こんにちは、Superflyスタッフです。
皆さんに支えられてSuperflyはデビュー15周年。昨年は、いい音楽をお届けしたいという一心で制作に没頭し、この一年、いくつもの音楽をお届けすることができそうです。
デビュー記念日にリリースする「Voice」は、自分自身への応援歌。
先が見えず、不安もある世の中だからこそ、苦しみも、喜びも、自分の心の声を抱きしめてあげたいという思いから生まれました。
あなたの感想、あなたの声を #Superfly に贈る声 でいただけたら嬉しいです。
今年は、Superflyにとって新しい家族を迎える特別な1年でもあります。
愛をこめて羽を伸ばして。
応援してくださる皆さんとつくる「チームSuperfly」で、特別な景色を見たいと決意する15周年のはじまりです。
Voice is power
曲を聴いて感じたこと。
思ったこと。
あなたの声をいただけたら
嬉しいです。
Release
Digital Single
『 ダイナマイト 』
2022.5.23 Release
ボートレース2022年新CMシリーズ「アイ アム ア ボートレーサー」主題歌 ダウンロード&ストリーミング
Movie
Superfly 『Farewell』 Music Video
映画『イチケイのカラス』予告映像
Superfly『Presence』×TVアニメ『アオアシ』アニメーションコラボMV
Superfly『Voice』Music Video
Interview
「“やりきれた!”という感覚があったし、15年間のいろんな葛藤とか感動とかを経て今ここにいるんだという実感がありました。過度に15年を振り返るような演出はしないで、シンプルにライブを進められたからこそ、かえってそういう実感を持てたんだと思う」
「とにかく歌っていて気持ちがよかった。今までは私、けっこうギリギリでやっていたんですよ。自分がメンバーを引っ張って、今やれることを全て表現しよう、絞り出そうと必死だった。でも今回はみんなが私を引っ張ってくれて、アイデアもたくさん出してくれました。私は歌うことに専念させてもらったし、例えばコーラス隊の人たちと一緒に歌っていて、こんなに素直に“楽しい!”と思ったことは初めてだった。一言で言うなら、確かな可能性を感じたライブ。そう、今はすごく可能性を感じているんです。未来を感じるというか」
12月28日に配信リリースされたデジタル・シングル「Farewell」もまた、Superflyの未来に繋がる1曲だ。1月13日に劇場公開された『映画 イチケイのカラス』の主題歌。エモーショナルなヴォーカルが心を揺さぶる感動的なビッグバラードで、Superflyの真骨頂とも言える曲である。
意外にも約1ヵ月という短期間で作られた曲だそうだ。10月初週に映画のラッシュを作曲・編曲家の宮田’レフティ’リョウ、プロデューサーの木﨑賢治らと観に行き、そこで田中亮監督から楽曲のオーダーを聞くことに。そして宮田’レフティ’リョウがピアノを弾いた試案を志帆に送り、後日、スタジオに集まってメロディ、構成、アレンジまで一気に詰めたという。
「黒木華さんの演じる裁判官が、ある人との別れで号泣するシーンがあるんですが、そこで流れる曲だと監督から聞かされました。“別れを歌った曲にしてほしい”と。それなら黒木さんの涙と私の歌とがちゃんとリンクしてないとダメだなと思い、それを意識しながら曲を作っていったんです」
「当初、監督には曲調のイメージとして“On Your Side”があったようなんですが、今の私が作るならもっと大人な感じの、重みのあるエモーショナルなバラードにしたいと思いました。それで“On Your Side”同様ピアノで始まる叩きを宮田さんから送っていただき、それを元にふたりでメロディを作っていった。Aメロは何かに導かれるように一瞬で出来ました。Bメロに関しては、感情をぶつけるような感じになるといいよねと話したのを覚えています。静かに始まるけど、そこで少しだけ感情が乱れるというか、気持ちが昂っている感じを表現できればと」
