バンドのエンジニアさんが尺八の音を録ることに慣れていって、録り音もどんどんよくなっているんです。そうなることで、フレーズで何かをごまかすんじゃなくて、説得力のある一音を聴かせられるようになったと思っていて。あと、これはプレイヤーとしての自分の進化もあると思うんです。楽器全体を鳴らすことでちゃんと生の音のよさを楽曲に盛り込められている。きっと、エンジニアさんやディレクションをしている町屋さんもそういうことを感じてなるべく音色の深い部分まで聞こえるように意識してミックスしてくれてるのかなと。

—— 楽曲の構成やミックスのおかげもあるけど、神永さんの演奏自体のレベルアップも聞こえのよさにつながっていると。

神永そうですね。以前はいかに面白いフレーズを入れるか考えることが多かったり、とりあえず「ぶしょ~!」と勢いをつけることが多かったんですけど、今は同じ一音でももっといろんな表現があることを知って、それを身につけているところではあります。

—— 先日、黒流さんに話を伺ったときに、「それはパーカッションの人がやればいいじゃんと言われることがないように、和太鼓であることを意識した演奏を心がけている」ということをおっしゃっていて、とても興味深く感じました。

神永そうですね。僕は和楽器バンドで尺八を入れるとき、ここではストリングスっぽく振る舞おうとか、ここはフルートっぽく振る舞おうとか、自分に役割を与えることでどんな表現でもできるのが面白いと思っていて、それは今も変わらないんですけれど、最近はそれに加えて尺八そのものの筒音のよさも出していきたいという欲が出てきたところはあります。

—— ドラムに関してはどうですか。

山葵これは今でもそうなんですけど、僕はアメリカンロックにあるような力強くてシンプルでカッコいいプレイが好きでそれをずっと目指していたんですけど、そういったドラムを叩くためにはフィジカルがそもそも違うから、体をもっとデカくして音をデカくしなきゃいけないという気持ちでいたんです。実際にそうすることで昔に比べてたしかに音はすごく太くなったんですけど、最近はそれだけじゃなくて、『ボカロ三昧2』で追い詰められたことによって余裕が生まれて、繊細な音もしっかり出せるようになったんです。

—— おお。

山葵これまでは、ダイナミクスをつけるために音を上のほうに伸ばそうとしていたんですけど、それには限界があるし、ある一定以上の音を出すとうるさくなってきちゃうんです。でもそうではなくて、下のほうにも表現の幅を広げることによってもダイナミクスは広がる。たとえば、これは専門的な話になりますけど、スティックの握り方にしても、ぎゅっと握り込んだときに出る音とふわっと握ったときに出る音を比べると、後者のほうがスティックの木自体の音が鳴るんです。つまり、鳴りが変わってくるんです。

—— なるほど。

山葵で、今までの僕はふわっと握ったときの音がいい音だと思っていたんです。木が響いてる音がいい音っていう。でも今では、それはいいとか悪いとかではなくて、使いどころによって違うと思うようになったんです。詰まった音が適してる場合もあるし、伸びやかな音が合う場合もある。それを自分で制限するというのは出せる音の幅を狭めることになるんですよね。そういう意味では、今までは少し視野が狭かったということに最近気づいて、今は多少コントロールできるようになってきたかなと。

—— 今、お互いの話を聞いていて何か感じることはありますか。

神永親和性のある話だなと思って聞いてました。やっぱり、みんなで一緒にバンドをやってると、その時期その時期にたどり着く場所って意外と近いところにあるということを感じますね。以前はアンサンブルをつくるために一つひとつの音を削ったり整理していくところがあったんですけど、今はメンバーそれぞれが音の抜き差しについてはある程度わかっているので、その上で一つひとつの音を豊かに乗せられるようになってきているんじゃないかなと思います。

—— では、ツアーについてお聞きします。どんなツアーなりそうですか。そして、どんなツアーにしたいですか。

山葵この間のFCライブもそうだったんですけど、ツアーで声出しがOKになるのは約4年ぶりになるので、「やっと声を出せた」といううれしい気持ちがある一方で、「本当に声を出していいんだろうか」という戸惑いがある方もいるし、そもそも和楽器バンドのライブに来るのが初めてだったり、声出しのライブに参加すること自体が初めてという方、コロナ禍に僕らのことを知ってファンになってくださった方も多いと思うんです。なので、まずは僕らがライブを楽しむことで気持ちを開放したいんだけどしきれないというお客さんにも心を開いてもらって、本当に楽しかったと思ってもらえるようなライブにできたらと思っています。

