「うれD」
セルフライナーノーツ
GReeeeNの通算8枚目となるニューアルバム『うれD』が届けられた。
彼ららしい「うれC」の先へ行く「うれD」という“GReeeeN流変格活用”でユーモアを感じさせるアルバムタイトルからこの作品を世に放てることへの喜びが感じられる。
さらに、今作のジャケットには1stアルバム『あっ、ども。はじめまして。』で登場した謎の外国人の姿も確認でき、遊び心がこんなところにも反映されているのも興味深い。HIDEは「デビューアルバムにてご出演頂いたあの方に再出演頂けるかどうかで、夜も眠れませんでした」と胸中を話す。
既に発表済みの楽曲はもちろんのこと、このアルバムでしか聴けない楽曲も数多く収録。そのどれもが彼らの仲間に対する感謝や絆が多く込められた珠玉の曲達だ。
そんな収録曲への思いをGReeeeNのメンバーに語ってもらい、「うれD」セルフライナーノーツが完成した。
92曰く「昨今ではシャッフルとか一曲ごとに曲を聴けますが、ぜひ収録順で一番から最後まで聴いてもらえたら嬉しい」とのこと。
このライナーノーツを読みながら、「うれD」を収録順で楽しんでいただきたい。
文:村上順一
- 01. 超・風
アルバム冒頭を飾るのはスピード感みなぎるパワーロックナンバー。過去の風とは違う種類の風、アルバム一曲目ということもあり、92も「優しいそよ風というよりは突風に近い印象」と語る。エネルギッシュなギターアンサンブルはHIDE・naviで「良いテイクが演奏できた方が採用される合戦」という方式でレコーディングされた。HIDE曰く「腕が顔の前でL字になるほどの完全な向かい風、でも気づいたら追い風」と、逆境に立ってこそ、力強く響く楽曲となっている。小切れ良いラップとメロディ・コーラスのバランスがたまらない3分半の疾走感。
- 02. 11
ポップなエレクトロアプローチがクセになるウキウキな楽曲。セクションによって4つ打ちのキックトーンが変化するという妙技が楽曲カラーと絶好に絡む。「気が付いたら 動けばいいじゃん」というフレーズに、どこまででも連れて行ってくれるような気持ちが馳せる。92は楽曲の最後に歌われる“イレブンディメンジョンズ”というフレーズに対し、「地球という星に住んでいる私たちですが日本だけでなく大きな世界が広がっていてそこには様々な国があります。色んなところに旅に出てワクワクしたいです。地球だけでなく宇宙にはもっと多くのワクワクが広がっています。そんな気持ちを忘れないで日々生きていけたら」と語る。
- 03. 恋
懐かさがこみ上げてくるメロディに叙情的なコード進行、ドラマティックな展開に切ない落ち所アリという“GReeeeN節”がたっぷり味わえる一曲。映画『ママレード・ボーイ』主題歌。同映画からは、「複雑な環境だからこそ見えてくるシンプルな感情、それを言葉にすると『恋』」というインスパイアを得て、「愛を持った生活の中でも恋に向かって年月を重ねてもドキドキしたり想い合ったりしていけたらと願うラブソングに」という想いが込められている。
- 04. ハロー カゲロウ
GReeeeNの持ち味でもあるハイトーンボーカルの魅力が存分に味わえるメロディラインに、アコースティックギター・弦重奏・シンセサイザーと色鮮やかなアレンジワーク。本作の中でも1、2を争うサウンドバランスの完成度を誇るこの楽曲は、作品のあらゆる点がポピュラリティに長け、数多くのリスナーの耳に届いた。SOHは「メダル数も過去最多だったという事でもわかるように、本当に選手の皆さんの熱戦、素晴らしかったです! その中でもGReeeeNとご縁がある羽生選手の金メダルは本当に鳥肌が立ちました」(羽生選手は過去にCMにてGReeeeNの「ビリーヴ」を口ずさんだ)と語り、この曲はフジテレビの平昌五輪中継テーマ曲としても選手達を支えた楽曲だが、多くの人々の背中も押してくれる楽曲になることは間違いなさそうだ。
- 05. ユメノート
後期のビートルズを彷彿とさせるノスタルジックな導入は「ユメノート」というタイトルを表しているようなサウンドだ。ピアノの音色、スライドギター・リードギター・アコースティックギターの絡みがアンサンブルの深みを醸し出す。ミドルテンポのビートで噛みしめるように歌われる歌詞は、「夢を記し、振り返り、諦めなければいつか必ず世界にたったひとつの僕という物語のノートが出来上がるはず」という想いが込められている。
- 06. ヘピヘピホリデイ
「アルバムのコンセプトはない」と、冗談ぽく語るメンバー、初期から一貫しているのは「アルバムはまるでおもちゃ箱のようにワクワクが詰まったものにしたい」ということ。それを物語るように、メッセージソングが多い収録曲のなかでひと際遊び心が映えているのがこの曲だ。「面白い曲を作るのが大好き」という彼らの想いが表れている。まずは水の音が曲の世界へと導き、その後は軽快なリズム上でラップが展開される。そのリリックはどこか彼ら4人が冒険を企てているかのようだ。その世界観は「いわゆるGReeeeNワールド」。それは曲名にも表れている。「完全にノリ」というが、全員が「もれなく『それいいね』」と賛同したというところも面白い点だ。「うれD」というアルバムタイトルでも見られる「変格活用」はハッピーの最上級といったところだろう。
- 07. 4 ever ドーン!!!!!