歌詞は“叶わぬ思い”をモチーフとして書いていったと言う。まずこの歌の主人公は相手に思いが届かず、どこまでも孤独だ。「こうなることなんか気づいていたのに 私は弱く脆い どうしようもない」とまで歌われる。
「監督から、志帆さんの実体験を描いてほしいと言われまして。全てが完全に自分のリアル体験というわけではないけれど、恋愛をしているのになぜか孤独を感じるという経験を昔にしたので、そのときの感覚を思いだしながら書きました。一緒にいるのに寂しいなって感じる。それがどうしてなのか初めから気づいているのに、それでも無理して頑張ろうとしている自分がいて、“ああ、ダメだダメだ”って思いながらもズルズルと……。そういう私がいたんです。独りで生きることが怖かったんだろうな」
しかし「Farewell」は最後まで孤独を恐れ、嘆き、押しつぶされている曲ではない。孤独や弱さにとことん向き合ったからこそ、「幸せになりたい」とはっきり願っている自分に気づき、そして心を解き放とうと決意するのだ。なぜなら「震えるほど好きだったことを 後悔したくない」から。
「相手に感謝するというよりも、自分のなかに確かにあった“好きだと思えた気持ち”とか“孤独を認めることができた気持ち”に対して、“ありがとう”と言えたら。そういう思いを書きました」
孤独や自分自身の弱さ。ピアノとチェロの音色及び抑制されたヴォーカルがそれを表わし、打ち込みの音が感情の乱れも表現するが、コーラス、ベース、ドラムと入っていくにつれ、この曲の主人公の気持ちが前に向かって動きを見せる。そして思いを解き放とうとする、ある種の祈りを込めた後半のサビのヴォーカルとストリングス。非常にドラマチックな構成だ。
「実を言うと当初作ったサビは、Aメロに呼応するような切ないものだったんです。でも監督と話をするなかで、乗り越えるための勇気を感じられるサビにしたほうがいいということになり、自分でコードから作り直しました。その結果、迷っている人、前へと踏み出せずにいる人の背中を、いい旅立ちができるように押してあげられる曲になったんじゃないかと」
「Voice」以降、宮田’レフティ’リョウ、木﨑賢治とのコライトが続く。そのチームワークは目に見えてよくなっている。
「宮田さんは引き出しが多いので、私とふたりでセッションをするみたいに曲を作ることができるんです。違うなと思ったらすぐに戻って別の方向に進めたりといったことが柔軟にできる。今回の、特に間奏部分などはまさしくセッション的でした。その場でアレンジがどんどん生まれ変わっていくのがすごく面白かった。そして木﨑さんは、私と宮田さんが勢いよく走っているところを冷静に見て、的確に判断してくれる。木﨑さんは私に想像力を与えてくれる人なんです」
サウンドは比較的シンプル。音数が抑えられている。が、それでいて豊かさを印象付ける。曲そのものを引っ張っていくのは何よりも志帆のヴォーカルだ。
「前半は寂しさを、途中からは気持ちを飛び立たせるように。弔辞を読むようなイメージを持っていました。想いを込めた手紙を故人に語り掛けるように読み、その想いを青空に舞い上がらせるといったイメージで、MVでもそれを表現しています。とはいえ実際に歌っているときには、どう発音するかといったことは考えず、ただキレイに呼吸をすることだけを意識していました。ライブに向けて3ヶ月くらいボイトレを受けたりしながらコンディションを整えていったんですけど、その過程で改めて、呼吸を丁寧にしながら歌うことの大事さがわかったんです。そうしたら声そのものが産前よりも元気になったのを感じられた。ピッチがどうとか頭で考えるよりも、メロディに息を注ぎ込むように歌うことで、自分の歌になっていくのが感じられるんです」
そういったヴォーカル面での気づきと、コライトの可能性。久しぶりに精力的な動きを見せたSuperflyの2022年は、公私ともに充実した1年となった。そして2023年はーー。
「2022年は本当にあっという間に過ぎていったけど、初めに話した通り、これから先の可能性をすごく感じることができた年になりました。2023年はその可能性を、作品でもライブでもどんどん花開かせていけたらいいなと思っています」