神永和楽器バンドのライブはエンターテイメント性のある演出やステージのときもありますけど、今回のツアーはよりライブっぽくなるんじゃないかと思っていて。お客さんも、ショーというよりは「久しぶりに盛り上がれるぞ!」というテンションで来てくださると思うので、みんなが一緒になって盛り上がるツアーになると思っています。

—— 4年は長かったですね。

神永せめて2年にしてほしかったですね(笑)。

—— でも、この4年の間に獲得したものもあるわけで、それを全開放したときにお客さんが浴びる音は想像するだけですごそうです。

神永アルバムと同様、ライブでのプレイも変わっていってるので、そういった部分もしっかり会場で届けられるんじゃないかと思っています。

—— では、初めて和楽器バンドのライブを観るという方へ向けたメッセージをもらえますか。

山葵和楽器バンドはファン層が本当に幅広くて、中にはライブ自体あまり来たことのない方もけっこういらっしゃるんですけど、そういう方も口を揃えて「楽しかった!」と言って帰ってくださるし、僕たちもどんな方でも分かりやすく楽しめるライブを常に心掛けています。たとえば、うちのライブではペンライトを振ったりしますけど、どうしていいかわからないという方でも和太鼓の黒流さんがライブ中ずっと導いてくれるし、頭を空っぽにして楽しめる内容になっているので、『I vs I』に触れてみて少しでも「生で観たいな」という気持ちが湧いたなら、気兼ねなく遊びに来ていただけたらと思います。

—— メンバーに身を委ねればいいと。

山葵マッサージ屋さんみたいなもので、 とりあえず来て寝てるだけで気持ちよくなれる、みたいな。ただ身を任せてもらえれば楽しい気持ちになって帰れると思います。

神永僕たちは情報量が多いバンドなので最初は戸惑いがあると思うんですけれど、とりあえず体験していただくのが一番です。「きっとこういうバンドなんだろうな」という先入観抜きで、無になっていただければ。

山葵おそらく、和楽器バンドは和楽器の音を世界一気兼ねなく楽しめるバンドだと思います。

Text: 阿刀 “DA” 大志
いぶくろ聖志 vs 町屋
—— まずはお互いの第一印象から教えてください。

いぶくろ初めて会ったときは柔らかい人という印象でしたね。

町屋僕は「自分に似た属性の人だな」って。

—— 具体的には?

町屋細かいところは違うし、ぱっと見の印象も違う属性だと思うんですけど、内面的に似たところが多い人だなって。感覚的な話なので説明は難しいんですけど。

いぶくろそう、最初からお互いそんな話をしてて、「2人では飲まないようにしよう」って。2人きりで飲むと悪い方向に増幅したときに予想もしないことが起きるかもしれないから。

—— 悪い方向とは?

いぶくろたとえば、僕たちが飲んでるときに絡んできた人がいたとして、その人に対する対応の方向性が一致しちゃうんですよ。

町屋そうそう。たとえを変えると、ボケとボケみたいな。

—— あー、なるほど!

いぶくろそうそうそう! だから事故が起きる可能性が高い。

—— 笑い飯みたいに上手くハマればいいけど、ハマらないと大変なことになっちゃう。

町屋それをお互いがなんとなくわかってるから、リスクヘッジしてるんですよ。

—— じゃあ、普段はあまり絡まないようにしてたり?

町屋積極的に遊ぶようにはしてないし、それぞれ別々のことをやって和楽器バンドのときに集まって仕事をするっていう。

いぶくろ和楽器バンドがはじまると一緒に過ごす時間も多くなるので、ご飯とか打ち上げとかでいろいろと話せちゃうんですよね。

町屋そうだね。しかも、サシ飲みに行くことも和楽器バンドではあまりなくて。数人で行くことはあるけど。

いぶくろだって僕、和楽器バンドのメンバーの中で一番付き合いが長い大さん(神永大輔)ですら、和楽器バンドが始まってから1度しか飲みに行ったことないんですよ。

—— 9年間で1回?

