DVD&ブルーレイ・オペラ名盤選

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ポイント1: 歌手

オペラの劇場にはオーケストラがいる!

ステージと客席の間に、一段低い場所があります。オケ・ピット、といいます。オーケストラと指揮者はそこで歌手とタイミングを合わせながら演奏しています。歌手はオーケストラの生伴奏で歌い、演技するのです。全てのキュー出しは、オケ・ピットに入って指揮している指揮者が行っています。でもスター歌手には指揮者もすごーく気を遣っているようです。

歌手の声はどこまで響く?

大音量のオーケストラが伴奏するということは、歌手はマイクを使っている?いいえ、オペラでは普通マイクは使いません。すべて生声で、大きな劇場でも端に座っている人まで、その美しい歌声を届けねばなりません。そのために歌手は技術を磨くのです。

歌手の超絶技巧

オペラは作曲家が作曲します。つまり楽譜に全部書いてあるのです。歌手はそのとおりに歌わなくてはなりません。即興ではないので、楽譜どおりに歌わないと「間違えた!」と耳の肥えた観客にわかってしまいます。例えばフィギュアスケートの実況解説を聞いていると「ここでトリプル・ルーツ・・・あ?っ失敗!2回転になってしまいました」など解説されていますね。同じようにあらかじめ決められたプログラムどおりに進行させなければ(楽譜どおりに歌わなければ)ならないので、歌手は大変です。“見せ場”には時々観客をエキサイトさせるような超絶技巧が盛り込まれています。オペラ通の観客は難易度が高い場所がどこかを知っていて、歌手が見事に“着地”に成功すると、劇の途中でも、ちょっとした曲の合間に小さな拍手をして歌手の健闘をほめたたえたりします。「この箇所は難しいけれど、今日はあの歌手は成功するかな?」などは、ワクワク・ポイントといえます。

このワクワク・ポイントは観劇の前の予習で知ることができます。たとえワクワク・ポイントの超絶技巧がどこか知らなくても、声の威力はすごいのです。きいたら「なんかわからないけど、おおーすごい!会場も興奮してる空気だ!」ときっと感じるはず。ドラマティックな歌声はきっとあなたの心も揺さぶることでしょう。

今一番人気があるスター歌手は?

歌手は大きくわけて4つに分けられます。歌う声の高さによって、女性の高い方からソプラノ、メッゾ・ソプラノ、男性の高い方からテノール、バス、となっています。やはり主役を歌う声域に人気が集まります。女性だとソプラノ、男性だとテノールが花形といえるでしょう。

今世界で最も人気があるソプラノ歌手といえば、アンナ・ネトレプコ。ロシア出身で美しい容姿と声を併せ持ち“歌う女優”と言われています。メッゾ・ソプラノだとエリーナ・ガランチャが注目を集めています。テノール歌手ですと、ヨナス・カウフマン、フアン・ディエゴ・フローレスらが「声も容姿もステキ!」と女性に人気です。でも好みは人それぞれなので、自分の好きなタイプを探すのも楽しみのひとつです。

代表的なアーティスト

プロフィール:小田島久恵

アンナ・ネトレプコ

  • オペラ界の女王の座に君臨するスター・ソプラノ。サンクトペテルブルク音楽院在学中にゲルギエフに見いだされ、『フィガロの結婚』のスザンナ役でデビュー。透明感のある美声と華やかな舞台姿が人気を集め、瞬く間に英国ロイヤル・オペラ、メトロポリタン歌劇場、ザルツブルク音楽祭の常連歌手となる。モーツァルトやベルカントものを歌っていた初期から声も次第に変化し、最近ではワーグナー『ローエングリン』のエルザ役のロールデビューが話題を呼んだ。

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ルネ・フレミング

  • 軽やかなリリック・ソプラノの名花。当たり役であるR・シュトラウスの 『ばらの騎士』の元帥夫人や、『メリーウィドウ』などオペレッタのヒロイン役に定評のあるアメリカ人歌手。レパートリーは広く、ヴェルディ『椿姫』、ドヴォルザーク『ルサルカ』、マスネ『タイス』も高い評価を得ている。声楽家としてのレベルは高く、生前のショルティが手放しで評価した数少ないソプラノのひとり。近年は英語のポピュラー・アルバムもリリースしている。