(内本順一)
「Presence」の話をしよう。この曲はNHK Eテレで放送中のTVアニメ『アオアシ』第2クールのオープニングテーマ。主人公の青井葦人(あおいあしと)がサッカーを通じて悩みながら成長していく物語を受けて作られた曲だ。
「原作のマンガも読んだんですけど、まず主人公のピュアさを感じました。ピュアな少年が葛藤や挫折を経験しながら成長していく過程を描いた物語なので、その心の動きを大事にして曲を書こうと。主人公は愛媛出身なんですけど、(ユース生となって)上京するんですね。そのシーンでは、自分が愛媛から覚悟を決めて上京したときの気持ちを思い出し、涙してしまった。ほかにも共感できるところがいろいろあって……」
例えば、このようなところに共感したと志帆は言う。
「主人公は子供の頃からフォワードとして輝きたいと思って頑張ってきたけど、監督からディフェンダー(サイドバック)に転向しろと言われる。本来自分がやりたかったポジションではないけど頑張らなきゃならないという状況に置かれ、葛藤しながらもなんとか踏ん張っているんです。Superflyも上京してデビューしたときはふたりだったのが私ひとりになったり、もともと曲を作る人間ではなかったのに自分で作ることになったり。本来それをやりたくて始めたわけではないけど、やらざるを得ない状況になり、それによって成長できることって、どんな人にもあると思うんです。新しいことを始めるときには必ず恐れや葛藤がある。逃げだしたくなったりもする。それってすごくわかるなぁって思って。でも、夢を眠らせずに踏ん張っていれば、その先に必ず新しい未来が開けるはずなんですよね」
『アオアシ』第2クールのテーマは「挫折からの再生」。それを表現すべく、曲も山あり谷ありのドラマチックなものにしよう。多幸感と切なさが同居するものにしよう。そこからスタートし、志帆の頭のなかで早くにイメージが広がったそうだ。が、そのイメージの具現化が想像以上に難しかったと話す。
「コード進行の持って行き方などテクニカルな面が追い付かず、自分ひとりではそのイメージにメロディが辿り着けずにいた。それで悩んだ末に、“Voice”を一緒に制作した宮田さん(宮田‘レフティ’リョウ。「ダイナマイト」のアレンジとサウンドプロデュースも担当)と木﨑(賢治)さんにコライトのお誘いをしました。宮田さんはもともとサッカー好きで、“アオアシ”も好きだったらしく、オケ作りに取り掛かったときには既にイントロのイメージを持っていてくれた。何しろ作業が早いんです。で、オケを聴きながら私がメロディを作るわけですけど、これがなかなかしっくりこなくて。私はシンプルだけどリフレインで心を動かせるようなメロディが元来好きだし、それが自分の個性だと思っているんですね。でもこの曲はJポップ的な抑揚を持ったメロディのアプローチが合うと思っていて。そこで何度もダメ出ししてくださったのが木﨑さん。もう、千本ノック状態(笑)。サビのアイデアだけで10いくつ出したかな。そうしてよりドラマチックなメロディを探り、何度もトライを重ねて歌いまくった結果、あるとき自分の予想を超えるサビのフレーズが出てきたんです」
志帆にとっては今回が初のコライトだったが、「ふたりとも私の意見をすごく尊重して聞いてくれるし、曖昧なことをどこまでも一緒に突き詰めて考えてくれる。ひとりが疑問に思うことを言ったら、それについてみんなで一緒に考える、そういう関係性が築けて、すごくよかったです。15年やってきて、まだこんなにいい出会いがあるんだなぁって」と、理想的なチームを得られたことに大きな喜びを感じている様子。そうやって、ひとりではなく何人かで力を合わせて何かを作ること、何かを達成することに、格別の充実を感じるのだと言う。
「思えば昔からそうでしたね。中学のときにやっていた合唱もそうだったし、めっちゃヘタクソながらバレーボールもやっていたんですが、そこでもみんなの心がひとつになったときに奇跡を感じたりした。