いぶくろその前の付き合いまで含めたら11年で1回ですね。もちろん、仕事のついでにっていうのはあるんですけど、わざわざ集まってっていうのはなかなかないですね。

—— それはわかります。わざわざ約束してまで飲む必要ないよね、どうせすぐに会うしっていう。

いぶくろそうそうそう、そうなんですよ。次に会う予定が決まってるから。きっとサラリーマンの人も日曜日にわざわざ同僚とご飯になんて行かないですもんね(笑)。

—— 今回、メンバー全員に話を聞いてみて改めて思ったんですけど、いい意味で大人な関係ですよね。

いぶくろそうかもしれない。

町屋まあ、結成したのがある程度歳をとってからなんで。これが20代前半とかだったら全然違った関係性になってると思うし、バンドもこんなに続いてなかったと思います。

いぶくろ多分みんな、20代の頃は割と血の気が多かったでしょうね。

町屋そうだね。

いぶくろ20代の頃なら多分、みんなそれぞれがぶつかって、なおかつ誰もそれを止めない気がします。

—— 以前、お2人には生い立ちインタビュー※でいろいろと語っていただいてますけど、20代前半の頃はたしかに尖ってる感じでしたもんね。(※アルバム「TOKYO SINGING」初回限定ブック盤付属“和楽器バンド新解体新書”)

いぶくろそういうことを経て、20代以降も音楽を続けてこれたメンバーがここに集まってると思うんですよね。

町屋そうだねえ。

いぶくろ「和をもって貴しとなす」みたいな感じでやってたら、多分途中で音楽をやめちゃってる人が多いと思うんですよ。そういうバランスを微妙に振り切ってる人たちだからこそ、20代後半まで音楽活動を続けられてこうして出会えたんだと思いますね。

町屋うん、そう思う。

—— 最初から和を大事にしているとやめちゃうものなんですか。

町屋一般的に、社会に溶け込もうとするというか、溶け込まなきゃいけないという風潮が特に日本では強いから。まさに「和をもって貴しとなす」で。

—— 和楽器の世界はまさにそういった調和が求められそうなイメージです。

いぶくろそうですね。僕はその端っこのほうでこっそり生息してます(笑)。だからロックバンドに入ることに抵抗がなかったんだと思うんですよね。

—— では、長年付き合ってきた中で何か印象に残ってるエピソードはありますか。

いぶくろ伝説のように語り継がれているのは、カレーを残した男に対して町屋さんがブチ切れた事件ですかね(笑)。

—— なんですか、それは(笑)。

いぶくろまあ、ほかにも色々あるんですけど、パッと浮かぶのはその話ですね。当時のスタッフさんの中にサービス精神旺盛な人がいて、とある打ち上げのときに、そろそろ締めなきゃいけない時間なんだけど飯がまだ足りない人がいたらあれだからってその人がカレーをいくつか追加したんですよ。

—— ほうほう。

いぶくろで、町屋さんは出会った頃から食事のときには必ず「いただきます」と「ごちそうさま」を言う人だし、適当に注文して余ったら適当に廃棄するっていうのが本当に嫌なんでしょうね。そのときはお酒もけっこう入っていたこともあって、残ったカレーの皿を見て町屋さんの怒りが頂点に達したんですよ。もうね、一瞬ですよ、一瞬! ベンツの加速ぐらい速くて。

—— あはは!

町屋「このカレー頼んだの、誰だぁ!?」(笑)。

いぶくろもう、みんな関わりたくないからさっさと店の外に出て、そのスタッフさんが「俺だけど」って。なんでそこで名乗り出ちゃうのって感じなんですけど(笑)、その人と町屋さんと僕が席に残って、それこそ「和をもって貴しとなす」としましょう、みたいな形で落ち着いたっていうことがありました。

町屋僕が覚えてるのは、和楽器バンドのメンバー数人でダーツのあるバーに行ったときのことなんですけど……

いぶくろ(そのときのことを思い出して)あははははは!

町屋ほかにもメンバーはいたのに、僕ら2人でダーツで負けたほうがお酒を飲む、みたいな対決をはじめちゃって、その対決って負けるごとに飲むからダーツがどんどん当たらなくなっていくんですよ。

—— そうですね(笑)。

町屋で、そのループに僕がハマって完全に潰れたっていう。気づいたら前歯がなくなってて。

—— えー!