小鳥のさえずりやエスニックなサウンドが入り込む壮大なイントロから始まったこの曲は人気アニメ「ONE PIECE」の大型テーマパーク「東京ワンピースタワー」のテーマソングとして使用されている曲。仲間との絆を描いたアニメ、そしてハラハラドキドキのテーマパークの世界を、疾走感あるポップロックで表現。まるで大地を、大海原を、風を切って駆け抜けているようだ。「ONE PIECE」をこよなく愛するメンバーの想いがつまった楽曲。HIDEはこの楽曲を一言で表すならば「ドーンよ永遠に」。もしやアルバムタイトルの「D」にも繋がる?
- 08. U R not alone
NEWSへの提供曲をセルフカバー。これまでもリスナーの背中を押す曲を数多く作ってきた彼らだが、伝えたいメッセージを多くの人と共有したいという思いが強く表れているのがこの曲だ。ただ、HIDEは「歌詞に、歌に、込めましたので、あとは受け取っていただいた方の中で、何かきっかけになれれば嬉しいです」と解釈をリスナーに委ねているが、多くを語らずとも十分に伝わる。その一つにスケール感のあるコーラスがある。これについてHIDEは「自分は昨日の自分の続きです。多くの声は、自分に向けられた多くの人からと、昨日までの自分が確かにそこにいる事です」、SOHは「まさに日々日常の色々な『戦い』を応援したい気持ち+自分をも奮い立たせる気持ちで歌ったつもり」と語っている通り、多くのコーラスによって生み出されるパワーは、どこか民族音楽の要素も感じさせるサウンドと相まって溢れ漲っている。
- 09. アリアリガトウ
トイピアノやアコーディオンなど多彩なサウンドを散りばめ、それはまるでおもちゃ箱のようにキラキラとしている。「損保ジャパン日本興亜」のテレビCMソングのために書き下ろしたこの楽曲は「お話をいただいて、その世界が見えましたので、歌詞に書かせていただきました」という。その内容は歌で表現する家族愛。明るいタッチで描かれているが、歌詞はなんとも切なく、心をつままれる想いになる。ローソクの先に親、大切な人を見ているようだ。また、GReeeeNには珍しく3拍子。これについてHIDEは「なんか幸せそうな、でもその幸せって、誰か縁の下の力持ちがいそうな感じだなーって思ってたら3拍子でした!」と語っている。
- 10. キミマツ
前曲の流れを汲むようにピアノから始まる。しかし、描かれている世界観やサウンドは対極にある。大切な人との別れが描かれているこの曲には主人公の、言葉にはできない心に秘めた思いを見事までに表現。バラードにすることでより一層際立っている。「ヘピヘピホリデイ」とリンクするように所々に水の音が使われているが、その曲とは違い物悲し気な音に聴こえる。「第33回全国都市緑化よこはまフェア」に書き下ろした曲。HIDEはその着想を「横浜を歩いて、港の見える丘公園でメロディーの一部と歌詞を考えました。そして、京都の嵐山に皆様に大事にされてる『キミマツサクラ』という桜があるんですが、その桜がもし人間だったら、横浜でこんな経験をするかもなあと思いまして」。桜の花びらは風に乗って旅をする。しかし樹木はそこに居続ける。なんとも情感に染み入る“桜ソング”だ。
- 11. Way with CReW
仲間=CReWと見立て歌ったナンバー。HIDEは「聴いてくださった方の、それぞれの仲間に寄り添える曲になれればと思い作りました」と想いを語る。サビではゆったりとしたグルーヴのなか、ドラムのキックと言葉のアクセントがしっかりとリンクし、メッセージをより強く際立たせている。GReeeeNが得意とする絆を感じさせてくれるナンバーは、アルバム後半の幕開けを鮮やかに彩る。ずっと大切にしてきた想い、今彼らが感じている想いをストレートに落とし込んだ1曲。この曲を聴いていると2017年1月7日にさいたまスーパーアリーナで開催されたメジャーデビュー10周年を記念した特別公演『あっ、リーナ、ども。はじめまして。「クリビツテンギョウ!? ル~デル~デ♪」』の景色が思い浮かんでくる。92も「さいたまのあの日もとても特別なものになりました。あの場所に集まってくれた皆様と僕たちとこの曲も一緒にまだまだこれからも前に進んで行きたい」と綴った。