そういう意味でも“アオアシ”に共感しました。スポーツも音楽もそういうところは一緒で、ソロで活動しているけど、チームで知恵を出し合って結果を勝ち取る喜びはすごく大きいし、そこにロマンを感じるんです。私はそのチームのひとりとして、そこにいたい」
この曲のなかでとりわけ重要な「ここにいたい」というフレーズも、そんな思いがあってこそ出てきたのだろう。
「不慣れなポジションに就いて、やめようかと考えるタームもあるけど、でもやめられない。逃げ出せない。それってどうしてかな?と考えると、やっぱり人と一緒にやることの喜びがひとりでは得られないからだと思うんです。毎回起きるわけではないけど、何回かに一度、奇跡のようにみんなの歯車がカチッと合わさる瞬間がある。その最高の瞬間を味わいたいから、ここにいたい、っていう」
「2度と戻れない青春を愛せますように」。「Presence」ではそうも歌われる。Superflyの楽曲で青春という言葉がこのようにストレートに歌われるのも珍しい。『アオアシ』の主人公やチームメイトたちがまさに今いるのが「青春」という季節であるからだが、志帆にとっては自身の学生時代の部活の懸命さを振り返りつつ過ぎ去った時間の尊さを思うことも、チームで曲を完成させることの喜びもまた青春なのだと、そういう思いがあったわけだ。
とはいえ、青春真っ只中といったテンポ感だけで押し切るのは初めから避けようと思っていたそうだ。
「サッカーのアニメのテーマ曲なので疾走感は必要だけど、8ビートで生ドラムってことになると青春パンクみたいになってしまう。そうならないよう、疾走感がありながらも落ち着いたムードをいかにして持たせるかってところはしっかり話し合いました。だから打ち込みにしたり。ストリングスで光が降り注ぐ様を表現したり。そうやってコントラストを付けることを意識したんです。私のヴォーカルも、エモさはサビの一行で表現できればいいと思っていたので、大人の歌い方を心掛けました」
影と光。プライドと夢。挫折と勇気。そのコントラストが音と声とメロディで鮮やかに表現されるこの曲だが、とりわけ青空に届かんばかりに伸びていく志帆のファルセットが未来を照らす光のようにも感じられる。「Voice」にも参加した16人の歌手たちのコーラスも、スタジアムに似つかわしいスケール感・昂揚感がある。
Superflyの新たなアンセムになりうる、そんなこの曲「Presence」が、11月23日、有明アリーナにどう響き渡るのか。その様を想像しただけで感動してしまう。
(内本順一)
「ダイナマイト」は、現在放映中のボートレース2022年新CMシリーズ「アイ アム ア ボートレーサー」主題歌として書き下ろされた曲。1月からCMが流れ、またTikTokでも耳に残るサビ部分が配信されていたので、フルで聴けるのを楽しみにしていた人も多かったことだろう。疾走感と爆発力を有するメロディ。高らかなホーンの鳴りも際立つ迫力のバンドサウンド。聴く者を鼓舞するような志帆のヴォーカル。自分を奮い立たせて一瞬の勝負に全てを賭けるアスリート(CMにおいてのボートレーサー、あるいはMVにおいてのボクサー)の熱き思いを、そのメロディとサウンドと歌がありありと表現している。
一聴して恐らく多くの人が「タマシイレボリューション」を思い浮かべたことだろう。NHKの2010年度サッカーテーマソングとして広く親しまれ、ライブでも大いに盛り上がるその曲は、Superflyの代表的な“ぶちあがりロックナンバー”。まさに「未知の世界へ」飛び込むための「戦いの歌」だった。あれから12年。新曲「ダイナマイト」は新たな「戦いの歌」であり、12年を経ての「タマシイレボリューション」進化系とも言えるだろう。実際、CMソングの依頼は、「タマシイレボリューションのような熱い曲を」という明確なリクエストと共に来たそうだ。