いぶくろ言っときますけど、僕は別に殴ってないですよ?(笑)

—— (笑)そういう飲み方をしている時期があったんですね。

いぶくろああもう、めっちゃ多かったです。

町屋最初の頃はそんなのばっかでしたね。

いぶくろあの頃の記憶は半分ぐらいないですよね(笑)。

町屋ないないないない。

—— では、「この人らしいな」と思ったエピソードはありますか。

町屋まさに今ですね。僕が食事のときに「いただきます」と「ごちそうさま」を必ず言うことを把握しているという人間観察力。

いぶくろあはははは!

町屋(いぶくろ)聖志の人間観察力に関してはいろんなところで言われてると思うんですけど、まさに今把握されてると思いましたね。

いぶくろ普段はそんなこと言わないですもんね。

町屋そう、仕事以外の会話を僕らはしないんですよ。

—— じゃあ、ここで初めて披露したんですね。

いぶくろそうそうそう。僕、人を見るのが好きで、その人の変化の度合いとかをつい見ちゃうんですよね。

町屋冒頭で「属性が似てる」って話しましたけど、そこは大きく違う点ですね。僕、他人にめちゃくちゃ興味ないので。

—— そういう視点ってバンド内ではどう働くんですか。

いぶくろその人の方向性がある程度わかっていると、たとえば、ミーティングのときに 怒ってるようには見えないけど内心不快に思っていそうな人を見たら、先手を打ってそれ以上不快にならないようにしたりします。それは音楽面でも同じで、「今、この人はもう少し目立ちたいと思ってるけどそれを抑えてるからフラストレーションが溜まってるな」とか。で、その不満を解消できるような方向に自分が導けるならそうする。それによって結局、自分も居心地がよくなるんですよね。

町屋彼は生き方としては尖ってるんですけど、コミュニティの中では「和をもって貴し」の精神なんですよ。

いぶくろ無益な争いは避けれるなら避けたい。

—— では、そんなバンド内の演奏面において、ギターと箏がお互いを意識することはありますか。

いぶくろギターは音域とかも含めて近いところにいる楽器なので、ライブ中は一番聴いてます。

町屋僕は全体を均等に聴いてるのでライブ中はそんなに意識することはないんですけど、 それ以外の部分で言うと、箏はギターと一番密接です。ピアノの右手と左手みたいな。

いぶくろああ、まさにそうですねえ!

町屋だからアレンジのときにはかなり気を使うし、優先順位が高いです。ギターと同じフレーズを弾くこともすごく多いし。今回のアルバムは特にそうですね。

—— 町屋さんは和楽器バンドでキャリアを重ねるにつれて、サウンド面における中心人物になっていきましたよね。そういう町屋さんの進化をいぶくろさんはどう見ていますか。

いぶくろ町屋さんはメンバーそれぞれの手癖とかも念頭においた上で曲のアレンジをつくり上げたりミックスをやってくれているので、自分以外の楽器に対する理解が一番深くて、さらに接着剤のようにまとめるギターをやっていることによってサウンドの精密度が上がっています。はじめの頃は「ちぎり絵」みたいだったものが、今は「モザイク画」になったというか。でも、それがさらにかっちりとした「絵」になっちゃうとお客さんが感じる余白までなくなってしまうので、余白を残しながらより精密に組み合わさるように構築してるという印象ですね。

—— 町屋さんは最初からそういうタイプの方だったんですか。

いぶくろ町屋さんは凝り性だから。

町屋うん、まあ、そうだね。だって、和楽器バンドを始めてすぐに三味線、箏、尺八を始めたから。

—— ええっ!?

いぶくろそうなんですよ(笑)。

町屋だって、各楽器の音域とか特性とか何もわからないから。DTM初心者でドラムを叩いたことのない人にありがちなのが、曲をつくりますってなったときに腕が3、4本ないと叩けないようなフレーズをつくったりしちゃうんですけど、僕は力学がめっちゃ大事だと思ってて。

—— それはどういうことですか?

町屋どうやって腕や指を動かしてその楽器を弾くのかを把握していないといけないんですよ。音域も把握していないと曲もつくれないしアレンジもできない。だから、そういった楽器を習得することを当たり前のように始めて、各楽器に対する理解度が深まっていくにつれてアレンジの精密度も同時に上がっていくっていう。

いぶくろそこから9年も経つと、今度は和太鼓を作るようになっちゃうんですよ。

町屋ああ、そうそう。

—— え、作る?

