リレー・コメント 須川 展也 (すがわ のぶや)

須川 展也 (すがわ のぶや) サックスフォン

~ Profile ~

東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール管楽器部門1位なしの2位、第1回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門第1位を得てデビュー。
第4回出光音楽賞、94年村松賞を受賞。98年JT音楽家シリーズのテレビCMに出演し、圧倒的な人気を得た。
年間コンサート数は約100公演。国内ではリサイタル、アンサンブルの他に日本のほとんどのオーケストラと共演。
海外でも精力的に活動し欧州各国、米国、中国、韓国・台湾等多くの国で演奏している。
02年4月からのNHK連続テレビ小説『さくら』のテーマ音楽を演奏。ラジオ・テレビへの出演も多数。
CDは30枚近くリリースしており、最新は「ヴィルトゥオーゾ・コンチェルト」(avex-CLASSICS)。
近年は作曲家への委嘱も積極的に行なっており、西村朗、吉松隆、本多俊之、E.グレッグソン各氏等に作品を依頼、サクソフォン音楽の発展に力を注いでいる。
1989年から2010年まで、東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年あまり務め、現在は同団協力アーティスト。
現在、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、東京藝術大学非常勤講師。
2009年より「浜松市やらまいか大使」に就任。
クラシック・サクソフォンの可能性を追求、自由なスタンスで活動する日本を代表する管楽器奏者のひとりである。

須川 展也オフィシャルサイト http://www.sugawasax.com

参加作品

第38集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス 2010 第33集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス 2005 第28集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス 2000 第23集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '95 第16集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '88 and more...

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「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」の思い出

私はこの素晴らしい39作品の、半数以上に参加させていただきました。あらためてその財産の大きさに驚くとともに、私にチャンスを下さった多くの方々に深い感謝を感じずにはいられません。
私が初めてニュー・サウンズに参加させていただいたのは、東京佼成ウインドオーケストラに入団して間もないころでした。当時はアドリブ・ソロはゲストプレイヤーが演奏することになっていましたが、とにかく録音に張り切っていた私に興味を持って下さった東芝EMI(当時)のご担当者が、「須川にソロをさせてみよう」と異例の大抜擢をしてくださいました。当時、私にはジャズの経験も知識もほとんどなく、学生時代にビッグバンドで少し経験していた程度でしたので、このレコーディングのためにジャズ、ポップスにのめり込みました。レコーディングの初めのころは、なかなかうまくテンポに乗ることができず、テイク数も重ねてしまい、苦労をしましたが、最終的に仕上がった音楽では、うまく私の気持ちが伝わったようで、いろいろな方々からお褒めの言葉をいただいたことを嬉しく思い出します。
 当初、レコーディングでアドリブを演奏するときに、いつもとは違うマウスピースを使って挑戦しました。そうすると、音に独特の雰囲気が出たのでした。しかし、普段慣れているマウスピースとはコントロール方法が違うため、なかなか安定せず、ニュアンスや音程の面で苦労が多かったため、いつしか、自分の慣れたマウスピースで演奏するようになりました。そして安定感のある中で様々な工夫を凝らすようになり、それが今、自分の表現として演奏できるようになりました。
このようにソロで参加させていただいた中で、名曲「宝島」の演奏は、私の音楽人生の大きなターニング・ポイントになったと思います。これを機に吹奏楽界で広く名前を知っていただけるようになり、その後の活動でアドリブが入ったソロを演奏する機会も増え、これまで学んできたクラシックに、表現の幅を広げられるようになりました。
若かった私に大きな機会をいただきましたことに、心から感謝申し上げます。

吹奏楽団の一員としての思い出は、やはり、岩井直溥先生をはじめとする名だたる編曲家の方々や、素晴らしいゲスト・アーティストの方々とご一緒できたことです。岩井先生の体からあふれる音楽性を生かした指揮のもと、編曲家の方々は、自分たちで新しい“ポップ”を創りたいという意欲に燃えていらっしゃり、その熱が我々の魂を熱くしました。また、ゲスト・アーティストの方々から大きな刺激を受けながら演奏することは、何物にも代えがたい幸せでした。

このように、私の音楽人生に大きな影響を与えてくださったニュー・サウンズ・イン・ブラスですが、その40年は、日本の吹奏楽の歴史にはかり知れない役割を果たしていると思います。あらゆる吹奏楽団が、ここから刺激を受け、演奏活動を展開しています。この貴重な企画に参加させていただいたことは一生の宝です。これからもこの素晴らしい企画が吹奏楽のさらなる歴史を拓いていくことを、心から願ってやみません。

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