LUNA SEA
オリジナル 9th アルバム
『LUV』インタビュー
SUGIZO
今はもう戻れないけど、そのアティテュードは忘れちゃいけないな
――今作は愛をテーマに歌詞が綴られていますが、RYUICHIさんの言葉の中で、特に感銘を受けられたのはどんなところですか?
SUGIZOすごくキャッチーな愛や人間関係を描いた歌もあれば、未来を示唆するような歌もあって、かと思えば絶望を感じる歌もあって。だけど、その中にも篝火というか…それは愛なのか、エネルギーなのかが灯っている、という歌もあるし。今回は作詞家としてのRYUICHIのネクスト・ステップ、ネクスト・フェーズに到達したのではないか?と思いました。
――RYUICHIさん原曲の「piece of a broken heart」「So Sad」は、SUGIZOさんがプロデュースされたそうですね?
SUGIZOまぁ、アレンジですね。両方共とてもRYUICHIらしいな、という印象を受けるデモで、料理のしようによっては様々な顔になりうる曲でもありました。最終決断権はRYUICHIにあると僕は思っているんですが、彼はいつも「SUGIちゃんに任せるよ」と言うんです。だから「いやいや、RYU、判断してよ」「いや、任せるよ」という押し問答がいつもあるんですけどね(笑)。ソングライターとして彼は本当に素晴らしいし、RYUICHI詞曲でSUGIZOアレンジというのは、とても相性が良いと自負しています。前回の「Lost World」(シングル『Thoughts』収録)もすごく良かったし、一つのパートナーシップが出来ているかもしれないですね。
――「BLACK AND BLUE」は、祝福の光に満ち溢れたイメージがあるのですが、どのように生まれた曲なんですか?
SUGIZOこの曲は、仮タイトルを「ペルシャ猫」と言ってね。僕がものすごく好きな『ペルシャ猫を誰も知らない』というイランの映画があって、観たのは3年ほど前なんですが、人生の中ですごく大きな影響を受けているんです。バンドマン達が主人公になっていて、ほぼ実話の映画なんですけど、出てるバンドの人達は全員本物でね。
――たしか、国の政治の影響で、思うようにバンド活動ができないんですよね?
SUGIZOそうそう。イランは発信や表現の自由がかなりない国なんですね。イランだけではなく、そういう国は中東にたくさんあるんですね。当局の厳しい監視の中、若者たちは自分の感情や表現欲求を抑えられず、法を掻い潜ってこっそりバンドを、ロックをやっている。下手したら牢獄に追いやられたり撃たれたりするし、結果的に主人公の男女2人は実際、亡くなっているんですね。それでも彼らは音楽をやりたいの。そうやって命を懸けて権力や警察の目を盗んでただただ曲をつくり、リハをし、ライヴをするんです。こんな純粋なこと、ないですよね。それが本当のロック・バンド。いわゆるインディー・ロックと呼ばれるジャンルの本物のアティテュードが詰まっている映画で、僕はものすごく感動してね。その感動から生まれたのが「BLACK AND BLUE」です。その一方「今の俺達はどうなのかな?」って。スタッフに囲まれて、「さあメンバーの皆さん。リハやりましょう!」と言われて、やるわけですよ。学生の頃は、僕の家のボロボロの部屋を改造してスタジオにしてリハをして、近所のオッサンに通報されたり、何回も警察が来たりしてね。苦情を受けながらも週に5日ぐらいメンバー全員で集まって、曲を作って、ライヴやって…という感じでLUNA SEAの最初の2年ぐらいはやっていたんですよね。まさに『ペルシャ猫~』の映画の中に出てくるバンドとそっくりだったの。
――それは、取り戻したい感覚、なのでしょうか?
SUGIZO今はもう戻れないけど、そのアティテュードは忘れちゃいけないな、と思ってね。音楽をやることで今僕らは撃たれることもなければ牢獄に入れられることもない、それがどれほど恵まれた幸せなことか。もう、感謝の念でしかないんですよ。おこがましいけど、この映画を日本の、もっと言うとすべての先進国の恵まれたバンドマンに観てもらいたい。出て来るバンドは演奏が上手いわけでもないし音も悪いんだけど、あの熱にはかなわない。もはや自分達はそこには戻れないので、憧れるしかないのかもしれないけど。ただ言えることは、僕らもかつてはそうだったってこと。30年近く前はね。かつて少年だった自分たちが望んだのが、今の状況のはずなんです。この映画のあるバンドの楽曲からインスパイアされて生まれたのが「BLACK AND BLUE」です。影響を受けたとは言っても、実際には、ドラムが入る頭の2小節ぐらいが、その映画に出て来るバンドの楽曲の2小節ぐらいに影響を受けている、というぐらいなんですが…(笑)。そこから全然違う曲になってはいったものの、始まりのインパクトとしてものすごく大きな影響を受けています。