町屋今年の黒流さんの誕生日に、ミニチュアの和太鼓を作ってプレゼントしたんですよ(笑)。

—— ええ~!?

いぶくろしかも、ミニチュアだけど構造はちゃんと和太鼓と同じ。

町屋和太鼓は桶と同じ作りなので、1から10まで全部作ってプレゼントしました。

—— 和太鼓としてちゃんと鳴るんですか。

町屋鳴ります鳴ります。

—— すごい! 

いぶくろなかなかいないですよね、和太鼓を作るギタリスト(笑)。

町屋もしかしたら初かもしれない(笑)。

—— では逆に、町屋さんから見て、いぶくろさんの変化や進化はどう感じていますか。

町屋まず全体というものがあって、その輪に対して自分がどう馴染むかという点において上手になったかなという……なんか変な言い方かもしれないですけど。

いぶくろそうですね。僕、特に初期の頃は、ミックスとかも含めて音型で目立たないと埋もれるというのがあったので、あえて目立つ音型を入れていたんですよ。だけど、最近はミックスとかのおかげもあってそこまで無理しなくても出てくるようになって、和声の中にいても平気になるようなチームに変わってきたから、そこまでむやみな自己主張をしなくなったというか。

町屋それは多分、他のみんなにも言えることだとは思うんですよね。バンド全体の調和がとれてきたことによって、個性の主張をする必要性がなくなったという。

いぶくろナチュラルな音楽になってきましたよね。

—— では、『I vs I』の話へ移っていきたいと思います。去年、『ボカロ三昧2』をつくり上げてそれを再現するツアーまで経たことで、バンドとしても個人としてもかなり経験を積めたと思うんです。そういったことを踏まえて、この1年でそれぞれどんな変化がありましたか。

町屋あまり変わってないかもしれないですね。前作は曲が全体的に速すぎたので、今回は演奏とか全ての工程において余裕のある感じで自分を出せるのかなと思いきや、今作は前回の2分台の曲に慣れてしまったこともあって、4分台の曲がすごく長く感じるようになって。たとえるなら、前作は全力で走る短距離走、今回は中長距離走みたいな印象なので、辛さの種類が変わっただけであんまり変わってないんですよね。

いぶくろ前作は演奏できるギリギリのテンポが多かったので、運指の効率を上げなきゃいけなかったんです。そうしないとリズムの頭に間に合わなくなってしまうので。そういう意味では前作の経験がすごく活きると思っていたんですけど、その運指はあくまでもそのフレーズに特化したものなので、そのテンポに対する限界値が上がったわけではなかったんですよ。でも、それを限界値が上がったと錯覚してしまったせいで、「イケる」と思ったことが割とイケない、みたいなことが今回のアルバムではけっこうありました。だから、『ボカロ三昧2』はそこでしか使えない技術が多いという不思議な作品です。

町屋完全に『ボカロ三昧2』を演奏するためだけに用意された傭兵、みたいな。

いぶくろうん、そうですね。だから、成長したと思っていたら意外とそんなことなかったという不思議な感じですよ。

町屋なので、今作は『TOKYO SINGING』の継続といったほうがイメージ的には近いですね。『ボカロ三昧2』はあくまでもスピンオフ作品。

いぶくろもしかしたら2、3年後のふとした瞬間に「あ、あれはここで活きてるんだ」と思うことはあるかもしれないですけど、少なくとも今は別の場所にあの作品はいますね。

町屋やっぱり、カバーというのが大きいですね。オリジナル作品だと自分たちの引き出しの中からやるという感じなんですけど、カバーに関しては原曲ファンとか作家さんとか自分たちの音源が渡った先々の人のことまで考えるので、原曲を崩しすぎてもいけないし、全員が相当な無理をしているんですよ。しかも、その無理が技術的な向上ではなく、それを演奏することに特化しているという。