「“来たか~”って思いましたよ。“これはエネルギーが要るぞ”って」と、志帆はその注文を聞いたときのことを振り返って言う。思えば志帆はもう何年も、「タマシイレボリューション」のように爆発力を有した明快かつアッパーなロック曲を作っていなかった。もちろんロックを封印したわけではなく、2020年の6thアルバム『0』にも「Gemstone」や新機軸の「覚醒」があった。が、ここまで明快で、聴く者と自分自身を鼓舞するような“ぶちあがりロック”からは距離をとっていた。端的に言うなら、志帆自身がそういうモードではなかったのだ。
「ある時期以降、“私が一番!”“負けたくない!”みたいな気持ちから、できるだけ遠ざかりたいと思うようになった。そういうエゴの強さみたいなものをパワーに変えて活動を続けることに疲れてしまって、それでしばらくお休みしたところもあったから。正直、怖かったんですよ、そこに戻るのは」
それもあってか、曲はコンペで募って決めたいと志帆が提案した。志帆自身もひとりの作家としてコンペに参加。“新しいSuperfly”を表現した曲が書けた気がしていたが、結果的にスウェーデン人作家のERIC LIDBOMとMUSOHの手によるメロディが採用されることとなった(一部、志帆のアイデアも採用)。CMソングとして今回求められたのは、“新しいSuperfly”像ではなく、「タマシイレボリューション」にあったあの熱さや明快さだったからだ。
「自分で書いた曲もそれなりにかっこよかったんですけど、自己分析すると、エゴの強さもパワーに変えて突き破るというような絶対的な爆発力に欠けていたんです。やっぱり反骨心を剥き出しにして、エゴも武器にして限界を超えていくくらいの気持ちがなければ、アスリートは勝利を得られないわけで。何曲か聴いたなかでも、スウェーデン人作家の方の曲には、そういう圧倒的なエネルギーと、あくの強さがあった。だから作詞するときには、しばらく自分が遠ざけていた“負けたくない!”“一番になりたい!”といった気持ちをあえて思い起こすようにしてみました。そういう気持ちって、大人になるほど持ち続けるのは疲れるし、排除したくなるものでもあるけど、あえてその感情にもう一度向き合って書いてみようと」
で、書いてみて、そして歌ってみて、どうだったのか。
「それが、すごく気持ちよかったんですよ。負けず嫌いの自分が久々にピョコーンと現れたような感覚があった。歌入れのときなんてもう、頭がパカーンと開いたような開放感がありました。あくの強いこの曲に、そういう力があったんでしょう。たぶん私は、突き抜けたかったんですね。ここ数年、大人しくしていたけど、潜在的に突き抜けたい気持ちがあったんだと思います。それがこの曲でちょっと叶った気がして」
インタビューの始めに、15周年を控えたタイミングでレコード会社の移籍を決めたことの理由を改めて聞いてみた。志帆はこう言った。「Superflyはこうあるべきといった先入観を持たない人たちのいる環境に飛び込んで、フレッシュな意見、フレッシュな視点を自分のなかに取り入れたい気持ちが強くなったというのが大きい。現状維持も大事だけど、Superflyを知らない人たちも惹きつけて、広げていくにはどうしたらいいか。フレッシュな意見がほしかったんです。10年以上一緒に歩いてくれたレーベルのスタッフには感謝しきれないほど感謝してます。デビューするときの、スタッフみんなのパワーがグワっと結集するあの感じは、今思い出しても凄かった。ああいうエネルギーをもう一回感じて、ここからまた熱く、楽しくやれたらいいなと」
現レーベルのスタッフたちは、ある側面においての“Superflyらしさ”が全開になったこの曲「ダイナマイト」を熱く大肯定したそうだ。それも力になり、志帆は自分の考える“新しいSuperfly”を見せるのも大事だが、回りの意見を聞き入れ、多くの人が求める像に応えることもまた大事じゃないか、それも含めて新しいSuperflyになれるんじゃないか、「新世界、新時代へゲームチェンジ」できるんじゃないかと、そう再認識したところがあったようだ。
「この曲“ダイナマイト”を作れてよかったと思います、本当に。コンペをして、作詞して、歌入れして。制作の過程で、いろんなことを思い出せた。“一番になりたい”みたいな気持ちも久しぶりに思い出せたから。扉が開いたような、そんな感覚もあるんです」
