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其の壱  其の弐

──「本能」をやらなかったのは、アレンジが上手くまとまらなかったんだよね。ちなみにこの時点で『勝訴ストリップ』は完成してたんだよね?
  「'99年の夏にはとっくに録り終えてました。で、その後に「本能」を出したら、割とやさしい曲を選んだつもりなのに、なんで“ヤバい女”みたいなことになったのかなって思ってました(笑)」
──で、2000年に入って、「ギブス」と「罪と罰」という2枚のシングルが出て。ここではベンジーさんと……
  「チャコちゃん(田渕ひさ子)とやりました。でも、この2枚も前の年の夏には録り終わってて」
──そして、いよいよ、セカンド・アルバム『勝訴ストリップ』がリリース。
  「お陰様ですごい沢山の方に買って頂いて、ありがたい話なんですけど、周りのみんなは“『無罪』が売れ過ぎちゃった”って仰ってて。つまり、それは“みんなが分かるものではないはずなのに、売れることによって誤解が生じる”っていう話だったんですけど、そこで私は“なるほど。じゃあ、好きにやったものを作ればいいのね”って思って、『勝訴~』を作ったんです。実際、すごくうるさいアルバムだし、端からチョッパー・ベースだし、きっとセールスは落ちるだろうなって思ってたんですけど……」
──このアルバムが大ヒット。それから(全国ツアー)下剋上エクスタシーが始まりますが、この最初の2年間だけ振り返っても、非常に濃い活動振りだよね?
  「最初の2年は厳しかったですよね。新人が強いられすぎ(笑)! しかも、『無罪~』を作った段階から“こういうアルバムを作っちゃったからには責任を取らなくちゃ”っていう話になっていて、どうしてそうなっちゃったのか、よく思い出せないんだけど、それによって自分が一番最初に疲れちゃって」
──いまにして思えば、その後の御起立ジャポン・ツアーは林檎ちゃんにとって、楽しんで音楽を演るためのリハビリ期だったんじゃない?
  「そうですね。結果的にはそういう時期だったかもしれないですね。でもね、レコーディングだったり、音に関わってる時は妥協したことがなくて、多分、プロモーションが変なんだなって思うんですよ。私は決して確固たる哲学があって、それをCDにしてるわけではないじゃないですか。だから、私にとってのプロモーションは「笑っていいとも」でいうところの“お~い、ポスター張ってくれ~”っていうような、そういうものだと思ってたんですけど、活動における時間の制約は実際の音楽活動よりプロモーションの方が多いんですよ。だから、分かんなくなっちゃったし、疲れちゃったと思うんですよ」
──で、本来的な音楽活動に専念したリハビリ期を経て、その年の年末に妊娠されて。
  「妊娠初期は流産する確率が高いから、確実になったら発表しようっていうことになって、(2001年の)1月にホームページで発表いたしました」
──で、3月にシングル「真夜中は純潔」がリリースされますが、このシングルを録ったのは……
  「妊娠してからだから、前の年の11,12月です。このシングルは亀田さんから離れて、初めて作った作品ですよ」
──この時のインタビューで、林檎ちゃんが初めて“唄い手として頑張りたい”って話をしたんだよね?
  「そうですね。2001年は比重が大きくなっちゃってる詞をなんとか回避したくて、そういう発言を含め、意味を持たない言葉をどうやったら使えるだろう?って悩んでた年です」
──子育てもあり、普通の生活に戻ることで、音楽活動のペースを整えていたっていうことだよね。そして、2002年にはカヴァー・アルバム『唄ひ手冥利~其の壱~』がリリースされますが。
  「どういう風に音楽やってたんだっけ?っていう意味の小手調べというか、職業の確認ですよ」
──『唄ひ手冥利』リリース後から、『加爾基 精液 栗ノ花』の制作に入るまでは、どんな日々をおくっていたの?
  「『唄ひ手冥利』の制作中に、今後の活動をどういう風にやっていくか、その最終決断をいよいよ迫られているんだなと思ってたんですけど、リリースする時に“やっぱり、やっていかなきゃいけないな”って考えて、体制を整えていました」
──そして、『加爾基 精液 栗ノ花』のレコーディングを経て、今に至る、と。この5年って林檎ちゃんにとってどういう期間だったと思います?
  「結果的に色んな方にお会い出来て楽しかったんですけど、大変だったというか、難しかったと思うし、それは未だに学んでいる途中です」
──19歳でデビューして、いま24歳だけど、この期間って、世の中的には子供から大人へ変わっていく期間でもあるよね?
  「そうですね。『無罪~』には15,6歳の時に書いた曲がいっぱい入ってて、すごく滑稽な部分はいっぱいあるんだけど、それを一個一個直してしまうことは今よくないなって直感的に思ってたんです。で、それは“でも、いいじゃん!”っていう怠惰な気持ちではなく、滑稽なものを滑稽なままに発表して、それが作品を重ねるごとに削られていくっていう、そういう過程も楽しいじゃないですか」
──それは、つまり、成長していく過程を作品にするっていうことだよね。
  「だから、いま振り返ると、すごく恥ずかしいんですけど、その時も“きっと、恥ずかしいんだろうな”って思いながらやってたし、それはしょうがないですよね」
──成熟することはいいことなんだけど、その時にしか表現出来ない感情ってあると思うし、それが例え、未熟だったとしても、非常に貴重なものなんだよね。林檎ちゃんの作品を振り返ると、そういう精神的な遍歴がしっかり刻まれてるよね。
  「ありがとうございます。そうだと嬉しいですけどね」
──今後に関しては、いかがでしょう?
  「別になくてもいいよねっていうものを作らないようにって感じかしら。逆に言えば、これは確かにあってよかったっていうレコードが作ることが出来ればなって思います。あとは……ヤバい奴って言われないような女性を目指しますよ!(笑)」
──8月には全国ツアーが始まるし。
  「レコーディングではシンプルに曲の骨格が分かるように録る時もあるんですけど、今回の新譜はそういう感じではないので、これをシンプルにしたら、聴くに堪えうるものになるのかっていうトライをしつつ、シンプルなバンド編成でのライヴを考えています。あと、ツアーが続くと、緊張から体調を崩しがちなので、今回はそろそろ大人っぽく、“仕事ですから、慣れですね”って言えるように目指したいですね」



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