—— 他のメンバーは『ボカロ三昧2』を経たことでフレーズが豊富になったとか成長を口にしていたんですけど。

いぶくろなんかね、癖がありすぎるフレーズだから他で使わないんですよね(笑)。

町屋あと、楽器の特性とか立ち位置によって違うものなんだと思う。

いぶくろもしかしたら、リズム隊とかはバリエーションが増えるのかもしれないですね。

町屋あー、そうだね。こうやって僕らの意見が同じになるのは、さっき話したようにピアノの右手と左手みたいに同じような立ち位置だからだと思います。

いぶくろそうですね。

—— では、今作において町屋さんが意識したのはどんなところですか。

町屋まとめることですね。

—— そこは相変わらず。

町屋いやいやいや、もう今回はタイアップのために書き下ろした楽曲が連続したことで曲の方向性がバラけたんですよね。だから、このアルバムをまとめるために頭を使ったというわけではないですけど、悩みました。

—— 前半に戦いの要素を寄せて、後半に違った方向性のものを、という。

町屋僕は昔からそうなんですけど、作品の最後は極力バッドエンドにしたくなくて。よほどの意図がある場合はいいんですけど、そうでなければなるべくハッピーエンドで気持ちよく終われたほうがポピュラーかなというところですね。ポピュラリティを求めないのであればバッドエンドは好きなんですけど、このバンドはたくさんの人に受け入れられるということが前提としてあるので。

いぶくろ僕は今作はこれまでで一番ドラマチックな作品になってるんじゃないかと思います。本編に入る前の前奏がこれまでで一番長くて、そこで曲のストーリーを予感させるというか。なので、さらっと聴いたときに感じるのはタイアップの寄せ集めではなく、ドラマチックな作品という印象が強いです。

町屋タイアップ曲は個性が強いものなんですよね。なぜなら、その作品に寄り添わないといけないじゃないですか。だから、その曲を聴いたときにある程度景色が見えるようなものじゃないといけなくて。そういう意味では、景色がずっと見えているアルバムだし、そこもドラマチックな要素につながっているのかなと思います。

—— 「The Beast」のイントロには驚きました。

町屋和楽器バンドのアルバムを聴こうと思ってアレが鳴ったら驚きますよね(笑)。この曲は「大陸感のあるものを」という要望が作品側からあったのを受けて自然に出てきたものなんですよね。

—— 自然とケチャが出てきた?

町屋そうですね、朝起きたら出た。

—— あはは!

町屋寝て起きたら、この17声が頭の中で鳴ったので、すぐにテレコで17声を全部録って、そこからデモを起こしました。でも、それを綺麗に録り直すのもなんか違うなと思ったので、そのとき録ったものをそのまま使ってるんですよ。

—— すごい! というか、あれは17本も声が重なっていたんですね。あと、この曲でひとつ気づいたんですけど、最後のあたりでゆう子さんのボーカルにほんのりオートチューンがかかってますね。

町屋それは3番目のBメロですね。Bメロが3回もくるとさすがにくどいとは思ったんですけど必要なものだったので、ちょっと新しいアプローチというか、聴いている人を飽きさせないために視点や角度をちょっと変えていかなきゃいけないということで、デジタルのアプローチを入れてみました。

—— ボーカルにエフェクトをかけるのって珍しくないですか。

町屋あ、そうですね。うちはこういうことはあんまりやらないので。

—— いぶくろさん的にキーになっている曲はどれですか。

いぶくろ「そして、まほろば」がいいところに入ってると思うんですよね。

—— 「いいところ」というのは?

いぶくろ曲順もそうだし、世界観の移り変わりもそうだし。あと、これだけ戦って戦って戦って、「刃牙」の原始時代から戦国時代を経て、「そして、まほろば」につながる。ここまででいったん物語として完結している印象なんですよ。そういう意味でも、「The Beast」と「そして、まほろば」はキーになってると思っていて。そして、そのエピローグ的に「時の方舟」と「BRAVE」が来るという印象です。

—— 「そして、まほろば」はカッコいいですよね。

町屋アレンジは大変というわけではなかったんですけど、ピアノの弾き語りの状態から必要だと思うアレンジに仕上げました。たとえば、サビで4分の4(拍子)の普通のリズムの上にあのロングトーンが乗るのはちょっと窮屈だと思ったので8分の6(拍子)という手法を用いました。

—— なるほど。

町屋あと、僕は基本的に歌詞をめっちゃ大事にするので歌詞を聴きながらアレンジするんですけど、途中でワルツになるところも<穢れなき まほろばへ>の声のトーンの置き方とかで「あ、これは4分の3が必要だ」と。さらにそこから景色のアングルを変えるためにどうしていこうか考えた結果、ちょっとジェントっぽいリフを持ってきたり。そういった感じで必要なアレンジをしただけなんですよね。

