リレー・コメント 小貝 俊一 (こがい しゅんいち)

小貝 俊一 (こがい しゅんいち) 監修 /  レコーディング・エンジニア

~ Profile ~

ヤマハ・エピキュラス、東芝EMIを経て現在フリーランス。
中学で吹奏楽にのめり込み、高校・大学では加えて合唱、オペラ、指揮・演出に熱中。ちゃんとした音楽家になりたかったが種々の理由により断念、好きな音楽とオーディオにどっぷりと浸かった仕事の出来る、レコーディング・エンジニアを目指す。
1983年中島みゆきシングル「あの娘」で、レコーディング・エンジニアとしてデビュー。チャゲ&飛鳥、谷山浩子、 雅夢、あみん、世良正則等々多くのセッションに参加。その後念願のクラシックへも進出。童謡、邦楽、ジャズ、ポップスからクラシックまでと守備範囲は広い。
「サイバーバード/須川展也サクソフォーン協奏曲集」(芸術祭賞受賞)、黛俊郎管楽作品集「トーンプレロマス55」岩城宏之指揮東京佼成ウインドオーケストラ(同)、「マルセル・ミュールに捧ぐ」トルヴェール・クヮルテット(同大賞 受賞)、森山良子「ザ・ジャズ・シンガー」、中島美嘉「FIND THE WAY」「ひとり」、由紀さおり・安田祥子、加藤登紀子「シャントゥーズTOKIKO~仏蘭西情歌」「シャントゥーズⅡ」、島健「Shimaken Super Sessions」、1986年より「New Sounds in Brass」を担当。洗足学園音楽大学非常勤講師。

参加作品

第39集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス 2011 第38集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '2010 第28集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '2000 第25集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '97 第14集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス and more...

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「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」の思い出

私がNSBの録音を初めて担当したのは1986年。25年も前のことです。その間、アナログからデジタル録音へ、レコード盤からCDへさらに配信へと大きく変わりました。スタジオも東芝EMI(当時)第一スタジオ、スタジオテラ、EMI第三スタジオと変わり、現在はサウンド・インAスタジオで録音しています。2010年はスタジオの関係でホール録音となりましたが、それ以外は一貫してスタジオでの録音です。

「何故実際に演奏されるホールでは無くスタジオで録音するのか?」
と、よく聞かれます。理由はいくつかありますが、一番は「リズムセクションが切れの良い音で録れるから」でしょうか。スタジオではホールのように全員が一つの空間で演奏するのでは無く、ドラムスやパーカッションは別々の部屋で音が周りにかぶらないようにする事が出来ます。こうすることにより引き締まったバスドラムやシャープなスネアの音を録ることが出来るのです。

吹奏楽団とリズムセクションとで総勢50名近くなり、この編成をスタジオで録るのは苦労が絶えず、いろいろな工夫を凝らしています。
もし皆さんがスタジオにいらしたら「おやっ!」と思うのは管楽器の並び方でしょう。
ステージでは木管楽器が前にいてその後ろに金管が並びますが、私のスタジオ録音では金管楽器が一番前にいます。指揮者の前に、左からホルン、トランペット、トロンボーンと並び、その後ろに木管楽器を配置し、ユーフォニュームとチューバのベルが上を向く楽器は一番奥と言う具合です。
こんな並びをすると「不自然なバランスになるのでは・・・」と思われるかもしれませんが、心配ご無用。ある操作をすると木管楽器が前に金管が後ろにいるように聴こえるのです。細かい説明は専門的になりますので省きますが、この一風変わった楽器配置も管楽器をより良い音で録るための工夫の一つです。

良い音となにげに書いてしまいましたが、楽譜が販売されホールで演奏されるわけですから、生の演奏を無視した音作りはしていません。その反面、売り物としてのCDを作っていますので、演奏はしないけれど音楽として楽しみたいと言うリスナーの方々にも満足して頂けるものでなければなりません。ホール録音の自然さと、スタジオならではの音作り、この二律背反的な課題を何とかバランスを取りながら、(毎年このバランスは違っているようですが)頑張っています。
目指すところは、「Art for Nature」自然さへのための技術です。自然でカッコ良い音を目指しています。

この様に25年スタジオで録音していますが、いつの頃からかNSBをホールで録ってみたいと思うようになりました。スタジオと違い大きな制約を受けるホール録音は、技術的にだけでは無くいろいろとクリアしなければならない問題が多く、長年踏み切れずにいたのです。が、その時は突然に来ました。
2010年1月、NSB録音1週間前に急遽ホールで録音することになったのです。慌てました。大慌てです。
こうして生まれた「NSB2010」はこれまでのスタジオ録音とは幾分趣が違います。皆さんどのようにお聴きになったでしょうか。

スタジオ録音とホール録音、一年おきに交互に出来たら面白いかもしれません。
スタジオに皆さんを招待することはスペースの関係で難しいですが、ホールならそれが出来ます。近い将来、ホールに皆さんを招待して公開録音!なんてことがあるかしれません。お楽しみに。

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