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エリーナ・ガランチャ

  • ラトヴィア出身のメゾ・ソプラノ。『ばらの騎士』のオクタヴィアン役は、凛々しいズボン姿もあいまってガランチャの人気を高めた代表作。運動神経の良さを発揮したMET制作の『カルメン』も忘れ難い。ロッシーニの『チェネレントラ』のタイトルロールなど、ベルカント作品では緻密な歌唱も隈なく披露する。ソプラノよりメゾは地味…という印象が、ガランチャの登場で刷新された感さえある。ネトレプコと共演した『カプレーティとモンテッキ』の録音(ロメーオ役)は名盤。

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チェチーリア・バルトリ

  • ローマ出身のメゾ・ソプラノ。若くしてムーティ、バレンボイム、アーノンクールに評価され、モーツァルトとベルカントを中心に国際的なキャリアを築いてきた。音楽学者としての知的な一面もあり、グルック、ヴィヴァルディ、サリエリなどバロック~初期古典派の作品の録音・上演にも情熱的に取り組んでいる。リサイタルも人気で、美人なのにお茶目でくるくる変わる表情はまったく見飽きることがない。コンセプチュアルでユニークなディスコグラフィーも彼女ならでは。

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ヨナス・カウフマン

  • チューリッヒ歌劇場の地味な専属歌手だったヨナス・カウフマンが注目されはじめたのは30代に入ってから。人気ソプラノ歌手のゲオルギューがロイヤル・オペラハウスやMETで相手役としてカウフマンを指名したことがきっかけだった。容姿端麗で語学堪能、リハーサル映像などで見せるフレンドリーな人柄も魅力的だ。テノール歌手としてはかなり重めの声質で、母国ドイツのワーグナーもののほか、フランスものの『ウェルテル』なども絶品。シューベルトの歌曲もハイレベル。

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ローランド・ヴィリャソン

  • メキシコ出身のテノール、ローランド・ヴィリャソンは2000年代の中盤にネトレプコとの黄金コンビでスター歌手の仲間入りをしたアーティスト。ラテン系の歌手に特徴的な輝かしい美声で、ドラマティックな起伏に富んだ表現を得意とする。モーツァルトからヴェルディ、プッチーニまでレパートリーは広く、ヘンデルのバロック・アリア集もレコーディングしている。一度見たら忘れられない「濃い」ルックスも、オペラ歌手としては大きな武器だ。

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フアン・ディエゴ・フローレス

  • 「現代最高」と評されるペルー出身のテノール歌手で、超人的な高音を当たり前のように出して聴衆を驚かせる大スター。ドニゼッティ『連帯の娘』のトニオが10回のハイC(高いドの音)を成功させる映像は、Youtubeでも評判になった。MET、スカラ座、ロイヤル・オペラではひっぱりだこで、ロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニなどのベルカント・オペラがメインのレパートリー。愉快な変装をする『オリー伯爵』(ロッシーニ)ではコメディアン的な才能も見せた。

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ロベルト・アラーニャ

  • 50代半ばを過ぎてますます美声に磨きのかかった感もあるアラーニャは、フランス出身のテノール歌手。デビューは『椿姫』のアルフレートで、グラインドボーン・ツアー・オペラで150回以上歌う間に注目されるようになったという「叩き上げ」のエピソードを持つ。マスネの『マノン』、グノー『ロメオとジュリエット』等、フランス・オペラの評価も高い。アンジェラ・ゲオルギューとの黄金コンビを離婚によって解消した後も、第一線での活躍を続けている。

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トーマス・ハンプソン

  • オペラでは長身でダンディな姿が舞台映えし、『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールや『トスカ』のスカルピアのような悪役から、『椿姫』のジェルモンのような落ち着いた役もこなすアメリカ人バリトン歌手。若いころは「お国もの」のミュージカル・アルバムもリリースして軽妙な歌唱も披露したが、ライフワークであるマーラーの歌曲では正統派のリート歌手としての表情も見せる。バリトンの中でも明るく輝かしい声質で、マスネやビゼー等のフランス・オペラで特にその魅力が生かされている。

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