オフィシャル・ライナーノーツ
MUSICA編集長・有泉智子
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アウフヘーベン

サードアルバム『ENSEMBLE』からの選曲だが、そもそもの原曲は大森が高校2年の冬に書いた曲であり、このベストアルバムの5曲目に収録されている“パブリック”と対となる曲だという。けれど、この“アウフヘーベン”は、“Love me, Love you”の項で書いた『ENSEMBLE』の時期だからこそ完成できた曲だろう。サウンドアレンジで一番の肝を握るのは藤澤のピアノだが、クラシックピアノで細やかな旋律をダイナミックに弾き倒していく様は見事で、タイトに小気味よく刻まれていくドラムのビートにしても全体のアンサンブルにしても、スリリングな緊迫感をキープしながら表情豊かに楽曲を推し進めていく。初期のようなある種の飛び道具的なハイブリッドサウンドを利用した爆発力ではなく、プレイヤー同士の掛け合いが生んでいく音楽的かつ生々しいエネルギーの発露によって大きな推進力が生まれている一曲だ。

<歪んだ世界とはさ/修復はもう無理なのか>、<安牌な回答で直に虹が架かる/大丈夫 心配無いよ。大勢が傷つくだけ>、<なんだっていいんだっけ?/大丈夫なんだっけ?>と、痛烈にシニカルな物言いで人間に対する問題提起を投げかける歌詞含め、彼らの核と成長が同居した真骨頂たる一曲だ。

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