—— あそこの展開はめちゃめちゃ痺れます。

町屋ドラマチックな曲なのでアレンジもドラマチックにしたという感じです。僕、基本的に受け身なので。相づち係なんですよ。

—— ド派手な相づちですけどね(笑)。

町屋そうですね(笑)。なので、つくった(鈴華)ゆう子が嫌がらないかということだけ気にかけてました。アレンジャーってやっぱり、原曲の作曲者のことをすごく意識するんですよ。

—— いぶくろさんが今回意識したのはどういうところですか。

いぶくろ自分の音色がだいぶ反映されるようになってきているので、音色。あと、基本的にずっと心がけているのは箏の技法を敢えて入れるということなんですけど、じゃあ今回それをたくさん入れたかっていうと盛り盛りには入っていなくて。

町屋あんまり箏っぽい感じはないね。

いぶくろそれでも箏ってわかる印象はあるんですよね。

町屋全然入れてもよかったんですけどね。和楽器バンドに対しての理解度がまだ低い頃は、僕は不協を嫌ったりだとか、箏っぽい技法で「あ、ここはちょっと嫌だな」って感じることがあったんですけど、今は全然そういうことに対して抵抗がなくて、いわゆる「不協和音」というものを不協だと感じなくなったんですよね。「不協和音」と呼ばれる和音というか。

—— では、ツアーについてお聞きします。どんなものになりそうですか。

いぶくろまだ全貌が見えてないんですよ。今回のツアーは今までで一番見えない。

町屋去年はアルバムコンセプトがわかりやすかったので、それに伴うツアーも「こんな感じで」っていうのがわかりやすくあったんですけど、オリジナルアルバムとなると難しいですね。ただすでに見えているのは、演奏してる側は割と息切れするということで。観ている側としては、勢いのあるナンバーが多いのでけっこう「ウェイ」な感じなんですけど、こっちははあはあしてると思います。

いぶくろあと、コロナが5類に下がって以降、初のライブになるんですけど、この3年半でライブというものがちょっとモヤモヤした感じになってると思うんですよね。声を出せない、マスクをする、入退場の厳しいルールがある、みたいなのとか。だから、お客さんの楽しみ方もモヤっとしているんじゃないかと思うんですよ。

町屋なので、ライブを重ねていって、ツアー後半にかけてできあがっていくのかなと思いますね。

いぶくろ参加しているお客さんもそれぐらいでやっとペースを思い出しそうな気がします。「あ、こんなに声出していいのか」とか。

—— リアルにお客さんと一緒に作り上げていく感じ。

いぶくろああ、そうなると思いますね。だって、街を見てもマスクしてる人としてない人がまだ半々ぐらいですもんね。

—— じゃあ、ツアーの話の結論としては「まだ見えない」と。

いぶくろツアー10日前にしていまだ見えず(笑)。

町屋いや、これは本当にツアーが始まらないと見えないと思いますよ。我々も「こうしてやるんだ!」という感じではないし、ライブってお客さんのレスポンスありきなので。

いぶくろそうですね。しかも、今回は8人でのライブでもあるので、いろんなことが今回のツアーでリセットされる感じはあります。

町屋だって僕、異世界に飛ばされたと思ってますから。

いぶくろコロナ禍の3年半?

町屋そうそうそう。

—— なるほど(笑)。

いぶくろたしかに、時間の感覚とか狂いましたもんね。

町屋狂った狂った。だから、コロナ禍という期間を経て<アフターコロナ>みたいな感じに今はなっていますけど、僕の感覚ではコロナの間に実は我々は異世界へ飛ばされていて、今、元の世界とは全然違う時間軸で生かされてる、みたいに思ってるんですよ(笑)。

いぶくろやっぱり、3年半は長かったですよね。高校生活分まるっとだし、それって価値観や習慣が変わるのに十分な時間ですよ。

町屋実際、メンバー全員生活が変わったので、まあ、異世界ですよね。だから今回のツアーは異世界転生した8人が出会って初めてのライブなんですよ。

いぶくろそうですね。そこから元の世界に戻りたくなるのかどうかって話で。

—— うんうんうん……なんだかすごくクセの強いシメになるけど、大丈夫ですか(笑)。 いぶくろ&

町屋あはは!

