オフィシャル・ライナーノーツ
MUSICA編集長・有泉智子
05
パブリック

“Speaking”同様、2016年1月のファーストアルバム『TWELVE』からの選曲。そもそもの出発点であるギターロックのアプローチに則った、生身のバンドサウンドのダイナミクスを活かしたエネルギッシュな一曲だ。ヒリヒリとした緊迫感をはらんだ疾走感と、リズムやリフなどのキメを効果的に使ってテンポよく展開させていくポップネス。その中で大森の歌は、悲しみを湛えながら静かに向かい合うような歌唱と、心揺れながらも願いを込めて叫ぶような歌唱が混在していて、とても切実に胸に迫る。

楽曲自体は大森が高校2年生の時に書いた曲だが、奇しくも“パブリック”がレコーディングされた2015年はパリ同時多発テロを始め自爆テロが相次ぎ、幾千年の歴史を経てもなお繰り返される人間同士の争いと、その中で増産されていく悲しみと憎しみの断ち切れない連鎖を突きつけられた年であり、偶然というにはあまりに本質的な符合を感じる。人間の愚かさや闇を見つめ問題提起を投げかけながらも、それでも<優しさを精一杯に愛そうと/醜さも精一杯に愛そうと>と歌い叫ぶラストに、彼らの精神性が表れている。

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