リレー・コメント 佐藤 浩士 (さとう ひろし)

佐藤 浩士 (さとう ひろし) ディレクター/音楽プロデューサー

~ Profile ~

1953年福島県生まれ。
1976年立教大学文学部卒業。
同年、東芝EMI株式会社(現EMIミュージック・ジャパン)入社。営業、制作、販売推進を担当。
1986年~2001年の間、CD制作プロデューサーとして邦人アーティストのクラシック、吹奏楽を中心に数多くのCDをプロシュース。主なアーティストとしては須川展也(サックス)、長澤真澄(ハープ)、斉田正子(ソプラノ)、小原孝(ピアノ)、モルゴーア・クァルテット(弦楽四重奏)、トルヴェール・クヮルテット(サクソフォーン四重奏)など…。
代表作は「サイバーバード/須川展也サクソフォーン協奏曲集」(1996年度文化庁芸術作品賞受賞)、ニュー・サウンズ・イン・ブラス等。
また、クラシック以外でも、ミュージカル、童謡、教育教材等の幅広いジャンルの音楽のCDを企画制作。
2004年同社退社、フリーの音楽プロデューサーとして、2006年新倉 瞳(チェロ)、2007年彩 愛玲(ハープ)のCDをプロデュース。2007年7月(株)フロレスタン設立、代表取締役に就任。現在国立音楽大学非常勤講師。

ホームページ http://www.florestan.co.jp/

参加作品

第28集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス 2000 第25集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '97 第22集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '94 第20集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '92 第15集 ニュー・サウンズ・イン・ブラス '87 and more...

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「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」の思い出

NSBに寄せて

私はNSB第14集(1987年発売)から27集(2000年発売)の14年間、東芝EMI(現EMIミュージック・ジャパン)で制作を担当させていただきました。
その期間はNSBの成長期だったと思います。私はNSBの選曲から録音、制作までの仕事を毎年楽しみにしていました。それだけに年1回だけでは物足りなくなり、数多くのヴァリエーション企画を考えました。ざーっと上げますと「ニュー・サウンズ・イン・クリスマス」、「ニュー・サウンズ・イン・アンサンブル」、ヒット曲をタイムリーに収録した「ポップス・イン・ブラス」や、「ユーミン・ブラス」、「サザン・ブラス」、そしてもっとも印象的だったのは世界的なトップ・ミュージシャンをゲストに迎えた25周年記念盤の「ゴールド盤」と「シルバー盤」です。
その録音には色んなエピソードがありました。1997年の「ゴールド盤」の録音の際のお話です。
日本でのいつもながらの岩井先生指揮、東京佼成WOの録音を終えたあと、そのマルチ・テープ(当時はアナログ24チャンネルでかなり重かった。)を持って、われわれ録音チームはアメリカへ飛び立ちました。飛行機を2回乗継ぎ、アルバカーキに到着し、レンタカーを借りて、目的地サンタフェに着いたのは深夜12時近くでした。疲れきったわれわれは真っ先にビールを求めレストランに入りました。ところが、深夜11時以降は市の条例によりアルコールは出せないと言われて目の前が真っ暗になりました。翌朝ようやくビールにありつけホッとしました。それからクラリネットの名手エディ・ダニエルズの待つサンタフェのスタジオに向かったところ、何と、ウェルカム・ドリンクとしてメキシコのビールがもてなされました。メキシコの隣りのニュー・メキシコ州は高地で空気が乾燥しているため尚更美味しく、それにはスタッフ全員感動した思いを今でも忘れられません。その時の録音は流石の名手で「シング・シング・シング」のアドリブ・ソロを1時間足らずでアッという間に終了しました。その後エディ・ダニエルズ宅に招かれ楽しいひと時を過ごしました。
今では考えられませんが、折しも日本はバブリーな時代で、それらの企画が実現できたことは大変ラッキーだったと思います。

NSBは岩井先生、東京佼成WOの絶妙なコンビネーション、それから、ヤマハさん、録音エンジニアの小貝氏を含め我々スタッフのチームプレーで成り立ってきました。特に岩井先生は持ち前の明るいポップなキャラクターで演奏を引っ張ってきました。岩井先生が指揮台に立ち「ワン、ツー、ア、ワン、ツー、スリー」と合図を出した瞬間にニュー・サウンズのカッコいいサウンドに変身します。
ミスター・ニュー・サウンズたる所以はそこにあると思います。

今年でシリーズ40作を迎えた、ギネスブック的な驚異的な人気シリーズ「ニューサウンズ・イ・ブラス」がここまで来れたのは、岩井先生のカリスマと東京佼成WOの卓越した演奏技術、制作スタッフのシリーズに対する愛情と吹奏楽現場の先生たち、生徒さんの協力、支えがあったからこそだと思います。
「NSBは永遠に」・・・・切に願っております。

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