[スタッフ裏話VOL.2]〜映像監督ウスイヒロシ氏インタビュー〜

──2000年に撮影された『座禅エクスタシー』の映像を8年の歳月を経た今、編集して作品化するにあたっては、どんなことを意識されましたか?

「今回、映像を編集するにあたって、彼女と話したのは、出来るだけ、そのままの形で出すということ。それから過去を振り返るような要素も必要ないんじゃないかということですね。名曲揃いのライヴが全てだと思うし、本人はこれからも音楽をやっていくわけで、振り返る感じではないんだろうなって。だから、僕はそう言ったんですけど、そうしたら彼女は一言、《そうですね》って。それで打ち合わせ終了です(笑)。それから2000年のライヴのエネルギーが満ち満ちていた感じを思い出しながら編集して、仮にあがったものを彼女に見てもらったら、《臨場感がないですね》って一言だけ言われたんです。そこで思ったのは、『下剋上エクスタシー』と『発育ステータス』はライヴとして曲を聴くっていう作りじゃなく、ドキュメンタリー的な要素を入れて、そういう全体のエネルギーの強さを捉えた作品だったんですね。でも、今回の『座禅エクスタシー』はエネルギーの強さってことじゃなく、ライヴとか曲の良さを意識して、音楽に対して素直な編集をして欲しいっていうことなのかな、と。そう思って、編集し直したんです」

──その再編集のいきさつは8年の歳月を経た林檎さんの変化そのものであるような気もします。

「そうですね。『下剋上エクスタシー』の頃と東京事変ではステージ・パフォーマンスが全然違っていると思うんです。今の方がお客さんに対する感情表現がストレートで正直になっている一方で、かつてのお茶目さっていうのはある種の恥ずかしさがあったからなのかなって思うんです。音楽に対して、音楽を感じるお客さんに対して誠実であれという姿勢は以前からずっとあったんですけど、今の彼女はそれに付随するお茶目さを外したところで、音楽をダイレクトに伝えようと思っているんじゃないかと。それは今回の編集のニュアンスにも表れていると思います」
 
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