オフィシャル・ライナーノーツ
MUSICA編集長・有泉智子
08
鯨の唄

セカンドアルバム『Mrs. GREEN APPLE』のリード曲であり、ミセスの歌のひとつの真骨頂を描き出すとても雄大な名曲。イントロから響きわたるストリングスの流麗で荘厳な響きも含め、深い夜を超えて燃えるような朝焼けを臨むかのごときイメージを抱かせる楽曲であると共に、儚く小さな生命がとても大きな輝きを獲得していくかのような、生命力に溢れた大曲だ。ともすると深い思念の海に沈み込んでしまうことも多い大森の思想が、より確信的に外に開けていった当時のバンドのモードによって、孤独でありながらも独りじゃない、誰かと確かに繋がっていること、踏み出すこの一歩がその先に虹を架けることを信じる歌に昇華されている。

<散らばっちまったアイデンティティーが/気づかぬうちに 形になった>、<汚れを纏った言霊が/時間をかけて澄んでいくのを見た>という歌詞は、当時の彼のリアルな実感だったのではないだろうか。<貴方は貴方の/生命だけを輝かせて>と歌う曲だが、<手を挙げて 銃声が響いた/誰かがきっと泣いているから。/怖がらないで/掲げた誓いを果たす為に戦ってくれ>という一節は、彼自身の決意を改めて歌っているようでもある。

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