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ヨルシカ

NEW RELEASE

チノカテ

2022年8月29日リリース

ヨルシカ NEW RELEASE チノカテ

TOPICS

RELEASE

ヨルシカ
Digital Single

カンテレ・フジテレビ系月10ドラマ
『魔法のリノベ』主題歌 チノカテ

2022.8.29 Release
チノカテ

新曲「チノカテ」は昨年から継続している 文学オマージュ作品。
アンドレジッド「地の糧」を歌詞のモチーフに制作、生活の中でふと花瓶の花が散ったことに気が付くような情景をイメージした楽曲。

チノカテ

Movie

Review

「この本を捨てよう、町へ出よう」

ヨルシカの「チノカテ」のラストには、こんなフレーズがある。
アンドレ・ジッド『地の糧』からとった一節だ。

寺山修司が評論集『書を捨てよ、町へ出よう』のタイトルに引用したことでも知られる言葉。
ジッドは作中で、読み手に何度も呼びかける。熱中について。喜びについて。旅について。平穏よりも魂を揺り動かす生活に焦がれるということについて。昨年から続く文学オマージュ作品として作られた新曲は、この『地の糧』をモチーフにした一曲だ。そのことを踏まえて聴くと、すごく深みを持ったメッセージが伝わってくる。

Text:柴那典/音楽ジャーナリスト

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「チノカテ」は、優しく柔らかなタッチを持った一曲だ。ミドルテンポの少し跳ねたリズムに乗せて、suisが包み込むようなメロディを歌う。「コップ」や「花瓶」や「ソファ」など、歌詞の言葉はリビングルームの明るい情景を描き出す。これまでヨルシカが作ってきた曲にはファンタジックな物語性を持った作品も多かったが、この曲には、現実の日常生活に寄り添うようなムードがある。
n-bunaは楽曲の中で「生活の中で、ふと花瓶の花が散ったことに気が付くような情景をイメージしました」とコメントしている。曲の中にも《花瓶の白い花 優しすぎて枯れたみたいだ》という歌詞がある。気付かないうちに枯れてしまった花瓶の花を前景に描くことで、“本当に大事なもの”の存在を浮かび上がらせるようなストーリーが描かれている

聴きどころは、サビの前に仕掛けられたストップ&ゴーの箇所だろう。ふっと音が消えて、指を鳴らすまでの少しのあいだ、曲の中の時間が止まる。ここが、ハッとさせられるような効果をもたらす。
《あ、夕陽。本当に綺麗だね》《あ、散った。それでも綺麗だね》《あ、待って。本当に行くんだね》と、歌詞の言葉にもリズムと合わせた響きがある。そして、この1番から3番までの歌詞を並べると、安穏を背にして、大事だと思っていたものや欲しかったはずのものも捨てて、どこかに向かう曲の主人公の姿が浮かび上がってくる。

サビでは《これから先のもっと先を描いた地図はないんだろうか? 迷いはしないだろうか》と歌われる。
日常の生活を彩るムードを持っているこの曲は、実は、先の見えない日々への旅立ちに寄り添う曲でもある。「チノカテ」の優しさは、そんなところにも感じる。

Playlist

サブスクで聴く「ヨルシカ」プレイリストはこちら
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