- 12. 僕の唄
「Way with CReW」の流れから学生時代の三角関係を描いたバラードナンバー。HIDEは「恋愛ってなかなか上手くいかないですね! でも、それも踏まえて経験だと思ってます。その渦中ではわからないですけどね。恋には色んな結末があるのです」と話す。胸にチクチクと刺さるような思春期に経験する恋愛の甘酸っぱさ、主人公の叶わないかもしれない切ない思いが唄に乗って染み込んでくる。多くの人が一度は経験したことがあるであろう普遍性のある恋をエモーショナルに歌い上げる4人。情景が浮かぶようなアレンジと歌、音楽の基本的なところをしっかりと落としこみ、3曲目の「恋」とはまた違った、思春期の甘酸っぱい片思いと失恋の狭間にいるときの心情を描いた1曲。
- 13. 声 〜koe2018〜
2017年1月27日に公開された映画『キセキ ーあの日のソビトー』に出演した菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮によるグリーンボーイズがカバーしたことも記憶に新しい。naviは「当時の質感を現在の自分達で表現してみました」と話す。そのnaviによる曲を印象付けるギターが躍動感を与え、当時よりも洗練されたアレンジと歌声がさらに前へと背中を押してくれる楽曲に生まれ変わった。SOHは「パワーアップしたメンバーみんなの思いをのせて歌いました」とキャリアで培った成長が感じることができる1曲。
- 14. ソビト
2017年1月に開催されたさいたまスーパーアリーナ公演で初披露され、10年以上前から温めてきた楽曲。ソビトは自由に新しいことに挑戦していくことを意味した、彼らによる造語で「素人」または「空人」を表している。構成も序盤はバラード調でしっとりと聴かせるセクションからエナジーに満ちた熱いサビへの流れは、彼らの挑戦が詰まった展開で聴くものの感情を揺さぶる。注目したいのはピアノ。その旋律が4人の歌声に絡み合い、新たなケミストリーを生み出している。そして、メンバーのことを誰よりも理解しているJINが、レコーディングとミックスダウンをおこなったことにより、GReeeeNらしさがより一層強く打ち出た一曲となった。
- 15. 福ある島
HIDEは「震災で悲しい思いをした場所は沢山あります。その中に福島もあります。福島から咲き誇る希望が、まるでそよ風が吹き、福島はこれから幸せに向かって行くんだよ、と、日本という島に伝われば、この国は福がある島になるのではないかと思い制作致しました。
」とこの曲に込めた想いを語る。ストリングスやフルートなどの木管・金管楽器も取り入れ、コーラスも豊かに愛をテーマに壮大なスケール感で紡ぐ。目を閉じれば情景が浮かんでくるノスタルジックな歌詞は、彼らの故郷への大きな愛情がそのまま反映されている。誰にでもあるホームとも言える場所を思い出させてくれる楽曲。 - 16. PHANTOM ~約束~
初回限定盤のみ収録されるボーナストラック。「4 ever ドーン!!!!!」と同じく『ONE PIECE』へ捧げる楽曲。
HIDEは語る
「エースがあのような最期を迎え、マリンフォードでオックスベルを16点鐘する訳です。「それがあなたに捧ぐ『16回の最高の約束』サヨナラはまだ言わないまま」な、訳です。そして16曲目な訳です。」