いぶくろ異世界転生(笑)。

町屋あのね、僕たちね、変なんですよ。8人の中でちょっと考え方がねじれている変な人と変な人なので、こんな終わり方でいいと思います(笑)。

Text: 阿刀 “DA” 大志

TRACK LIST

  • 01
  • The Beast (アニメ『範⾺刃⽛』野人戦争編オープニングテーマ)
  • 02
  • 宵ノ花 (ゲームアプリ『真・戦国炎舞 –KIZNA–』オープニングテーマ)
  • 03
  • 愛に誉れ (「スマパチ義風堂々!!~兼続と慶次~3」テーマソング)
  • 04
  • ⽣命のアリア (TVアニメ「MARS RED」オープニングテーマ)
  • 05
  • 修羅ノ義 (「スマパチ義風堂々!!~兼続と慶次~3」テーマソング)
  • 06
  • 藍より青し (ゲームアプリ『真・戦国炎舞–KIZNA–』 合戦テーマ)
  • 07
  • Interlude ~Starlight~  
  • 08
  • Starlight (I vs I ver.) (フジテレビ系⽉9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌)
  • 09
  • そして、まほろば  
  • 10
  • 時の方舟  
  • 11
  • BRAVE  

[Bonus Track]

  • 12
  • 星の如く (すとぷり提供楽曲 セルフカバー)
  • 13
  • 名作ジャーニー (アニメ「あはれ!名作くん」主題歌)

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「ボカロ三昧2 大演奏会」(全18曲)

  1. ・Overture~ボカロ三昧2 大演奏会~
  2. ・フォニイ
  3. ・エゴロック
  4. ・グッバイ宣言
  5. ・Surges
  6. ・天ノ弱
  7. ・紅一葉
  8. ・アイデンティティ
  9. ・ナイト・オブ・ナイツ
  10. ・ド屑
  11. ・ベノム
  12. ・いーあるふぁんくらぶ
  13. ・ドラム和太鼓バトル~打演飛動~
  14. ・キメラ
  15. ・マーシャル・マキシマイザー ・Fire◎Flower
<ENCORE>

・吉原ラメント
・千本桜

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新星堂ワンダーグー:町屋 ミニクリアファイル(絵柄F)

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アニメイト:亜沙 ミニクリアファイル(絵柄G)

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その他一般店共通:山葵 ミニクリアファイル(絵柄H)

MOVIES

”修羅ノ義” Music Video

“The Beast” Music Video

『I vs I』 全曲XFD

“愛に誉れ” Music Video

“生命のアリア” Music Video

“Starlight” Music Video

"名作ジャーニー" 『あはれ!名作くん』コラボ リリックビデオ

「ボカロ三昧2大演奏会」LIVEライブダイジェスト

"ド屑" from ボカロ三昧2 大演奏会

アニメ『範馬刃牙』野人戦争編ノンクレジットOP「The Beast」

『真 戦国炎舞-KIZNA-』オープニングムービー

和楽器バンド × アニメ『範馬刃牙』野人戦争編
ニューアルバム発売&Netflix配信記念 オンライン特番

LIVE TOUR 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I

【Schedule】

2023年

07月29日(土)
千葉・市川市文化会館
15:00開場/ 16:00開演
08月13日(日)
埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
17:00開場/ 18:00開演
09月02日(土)
愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
16:00開場/ 17:00開演
09月07日(木)
東京・LINE CUBE SHIBUYA
17:30開場/ 18:30開演
09月18日(月・祝)
広島・上野学園ホール
16:00開場/ 17:00開演
10月01日(日)
茨城・水戸市民会館 グロービスホール
17:00開場/ 18:00開演
10月07日(土)
大阪・オリックス劇場
16:00開場/ 17:00開演
10月09日(月・祝)
宮城・仙台サンプラザホール
16:00開場/ 17:00開演
10月29日(日)
福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
16:00開場/ 17:00開演

Ticket

VIP指定席:前売 ¥15,000(消費税込み/前方指定席/プレゼント付き)

VIP着席指定席:前売 ¥15,000(消費税込み/プレゼント付き)

一般指定席/着席指定席:前売 ¥10,000(消費税込み)

【企画/制作】イグナイトマネージメント/LIFE
【協賛】ニューギン グループ