そういえばNHK総合で4月に放送された音楽番組『SONGS』で、大泉洋に「今後どういうチャレンジをしたいか」と訊かれた志帆は、「デビューした頃からの夢なんですが、いつか東京ドームでライブをやりたいと思っているんです」と答えていた。デビュー当時のインタビューで、「夢は?」と訊くと確かにそう答えていたものだったが、でもそのことを彼女がこうして口にするのはずいぶん久しぶりのような気がした。環境を変え、今また改めてその夢に対する思いを強くしているのかもしれない。「臆病にさよなら」「新しい私を始めよう」と歌ったドラマチックな「Voice」と、「熱くあれ」「本能のまま いざ進め」と歌った爆発力ありのロック曲「ダイナマイト」が、その夢に向けた新たな一歩であり、どこまでも行くのだという宣言のようにも思えるのだった。
(内本順一)
『Superfly Online Live “うぶ声”』は、八橋義幸(ギター)と鶴谷崇(鍵盤)とのアコースティックセットで行なわれ、新曲「Voice」もアコースティックのスローナンバーとしてそこでは演奏された。志帆はそのとき、「まだ作りかけです。アレンジも作っている最中だし、もしかしたら歌詞もメロディもまだ変わるかもしれない」と断ってから歌い始め、だから完成した際にはどういったアレンジがつくのだろうかと、そこも楽しみだったわけだが、完成版を聴いて驚いた。始まりから厚みのあるコーラスが荘厳に響き、プログラミングされたダンスビートとストリングスの音が合わさりながら高揚感を伴って進んでいく、実になんともスケールの大きなアレンジが施されていたからだ。
志帆によれば、最初にメロディが「聞こえてきた」のは、2021年の正月だったそうだ。
「それなりに緊張しながら出演した“NHK紅白歌合戦”を終えて、ほっとして。(コロナ禍で)実家に帰れる状況ではなかったので、おうちで昼間からゆっくりお風呂に入ったんです。たぶん、すごくリラックスした状態だったからだと思うんですけど、そのときにこの曲のサビのメロディが頭のなかに聞こえてきた。その時点で歌詞のテーマはまだ思いついていなかったんですが、第九(ベートーヴェン交響曲第9番)みたいにみんなで一斉に歌うスケール感のある曲というイメージは同時に浮かんでいたんです」
その壮大かつドラマチックな楽曲イメージが初めから志帆の頭のなかにあったというのは意外だったが、しかし、そのイメージをアレンジに落とし込むにはかなりの時間を要したという。
「デモを作ったのが2021年1月で、そこからなんだかんだで1年近く。もともとがちょっと歌謡っぽいメロディだったので、サウンドは逆にダンスミュージックの範疇に入るモダンなものにしたかったんです。リズムだけ聴いていても高揚してくるような、そんな曲にしたかった。けど、歌謡的なメロディの引力が強かったので、そこの塩梅が本当に難しかったですね。一歩間違えるとダサくなりかねないんですよ。歌謡のほうに引っ張られすぎたらダメだし、モダンであることを意識してクールにしすぎるのも違う。理想的なハイブリッドになるようにするのに時間がかかって、最終的には宮田さんとふたりでスタジオに籠り、目の前でいろんなアイデアを出していただきながら作りました。ダンスビートが土台にあって、ストリングスも入れて、オペラの雰囲気を持つコーラスも入れて……。そういう歪な組み合わせでありながら、聴いたときに熱くなれる、その絶妙な落としどころを探って作り上げたんです」
アレンジは宮田‘レフティ’リョウ。プロデュースは大ベテランの木﨑賢治。直接的には昨年からSuperfly楽曲の制作に大きく関与することになったこのふたりの尽力もあり、「らしさ」を残しながらも、同時に「新しいSuperfly」を鮮烈に印象づける楽曲となっている。
歌詞もまた、注目すべきところだ。
