LUNA SEA「LUV」

RYUICHI Interview

Hold You Down

――「Hold You Dowm」の原曲デモを最初に聴かれた時、どんな印象を持たれましたか?

RYUICHI丘を吹き抜けていく風のようなイメージがありましたね。原曲はINORANが持ってきたんですけど、やっぱり長く一緒にやって来ると、メンバーのいろんな変化を感じるんですよ。前作の『A WILL』に収録されている「MARIA」とか、「PROMISE」もそうかもしれないし、INORANの新しい世界がいろんな楽曲の中で表現されてきていると思うんですよね。ギターのリフの組み立て方とかアレンジの構成の仕方とかが、今回、ブランニューなんだけど僕の中では根底で血が通っていて、“続編”のようなイメージがある楽曲でした。例えば女性の声が寄り添うようなコーラスワーク一つ取ってもそうだし。あれもINORANのアイディアなんですね。「ああ、今INORANはここへ行くんだな」って、曲から感じ取りましたね。

――レコーディングで実際に歌われる際には、特にどんなことを心掛けられましたか?

RYUICHI僕としてはまず、ストレートに歌いたいな、と。ここ何年もそういうふうにしてきているんですけど、レコーディングであってもマイクの向こうにファンの人たちがいて、僕らがステージに登場した時、最前列で立ち上がったり、「うわーっ!」と歓声を上げている人もいるようなイメージを思い描きながら歌っています。そういうイメージをすると当然、ライヴなわけですから、“一発OK”じゃなきゃいけないわけですよ。そうすると、「ここをこう歌ってやろう」「こんな風につくり込もう」という気持ちがだいぶ、なくなってくるんですよね。本当に、音楽を聴きながらただ反応して歌っているというか。もちろん、それでも気に入らないところは直すし、歌詞を直すこともあるんですけどね。

――“キミ”と“僕”が光と影のように対比的に描かれているラヴソングですが、どのようなイメージで綴った物語なのでしょか?

RYUICHI僕はいつもINORANの曲を聴くと、男女を思い浮かべるんですね。もしかしたら兄妹かもしれないし、いろいろな関係性があるのかもしれないけど、とにかく異性の2人のイメージが浮かぶんです。やっぱりロックというのは、ステージの上でちょっと現実の殻を破った、もう少し先にあるものだと思うんですよ。例えば、亡くなったデヴィッド・ボウイのステージにも、リアルなんだけどどこかブッ飛んでる瞬間、というのを感じるんですよね。この曲の歌詞にも、ちょっと性的なものを感じる瞬間が実はいっぱいあって。服を着て普通に街で人々とすれ違いながら、チケットを手にある空間に入ると、魂が裸になって重なり合ったり、一つになったりしていく……そういうイメージで僕自身は書いているんですよね。でも、全くそういうことは連想しない人がいても、もちろんいいと思うし。もしかしたら、男女ではなく母と娘という関係性もあるかもしれないし、聴く人に何かを重ねてほしいな、という想いも強くて。もう30年このバンドを応援してくれているファンの人たちだから、男性も女性も皆成長して結婚したりして、生活のスタイルが変わっていっているだろうし。今回のアルバム・タイトルはラヴ、スペルは『LUV』ですけど、一言に愛といっても友情や普遍的な愛情、いろいろあると思うんです。だから、そのリード曲としてピックアップした曲が恋だけという一つのところに落ちてしまうのは、ちょっともったいないかな?とも思っているんですよね。

――LUNA SEAとファンの皆さんとの関係にも読めて来ますし、いろんな想いを寄せられる歌詞だと感じます。書いていかれる中で、一番迷われたポイントはどこでしょうか?

RYUICHI<ずっとずっとキミを>という最後のフレーズがあるんですけど、ミュージックビデオを撮影している時にJが、「ここだけ“キミを”にしたらいいんじゃない?」と言ったのを受けて、歌い直してこの形になったんですよ。「それ、すごくいいよね!」「絶対ファンもうれしいよね」って。そういうジャスト・アイディアが響く時ってあるんですよね。

――LUNA SEAというバンドは30周年を目前に控えてキャリアを積み重ねながら、この軽やかで瑞々しい曲をリード曲として世に放っていく。そのことに新鮮さを覚えました。RYUICHIさんはどう捉えていらっしゃいますか?

RYUICHI2010年のREBOOT後、「THE ONE-crash to create-」とか前作の「Limit」とか、いろいろな楽曲が世に放たれる中、「ここでこういう曲が来るか!」という感じがしますよね。流れとしてはすごくいいなあ、と僕は勝手に思ってるんですけど。あくまでも勝手に、ですよ(笑)? ファンの皆さんはどう思うか…。重厚な曲も大好きですけど、こういうサラッと毒を撒いてる、みたいな感じがいいのかな?と僕は思いますけどね。「あれって現実だったのかな? いや、現実じゃなかったのかな?」と、後で思い返した時にその毒性に気付く、というか。ボウイが持っていた棘や毒も、そういうものだったんじゃないか?と思うし。久々の新曲ですけれども、今一番INORANらしい楽曲が生まれて来て、それを5人でまた一緒にこうして紡ぎ、とてもいいナンバーになったと思います。ぜひ楽しんで聴いてください!

(取材・文/大前多恵)

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