オフィシャル・ライナーノーツ
MUSICA編集長・有泉智子
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WanteD! WanteD!

このシングルがリリースされた2017年の前半に行われた彼らのツアーは、ライヴハウス全体にLEDの電飾を飾ったりもしながら、ライヴを「観る」のではなく、オーディエンスがより自由に音楽を楽しんで踊れるような環境をめざして趣向を凝らしたツアーだった。その中で“WHOO WHOO WHOO”のようなエレクトロニックなダンスポップの新曲が生まれていったのだけど、この“WanteD! WanteD!”もその流れと無関係ではなかったと思う。

ただし、歌詞の内容はとてもシニカルかつ鋭い棘が明確に出ているもので、<僕らは逃げている/自分の弱さから>、<間違いながらも/逃げるのに慣れて/【愛】に気づけなくなっている>と歌う一節からもわかる通り、ただ楽しく漫然と日々を過ごす同世代に対して厳しい問いかけをなしていく楽曲だ。当時大森は、「去年1年で明るくてポップで、全部を認めてくれるような肯定と希望に満ちたイメージ像を作り出すことができて、それは当然やりたいことでもあるんだけど。ただ、ミセスはそれだけじゃない。自分は今もアンチテーゼや問題提起も強く持っているから」と語っていたが、まさにミセスのそういう側面を意識的に表出させた一曲。

LISTEN!