2020年5月リリースの配信シングル「Together」から2年が経ち、その間にも世界は音を立てて変わり続けている。人々が引き離された世界で、“一緒にいよう”と願うように歌われた「Together」が出たとき、新型コロナは第1波だったが、もう第6波まできて未だ収まる気配を見せない。人種差別、性差別と、負の連鎖は断ち切れるどころかますます深刻さの度合いを増している。さらにはロシアによるウクライナ侵攻。まさか起きないだろうと思っていたことが実際に起き、そうしたなかで当然のことながら志帆もいろんなことを考えた。制作のチーフとチーフマネージャーと3人、リモートによる話し合いの時間を定期的に設け、自分の考えを言葉にしたり、意見を交換したり確認し合ったりもしていたそうだ。
「いろんなことに対して価値観がすごく揺れ動く2年間だったので、“なんでなんだろ”“自分はどうなんだろ”ってことをひとつひとつ考えたし、話したし。流すのではなく、いちいち立ち止まって考えることをしていた2年だった気がします」
そうして揺れ動いた感情や、結論は出ないまでも考えたこと、思ったことを、これからはもっと声にしていくのが大事なんじゃないか。そう感じていたときに、志帆の近いところで人間関係におけるあるトラブルが起きたそうだ。ある職場においての男性から女性に対するボディ・シェイミング。話を聞いたとき、志帆は始め、その男性に対して怒りが湧いたそうだが、女性がそれに対して声を挙げることのできない状況そのものにも腹が立ってきたという。
「“嫌なことは嫌だと言っていいんだよ”って、その女性を励ましたい気持ちになったのと同時に、人権を守るための社会のルールがまだまだ機能していないことを肌で感じてしまったんです。“こういうことって、いたるところで起きているんだな”と思った。正直、私自身も自分の意見をはっきり言うのが苦手なほうだったので、思い当たるところはあったんですよ。最初はちっちゃなNOでよかったのに、そこで声を出さなかったばかりに大きなNOを言わなきゃならなくなる、そういう経験を何度かしたので。そうした過去の自分も踏まえて、これからは嫌だと思うことは嫌だと言おう、自分の感情にもっと素直になろうと思っていて、それでこの歌詞を書きました。“誰かが決めた正義に従うよりも、自分の感情のほうがもっと大切ですよ”と伝えたかった。こんなに大変な世の中で、みんな不安な気持ちが続いていると思うけど、そういうときだからこそ自分の感情や意思をしっかり確認して、声にするのが大事なんじゃないかって」
総勢16人のシンガーたちによる英語詞のコーラスで壮大に幕を開けたあと、苦しさと決意の両方を表現する志帆の日本語詞による歌唱が続き、そして曲の終盤では志帆のヴォーカルとコーラスが一体となった英語詞で、より明確かつ高らかに決意を表明してみせている。
「日本語詞の部分は、力まず、できるだけ自然な声で歌えればいいなと思って臨みました。サウンドの昂揚感に歌がもっていかれてエモーショナルになりすぎないよう、アコースティックでの演奏によるOnline Live “うぶ声”のときの歌い方を思い出しながら。そして最後の英語詞のところで爆発できればいいなと思って歌ったんです」
メロディが頭のなかに「聞こえてきた」日から1年と数ヵ月。その短くない時間のなかで考えを熟成させ、「いま何を歌うべきか」を明確にし、そしてそれに相応しいアレンジを探りに探って遂に完成を見た新曲「Voice」は、即ちこの1年、いや、「Together」から約2年の志帆の思いの結実と言っていいだろう。
そして、この曲のほかにも既にいくつかの新曲が用意されている。現在CMで流れているあの曲もそれほど間をあけずに届きそうだし、この15周年イヤー、Superflyの新しい歌がいろんな場所から聴こえてくることになりそうだ。
「さらに自信を持ってみなさんにお届けできる曲がもういくつかできているので。15周年を迎えられたことの感謝の気持ちをお届けすべく、ここから進みたいと思っています」
新しい私、新しいSuperflyが、ここから、始まる。
(内本順一)
Voice is power
曲を聴いて感じたこと。
思ったこと。
あなたの声をいただけたら
嬉しいです。